日々草子 君と綴る文字 1
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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君と綴る文字 1



紹介所の人間が連れてきたのは、入江直樹の依頼した女中の姿とは程遠い、若い女性だった。
「俺は六十代の女中をと頼んだはずだが?」
職業は医師。住居と開業している小さな医院は同じ建物。そしてそこに直樹は一人で暮らしている。なので若い女性は困る。周囲に誤解を与えかねないし、女中本人とトラブルが起きる可能性も大きい。
「申し訳ございません。人不足で御希望に合った女中が見つからず…。」
平謝りする紹介所の人間。若い女性は俯いたままだった。
「急いで御希望に合った女中を探しますので、その間だけでも。」
何度も申し訳なさそうに頭を下げる紹介所に根負けし、渋々、その女性を直樹は女中として少しの間、次の女中が見つかるまで雇うことにした。

「名前は?」
紹介所の人間が帰った後、直樹は女性に訊ねる。
「あ…相原こと子と申します。」
深く頭を下げること子。緊張しているようだった。
「部屋に案内する。」
直樹は立ち上がった。急がないと間もなく、午後の診察時間となってしまう。看護婦も受付もいないたった一人の医院なのだが、丁寧な診察、夜中の急患にも嫌な顔一つ見せないということで、開業まもないというのに患者の数は増えて行く一方であった。

「ここが、お前の部屋だ。好きに使うといい。」
二階の端の部屋の襖を開け、直樹が説明する。
「畳…。」
こと子が呟いた。
「え?」
「畳のお部屋に…寝てもいいのですか?」
「何言ってるんだ?」
「だって…女中も丁稚もみな、板間に寝るものだって聞いていたから…。」
「板間が好きなら申し訳ないな。とりあえずこの部屋で我慢してほしい。」
その言葉にこと子はブンブンと首を振った。
「とんでもございません!このような素晴らしいお部屋に寝かせていただけるなど…。」
本当にありがとうございますと、こと子はまた深く頭を下げた。

そして台所や風呂等、一通りの場所を教える。
「俺は夜までここには戻らない。戻ったらすぐに夕飯になるようにしておいてくれ。」
「分かりました、旦那様!」
「旦那様…?」
直樹は怪訝な顔をした。
「あ、あの…女中は旦那様と、その家の御主人さまをお呼びすると…。」
何かおかしなことを口にしたのだろうかと、不安な顔を見せること子。
「…いけませんか?」
「別にいいけど…。」
呼ばれ慣れていない名称に戸惑いを覚えつつ、直樹は医院へと向かった ――。

この日の午後も、目の回るような忙しさだった。診察時間の終了時間を大幅に遅らせ、やっとの思いで住居へと戻った直樹。だが、その足が止まった。
「煙…?」
もくもくと黒い煙が廊下に流れてきている。その出所は…台所のようだった。
使い慣れていない台所で、何かあの新入りの女中がしでかしたのだろうか、ここは借家だというのに…直樹は台所へ急いだ。

「あ、お帰りなさいませ、旦那様。」
台所ではこと子が魚を焼いていた。そして黒い煙はその魚から発生していた。
「何をやっている?」
「何って…お魚を焼いています。ちょっと焦してしまったけど。」
ちょっとどころではなかった。その魚は炭と化していた…。


夕食の膳はどれも…ひどい有様だった。
「お前はもしかして…料理ができないのか?」
給仕のために控えていたこと子が、びくっと肩を震わせた。どうやら図星らしい。
「料理もできずに、よく女中奉公する気になったもんだな。」
つながったたくあんを箸でつまみながら、直樹が溜息をついた。
「だって…。」
こと子は言いにくそうに口を開いた。
「…同じ村から女中奉公に出ていた人に聞いたんですけど。何かその人は、旦那様…かなりのお年らしいんですけど、その旦那様の体に触ったりするだけでいいんだって。お料理とかしなくてもいいって。だから私でもそれなら出来るかなって…。」
「それは違う奉公だろうが。」
「それは妾奉公っていうんだ」と続けそうになった直樹は、口をつぐんだ。どうやら世間知らずの、とんでもない女中が来てしまったらしい。
早く、家事万能な経験豊かな女中が来てほしい、直樹は痛切に願いながら、しょっぱい味噌汁をすすった。


「お前の飯は?」
食器を洗い終えたこと子に、直樹は訊ねる。それらしきものが台所のどこにも見当たらない。
「あ、ええと…。」
またもや言いにくそうにすること子。
「何だよ?」
「あの…私の分はないんです。」
「んな馬鹿な。」
直樹は驚く。食材は十分にあったはずである。そして直樹の前に先程出された膳のものも、そんなに大量ではなかった。
「申し訳ありません。失敗ばかりしてしまって…材料をムダにしてしまったのです。」
こと子はまた頭を下げた。つまり…すべての食材を使い切ってしまったということらしい。
「ったく…。」
呆れる直樹。
「あ、大丈夫ですよ?朝はちゃんとお豆腐とか買ってきますから。旦那様の朝食はきちんとお作りしますので。」
「そういう問題じゃない。」
直樹はこと子の話を遮った。
「お前の今夜の飯はどうするんだって訊いてるんだ。」
「私は大丈夫です。一食抜いても平気ですから。」
そう笑うこと子。だが、直樹は笑うこともせず、
「ちょっと、どいてろ。」
と、こと子を押しのけて戸棚を探し始めた。
「ああ、あった、あった。」
目当ての物を見つけたらしい。そして直樹は器用な手つきで鍋に湯を沸かしはじめる。

数分後、こと子の目の前には温かな湯気が上る饂飩が入ったどんぶりが置かれた。卵や残っていた野菜が添えられている。
「あ、あの、これは…。」
驚くこと子。
「腹が減って眠れないだろ。それにちゃんと食べないと明日の働きにも支障が出る。」
直樹は早く食べろとこと子を促した。
こと子は恐る恐る、饂飩を口にした。
「…おいしい。」
それは、慣れぬ家に来て、神経をすり減らしていたこと子の体を優しく包み込むような味だった。
「お前の料理よりは、ずっとましだろうな。」
「…ひどい。」
こと子はじとっと直樹を見る。
「ありがとうございます、旦那様!」
饂飩をすすりながら、こと子は笑顔を直樹に見せた。
―― こいつ、笑うとちょっと可愛いな。
やっと緊張が解けたこと子の顔を見ながら、直樹はそんなことを思っていた。

その夜、自室で布団に入ったこと子。布団も想像していた煎餅布団ではなく、ふかふかの布団だった。そして、次から次へと今日の出来事が思い起こされる。
―― 最初、顔を見た時は、こんな怖そうな人が旦那様かと思ったけど…。
聞いていた奉公とは待遇が違うことに驚き、そして食事まで作ってくれた直樹の優しさに胸が熱くなる。
―― いい所に奉公できてよかった…。
だが、それも次の女中が来るまでの間である。次の女中が来たら、こと子はこの家から出なければいけない。
―― ずっと、ずっといられたらいいのになあ…。
そう思っているうちに、睡魔がこと子を襲い始め…いつの間にか、こと子は眠りの世界へと誘われていった…。


翌日の朝食から、直樹はこと子に料理を教え始める。仕事で疲れた体は料理でほぐしたい。そのためには…何とかこの女中を仕込まなければいけない。たとえ次の女中が来るまでの、つなぎの女中とはいえども。
「旦那様、こんなにお料理がお上手なのに、なぜ女中が?」
「女中が料理を全てやってくれれば、俺は診察に集中できると思ってたんだけどね。」
どうやらこのこと子という女は、よく言えば人懐っこい、悪く言えば…図々しい女らしい。一晩ですっかり直樹に懐いてしまったようだった。

そして夕食。
今日もほとんど自分で作ったものを、食べることになった直樹。
「お前、夕食は?ちゃんとお前の分も用意しておいただろ。」
食べずに直樹の傍に控えていること子に、直樹が訊ねる。
「はい。あとで台所でいただきます。」
空になったお椀を受け取りながら、こと子が答えた。
「何でそんなことを?」
「何でって…女中は台所で最後にいただくものでしょう?」
それくらいはこと子も知っている。訊く方が不思議だという顔をした。
「あんなところで食べると、風邪引くぞ?」
台所は板間なので冷える。
「ですが…。」
「いいから、ここで一緒に食えばいいだろ。その方が後片づけだって楽だし。何より、お前が風邪を引いて、俺が診察しても金はもらえそうにないしな。」
直樹はこと子から味噌汁のお代わりを受け取りながら、言った。

これがきっかけとなり、この家の主である直樹と、女中であること子は一緒に朝昼晩の食事を取るようになったのである。

「旦那様は変わっておいでですね。」
ご飯を食べながら、こと子が笑った。
「そうか?」
「はい。女中と一緒に召しあがるなど、変わっています。」
「…別に。合理的に事を進めたいだけだ。」
直樹は素っ気ない態度を取っているが、こと子には直樹の優しさが伝わっていた。
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コメント

新作だー!!

新作の更新ありがとうございます。

入江先生のもとに奉公に来た、こと子。
奉公に来たというよりも、女中修行に来た様子で、失敗しちゃったみたいですね。

私も、入江君の作ったうどんが食べたいよ~。

これからの展開に興味津津な私です。(笑)

水玉さん新作ありがとうございます♪

遠慮しながらも既にオモイッキリ琴子ちゃんのペース(図々しい)!!・・・?・・・(笑)
忙しいのに琴子ちゃんのお世話をする入江くん。。。
どこか気のいい入江くん・・・本人曰く合理的。。。(笑)

2話に~~進みます♪


コメントありがとうございます

コメントありがとうございます♪

りきまるさん
書き始める前は、肝心なところがなかなかまとまらず、ドキドキしていたのですが…今のところ順調に進んでいて、安堵しております。
本当に女中奉公じゃなく、女中修業ですよね(笑)
そして、うどんネタがまたかぶってしまったことに気が付きました(笑)

あおさん
どこかで、琴子ちゃんらしさを出したいなと思っているのですが…「旦那様」と呼ばせると、どうしても控えめになってしまう…。
それとは逆に入江くんが本当に優しくなってしまって…。
こんな話ですがお付き合い頂けると嬉しいです。

Foxさん
そうなんですよ!!入江先生がどうやって琴子ちゃんに魅かれて行くのが…そこが最後まで悩んでいたのですが、「もう、どうにでもなれ!」という思いで見切り発車してしまいました。
どうか少しでも楽しんでいただけたらと思います。

佑さん
新シリーズ…その言葉に照れている私です(照)
そんな大層なものではないのですが、頑張ります♪

ピュアv琴子ちゃんv

新作ですね~(*^□^*)v
嬉しいです、ありがとうございますv


琴子ちゃんって、純粋で心がまっさらだし、根が真面目だから教えられた事をきちんと守るんですよねv
それが不器用で画期的にドジに繋がっちゃったとしても、癒されるハズです、入江くんv

No title

おぉっ新作だぁ!!!
どんな話になっていくんだろう???
とっても楽しみです♪
次いって見よう!!!

魚炭化  こと子らしいなぁ

 おはようございます。 水玉さん  
 
家事はまるっきり苦手でも、真心はこめて接していたり
女中心づかい?もできるし・・・
 直樹も なんだかんだ言っても ご飯作ってあげたり
やさしいじゃん 直樹・・・ 
もう こと子に(ムフゥ)ですか?
気が早すぎましたぁ(笑) 
 

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