日々草子 秘密 第17話
FC2ブログ

プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者

現在の閲覧者数:

御訪問ありがとうございます

このブログについてのお願い

当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

最新記事

秘密 第17話

「えっとペン、ペン…。」
ナースセンターで琴子はカルテに書き込もうと、ポケットからペンを出そうとした。すると何かが琴子の指に当たった。
「?」
取り出してみると紙切れだった。
「すぐ溜まっちゃうんだよね。小まめに整理しないとだめだなあ。」
一応、確認してから捨てようと紙切れを広げた琴子は、それを見るなり慌てて閉じた。そして、そっと人気のない場所へと移った。
紙切れには一言、
「昼休み、屋上」
と、直樹の字で書かれていた。琴子が待ち焦がれた直樹からの手紙がようやく、琴子のポケットに入れられたのだった。

昼休みになり、恐る恐る琴子は屋上へと向かった。
「もしかして、お前みたいな暴力女とはやっていけないとか、言われるのかな?」
考えながら屋上への入り口に着くと、入り口の扉には“立入禁止”の紙が貼られている。
「えっ、立ち入り禁止?」
それでも、琴子はそっと扉を少し開けてみる。すると屋上のベンチに座っている直樹の後姿が見える。
「入江くんがいるってことは、入って大丈夫だよね?」
琴子は意を決して、扉を開けて屋上へ足を踏み入れた。

琴子が来るのを待ち構えていた直樹は、突然視界が暗くなった。
「…!?」
どうやら後ろから誰かの両手で目を塞がれたらしい。
「…何の真似?」
「…だって目を見て話すの怖いから。」
琴子の声だ。
「勝手にしろ。」
「私から話してもいい?」
返事がなかったので、琴子はそれを承諾の意思表示だと考えて話し始めた。
「昨日、お父さんから電話があったの。」
「お義父さんから?」
「…入江くん、私が作った料理の写真を撮ってお父さんの元へ送ってくれたでしょう?」
確かに琴子の料理の写真をこっそりと撮って、琴子の父へと送った。料理ノートを送った板前である義父は、琴子がちゃんとまともな食事を作っているかを、きっと東京で心配しているだろうと思って。
「手紙も一緒に書いてくれたんだってね。」

写真と一緒に手紙も入れた。義父がくれたノートを見ながら、琴子は自分の為に一生懸命料理を作ってくれている。写真を入れたのは言葉で説明するより、実際に作ったものを見せたかったからだ。口でどんなに言っても、義父は直樹が遠慮して琴子の料理を上手だと言ってくれていると思うだろうから。それに実際に琴子がノートを活用していることを教えてあげれば、義父も喜ぶだろうと思ってのことだった。

そして、手紙を入れたのは、直樹の義父への感謝の証だ。遠い神戸で過ごす娘の様子が恐らく気になって仕方がないだろうと思ったのだ。だから手紙には琴子が仕事も手を抜かず、主婦業もこなして、自分の体を考えて食事も作ってくれているから安心してほしいと書いたのだった。

「…お義父さん、おしゃべりだな。」
「お父さん、電話で泣いてたよ。」
琴子の声も涙声になっている。
「入江くん、最後に書いてくれたんだってね。私と結婚して、お父さんの息子になれて幸せだって…。」
確かに、そんな事を書いたなと直樹は目を塞がれたまま思い出していた。事実その通りだったから。

「それなのに、それなのに、私ったら…。」
とうとう堪え切れなくなったらしい。
「ごめんね、本当にごめんね。そんな優しい入江くんを叩くなんて、私最低だよね!」
琴子がボロボロと涙をこぼして泣いている姿が想像できた。
直樹は自分の目をおさえていた琴子の両手をぐいっと引っ張った。急に引っ張られた琴子が自然と直樹の首に後ろから抱きつく形になった。
「入江くん?」
「俺だって最低だったよ。」
「え?」
「昨日、水沢から聞いたんだ。あいつの親、震災で亡くなったんだってな。」
「そうなの?理由までは聞かなかったから…。」
「それなのに、お前と水沢を疑って。自分が恥ずかしいよ。」
「そんな…。」
琴子が直樹の顔を覗き込んだ。直樹が自分の唇を琴子へ重ねる。そして、どちらともなく笑った。

「痛かった?ほっぺた…。」
琴子が尋ねた。
「結構ね。お前から叩かれたの、これで二度目だもんな。」
「えっ、前にも私、叩いたことあった?」
驚いて琴子が訊いた。
「お前って自分に都合の悪いことはすぐに忘れるんだな。俺の顔を殴ったのは、お前が初めてだったから俺はよく覚えているけど。」
「えっ、そうなの?でも…。」
「でも、何だよ?」
琴子が言った。
「入江くんだって、二回、私を叩いているでしょ?」
琴子の言葉に直樹が笑った。
「じゃ、これでおあいこってことだな。」
「そうだね。おあいこ。」
二人は見つめ合って笑った。

「ねえ、この間入江くん、自分の長所はどこだって聞いたでしょ?」
「面倒見のいい所なんだろ?」
「あれ、訂正する。」
「結局なかったとか言うんだろ?」
直樹に後ろから抱きついたまま、琴子が直樹の顔を覗き込んで、微笑みながら言った。
「入江くんの長所は、誰よりも優しいところ。」
「…そんなこと、初めて言われた。」
「入江くんは誰よりも優しい。でもそれを知っているのは世界中で私だけなの。」
「…それって、他の奴には優しくするなってことかよ?」
「そう。入江くんが優しくするのは、世界中で私だけ。」
「…了解。」
再び二人はキスした。

「入江くん、まだ病院?」
しばらくして琴子が訊いた。
「いや。患者が落ち着いたからようやく家へ戻って休めるな。」
直樹はそう言ってベンチから立ち上がって、体を伸ばした。
「じゃ、ゆっくり休んでね。」
「ああ、でもその前に…。」
直樹は言った。
「お袋に電話するかな。久しぶりに。」
直樹の言葉に琴子は喜んだ。
「うん、してあげて!入江くん、めったにかけないんだもん。お義母さん、大喜びするよ!」
「でも、お袋は実の息子の俺より、お前からの電話の方が喜ぶんだよな。」
「そんなことないよ!絶対喜ぶって!」
直樹も分かっていた。母が一番喜ぶのは、直樹の口から琴子と仲良くしている様子を聞くことだということを。だからたまには親孝行しようかと思ったのだった。
「そろそろ行くね。じゃ、お義母さんによろしく言っておいてね。」

琴子がそう言って屋上から立ち去ろうとした時、
「琴子!」
直樹が琴子の元へ何かを投げて寄越した。奇跡的に無事飛んできた物をキャッチする琴子。何が飛んできたのかと思ったら、1冊の小さなポケットサイズのノートだった。
何かと思ってめくると、そこには、琴子が苦手とする処置の方法や看護のポイントなどが図を交えて書かれている。全て直樹の手書きだ。
「入江くん、これ…?」
「お義父さんの真似。」
「え?こんな細かく?入江くん、何でこんなに私が苦手なものが分かるの?」
「お前が毎日つけてる看護日記、あれ見たら一発で分かるよ。」
「見たんだ…。」
見られたことは恥ずかしかったが、それ以上に直樹が忙しい勤務の合間に作ってこれたことが琴子には何より嬉しい。
「そのサイズなら、いつも持ち歩けるだろ?」
「ありがとう!嬉しい!私もお母さんみたいに、このノートにたくさん書き込むね。」
琴子がまた直樹に近寄って行こうとすると、直樹が言った。
「早く戻らないと怒られるぞ。」
それでも、琴子は駆け足で直樹にまた近寄った。
「…ねえ、入江くん。」
琴子が嬉しそうに言った。
「私が温かい幸せな家庭を築きたい相手は、入江くんだけだからね。」
「…分かってるよ。」
直樹の返事を聞くと、琴子はまた駆け足で屋上を後にした。

「さて、俺も帰るか。」
琴子が屋上を立ち去って、しばらくして直樹も立ち上がり、屋内への扉を開けた。
「あ、これ剥がしとかないと。忘れる所だった。」
直樹は扉へ張ってあった“立入禁止”の紙を剥がし、そして階段を下りていった。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://suisen61.blog77.fc2.com/tb.php/94-960d1f49

 BLOG TOP