日々草子 忍ぶれど 6
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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忍ぶれど 6




「すごい、これ全部私へ?」
「はい、さようでございます。」
並べられた文箱を見て、琴子は感嘆の声を上げた。どの文箱も見事な仕様である。

左大臣家に養女として迎えられた姫がいるとの噂は瞬く間に広まったらしい。裳着の式から数日経った辺りから、文が続々と届いていた。

「では、早速お返事を書かねば。」
文箱に手を伸ばした琴子。
「いいえ、姫様。」
その手を跳ね付けるかのように、女房達の声が飛んだ。
「最初は私たちが代筆しますから。」
「え?どうして?」
それは失礼じゃないだろうかと琴子は思う。

「お前の化けの皮が剥がれないようにだ。ばあか。」
「お兄様。」
直樹は座り、文箱を次々と開けて行く。そして、
「これは返事を。これは無視。」
と、次々と女房達に指示を出していく。その様子を呆然と見ていた琴子だが、それは自分を心配することからの行為だと思い、その顔に笑みが広がった。

「おい。」
的確に全ての文への返事を指示し終えた後、直樹は琴子を見た。突然自分に向き直られ、琴子はドキリとする。
「お前、そこから外へ出るなよ。」
「そこ?」
「部屋のこの辺からだ。」
そして直樹は女房に命じて目印に几帳を立てさせる。
「出るなって、そこはまだお部屋の中ですよ、お兄様?」
それではこの部屋から出ることができないじゃないかと、琴子は直樹に抗議した。
「そこから出ると、お前の姿が庭から見えるんだ。」
直樹はそんなことも分からないのかと琴子を冷たい目で見た。
「それが何か?」
そして琴子はやはり分かっていない。
「ばあか。」
直樹は琴子の額を扇で突いた。
「お前の本当の姿を知らない気の毒な男たちが、庭に忍び込む可能性もあるんだよ。」
「本当の姿って失礼な…私はどこも…。」
「何も知らなかった男たちが、噂の姫がこんなどうしようもない女だと知ったら気の毒だろ。被害が出てからじゃ遅いからな。」
要は琴子の姿を外から覗かれないためだということらしい。
「大体、深窓の姫君というのは部屋の奥に籠っているものなんだ。お前も裳着を終えたんだからそれくらい理解しろ。」
中には琴子の女房に手引きをさせる者も現れるかもしれない。直樹は琴子の女房達にそのような真似は決してしないよう、固く固く申し渡した。



そして、身辺が騒がしくなったのは琴子だけではなかった。

「是非妹君に一度!」
「…申し訳ないが、妹はまだ子供ですので。」
手を合わせる公達に、直樹はもう十回以上は繰り返したであろう、同じ台詞をまた繰り返した。
琴子の存在が公になって以来、宮中に参内している直樹の元に続々と若い公達が琴子に会わせろと頼み込んで来るのである。
「中納言殿の妹君ならさぞ美しいに違いない。」
「養女ですので、血は繋がっておりません。」
「でも…。」
「両親もまだ掌中の珠として慈しみたいと思っているようなので。」
直樹はそれ以上、相手に何も言わせないようにしてその場を立ち去る。

「…全く、うるさい。面倒なことだ。」
一人になり、思わず直樹の口から本音が零れた。
「これだから、妹は困る…。」
そう言いかけ、直樹は口をつぐんだ。
―― もし、琴子が妹じゃなかったら?
もしそうだとしたら…。
直樹はその先を考えようとして、慌てて止める。
「…何を考えているんだ、俺は。」
琴子は妹。血が繋がっていないとはいえ、左大臣家の姫君。そう何度も自分に言い聞かせた。



「別宅で花見を?」
「ええ。」
琴子へ届く文も少し落ち着き、昇進した直樹の日常も落ち着いた。
左大臣家は別邸を持っており、そこの庭には色とりどりの花が咲いており今が見頃なのだった。それを見に出かけようと紀子が提案したのである。
「素敵…。」
その話を聞くなり、琴子はうっとりとした表情を見せた。この所外出はおろか、庭へも出ていない。
直樹はあまり賛成したくなかったが、別邸だったら琴子の姿を見られる心配もないだろうと思い、出かけることにしたのだった。

「それでは、私たちは先へ出かけております。」
紀子と琴子が先に出ることとなった。
「お兄様、裕樹の君、お菓子も沢山用意してますからね。」
琴子が弾んだ声を出した。
「お前じゃあるまいし。」
花を愛でに行くのか、お菓子を食べるのかどちらが主な目的なのだと直樹と裕樹は呆れる。
そして二人は別邸へと向った。

「さ、殿方が来るまでのんびりしましょうね。」
別邸とはいえ、きちんと手入れが行き届いており居心地は最高である。紀子が琴子を連れ出したのは、花見がしたいということもあったが、最近琴子を監視するかのような直樹が気になっていたからだった。
―― あれじゃ、兄というより父親だわ。
紀子としては、年頃の可愛い可愛い琴子を公達に見せびらかしたい。だがそれをなぜか直樹は許さない。
それでは琴子は息苦しさのあまりに窒息してしまうのではないかと心配していたのである。

琴子もこの別邸なら端近に寄っても大丈夫だろうと思い、そして女房たちを遠ざけた。女房たちも安心して下がる。

「いい気持ちだこと…。」
琴子がいる場所は邸の奥の方である。静かでのんびりとしている。

「あら…?」
そんな静かな空間に何か音が聞こえた。
「何かしら…?」
誰もいないことをいいことに、琴子は音がする方へと静かに進む。

それは…鞠を蹴る音であった。
蹴っているのは、見たこともない公達だった。そしてその腕前は、
「とってもお上手。」
と琴子が感心するくらい上手だった。
公達は一人で、琴子が見ていることも気がつかずに蹴っている。

「あ…。」
暫く一人で上手に蹴っていたのだが、足を外してしまい鞠が地面へと落ちてしまった。
「まあ…。」
思わず琴子は声を上げてしまった。公達が顔を上げた。二人の目が合った。

「…ごめんなさい、盗み見などして。」
琴子は自分の非礼を詫びた。
「…いや。他人の邸にて勝手なことをしていたこちらが悪い。」
あまりに見事な花に惹かれ、つい中へ入ってしまい、眺めているうちに鞠が落ちていることに気がついたと、公達は説明した。
「それはきっと、弟のものでしょう。」
「弟?」
「ええ。蹴鞠が下手で。私が時々教えて上げているのですがなかなか上達しません。」
「そなたが蹴鞠を?」
公達は驚いた。女性が蹴鞠を教えるなどと聞いたことがない。
「まあ、これでも私はなかなかの腕前なのですよ。お見せしたいくらいだわ。」
琴子は公達を軽く睨んだ。
「それはぜひ。」
公達も笑って返す。

その時、琴子は自分を探す女房たちの声に気がついた。
「あの、よろしければ…。」
自分たち家族と一緒に花見をと、琴子は公達を誘おうとした。しかし、
「そろそろ戻る刻限だ。」
と、公達は残念そうに琴子に言い残し、鞠をその場に残し立ち去ってしまった。

「一体どなたなのかしら?」
蹴鞠がとても上手だったので、もしかしたら直樹の友人かもしれない。あとで訊ねようと思った琴子だが、慌ててその考えを打ち消す。自分が端近に出て、男性に姿を見られたなどと知ったら、直樹の雷が落ちることは間違いない。
「お兄様に嫌われたくないもの。」
自分を心配してくれる今の優しい直樹を何より好きな琴子はそう思い、このことは黙っておくことにしたのだった。



「お探ししました、主上。」
「ああ、悪い。」
琴子と別れた公達――鴨狩帝は従者に笑いかける。
お忍びで外出して、宮中へ戻る途中にこの邸の前を通りかかり庭が見事だったことを思い出し入ったのだった。
「花の精…いや、蹴鞠の精と出会った。」
「蹴鞠の精?」
何のことだろうかと従者は首を傾げる。その様子を面白がる帝。
近頃、左大臣家の養女となった姫君が公達の噂となっていることは知っていた。恐らくあれがその姫だろうと帝は思った。
―― また会いたいものだ。
そんなことを思いつつ、鴨狩帝は名残惜しそうに左大臣家の別邸を後にしたのだった。

そして入れ替わりに…直樹が別邸に到着したのだった。何も知らずに ――。







※主上:帝の呼び名

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コメント

何も知らない直樹さん。
また会いたいと思う鴨狩さん。
今後の展開が気になりますよ~
花の精、蹴鞠の精・・・・きっと、とても魅力的なんでしょうね。

ゆみのすけさん、感想嬉しいです♪

コメント、ありがとうございます♪

どうしようかなって迷ったんですけど、やっぱりこの人を出さないとと思い、今度は帝に(笑)。
お姫様はまだ何も気が付いていないみたいですけどね。
この『蹴鞠の精』さんは、今まで帝が出会ったことのないタイプの女人だったんでしょう。
がんばれ、直樹さん(笑)

 お口が上手すぎる・・・

          こんばんは
 直樹が琴子の側に居る時は鉄壁なガードですねぇ。鬼が金棒持った門番のようなぁ(爆笑)
 殿方の為にと思わせ 実は・・・ちゃうようなぁ・・・。素直じゃない・・・

でも帝と 出会ってしまった琴子・・・さぁ直樹どうすのかな?あたふた?
それもなぁ・・・?
       帝と昇進した直樹・・・位はどっちが上なのかなぁ?
 

ライバル登場?

やっと直樹も琴子が妹じゃなかったら、って思いはじめましたか。なのに、恋敵が登場しちゃいましたね。しかも帝!間違いなく帝は琴子に一目惚れしたようだし、直樹、どうするのかな?

おもしろくなってきた!

今度は鴨狩くんが「帝」ですかっ!!
こりゃ~おもしろいっ!!

鴨狩くんを最上階級の「帝」とは!!
さて直樹、どうするかな~
楽しみです♪

祐樹'Sママさん、ありがとうございます

コメントありがとうございます

一目ぼれフラグ、立ってますね。
ぼやぼやしていると、手の届かないところへ大事な妹がいっちゃうよ~と直樹に言いたいです。

吉キチさん、ありがとうございます

コメントありがとうございます。

本当にどんなキーパーよりも手ごわそうですね。
ボールをはじくかのように、お手紙もバンバンと…。

帝の方が上ですよね~。帝が『あの子が欲しい』と言い出したら従うしかないのかな…?

kinchanさん、ありがとうございます

コメントありがとうございます

そうです、今度は帝です。鴨狩くんが入江くんを見下ろす日が来ようとは…というか、書く日が来ようとは…。
入江くんが変な迷いをしていると、とんでもないことになりそうです。

kinchanさん、メールをありがとうございました。
ああ…そうですか。もうそんなに回ってましたか。
888888にキリ番設定しようかなと思っていましたが、色々取り込んでいたら過ぎていたみたいですね。

拍手コメントありがとうございます

コメントありがとうございます

cyobiさん
ありがとうございます。
そうですね、この気候の変化で体調を崩される方が多いみたいで…。
季節の変わり目はそれでなくとも調子を崩す人が多いというのに、今年はあり得ないくらいの暑さでしたもんね!
私もオリジナルキャラにしようかどうしようかと思ったんですけどね…ここはやっぱり鴨狩くんがいいかなあと…。
オリジナルキャラは…極悪キャラに限るかもしれません(個人的好みにより)
お待ちくださってありがとうございます。
私も皆様のお優しさに甘えさせていただきますね。

まあちさん
いや、全然しつこいとは思いませんが「フォーリンラブ」という字を拝見するたびに、「イエス、フォーリンラブ!」というお笑いコンビを思い出して…。男女の二人組なんですけどね、コンビ名はちょっと忘れた…。
「お兄様」私も書きながらひそかに気に入っています。可愛いですよね。

kettonさん
「落窪物語」…平安のよしもと…アハハ。確かにどなたか作家さんも「笑いどころがちゃんとある」というようなことをあとがきで書いておられましたしね。
それにしてもすごいなあ、「平安のよしもと」と書かれたあとがき…。
「平安のよしもと」も存在すれば、「平安のメロドラマ」も存在するんですよ。「夜の寝覚」という物語なんですけれど…。ところどころ現存していなくてストーリー不明らしいんですけれど、読んだら「すごい!私が昼ドラのプロデューサーだったらこれを現代ドラマ化にする!」と思った記憶があります。

ぴくもんさん
破り捨てるだけじゃあきたらず、破って踏みつぶして最後はたき火にでも放り込みたいだろうに…直樹。
やっぱり入江くんのライバルは鴨狩ですよね。と、思ったんですが。
鴨狩帝って音だけ聞くと、どこかの洋食の食堂みたいだなと思ったりして。
「クリームコロッケ定食、お待ち!」とか言いそうですよね。そこで琴子ちゃんがバイトしてて…で、客として入江くんが来て…三角関係…みたいな。
タイトルはズバリ「鴨狩亭」で。とか変な想像しちゃいました。

佑さん
そうなんです。
コトリーナちゃんの話でも王子にしてましたが、あの時はまだ腰が低い方だったし…今度はもう敬語など一切使わない啓太君です。

Foxさん
可愛いでしょう~。
あの入江くんがメロメロ(自覚はないけど)になっているくらいですから。
それはさぞ、宮中に閉じこもりきりの帝にも新鮮に映ったことでしょう。
いいですね。いい男二人に想われる役で、琴子姫。

とうとう、直樹の知らないところで、琴子が知らない男に、でくわしてしまいましたね・・・・?!
しかも相手が・・・啓太だったとは…・。
琴子が華の精の様にみえたのね・・・!!
啓太が琴子を気に入り、是非に自分の奥さんに…といいよってくるかもしれないですね・・・

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