日々草子 公爵夫人の家出 4

公爵夫人の家出 4




翌朝、トンブリ号のいななく声でナオキヴィッチは目を覚ました。そしてここが馬小屋であることを思い出す。
頭や体についた藁を払っていると、何か置かれていることに気がついた。それはパンとチーズとミルクが載ったお盆だった。
どうやらコトリーナ朝食を置いて行ってくれたらしい。思わず笑みがこぼれ、そして食べる。

空になったお盆を手に、ナオキヴィッチは家へ向かった。中ではコトリーナが一人、一生懸命床掃除をしていた。
「あ…。」
視線に気がついたコトリーナが掃除の手を止め、ナオキヴィッチを見た。
「これ、ありがとう。」
お盆をテーブルの上に置くナオキヴィッチ。
「別に…パンが固くなってきて、チーズもカビが生えそうになってたから、勿体ないから…トンブリ号の餌に置いておいただけよ。」
なぜかムキになるコトリーナ。その様子におかしさを覚えるナオキヴィッチ。
「お義父さんは?畑?」
「そうよ。“働かざるもの、食うべからず”だもん。」
「なるほど。」
「だから家には働かない人間を置いておく余裕はないの。」
「つまり、さっさと帰れと。」
返事の代わりにコトリーナは床掃除を再開する。

「よし、ピカピカになった。」
磨き上げられた床を満足して見回すコトリーナ。
「…とにかく、話をしないか。」
それを見てナオキヴィッチは声をかけた。
「話って?」
「だから…。」
言いかけたナオキヴィッチは、何か視線を感じる。
「!?」
見ると、窓に大勢の人々が群がっていた。これもいつか見た覚えのある光景である。だが、あの時とは明らかに違うのは…人々の口から出る言葉である。
「おんや、まあ!こげな綺麗なお顔で男好き!」
と驚く老婆がいれば、
「これが本物のゲイだべか。はあ…冥土への土産話になるっぺさ。」
と、なぜか手を合わせナオキヴィッチを拝み始める老爺。
「そういえば、ホモとゲイはどこが違うっぺ?」
「いやあ、どげんしよ。おらも狙われるっぺか。」
…と、ナオキヴィッチが男色であることを信じ込んでいるエフ村の村民たち。

「コトリーナ、ちょっといいずら?」
そこへやってきたのは…発行部数150部のエフ村日報の記者だった。
「“悲劇の公爵夫人、その呪われた生活を語る”ちゅうタイトルでトップ記事にしたいっぺ。インタビューさせてくれんかの?」
呆れ果てるナオキヴィッチ。
「報酬はヨサク爺さんの大根5本でどうだっぺ?」
「…たったの5本かあ。白菜とキャベツも付けてくれたら、考えてもいいっぺ。」
コトリーナは条件を出す。
「協力するのかよ!」
思わず突っ込むナオキヴィッチ。
「勘弁してくれっぺ。エフ村一の大根作り名人のヨサク爺さんから、5本というお許しをもらうのも大変だったずらっぺ。」
ギャーギャー騒ぐ記者とコトリーナ。そして窓からは好き勝手なことを言う村民たち。ナオキヴィッチは耐え切れなくなり、窓を閉めて回る。


するとそこに、
「コトリーナ!」
という声が聞こえる。
「ジーン、サティ!」
「みんな集まっているずらよ!」
「今行くっぺ!!」
すっかり故郷の言葉に戻ったコトリーナが、二人に手を上げる。
「どこへ行くんだ?」
訊ねるナオキヴィッチにコトリーナは、
「今はやりの婚活よ。」
と驚く答えを寄越した。
「新しい人生を始める準備をしなくっちゃ!!それじゃあね。」
そしてコトリーナはナオキヴィッチを家に残し、出かけてしまった。


無論、コトリーナとて本気で新しい人生を考えているわけではない。今だって夫のことは愛している。
しかし、迎えにきたナオキヴィッチの態度が不満なのである。
―― どうして、素直に“俺が悪かった”って言えないのかしら?
コトリーナが描くのは、プロポーズの時と同様、膝をついて、コトリーナの手を取り、「戻ってきてほしい。お前が必要なんだ」というナオキヴィッチの姿である。だが、当の本人はそんなことをするどころか、自分に非があるとは思っていないらしい。
―― 少し懲らしめてやらないとね!
そう思うコトリーナだった。


「…公爵本人からのインタビューもいるのか?」
ナオキヴィッチは残された記者を睨みつけた。その眼光はまるで目を合わせたものを石にしてしまうかのような鋭さ。
「い、いや、結構でごぜーますだ!!」
記者は逃げてしまった。


ナオキヴィッチは、シゲオから押し付けられた離婚届を取り出す。
「…本当にこれ出した方がいいのか?」
疲れ果ててしまっていた。頭痛を感じ始めた時、ドアが開く音がした。
「…こ、コトリーナは?」
入って来たのは、シゲオだった。が、その手は木の枝を杖代わりにしている。
「どうしたんですか!」
慌てて駆け寄るナオキヴィッチ。シゲオはその手を振り払う気力もないらしい。
「ぎ、ぎっくり腰…。」


「お父さん!」
村民の知らせを受け、婚活パーティーを抜け出してきたコトリーナが飛び込んで来た。そしてシゲオの様子を見て「湿布、湿布」と探す。
「お、おい…。」
ベッドの中から、弱々しい声をシゲオが出す。
「それ…何があっても…こん男には持たせるな…。」
「湿布を?」
キョトンとするコトリーナ。シゲオはギロリとナオキヴィッチを見ながら、
「…こん男に、そげなもん持たせおったら…どこに貼られるかわからんずら。」
と声を絞り出す。まだ誤解は解けていないらしい。


「明日は…収穫が…あるから、何としても…。」
「無理だっぺ、その体じゃ!」
止めるコトリーナ。
「いいや、大丈夫ずら!」
そう叫び起き上がろうとしたシゲオだが、激痛が走り、再びベッドに沈んでしまう。
「ほら!」
「だ、だども…。」
「私がやるっぺ!!」
「いや、おめえ一人じゃ無理ずら。キーンも自分とこの畑でいっぱいだっぺ。」
「…俺がやります。」
困り果てていた二人は、その声に顔を向けた。
「俺がやりますよ。畑仕事。」
「おめえさんが!」
「無理っぺ、先生!!先生、お箸より重たいもん、持ったことないっぺ!」
コトリーナの言葉に、
「いつ、誰がそんなこと言った。」
と言い返すナオキヴィッチ。
そういうわけで、シゲオの代理としてナオキヴィッチは農作業に携わることになったのだった。






☆あとがき
前回のあとがきへのお優しいお言葉、ありがとうございます!
おかげで、堂々とくだらない話を書く自信がつきました(笑)
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こうなったら

公爵、Youもエフ村弁喋っちゃおうよ!!

この、はちゃめちゃ(失礼!)な展開が楽しくて仕方ないです~^^

いま、アリエルの脳内には、麦わら帽子に農作業衣の公爵閣下が浮かんでおります!!

ナオキヴィッチに出来るの?

こんばんは、水玉さま。

あのボンボンで肉体労働とはかなりかけ離れているナオキヴィッチに、
農作業ができるの?
きっと誰もが出来ないと判断すると思うんだけど、
シゲオパパのにのまえにならなきゃいいんですけど・・・(笑)


PS
しゅきです、水玉ちゃましゅきです。(笑)
私の愛の告白を受けて頂いて感謝です。
これかもよろしくです。(笑)

ちなみに、チャン・ドンゴンの昔のコマーシャルを真似てみました。(笑)

コトリーナとナオキビッチの 二人とも素直じゃないなー
お互いに必要なのはわかってるのに!
畑仕事 先生にできるのかな? 二人が気になる!

頑張れ!ナオキウ"ィッチ様

今晩は~(*^_^*)

エフ村を含めて、広大な領地を所有する公爵様が、畑仕事を!!!
それもこれも、コトリ-ナとパパを想うが故に(*^_^*)


コトリ-ナが家出した原因の、ベッドでの、「私,もう要らない?」「う…ん」の会話を早く思い出して~(;_;)

唯一の味方の、トンブリ号、ナオキウ"ィッチ様に教えて上げて欲しいなぁ~(^_^;)

コトリーナv

あんなに傷ついて涙したのに、朝御飯を用意したり…優しいですね、コトリーナv
あたしがコトリーナをお嫁さんにしたいくらい(´▽`*)v


こんな優しい、愛にあふれているコトリーナを取り戻すために誠意を見せて農作業がんばって、ナオキヴィッチせんせーv

じれったい

好きなのに、離れられないのに、素直じゃないから仲直りが出来ない二人、毎度ながら呆れます。

畑仕事する、ナオキヴィッチ見たいかもー!

二人でしたら、仲直りできるかもね!

ラブ☆エフ村!!

エフ村の村民の盛り上がりったら!!(笑)

冥土の土産話と、拝み始めるって~~(笑)
記者も今一番旬な話題を記事にしなければねー。
それにしても"タイトル”。。。(笑)

婚活...意外と強気なコトリーナ(笑)

どんな農作業になるのかな?楽しみです♪

コトリーナの笑顔を取り戻せるのかーーー頑張ってねナオキヴィッチ!!

コトリーナも意地はって、頑張ってますね~。今回は先生が悪いんだから、この位のお仕置きは当然だと思います。でも、村民のテンションの高さに先生、いつまで我慢できるかな?

No title

直樹さんの畑仕事楽しみです♪
あんな綺麗な顔して・・・ぷーーーっ♪
F村に来ると必ず何かさせられちゃう直樹さん、
離婚届だけは早く破棄してよね。

 さっさっと 謝っちゃぇ

        こんにちは 水玉さん
 コトリーナも 朝ご飯用意しつつも ナオキウ``ッチに非があるから シゲオからの離婚届の件 知らないから 婚活って言えるんだよね。 逆離婚されちゃいそう(笑)
 
 畑仕事で誤解は解けるかな? 畑仕事知ってるんかな?公爵だし(エヘェ笑) でもコトリーナには 謝らないと・・・
 
 どうするんかなぁ?ナオキウ``ッチは? 
 
ナオキウ``ッチに ここは村民の前で コトリーナの前で謝っちゃえばぁ(笑) 伯爵でも(笑)無理か(笑) 

ありがとうございます!

コメントありがとうございます♪

アリエルさん
どこのジャ●ーさんが来たかと思った(笑)
ハチャメチャ展開、書いていて私も楽しいです。だってもう、つじつまが合わなくても全然問題にならないんだもん!←それでいいのか?


りきまるさん
私もしゅきです、りきまるちゃま、しゅきです(笑)
チャン・ドンゴンだ!!そうだ!!どっかで聞いた記憶がしたんですが!
ボンボンの底力を、とことん、エフ村の人たちに見せてあげてね、公爵様♪
「色男、金と力はなかりけり」じゃないってことを!!

さくらさん
誰もが思う、ナオキヴィッチの畑仕事…(笑)
入江くん、器用だから何でもできそうですけどね(笑)
畑仕事は器用なだけじゃ、だめだろうな…。

ナッキーさん
唯一の味方(笑)
前回の訪問時は、コトリーナも味方だったから…今や馬だけ、可愛そうな公爵様だ…涙
公爵様、まめだらけになった手で早くコトリーナを抱きしめてあげてほしいです♪

愛結美さん
なんだかんだと言いつつ、完全に無視できないんでしょうね、コトリーナちゃんは、やさしいから♪
その優しさに早く素直になればいいのに…公爵様。
私もコトリーナちゃんをお嫁さんにしたいです。こんな意地っ張りな男にはもったいない!!

kobutaさん
畑仕事するナオキヴィッチ、書きました!!
私がしたことないので、適当ですが(笑)
なぜ、皆さんがそこに注目するのかが不思議です。まさかそんなに食いつかれるとは思ってなかったので!

あおさん
いつもナオキヴィッチの顔色窺ってばかりじゃ、可愛そうだもん。
だから…今回は強気コトリーナちゃんで!
しかし、大根5本でネタの提供を迫る記者も記者(笑)プラス白菜とキャベツで売ろうとするコトリーナもすごい(笑)
エフ村のパワーは、さすがの天才公爵様もかなわないかもしれませんね!!

祐樹'Sママさん
そうですよね!たまにはこうやって懲らしめないと…コトリーナだって大変ですもん!
確かに、エフ村では直樹さん、珍獣扱いで…テンションの高さに参っている感じですね。

ゆみのすけさん
綺麗な顔をしている人は、何をやっても様になりそう!
あまりに農作業にみなさんが食いつくものでして…そこに私は受けてました(笑)
前回はカエル取り、今回は畑仕事…次に来た時は、何をさせられるんでしょう???

吉キチさん
謝れるくらいだったら、ここまでこじれていないし…畑仕事することもなかったかも(笑)
今回ばかりは体を張って愛情を示すしかないですよね、公爵様も♪

佑さん
私も書いていて思いました…エフ村の人々、恐れ知らず(笑)
でもナオキヴィッチも言われるがままで…なんだかんだいいつつ、いい領主さまというか、人がいいのか…(笑)

babaちゃまさん
ありがとうございます!!
そんなに感動する話が…自分では信じられないです!!
楽しんで書くと、その楽しさが向こう側のみなさまにも伝わるのかな…などと、すごく調子のいいことを考えてしまってます。
本当にそこまでこのような駄文に言ってくださり、本当にありがとうございます!!

まあちさん
エフ村、特に「…ずら」はなんか、昔見たドラマから(笑)
確か温泉が舞台だったような…。
この公爵様だったら、もう領民(特に女性)~大人気でしょうね!!

kyooさん
…がんばってくださいね!!お子様もkyoo様も大変だと思いますが…。
大丈夫ですよ、きっとうまくいきます!!!
私も微力ながら、応援しております!!
…ごめんなさい、これくらいしか言えなくて。もっと上手に言えたらどんなにいいかと思うのですが…。
ゆっくり体調を整えてくださいね。

るんるんさん
お久しぶりです♪
ありがとうございます!!いつもるんるんさんには、励ましていただけて…。
ナオキヴィッチも鍬を手に、愛を示さないと!
ロッキングのことも触れていただいて、ありがとうございます。痛みが引くと、ついつい病院へ行くことも怠りがちに(笑)
今回はおとなしく通おうと思ってます…。

Foxさん
2からずっとコメント、ありがとうございます!まとめてのお返事で失礼します。
あの噂話、あれだけなのですが、妙に時間がかかりました(笑)←どれだけ力入れていたんだか
この話も気に入ってくださってありがとうございます!!
いやあ…過去、そんなに拍手ないんですよ?(笑)
自分が楽しんで書いているけど、実は…おもいきりすべってる!?とか(それは事実だと思いますが)思いつつ。でもやめられないんですよね~。

いたさん
いや、しょうもないって確かに言ってます、私(笑)
だってその通りだし。そのしょうもないところが、自分ではかなりツボなんですけどね(笑)
確かに、男色と思われている時点で相当のダメージですよね…
がんばれ、ナオキヴィッチ!!




プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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