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2008.12.05 (Fri)

秘密 第19話

琴子は相変わらず水沢と一緒に勤務時間外にボランティアに勤しんでいた。
しかし、看護師、主婦、ボランティアと3つを両立させることが、琴子の体に相当な負担となってきていることを、本人はもちろん、直樹も気づいていなかった。


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ある日、いつものように日勤終了後、ボランティアをし、そして水沢と一緒に病院を出ようとした時、琴子は誰もいない外来の待合室に座り込んだまま動けなくなってしまった。
「私、少し休んでいくね…。」
苦しそうな琴子の声に、水沢が驚いた。
「大丈夫?」
水沢が琴子の額に手を当てると、すごい熱だった。
「これ、夜間の救急で診てもらわないと…!」
水沢が琴子を背負って、夜間救急へと急いだ。

「ねえ、相原さんが水沢さんに担がれて、夜間救急へ運び込まれてたわよ。」
看護師の声が夜のナースセンターに響いた。
「大丈夫かしら?相原さん、本当によく働いてたものね。」
「水沢さんと一緒にボランティアもしてたんでしょ?」
倒れるのも無理はないという看護師たちの会話に耳をすませていた直樹は思った。
「…いつか倒れるんじゃないかと心配していたけど、やっぱりな。」
後で様子を見に行こうと思いながらカルテの整理に意識を戻した。

この夜、琴子は点滴を打ってもらい、病院に一晩泊っていくことになった。高い熱にうつらうつらとしていると、誰かが部屋へ入ってくる気配がした。
「…誰?」
「俺。」
「入江くん…。」
直樹が琴子のベッドの傍の椅子に腰かけた。
「今、勤務中でしょ?」
「今夜は別に忙しいわけじゃないし、それに何かあればPHSで呼び出されるから。」
直樹の言葉に琴子が笑った。
「倒れちゃった…。やっぱ私ってだめだなあ。」
「…普段の仕事と、俺の世話でお前の能力は限界なのに、ボランティアまでやってるからだろ?」
「…知ってたの?」
プレイルームにいることを直樹が知っていたことに琴子は驚いた。
「ボランティアってほどのものじゃないのよ。ただ担当の患者の子の相手をしている内に何となく他の子とも遊ぶようになっちゃって。」
「それでも大変だろ?俺だって家の仕事手伝うって言ったのに…。」
「だめだめ。せっかく二人だけで暮らしているんだもの。ちゃんと入江くんのお世話したいの。私が好きでやってるんだもん。」
「…お前のパワーには負けるよ。」
直樹は力を抜くつもりのない琴子に降参した。

「ところで、水沢は?あいつに担ぎこまれたんだって?」
部屋の中に水沢の姿はなかった。
「私が少し眠っている間に帰ったんじゃないかな?」
「治ったらお礼言っとけよ。」
「そうだね。すっかり迷惑かけちゃった。」
琴子はどうやら少し気分が楽になってきたらしい。熱が高いので喉が渇くだろうと、直樹は外の自動販売機にて水を買ってくることにした。
そして、部屋を出た時、
「あっ…。」
部屋の外には、水を持って呆然とする水沢の姿があった。
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