日々草子
『イタズラなkiss』の二次小説をメインに書いております。原作者様や関係各位とは一切関係ありません。 二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われた方ははご遠慮なく、他の素敵なサイト様へ 移動なさって下さいますようお願い申し上げます。
2010.08.14 (Sat)
新妻の接待
【More】
琴子は掃除機を一生懸命かけていた。明日は直樹の同僚、西垣が再びこの家を訪れることになっている。
「今度こそ、失敗がないようにおもてなしをしないと。」
きれいに掃除をした後、愛読書「良き妻になるために」を熱心に再読する琴子。
その時、ファックスが届いた。
「お仕事の書類かしら?」
琴子は用紙を手に取った――。
「ただいま。」
夜、帰宅した直樹。
「お帰りなさい!」
出迎える琴子を見て、直樹は目をギョッとさせる。
「な、何だ…その格好は!」
「これ?明日のおもてなしの練習。」
そういう琴子は、なぜか水着姿であった。
「明日、これで西垣さんをおもてなしするから、粗相がないよう練習しておこうかと。」
水着を引っ張りながら、話す琴子。
「なぜ、そんな格好で!」
「だって…これが日本の夏の風物詩なんでしょう?」
「はあ?」
そんな風物詩、直樹は今まで聞いたことがない。というか、客を水着で出迎えるなどと聞いたことはない。
「その情報はどこから?」
「西垣さんが教えてくれたのよ?」
そして琴子は紙を見せる。それは午前中にファックスで届いたものだった。
「何だ、これは…。」
そこには白黒だが、水着を来た女性が玄関先に座り、手をついて出迎えている写真が印刷されていた。そしてこれは、知る人ぞ知る、日本の夏の作法だとか何だか、出鱈目がずらずらと並べられていた。しかも直樹があきれたのは、この用紙が本当に本か雑誌の記事をコピーしたかのように作られていたものだということ。
「ここ数日、珍しく机に向かっていると思っていたら…こんなくだらないもん、作ってたのか、あいつは!!」
直樹は激怒した。
ここ数日、西垣は直樹に取材の代わりを頼んで、机から離れなかった。さぞ、大事な仕事があるのだろうと直樹も快く西垣の代わりを務めたのだが…。時折、社会部を飛び出して編集センターにまで熱心に足を運んでいたのも、このくだらないものを作るためにデザインを研究していたのかと思うと…。
「だめかあ…やっぱり西垣さんはピンクよりグリーンの方が好きなのかな?」
呆れ返っている直樹を見て、琴子は来ているピンクの可愛い水着をしょんぼりと見る。
「…なぜ、あいつの好みに合わせようとする。」
「あ、パット、もう一枚入れた方が、西垣さんは好きかしら?今、3枚入れているんだけど…。」
「だから、あのエロ男の好みにどうして合わせようとする!!」
直樹の言葉など、耳に入っていない琴子はパットの追加を始めた。
「…寒い!!」
マンションの部屋に足を踏み入れた西垣は、その寒さに思わず声を上げた。部屋の中はまるで冷蔵庫のように冷えている。
「いらっしゃいませ。」
出迎えた琴子は、真夏だというのにハイネックの長袖。
「あ、あれ…?」
あれだけのことをしたのだから、絶対水着姿で出迎えてくれるものだと思っていた西垣は当てが外れ落胆した。
「あの、エアコンの設定温度、何度?」
「16度です。」
「おい、おい!!それはいくらなんでも…。」
「すみませんね、俺が暑がりなもんで。琴子にもこんな格好させる羽目になってしまって悪いとは思っているんですけど。」
直樹がしれっと言った。西垣は聞こえないよう舌打ちする。
「お待たせしました!」
と、琴子が運んできたのは…湯気の立ったカレーうどんである。
「お部屋が冷えているので…温かい物をと。」
「…へえ。」
嫌な予感が西垣の胸によぎった。
「琴子、カレーうどんは、思い切り音を立ててズルズルとすするのがいいんだ。」
直樹が琴子に伝授する。
「はい。」
素直に琴子は返事をする。
「服に飛び散ることなんて、気にするな。」
「だから、入江くん、今日は汚れてもいい服を着るようにって言ったのね!」
さすがだわと言いながら、琴子は箸を手に取った。
「さ、どうぞ、西垣さん。俺と琴子の精一杯のもてなしです。」
直樹はニッコリと笑った。
「西垣さん、そんな隅っこに行かなくても…。」
「いや、いいんだ。僕、隅っこが好きだから。」
西垣は麺を丁寧に、汁をシャツに飛ばさぬように食べる。
「こっちに来て、みんなで楽しくやりましょうよ。」
直樹がニヤリと笑いながら誘うのだが、
「いや、いい。うん、僕のことは気にしないで…。」
と西垣は静かにうどんを食べるのだった。
「ところで、西垣さんと入江くんはずっと同じ部署なんですか?」
琴子が質問した。
「違う。」
器用に、うどんの汁を飛ばすことなく食べ終えた直樹が答える。
「僕たち、最初は政治部にいたんだよ。」
あれだけ慎重に食べたのに、お気に入りのシャツに汁を飛ばしてしまった西垣は、空になったどんぶりを手に二人の傍に戻って来た。
「政治部!」
「そう、結構優秀なんだよ、僕たちは。」
そう言いながら、琴子の肩を抱こうとする西垣。直樹はすかさずその手をつねった。
「それじゃ、なぜ社会部に?」
「この人は、政治家の愛人に手を出したから。」
直樹が答える。
「え…。」
半ば軽蔑の眼差しを西垣へ送る琴子。
「違う、違う!!」
西垣は直樹を睨みながら、手を振って否定した。
「だって、政治部って親父ばっかりなんだよ。取材担当の政治家も似たようなもんだし。女の子と知り合う機会が少なくてつまらなくてさ。」
「…大して理由は変わらない気がしますけど。」
琴子がポツリと呟く。
「入江くんは?」
「こいつはね、政治家に気を遣うなんて嫌だとか言い出して。しまいにはさ、政治家をやりこめたんだよ!それで二人して社会部へ来たってわけ。」
西垣の説明に、
「凄い、入江くん!さすが!」
と、目をを輝かせる琴子。
「社会部に入江くんがいたから、こうして私たち知り合えて、結婚できたのよね…私、幸せ。」
琴子は直樹の腕に抱きつき、目をうっとりと閉じる。
その琴子の頭を撫でながら、
「西垣さん、俺達のおもてなし、お気に召しました?」
と、またもやニヤリとして直樹は西垣に訊ねる。その言葉はもはや琴子の耳に届いていない。
「…来るんじゃなかった。」
すっかり当てつけられた西垣は、溜息を大きくついたのだった。
「よかった、今回はちゃんとおもてなしができて。」
ベッドの中で琴子は安堵する。が、
「でも…何で西垣さん、嘘ついたのかしら?」
と、首を傾げる。
「嘘?」
「うん。水着のことって全部嘘だったんでしょ?どうしてそんな嘘ついたのかなあ…私のこと、実は嫌いなのかな…?」
悲しそうに琴子は俯く。それは反対で、西垣は人を疑うことをしらない琴子が可愛くてたまらないので、そうやってからかっているのだが…絶対そんなことは口が裂けても直樹からは言えない。
「嫌いだったら、家に来ないだろ。」
「そっか。」
直樹の言葉に、琴子は元気を取り戻した。
「そうだ、これ…社の図書室で見つけたんだけど。お前が見たがっていたやつ。」
直樹はベッドの傍に置いておいた本を、琴子の前に広げた。それを見るなり、琴子の顔が…見る見る真っ赤に染まっていく。
「な、な、何?これ?」
「何って…お前、前に言っていただろ?“春画ってなあに?”って。」
「こ、これがそうなの…?」
ページを恐る恐る捲る琴子。その度に「ワー!」「キャーッ!」と悲鳴を上げる。それを楽しそうに見ている直樹。
「…せっかくだから、これを参考に、俺にも“おもてなし”してくれよ。」
「え?え?」
直樹は笑顔を浮かべて、琴子の返事を待つ。
「…わかった。」
真面目な顔をして、琴子は頷いた。そして、
「ええと、右手は…こうか。」
と、その本を見ながら、直樹の右手を取った。
「お、おい…。」
「左足が…こうかな?」
直樹の足を持ち上げようとする琴子。
「冗談だ、冗談!」
直樹はやめさせる。
「また冗談…。みんなそうやって冗談ばかり言う…。」
一生懸命だった琴子は、口を尖らせた。
これでは、西垣がからかいたくなるのも無理はない。とにかく冗談が通用しない琴子は飽きないし可愛い。
「でも、本当に…何かご希望があれば。」
いつも一生懸命働いてくれて、そして琴子のためにトンブリ王国でも頑張ってくれた直樹に、琴子は何かしたいのだと話す。
「それじゃあ…。」
直樹は琴子の耳に何事かを囁いた。それを聞いた琴子は、また真っ赤になった。
「…それ、言うの?」
「うん。」
少しモジモジとした後、琴子は、小さな小さな声で言った。
「…朝まで、私のこと…可愛がってね…。」
そして耐えられず、直樹の胸に顔を埋めてしまった。
「…了解。」
それだけで、直樹には十分である。明日は休みなので、時間もたっぷりとある。直樹は琴子をベッドに倒す。
「…今夜はパット、入ってるの?」
自分を見上げる琴子に、優しく訊ねる直樹。
「…何も入ってないよ?」
まだ顔を赤くして、琴子は答えた。
「うん、それが一番いいな。琴子は、自然の…ありのままの琴子が一番だから。」
本心から言うと、直樹は“ありのままの琴子”を堪能する体勢に入ったのだった ――。
☆あとがき
ペンペンもトンブリも…何だかみんなベッド落ちという、ワンパターンになってしまうのは、なぜ?←技量がないから。
前に書いた春画ネタと、西垣&直樹の設定?が書けてよかったです(笑)
りきまるさん
可愛いでしょうね、琴子ちゃんの水着接待!!
私も受けてみたいけど、入江くんに殺されそう…。
確かに、クリーニング屋顔負けのシミ抜き達人になっていそうですよね、西垣さん(笑)
そのうち、新聞で「シミ抜き王子の裏技」とかいう連載とか始めそうな気がします(笑)
佑さん
小さい子…確かにそうなのかも!
トンブリ琴子ちゃん、そのうぶさと世間知らずさに入江くんもメロメロに違いないです♪
kyooさん
よかったです!!でも無理は禁物ですよ?
ゆっくり養生して下さいね。
あんな可愛い顔で、可愛い声で「可愛がって」なんて言われたら…入江くんもたまらないでしょうね。
どんだけ可愛がればいいのか、入江くん(笑)
書けば書くほど、琴子ちゃんが可愛くて堪りません~。
Foxさん
琴子ちゃんが、前日に練習をしておいてよかった(笑)
いきなり、ぶっつけ本番だったら…大騒ぎになっていたでしょうね。
西垣さんもカレーのシミだけでは済まなかったはず…。
ベッドオチ…どうしてもこうなるんですよね(笑)他に何かオチないかなあと、考えるんですけど…入江くんが琴子ちゃんを愛しているというオチにすると、こうなってしまうという(涙)
いたさん
お忙しい中、ありがとうございます♪
いや~西垣さんの魔の手から救えてよかったよかった(笑)
琴子ちゃん、入江くんのために日々努力してますもんね。この努力はきっと入江くん、他の人のためにしてほしくないんだろうな。
くーこさん
春画に忠実に行動しようとする琴子ちゃん…そんなところがまた可愛いんだろうなと思います。
西垣さんもそうなのですが、入江くんもあの手この手で琴子ちゃんを困らせたりして楽しんでいるし…♪
ベッドオチ、励まして下さってありがとうございました^^
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西垣に日本のおもてなしを教えてもらい、それを実行しようと頑張って準備をしたものの、入江君に突っ込まれ(当たり前だけど(笑))方向転換へ・・・
私も、琴子の水着姿の接客を受けてみたいけど、入江君に黙殺されそうなので我慢します(笑)
しかし、西垣が汚したカレーうどんのシミ・・・
今までに、入江君にカレーうどんのシミをつけられた経験をもとに、シミ抜きはベテランになったんじゃないでしょうか?(笑)