日々草子 君と綴る文字 13
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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君と綴る文字 13




目を開けたら、見知らぬ天井が飛び込んで来た。

「よかった。気がついたのね。」
その声に、琴子は顔を動かす。上品で美しい女性が琴子を優しく見つめていた。
「あの…?」
裕樹と道の途中で会った所までは覚えているのだが…。

「はじめまして、直樹の母です。」
女性は直樹の母、紀子だった。
「え…!」
「よかったわ。とっても熱が高くて一時はどうなるかと心配していたのだけど。」
そう言いながら、紀子は琴子の布団を掛け直す。
「それじゃあ、ここは?」
「直樹の実家です。ええと…琴子ちゃんだったかしら?」
「はい…。」
紀子は琴子の名前を知っていた。恐らく直樹か裕樹から聞いたのだろう。
「お兄ちゃん…あ、私、直樹のことをそう呼んでいるの。お兄ちゃんがとってもお世話になったそうで、ありがとう。」
「いえ、とんでもないです。」
起き上がろうとした琴子を、紀子が止める。
「駄目よ、まだ寝ていないと。」
「でも…。」
こんな所を…直樹の大事なあの女性に見られたら、いや、知られたらまずい。そうなる前にこの家を出ないといけないと思う琴子。
「お兄ちゃんの診察によると、過労と栄養失調ですって。」
「栄養失調…。」
「だから、よくなるまでここにいないと、ね?」
紀子は優しく琴子を寝かしつけた。

「それにしても、私の旅行中にこんなことになっているなんて。」
紀子は今まで旅行に出ていたとのことだった。
「戻ったら、お兄ちゃんは戻っているわ、お医者様のお仕事はやめているわ…一体何事かと思ったけど、そうしたら、こんな可愛らしいお客様まで。」
「すみません…。」
謝る琴子に、紀子は手を振る。
「ううん、違うのよ。本当ににぎやかになって楽しいわ。」
紀子は朗らかに笑った。

丁度そこに女中が食事を運んでくる。
「食べられるかしら?」
「いえ、そんな…。」
そこまで図々しいことはできない。そう言おうとした琴子だったが、お腹は正直な音を出した。
「よかったわ。」
紀子はクスクスと笑う。琴子は真っ赤になってしまった。
琴子の世話は自分が全てするからと言うと、紀子は女中を下がらせた。


「それじゃ、後でお兄ちゃんが来ると思うから。」
紀子は空になった食器を自らお盆に乗せ、部屋を出て行った。
「どうしよう…。」
一人残された琴子は困り果てる。こうしている間に、もし沙穂子がこの家を訪ねたら…いや、既に知ってしまったのではないだろうか。このことが原因で縁談が破談になったら、直樹は病院に戻ってこないかもしれない。
琴子はまだ、沙穂子があの日訪れたのは、直樹と一緒に病院をやっていくための下見だと思い込んでいた ――。


そんなことを悩んでいると、ドアがノックされた。
「気分はどうだ?」
入って来たのは、直樹だった。
「あ、あの…。」
再び起きようとする琴子。それを直樹は止める。
「ちょっと脈取らせろ。」
ぶっきらぼうに言いながら、直樹は琴子の腕を取った。

「あの、旦那様…。」
「ちょっと黙ってろ。」
「はい…。」
琴子は口をつぐんだ。

「脈は正常だな。食事も食べたし、すぐに良くなるだろう。」
そう言った直樹は、椅子から立ち上がろうとしない。

「お前に俺、金を渡したよな。」
少しした後、直樹が口を開いた。
「はい。」
それを聞き、琴子は緊張した。あの金、『手切金』を琴子は渡された身だった。それなのに、こうしてのこのことやって来て、挙句の果てに倒れて厄介になっている自分に直樹は腹を立てているに違いない。
「申し訳ござません。今すぐ…。」
琴子は起き上がった。これ以上ここにいるわけにはいかない。
もう病院へ戻ってほしいとか言っている場合ではなかった。どうせ嫌われたのなら、これ以上嫌われないうちに直樹の目の前から去りたい。

「寝てろ!!」
直樹の怒声が響き渡った。
「は、はい!!」
条件反射で琴子はベッドに倒れ込む。直樹が溜息をつく。

「…金を渡したのに、どうして栄養失調になったんだって訊きたいんだ。」
直樹は片手を額につけた。その顔は辛そうだった。
「それは…その…。」
「何だよ。」
「…あのお金は手を一切つけておりません。」
琴子の答えに、直樹は身を乗り出した。
「つけて…ない…?」
「はい。」
「それじゃあ…。」
どうやって今まで食べていたのかと思う直樹。
「…今までいただいたお給金を少しずつ貯めていたので、それを崩していました。」
それでは栄養失調にならない方が不思議である。琴子は給金のほとんどを実家へ送っていた。残っているのはわずかなものだということは直樹が一番知っていた。
「どうしてあの金を使わなかったんだ!」
「だって…あれは旦那様にお返ししようと思ってたので。」
ベッドの中から、直樹の様子を窺いつつ、細い声で琴子が返す。
「返す?」
「はい…。」
琴子はベッドの中から直樹の顔をじっと見つめた。

「旦那様…。」
直樹が琴子を見る。
「…ご結婚されたら、病院へ戻られるんですよね?」
「え…。」
「先日、お嬢様がおいでになりました。それは旦那様と一緒にお暮らしになるあの家を見にいらしたんでしょう?」
「…。」
直樹は言葉を失う。
「…だから私、嬉しくて、嬉しくて。」
琴子の目に涙が浮かぶ。それは負け惜しみなどではない涙。

「…あの人はもう来ないよ。」
直樹が呟いた。
「え…?」
「…あの縁談は破談になった。」
「そんな!!」
真っ青になって起き上がろうとする琴子。直樹はそれをまた押しとどめる。

「あの…私が原因ですか?私があそこにいるから?」
興奮する琴子。
「旦那様、私のことをちゃんと、ただの女中だって…。」
「琴子のせいじゃない。」
直樹は琴子を落ち着かせようと、低い声色を出した。
「…お前のせいじゃない。」
「でも…。」
「…俺が悪いんだ。」
直樹ははっきりと言った。


沙穂子との縁談が破談になったとなると…直樹の戻る話はどうなったのか?それを琴子は率直に直樹へ訊ねた。
「彼女とは戻る、戻らないの話はしたことはない。」
直樹は琴子の誤解を解き始める。
「では…。」
最初から病院へ直樹が戻る話はなかったということになる。自分の思い込みを後悔する琴子。

「旦那様。」
琴子は決意した。話が最初からなかったのならないでもいい。自分が今、直樹に言いたいことは言おうと思う。そうしないと…直樹の前から姿を消したくともできない。

「…戻って下さい、あの病院に。」
琴子の真剣な眼差し。
「患者さんたちが旦那様のお帰りをお待ちです。旦那様は…入江先生はあそこに必要な方なんです。」
琴子は無意識にベッドから手を伸ばす。それはまるで直樹にすがるように。
「お金は全部お返しします…私がどこかに行かねばならないというのなら、どこにでも行きます。旦那様のお父様にもお願いしますから…戻って下さい。」

ぽろぽろと涙を零しながら話す琴子の手を、直樹は取る。
「…俺を必要としているのは、患者だけ?」
手を取られた琴子は、直樹の顔を黙って見つめる。
「…患者だけ?」
直樹は優し笑顔で琴子を見つめ返す。

「でも…私は…旦那様に嫌われてしまって…。」
琴子があの『手切金』のことを言っていることは、直樹にも分かった。
「あれは…ああでも言わないと、俺がお前への未練を断ち切れなかったからなんだ。あの時は悪かった…。」
直樹はその時のことを素直に謝った。そう、あの時はああ言わないと琴子も自分を諦めないだろうし、自分も琴子を諦めないと思っていた。

「旦那様…。」
直樹の言葉に,琴子は勇気を出した。
「…琴子ももう一度、お医者様の旦那様が見たいです。」
そして、顔を赤らめながら琴子は、はっきりと口にした。
「ずっと…旦那様のお傍にいたいです。」

その言葉に、直樹も決意する。

「うん…帰ろう。俺と琴子のあの家に、一緒に帰ろう…。」

直樹は握っていた琴子の手を、優しく自分の頬に引き寄せた。その手を大事そうに、愛おしそうに撫でた。
直樹に手を取られている琴子の目から零れていた涙は…喜びの涙に変わった。



安心した琴子は、やがて眠りに落ちた。その寝顔を見ながら、直樹はもう一度琴子の手を取る。

起こさぬよう、そっとその手に直樹は人差し指を立て…文字を綴り始めた。
それは平仮名で、ゆっくりとゆっくりと綴られた。

「あいしてる」と ――。

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コメント

素直に言えましたね

琴子が倒れた理由が栄養失調だったとは・・・・・。ママさんが出てこないと思っていたら、旅行に行っていたのね・・・。
直樹がお見合い結婚をしようして破談になったのは知らないのでは・・・・?
直樹は、自分の本当の気持ちを琴子に言えれて良かったです。v-411
琴子が直樹の縁談が破談になったと判って・・・、後は二人が病院に戻って前進あるのみですね・・・。(^v^)/

良かった…ホントに良かった…

今晩は~\(≧▽≦)丿
もう、涙なくしては見られません~(;_;)

琴子ちゃん、どんな時も、心の底から、入江先生の幸せ、みんなの幸せを考えているんですね…(;_;)

そんな琴子ちゃんを一時は手放そうとした入江先生も、辛かったでしょうね~(;_;)

でも、その辛さがあったから、二人をより一層引き寄せたのですね(*^_^*)

幸せな二人に戻れて、良かったです~(*^_^*)

やっと素直になれたね。

こんばんは、水玉さま。

琴子が倒れて、生きた心地がしなかったんじゃないかな入江君は。
やっと、やっと琴子に対して素直になれて、自分でもホッとしたんじゃないでしょうか?

自分には琴子以外の女性はいないと認識できて私としてはグットです。(笑)
後は、琴子の気持ちを確認して結婚してほしいな・・・。

入江君の嫁は、琴子しかいないんだからね。

よかったぁvv

直樹が素直になって、琴子ちゃんとまたあの病院に帰ることを決めて…ひと安心ですね(´▽`*)

あとは結婚して幸せになってくれればいいなぁv

 どんな想いを・・・

こんばんは 水玉さん 
直樹が やっと素直になれ 琴子も素直になれ お互いを思いやり一時は 気持ちのボタンがバラバラだったのに、 元に戻りホッとしました。 栄養失調だったんですね琴子。  いやはや勘違いでした(照笑)

 直樹は 患者の為の戻って欲しいと言う琴子に言葉に
俺忘れてるだろっ?と言いたかっただろうなぁ。

 でもパパ、ママ、裕樹も 二人を認め ホッです。

直樹が 寝てる琴子の お手手に『あいしてる』とそっと綴り一安心しました。
 次は琴子に、どんな想いを綴るかなぁ?

やっと…

良かった。やっと逢えた。琴子が栄養失調になるまで守った2人の家。もうすぐ帰れるんですね。入江家の人達はみんな直樹を幸せにしてくれるのは琴子だけだとわかってるし、2人を祝福してくれますよね。今まで無意識に琴子の名前を指で綴っていた直樹。やっと気持ちを込めて、愛する人に想いを綴る事が出来て本当に良かった。

水玉さん、更新ありがとうございます!!

紀子ママが琴子ちゃんの看病を・・・♪
”本当ににぎやかになって楽しいわ”紀子ママらしいこの言葉に私も楽しくなります♪

琴子ちゃん心労ではなくて、栄養失調だったのね!!
なんて澄み切った愛なの~~!!!

直樹さん、琴子ちゃんが倒れて正気に返った~~!!ホッ

琴子ちゃんの寝顔可愛いだろうな~~♪
やっと安心できて今頃ニコッと笑っているのでは!!~♪
想像しただけで笑顔になれる~~♪

次回益々楽しみです!!期待して良いですよね~~♪

仲直り、仲直り

ママさん登場!旅行中だったんですね?納得!

直樹!やっと素直になって帰るのですね!

患者さんも喜びますね?琴子もね!

コメントありがとうございます

コメントありがとうございます♪

ゆうさん
そうなんです。お金持ちのご婦人らしく、一カ月から二カ月と優雅な旅行に出ていたという設定です、入江ママ(笑)
帰ってきたら、家出した長男は戻ってるわ、その長男が見知らぬ女の子を連れて帰ってくるわで驚いたでしょうね♪

ナッキーさん
琴子ちゃんは入江先生の幸せだけを考えて生きている子だから…。
自分だけが幸せになるっていうことは頭にないんだろうな。
体を張った琴子ちゃんに、入江先生のかたくなな心もやっと溶解してきました^^

りきまるさん
生きた心地しなかったでしょうね!!!
物置で暮らしていると聞いた時から、もう様子が気になって気になって仕方がなかっただろうし…。
このまま琴子ちゃんに何かがあったら…悔やんでも悔やみきれないですし。
入江くんが考えるより先に行動に出て良かった…。

愛結美さん
よかったですよね。
もう病院に戻れば…あとはどうにでもなりますし(笑)
琴子ちゃんの笑顔もやっと見られたし♪

吉キチさん
栄養失調にもなるだろうなあと思って。
細くなった体を見て、きっと入江くん反省したんだと思います。
全てを捨てる気になったし。
そして、まさしく吉キチさんのいうとおりですね(笑)
「俺はいいのか」ってところなのかも…入江くんを必要としているのは琴子ちゃんだってことを確認したかったんだろうなと思います。

祐樹'Sママさん
もう誰に憚ることなく、堂々と琴子ちゃんの名前を呼べますもんね。よかったよかった。
入江家の皆さんも、これ以上直樹を愛してくれる人間はいないと分かったんだと思います^^

あおさん
きっとね、その寝顔を直樹さんは一晩中見つめていたことだと思います^^
もうベッドから離れないって感じで♪
顔をなでたりつついたりと好き放題やっていそうだ…(笑)
琴子ちゃん以上に失いたくないものがないことが分かったんだろうな。
これでもうお見合い大会も参加しないでしょう(笑)どんなご令嬢よりも琴子ちゃんが一番素敵だって知っているんだし…。

kobutaさん
そうです、旅行中だったんです(笑)
だって家にいたら、絶対体を張って、直樹の自棄見合いを阻止していただろうし(笑)

ちどりさん
こちらこそ、読んで下さりありがとうございます♪

佑さん
本当にやっとハッピーエンドへ向かうことができました♪
よかった、よかった。

いたさん
私も入江パパに宣伝したいくらいです。
こんなに可愛い琴子ちゃんなんですよ~って。
でもきっと話をした時点で理解してますよね、琴子ちゃんの人柄は♪
お医者になることも、琴子ちゃんがこれだけ体を張って頑張っていたんだから…許してくれるんじゃないかなあと思います。

sassyさん
あとはもう、大丈夫ですよ、きっと♪

みっちゃんさん
初めまして。コメントありがとうございます^^
イタキス、時代が変わっても面白いですよね♪
また遊びに来て下さいね。お待ちしています♪

まあちさん
やっと入江くんがかっこいいという言葉を聞くことができました…(笑)
ちょっとそれでほっとしました。
入江くん、冷たかったからなあ…(^^ゞ
琴子ちゃん、やっと苦労が報われそうで良かった~。

Foxさん
大丈夫です。もうしょっぱいものはないかと…
気候的にはまだまだ塩分が必要なようですけどね。
最後はお決まりなのですが、蛇足糖分をサービスできたらいいな…。




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あやみくママさん、ありがとうございます。

過去作品読み返して下さりありがとうございます。
この話の琴子ちゃんは本当にけなげでしたよね!物置で暮らすなんて一体どんな設定を私は琴子ちゃんに強いてたんだと申し訳なくなりました(笑)

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