2017年10月 / 09月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

2010.10.29 (Fri)

My Dear Wife 4


【More】





庭の片隅で泣いていたコトリーナの肩が叩かれた。
「コトリーナちゃん!」
コトリーナの傍には、ノーリー夫人の懐かしい笑顔があった。
「なかなか戻って来ないから心配になって。」
「おば様!」
嬉しさのあまりコトリーナはノーリー夫人に抱きつき「おば様、おば様」とうわ言のように繰り返した。

「どうしたの、コトリーナちゃん?ああ、でも。」
ノーリー夫人が今度はコトリーナを抱き返す。
「メイド姿もなんてキュートなんでしょう!!もう、コトリーナちゃんったら何を着ても似合うんだから!さすが私のコトリーナちゃん!」
だがそんなことを言っている場合ではないことも、夫人は分かっている。
「一体、何があったというの?何でメイドになっているの?」
コトリーナは泣きじゃくりながら説明を始めた。だが興奮してどうも要領を得ない。

「え?ナオキヴィッチ様が…頭にお花を挿して…高崎山のボス猿から…あんパンを奪った!?」
何とか聞こえた台詞を繋ぐと、とんでもなく恐ろしい想像がノーリー夫人の脳裏を過った。

「コトリーナちゃん、落ち着いてもう一度、ゆっくりと…。」
そこまで言いかけた時である。

「あ…!!」
そこへコトリーナを探しにメイドの一人がやってきた。ノーリー夫人を見て驚きの声を上げる。そしてすぐに屋敷へと戻ってしまった。

が、すぐに今度は大勢のメイド達が二人の元へとやってきた。
一体何事かとコトリーナが思っているとメイド達は、
「ミセス・ノーリーでいらっしゃいますね!!」
と歓声を上げながら、ノーリー夫人を取り囲んだ。

「何て素晴らしいのでしょう!ミセス・ノーリーにお会いできるなんて!!」
「え?え?」
コトリーナには状況が分からない。見るとメイド達は皆、本をそれぞれ持っている。
「この本にサインをお願いします!」
「いつも肌身離さず持っているんです!」
「シリーズ全部持っています!」
メイド達は一斉に本をノーリー夫人に差し出したのである。

「はい!はい!」
驚くだけのコトリーナと違い、ノーリー夫人は手をパンパンと叩いた。
「サインはしますから、皆さん、きちんと一列に並びましょう!」
「はあい!」
するとメイド達はノーリー夫人の言い付けに従い一列に並び始めた。

「あ、あの、おば様。これは一体?」
「まあ、あなたはミセス・ノーリーを御存知ないの?」
最前列のメイドが眉を潜める。
「『ミセス・ノーリーのハウスキーピング術シリーズ』は累計150万部を誇る大ベストセラーじゃないの!」
「『ミセス・ノーリーの簡単クッキングシリーズ』も大人気よ!」
「この国のメイドならミセス・ノーリーの名前を知らない人はいなくてよ!」
「いいえ!メイドではなく女性ならその名は知っているはず!」
メイドたちがこぞってノーリー夫人のことをコトリーナへ教える。

「でもねえ…。」
ノーリー夫人が頬に手を当て、溜息をついた。
「最近、売上ランキングの一位を池上彰さんと争うことが多くて。」
「大丈夫ですわ!」
メイド達が声を揃えた。
「我らがミセス・ノーリーは、Mr.ニュースになんて負けません!」
「ありがとう、皆さん。」
そしてノーリー夫人はサインを始めた。

突如開かれたサイン会の様子をじっと見ていたコトリーナ。そんなコトリーナにメイド達が不思議な顔を見せる。
「そういえば、ミセスはコトリーナとお知り合いなのですか?」
「え?」
ノーリー夫人とコトリーナは同時に声を出してしまう。
コトリーナは目で夫人に「誤魔化して」と合図を送った。それを理解した夫人は、
「あ、ええとね。彼女は…。」
「彼女は?」
メイド達は皆、ノーリー夫人の答えを待つ。
「彼女は、私の妹の夫の姉のおばの息子の嫁の弟の娘さんなの。こちらで働いているって聞いて会いに来たのよ。」
「…はあ。」
何だかよく分からない答えだがメイド達はそれ以上何も質問しなかった。

「ミセス、そろそろ来年のカレンダーが出ますわよね?」
カレンダーまで出しているのかとコトリーナは驚く。
「ええ、そうよ。今度のカレンダーはね、『ノーリーのお役立ち一言アドバイス』がついているわ。」
「まあ、何て素晴らしいの!絶対買わなければ!」
メイド達の興奮はサイン会が終わるまで、冷めることはなかった。



「んまあ!こんな部屋に私の可愛いコトリーナちゃんが寝起きしているの!?」
サイン会終了後、コトリーナはノーリー夫人を屋根裏部屋へと案内した。
「何て可哀想なんでしょう…!」
そしてまたコトリーナをギュッと抱きしめる。

「でもおば様が本を書かれていたなんて知りませんでした。どうして家には本がないんですか?」
イーリエ家でノーリー夫人の本を見たことは一度もない。
「ああ、だって、ナオキヴィッチ様がいい顔をしないのよね。」
ノーリー夫人はまるで悪戯を見つけられたこどものような感じである。
「あの方ね、目立つことが嫌いなの。だから私が本を書くのもあまりいい顔をしなくて。」
「そんな、立派なことなのに。」
「だから私もこっそりとやっていてね。ナオキヴィッチ様もきっと言っても無駄だと思って、今では気がつかないふりをしているわ。」
「それじゃ、時々お留守だったのは?」
「編集さんとの打ち合わせだったの。ウフフ。」
ちなみに今回留守だったのは、カレンダーの写真撮影旅行だったという…。



「そんなことより」とノーリー夫人はコトリーナの肩を掴んだ。
「コトリーナちゃん、一体ここで何が起きているの?」
夫人は、落ち着いたコトリーナからここにいる理由、そしてコトリーナがいることにナオキヴィッチが気付いていないこと、更にサヴォンヌと仲良く過ごしているナオキヴィッチの様子を聞き眉をつり上げた。

「何てことでしょう!!可愛い妻がこんな所で寝起きしているというのに…他の女性とイチャイチャしているなんて!許せないわ!」
そして、今すぐナオキヴィッチの元へと向おうとする夫人。コトリーナは慌ててそれを止める。
「私は大丈夫です!ほら、このお部屋だってまるで小公女セーラになったみたいだし。」
コトリーナは笑顔で『小公女』の本を夫人に見せた。
しかし、ノーリー夫人はますます興奮して叫んだ。
「だったら、セーラを助けるインド人が必要でしょう!!夫ならターバンを頭に巻いてその窓から来るべきよ!ううん…いっそのこと、自分が猿になって窓からウキキって顔を出しなさい、あの鈍感公爵!!」
「落ち着いて、落ち着いて下さい、おば様!」
コトリーナはまた必死になって、夫人を止める。

「でも…本当にサヴォンヌ様ってとても素敵なんです。美人で優しくてピアノも上手で…。」
サヴォンヌの姿を浮かべながらコトリーナは肩を落とす。
「あんな素敵な女性と結婚寸前までいっていたなんて。そして再会した今、私なんて先生の中にこれっぽっちもいないわ。」
「何を言っているの、コトリーナちゃん!」
ノーリー夫人はコトリーナの頬を両手で挟み、自分へ顔を向けさせた。
「こんなに明るくて素直で可愛い奥様、あの間抜け公爵には勿体ないわ!」
「そう思って下さるのはおば様だけです…。」
コトリーナはまだ落ち込んだまま。

「んもう、コトリーナちゃんったら!」
ノーリー夫人は声を張り上げた。
「こうなったら、ナオキヴィッチ様に全てを話さないと!」
「それはだめです、おば様!」
コトリーナはノーリー夫人を止めた。
「どうして?」
「だって…私がここにいることをサヴォンヌ様が聞いたら、きっと不愉快に思われるもの。御病気の伯爵様だっていい思いをされないでしょう?」
サヴォンヌとは一度顔を合わせている。あの時「新人メイド」と訊ねられて頷いてしまった。
ナオキヴィッチの妻が正体を隠してコソコソとここで働いている。そんなことをサヴォンヌが知ったら、絶対いい思いはしない。
あの優しい女性を傷つけることはしたくないコトリーナだった。

「分かったわ、コトリーナちゃん。」
ノーリー夫人はコトリーナの気持ちを汲むことにした。
「もう、サヴォンヌ様にまでそんな心遣いをするなんて、本当に優しい子ね。」
コトリーナは漸くホッとした笑顔を見せた。

だが、ノーリー夫人はサヴォンヌへ挨拶をしないわけにはいかない。夫人がここに来たことは、きっとメイド達が話している。そうなるとナオキヴィッチとも顔を合わせることになる。
イーリエ公爵家の家事一切を取り仕切る身としてはそれが礼儀である。
「大丈夫ですか?」
先程の夫人の様子から想像すると、どうも何か怒りそうな気がするコトリーナは心配した。
「大丈夫よ。私だってだてに年齢は重ねていないのですから。」
安心して待っているようにとコトリーナに言い残し、夫人は屋根裏部屋を出て行った。










♪あとがき
本当にすみません!!くだらなくて!!
そして…ごめんなさい!!
次回以降、どんどんくだらなくなっていきますので!!
それでも付き合って下さる方がいらっしゃるといいのですが…。

タイトル『猿とあんパン』にすればよかった…。
関連記事
21:32  |  My Dear Wife  |  TB(0)  |  CM(8)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

ノーリー夫人は作家さんだったのね・・・。全然知りませんでしたよ・・・。

琴子はノーリー夫人に説明するのに・・・「高崎山ボス猿からアンパン奪われた」などの説明するのね・・・?

花は・・・沙穂子さん
ボス猿は・・・琴子
あんパンが・・・直樹
になるのかしらね・・・・?何か傑作です・・・面白いです・・・。

しかし・・・ノーリー夫人は琴子の言葉で察しついて(原作同様に)
沙穂子の事が気に入らないのね・・・?

挨拶しに行った時にそれとなく直樹には奥さんがいてこれ以上直樹にちょっかい出すなと・・・釘をさすのかしらね・・・?

少なくともノーリー夫人は琴子の強い味方ね・・・・?

だから琴子を溺愛するのかしら・・・?
(まるで、原作と似たり寄ったりしてますね・・・?)

ノーリー夫人・・・・沙穂子さんを思い切ってけなしてあげるのはどうでしょうか・・・『私は貴女が気に入らないのよ・・・・』見たいな感じで・・・。
ゆう |  2010.10.29(Fri) 23:25 |  URL |  【コメント編集】

★わくわくするお話です♪

水玉さん、こんばんは~♪

「高崎山のボス猿から…あんパンを奪った!?」←爆笑~♪(上手すぎます)
タイトル『猿とあんパン』いいですね~!!4話は。。と言う事に賛成!!(笑)

”カリスマ”ノーリー夫人の最後の一言に安心して、続きを楽しみに待つ事にします!!~♪

LOVEコトリーナLOVE水玉さん♪
あお |  2010.10.30(Sat) 00:26 |  URL |  【コメント編集】

★ 援護射撃頼みます。

    こんばんは
ノーリー婦人・・・コトリーナの味方だから、チィツトは心がはれてきたかな?
ナキウ``ッチと、対面かな・・・知らず?とはいえ お灸を頼みます。
           水玉さん お話楽しいですヨォ・・・。

 でもでも、ノーリー婦人の本のお話しのネタにされたりして・・・
吉キチ |  2010.10.30(Sat) 00:30 |  URL |  【コメント編集】

★ナオキヴィッチ、覚悟を!

水玉さん、おはようございます

コトリーナに力強い味方が参上ですね。
コトリーナの話を聞き、ナオキヴィッチにお小言をと。
でもここで、ストップされましたね、コトリーナに
ナオキヴィッチは、コトリーナがいるのを知っていてあのような行動をしているとしたら、厳しいお仕置きをと。
なにゆえ、サヴォンヌに対して、優しい行動を。
本当にコトリーナの存在を知らないの??
ノーリ夫人、ナオキヴィッチとサヴォンヌへどのようなことを話されるのかしら、見物だわぁ。
お二人さん、お覚悟を。
ナオキヴィッチの反応みたいわぁ。
tiem |  2010.10.30(Sat) 05:25 |  URL |  【コメント編集】

★しつこい?

ノーリー婦人の登場で、ほのぼのした気持ちで癒されてます!
ところで、またまた、壁紙が変更でびっくりしています!

実は、平安時代のお話が好きで、今も「君がため」を読み返していたら、
突然、壁紙が変わって、またビックリしました。(このネタ、しつこすぎ?)

「忍ぶれど」もすっごく好きで、最後に直樹が琴子に
「忍ぶれど。。。」の和歌を送るところは、
もう、胸キュンで胸キュンで、たまりません!
これを読んでから、しばらくの間、
通勤の時、百人一首の本を読んでました!

完全に、水玉ワールドにハマってます!

花子 |  2010.10.30(Sat) 22:47 |  URL |  【コメント編集】

★ごめんなさい

ごめんなさい。間違えました。
直樹が送ったのはのは「恋すてふ、、、」でしたね。
昔の話題をふってしまって、ごめんなさい。

ところで、チラシの裏のブログって
水玉様のものでしょうか?
水玉様のものなら、是非、読ませていただければと思っているのですが
どこに行ったら、パスワードのヒントがもらえるか、
教えていただく事は可能ですか?
よろしくお願いします。
花子 |  2010.10.30(Sat) 23:59 |  URL |  【コメント編集】

★頼もしい限りです!

シップさん、何してるのって思ってたらもっと頼りになるノーリー夫人の登場。それにしても、ノーリー夫人、ただ者じゃないと思ってたけど、スーパーカリスマ主婦だったんですね。ノーリー夫人のおかげでコトリーナも少しは元気になってくれたかな?ノーリー夫人、早くコトリーナを先生に会わせてあげて!
祐樹'Sママ |  2010.10.31(Sun) 02:32 |  URL |  【コメント編集】

★コメントありがとうございます。

コメントありがとうございます。

ゆうさん
原作の紀子ママのイメージは絶対に壊すことはでいないので、だからこちらでも琴子ちゃんを溺愛しているんです^^
一応、ノーリー夫人もサヴォンヌに気は遣うでしょうね。だからそんな醜い争いにはならないかと思います♪

あおさん
4話だけでなく、この物語全部のタイトルを『猿とあんぱん』にしたいです~!!
というのも、英語が苦手なくせに英語のタイトルに下から、しょっちゅうタイトルを入れる時に間違えてるんです(笑)
私からも、LOVEあおさん♪
あおさんのコメントは本当に私の『すべり止め』(←私が滑りまくっているのをフォローしてくれるという意味)になってます♪

吉キチさん
ありがとうございます♪
お灸、すえずにいられないでしょうね。
だって愛するコトリーナちゃんがこんな目に遭っていたんですから、紀子ママも黙っていられないでしょう!!
どうお灸がすえられたかは次回以降で…。

tiemさん
どんな会話か…それは次回以降読んで下さると♪
まさかノーリー夫人までが追って来るとは思っていなかったでしょうからナオキヴィッチはびっくりでしょうね。

花子さん
いえいえ、壁紙をしょっちゅう変えている私としては反応して下さると本当に嬉しいですよ~♪
ありがとうございます!!
私もその話を書いている時は、百人一首の本を読んでました。あの歌も、その時に初めて知ったという…(恥ずかしいっ)
チラシなんですが、これは不定期にパスを配布しているんです。特に「配布してます~」と宣伝のようなこともしないので…本当に「偶然知りました!」という感じでメールを下さることが多いです。
今はちょっとまだ私に余裕がないので配布する予定はないのですが…。
ごめんなさい。

祐樹'Sママさん
そうなんです、カリスマ主婦だったんですよ!!そこ一番構ってほしい所でした!ありがとうございます!!
シップさんなんかと比べ物にならないくらいの味方ですよね!きっと力になってくれることでしょう^^

紀子ママさん
高崎山の猿ってグループがあるんですか!!
知らなかった~!!ABCってAKB48か(笑)
貴重な情報を教えて下さりありがとうございます!!そして、大爆笑でした!!

佑さん
でしょう?猿とあんぱん、我ながら気に入ってます。
…サブタイトルってことにしておこう(笑)
段々すごいストーリーになってきてしまってますが、お付き合い下さい♪

Foxさん
ありがとうございます!!
では二人で定規を手にお尻を叩きに(笑)
でも大丈夫、次回で違う人がお尻叩いてますから!!
Foxさんのお言葉に勇気をもらい頑張ります♪

若草智紀さん
よかった~お優しい言葉、ありがとうございます!!
そうですよね。私も書きながら「サヴォンヌって石鹸の名前みたい」といつも思ってるんです♪サフォンヌのほうが素敵♪

まあちさん
ありがとうございます!
いつも私の小ネタを拾って下さるまあちさんにフォーリンラブ♪
本当にノーリー夫人、言いたい放題。
コトリーナちゃんよりナオキヴィッチの方が付き合い長いだろうに…(笑)
でもそれだけのことをいつもしているんだから、仕方ないか(笑)

吉キチさん
ありがとうございます!!きっとライバルは少ないかと思うので、余裕で狙ってみて下さい(笑)
というか、そのメッセージに気がついて下さっただけでも嬉しいです♪
水玉 |  2010.10.31(Sun) 18:04 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://suisen61.blog77.fc2.com/tb.php/939-a339c8e2

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |