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2010.09.27 (Mon)

忍ぶれど 7


【More】


相変わらず琴子の元へ届く公達からの文は多い。
「ったく、どいつもこいつもお前の本性を知らないから…。」
「だから私の本性って何なんです?」
直樹の憎まれ口に口を尖らせつつも、こうして毎日毎日文を確認するために足を運んでくれることが嬉しくてたまらない琴子。

―― このまま、毎日毎日いらしてくださると嬉しいんだけどな。

自分から訪れずとも、こうして直樹から来てくれるのである。毎日直樹の顔を見ることができる幸せを琴子は噛みしめていた。

「ん?何だ、これは?」
直樹は見慣れぬ文箱に目を止めた。それは他の文箱とは違って地味なもの。だが品の良さをどこか感じさせるものであった。
「…蹴鞠の精へ?」
その文の送り主は琴子のことを「蹴鞠の精」と呼んでいた。
「いたずらか?」
眉を潜める直樹。
「あ、ちょっと見せて!」
琴子は直樹から文をひったくるように奪った。そして目を通し…、
「あの方だわ。」
と笑った。
「心当たりが?」
自分の知らない所で何を琴子がしでかしていたのかと不安になる直樹。
「え?ええと…いや、知らない。」
琴子は慌てて否定した。
「嘘つけ。」
だが直樹はすぐにそれを見破った。
琴子は仕方なく、別邸で出会った謎の公達のことを直樹に打ち明けた。

「お前…あれだけ姿を見せないようにと言っておいたのに!!」
直樹の雷が琴子へ落ちる。
「だ、だって…別邸だし…まさか誰かいるなんて!」
「油断するなってことだ!」
怒られる一方の琴子だったが、やがてなぜそこまで怒られなければいけないのかと不満が湧きあがってきた。
「大体、どうしてそんなに言われないといけないのですか?」
「女はむやみに姿を見せるのは、はしたないからだ!」
「でもあの方は何も仰いませんでした!」
「あの方ってどんな人間かも分からないくせに!」
「お兄様のお知り合いかと思ったんです。蹴鞠もとてもお上手でいらして。」
一向に口の減る様子のない琴子に、直樹は腹を立てた。そして…その琴子の頬を両手で引っ張った。
「痛い!暴力反対!」
「うるさい!」
こんなに気を配ってやっているのに、それなのにとうとう姿を見られてしまった。これが広まったら…もしかしたら寝ている琴子を誰かが襲うかもしれない。そう思うと気が気ではない。
「とにかく、こんな訳の分からない文は相手にするな!」
どうしてこんなに苛立つのか自分でも分からないまま、直樹は琴子の部屋を後にした。



「ったく、何が蹴鞠が上手だ。」
歩きながら、直樹の目には具合の悪いことにその蹴鞠の練習をしていた裕樹の姿が飛び込んで来た。
「兄上、どうしても上手にできません。」
直樹の姿を見つけ、鞠を手にした裕樹が飛んでくる。直樹は庭へ下り、鞠を受け取った。そして器用に蹴り始める。
「さすが兄上。」
裕樹が尊敬のまなざしで兄を見つめる。

―― 蹴鞠が上手な男だと?俺よりか?
器用に蹴り続ける直樹の耳に、見知らぬ男を誉める琴子の声が蘇る。
―― ああ、面白くない!
直樹は最後におもいきり鞠を蹴った。
「痛い!」
その鞠は裕樹の頭に見事に当たった…。



「そなたの妹をどの公達が射止めるかで宮中の話題は持ちきりだな。」
参内した直樹に、帝…鴨狩帝が面白そうに話しかけた。
「…話題になるほどの妹ではございませんが。」
帝の耳にまで琴子の噂が届いているということを知り、直樹は驚く。
「謙遜など、中納言には似合わないだろうに。」
「…。」
この帝は若いのにしっかりとしており、そして男ぶりも見事であった。帝と直樹が並んで歩いていると、女房たちがたちまち御簾の前に山をつくるほどである。
「ああ、そうだ。今度の蹴鞠の催しには中納言も出てくれるのであろう?」
「はあ…。」
今の直樹は蹴鞠などしたくもない心境である。だが帝の御前での催し、しかも帝直々の指名とあらば拒否はできない。

―― 蹴鞠…?

ふと直樹は思った。
蹴鞠の名手…自分以外に…。

「何だ?私の顔に何かついているのか?」
帝は面白そうに直樹を見た。
「いえ…失礼をいたしました。」
直樹は慌てて顔を伏せる。

―― 鴨狩帝は、蹴鞠の名手でもあった。



「ええ、その通りのお顔です、お兄様!」
帰宅してすぐに琴子の部屋に飛び込み、直樹は別邸で出会った公達の顔を琴子に訊ねた。それは鴨狩帝の顔をそのまま説明したのだったが…やはり琴子が出会ったのは鴨狩帝だったのである。
「やはりお友達なのですか?」
琴子は自分が言葉を交わしたのが帝とは気が付いていない。
「ぜひお邸にご招待になって、裕樹の君にお二人で蹴鞠を教えてさしあげて…。」
話し続ける琴子を無視し、直樹は黙って部屋を出て行く。
「お兄様?」
いつもとは全然違う直樹の様子を、琴子は心配になる。



そして、鴨狩帝の名での文が琴子の元へ届いたのは…それから数日経った日のことであった ――。









☆あとがき
短くてごめんなさい。
ブログデザインと文章も合ってなくてごめんなさい。
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17:10  |  忍ぶれど  |  TB(0)  |  CM(7)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

★きましたね!

はじめまして。いつも拝見させていただいてます。大ファンです。直樹VS帝が始まりそうですね!きゃーーー!どきどきしてきました。寒くなってきたのでお体には気をつけてください。私の周り、風邪引きだらけ・・・
きょろころ |  2010.09.27(Mon) 18:34 |  URL |  【コメント編集】

★いよいよ

キタ------!
これから面白くなりそう☆

ブログデザインは時期と合っててイイですよっ♪
kinchan |  2010.09.27(Mon) 18:50 |  URL |  【コメント編集】

★こんばんは

とうとう直樹に、わかってしまいましたね~?!
鴨狩帝と琴子があってしまったこと~。
これからどうなってしまうのでしょうか?
もしかして・・・突入するとか・・・・?!
面白くなりそうです~!?

ゆう |  2010.09.27(Mon) 19:23 |  URL |  【コメント編集】

★はじめまして!

いつも、楽しく読ませていただいています!
心の中で”やきもき”している直樹と”きょとん?”としている琴子を想像してニヤニヤ(*^-^*)しちゃいます!

ラブラブな2人を期待してま~す♪
庭子 |  2010.09.27(Mon) 19:43 |  URL |  【コメント編集】

★ 突入だぁ~

      こんにちは
 帝が位が上なのですねぇ。教えていただきありがとうございます。
直樹より地位が上では・・・ 直樹どうするんでしよ・・・。
想像つかないです。琴子の気持ちもあるし・・・ 
      めちやぁ楽しみな展開に突入 バンザァ~イ
吉キチ |  2010.09.28(Tue) 09:31 |  URL |  【コメント編集】

直樹と啓太の今までにない関係がとても楽しみです。
そして、天然琴子ちゃん♪
自分の気持ちにも、まだはっきり気づいていないのに
啓太の気持ちなんて・・・・ねぇ~
けど、文が届きましたね。
皆さんそれぞれどうなっていくのでしょうか??
ゆみのすけ |  2010.09.28(Tue) 09:33 |  URL |  【コメント編集】

★コメントありがとうございます

コメントありがとうございます

きょろころさん
初めまして、コメントありがとうございます!
そんなファンだなんて…恥ずかしいです。
本当に急に寒くなったりして、風邪を引かれる方が多いですね。私は今のところ大丈夫ですが、きょろころさんもどうぞお体に気をつけてお過ごし下さい。

kinchanさん
ありがとうございます。
この時期にしか使えないデザインなのでつい…。内容は思いきり「和」ですが!

ゆうさん
時代が時代だけに穏便に事は進む…はず。
どうもなかなか上手に書けずに…なのであまり期待しないで気楽に読んで下さい♪

庭子さん
はじめまして!
うわ、今日ははじめましてさんが多くて嬉しいです。
コメントありがとうございます。
本当に琴子姫はキョトンとしてマイペースですよね、そこが直樹はまたイライラしちゃうんでしょうけど…。

吉キチさん
帝は天皇ですから、一番偉い~だから入江くんも勝てない~♪
でもそこは入江くんだから、絶対このままでは終わらないはずです。
突入、ああ、そういう意味なんですね!何をいったい皆さんが考えられているのかドキドキしちゃいました。

ゆみのすけさん
そうなんですよ、だから啓太が啓太じゃなくて!
もう「アンタ、誰」みたいなことに…!!
天然琴子ちゃん、本心は一体どこにあるのかな???
今はお兄様しか目にないみたいですけれど。

佑さん
普通はそうなんですけどね、でも入江くんだから~
いや、そもそも、この話は…どういう方向へ持っていけばいいのかとまだ悩んでいる私がいます。


ぴくもんさん
理不尽な仕打ち…そうですね、それがないとうちの琴子ちゃんにならないですもんね!!
私のスイッチもぴくもんさんのコメントで入ってしまいました。
色々考えてみようっと!
で、『鴨狩亭』…キリリクでくる覚悟をして待ってます!
というか、既にキリリクする前提なのが…なんとも!
ハロウィンと平安、このミスマッチをそんな風に言って下さりありがとうございます!
でも帝の啓太、すっごく書くのが難しいです!!!

るんるんさん
行動早い帝…。
入江くんもびっくりでしょう。
でもそれだけ琴子ちゃんのことが好きになってしまった証拠ですよね~。

kobutaさん
え?どうして?
時々あるんですよね~うちのコメント欄。でもその次のコメントはちゃんと入っていて、安心しました!
確かに入江くんは遠慮なんてしそうにないですね…。

Foxさん
ありがとうございます。本当にいつもFoxさんはお優しい言葉を~。
うちはただでさえ、他のサイト様より短いのに…更に短いって一体…。
中盤に差し掛かって、うんうんと唸るようになってきました。でも頑張りますね!


水玉 |  2010.09.28(Tue) 16:56 |  URL |  【コメント編集】

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