日々草子 公爵夫人の家出 2

公爵夫人の家出 2



「今時こんな手紙、本当にあるんですね…。」
「ドラマなんかでは見たことがあっても、実際は…。」
執事二人は、コトリーナの置き手紙を見ながら、好き勝手なことを口にしていた。ナオキヴィッチは、ソファに座り込んで黙ったまま。

「いいかげんになさい!!」
ノーリー夫人は、執事二人の頭を抱え、それぞれの頭同士をぶつけた。「ゴチン!」と鈍い音がする。
「痛いじゃないですか!」
「何をするんです、母上!」
二人は頭を押さえながら、ノーリー夫人に抗議する。しかし、
「おだまりなさい!!」
という夫人の一喝で、黙り込んだ。

「あなたたち、執事の仕事は何だか分かっているの?」
ノーリー夫人はシップとユウキスキーに訊ねる。
「それは、お仕えする御主人様の身の回りのお世話をすることです。」
「御主人様の秘書の役割も果たします。」
二人は揃って答えた。
「そう…つまり、ご主人様が気持ちよくお過ごしになるように存在する、それが執事ね?」
頷く二人。
「では、あなたたち執事がお仕えする家は?」
「イーリエ公爵家でございます。」
またもや二人は声を揃える。
「具体的に言うと?」
ノーリー夫人が続けた質問に、
「ナオキヴィッチ・イーリエ公爵様でございます!」
と、二人は答えた。
ところが、ノーリー夫人は、
「…それだけ?」
と、言った。
「…?」
顔を見合わせるシップとユウキスキー。
「イーリエ公爵家には、公爵の他…公爵夫人がいるでしょうが!!」
二人の態度に業を煮やした夫人が叫んだ。
「この間からあなたたちは、公爵夫人をないがしろにしていたんです!気がつかなかったの?」
ノーリー夫人の怒りに、
「そのようなことは…。」
「奥様をないがしろにするなどと…。」
と、二人は首を傾げている。その態度に夫人の怒りは爆発した。

「公爵夫人…コトリーナちゃんのお仕事を全て奪って、ばかげた争いを繰り広げていたのは、どこの誰なんです!」
「あ…。」
漸く、執事たちはそのことに気がついたらしい。
「可哀想に…コトリーナちゃんはナオキヴィッチ様のお世話をすることが生き甲斐なのに、それを全て奪われてしまって…あなたたち、コトリーナちゃんからナオキヴィッチ様を奪ったのですよ!分かっているの?どこがイーリエ家の執事ですか、公爵夫人にそんな辛い思いをさせて!」
「…。」
項垂れる執事たち。
「こんな馬鹿執事に払うお給料、執事学校の学費、全てが勿体ないわ!無駄よ、無駄!」

次にノーリー夫人はナオキヴィッチに向き直った。
「そして、ナオキヴィッチ様もナオキヴィッチ様です。」
「俺が?」
「何が“俺が”ですか!執事たちと仕事にかまけて、愛する妻を放置しておきながら!」
「別に放置していた覚えはない。」
「お黙りなさい!!」
とても主人相手とは思えないノーリー夫人の態度に、執事たちは体を震わせる。この家の一番の権力者が誰か、執事たちは知った。
「論文、論文と。何が論文ですか。妻を追い出してまで書き上げた論文など、何の価値もありません!トイレットペーパーと同じ、いいえ!トイレットペーパーはなければ困るわ。それ以下です!ポストに放り込まれるいかがわしいチラシと同様です!!」
「論文が…。」
「ピンクチラシ同様って…。」
ノーリー夫人の剣幕に、執事たちは青ざめた。

「すぐに迎えに行かれるんですわよね?」
夫人はナオキヴィッチを睨む。
「…そのうち、戻って来るだろう。」
ナオキヴィッチはどうやら軽く考えているらしい。その態度に夫人の怒りは止まらなくなる。
「何を言ってるんです!!すぐに迎えに行きなさい!!」
「そ、そうです。旦那様。」
シップが夫人に怯えながら、ナオキヴィッチの傍に来る。
「…お迎えに行かれた方が。」
ユウキスキーもこれ以上、ノーリー夫人に逆らわない方がいいと言わんばかりにナオキヴィッチに近寄った。
だが、ナオキヴィッチは無言のまま、そして溜息をつく。

「…もう我慢できないわ!!」
ノーリー夫人はどこにまだ、こんな声が残っていたのかと思う声で叫んだ。
「可愛いコトリーナちゃんを追い出した、こんな馬鹿男たちと一つ屋根の下に暮らすことなんてできないわ!コトリーナちゃんが戻って来るまで、私も出て行きます!」
「ええ!?」
執事たちは夫人を引き留めようとした。が、それらの手を振り払い、夫人は家を出て行ってしまったのだった…。



その頃、コトリーナはエフ村の実家にいた。
突然婚家から戻って来た娘を心配する父、シゲオ。
「どうしたずら?突然里帰りして。」
「…別に、どうもしないっぺ。」
懐かしい故郷の言葉に戻ったコトリーナは膝を抱えて黙りこんでいる。帰ってからずっと、この調子である。
「…誰かに意地悪でもされたずら?」
貴族の家に嫁いで、辛い目にでも遭ったのかと思う。
「ううん。そげなこと、ないっぺさ。」
コトリーナは首を振る。
「なら、何で?」
コトリーナはポツリと呟いた。
「先生…シップさんかユウキスキーさんと結婚すればよかったのに。」


「コトリーナが戻ってきたやて!?」
喜び勇んでコトリーナの家にやって来たのは、コトリーナの友人、キーンだった。
「で、コトリーナは?」
「今、買い物に出てるずら。」
シゲオが元気なく答える。
「…どうしたんや?」
そんなシゲオをキーンは心配する。
「…コトリーナが戻ってきたのは、どうも公爵様と喧嘩が原因だっぺ。」
「喧嘩?そりゃまた…!」
コトリーナとあの憎たらしい公爵が喧嘩したと聞き、喜びを露わにするキーン。
「で、理由は?」
「…公爵様が浮気したらしいずら。」
「浮気!」
途端にキーンの顔が険しくなった。
「やっぱり!あの男は初めて会った時から浮気顔やと思っとった!あの顔は沢山の女を泣かせ、その生き血を吸い取ってきた顔や!!」
「…女が相手ならまだしも。」
「へ?」
シゲオの言葉に、キーンはキョトンとする。
「…浮気相手は、どうも男らしいずらよ。」
「お、お、お、お、男!?」
天地がひっくり返ったかのように驚くキーン。
「女ならまだしも…男に浮気されたずらよ、コトリーナは。」
シゲオは大きく溜息をついた。何と可哀想な娘だろうか。
「何とかスキーだの、何だっけ、貼るやつに似た名前だったずら。そうそう、サロンパスだのと…、そいつらと結婚すればよかったとか、言ってるっぺさ。」
「許せん…あの男!!」
キーンは真っ赤になり怒る。
「わしのめんこい、めんこいコトリーナをそんな目に遭わせおって!しかも相手は一人じゃないと!…絶対許さへんで!」

そして、その日のうちにエフ村には、キーンの口から次のような噂が広まった。

エフ村が開墾されて以来の見事な玉の輿に乗ったコトリーナ。ところがその夫、イーリエ公爵は、スキーで転び、サロンパスを貼ってもらった縁で、複数の男性と深い仲になった。
そして妻コトリーナは、夫とその男性たちがベッドで親密になっている場面を目撃してしまい、ショックを受けて実家へ帰って来た。

このニュースは、それまでエフ村での大ニュース第一位の座を不動のものとしていた、ハート型の大根を掘り当てたヨサク爺さんのニュースを大きく引き離し、新しい一位の座を射止めたのだった。







☆あとがき
と、まあ…中身の全くない、くだらない話でございます。
続きもこんな感じですので、余程退屈な時にでもお読みくださると嬉しいです^^

…3話じゃ終わりそうもないです、ごめんなさい。上・中・下・下の下とかにすればいいかもだけど…。
関連記事

comment

管理者にだけ表示を許可する

案の定ですね

ったぐ、はんかくせぇおどごだよぉ、こぉのこうしゃぐさンはよぅ(笑)

その摩天楼のように高いプライドには、付ける薬もなさそうなので、一生これを繰り返すのでしょう。
シップやユウキスキーの方がうんと頭はいいってことですわね、ホホホ

権力者ノーリー夫人の一言一言が、

すンばらすく、きもづえがっだなっス。

後悔先に立たずだよ、ナオキヴィッチ。

こんばんは、水玉さま。


なんでナオキヴィッチは、こんなにも悠長に構えていられるんでしょう?
あんなに可愛くて、素直で、愛らしいコトリーナですよ。

いいよる男の人は星の数ほどいるのに、こうして私がコメントをしている間にもキーンや、他の男性がもしかしたら・・・

いい加減に迎えに行きなさいねナオキヴィッチ。

サ○ンパス

水玉さん!ぷぷぷ~っ(^m^ )クスッ
PC見ながらまた爆笑の母を見て娘に「病気や~」って冷たい眼で言われました~如何してくれます!!♡
サ○ンパス見たらきっと「ぷっ~」って噴出しちぃますぜ!
変なおばさんって「白い眼」で避けられそうだ~・・・おっ?でも薬局でサ○ンパスみて「ニタ~」ってしてる人が居たら水玉ワールドの愛読者って・・・フムフム明日薬局覗きに行くべ!ニッ!

???

・・・???
ナオキヴィッチは無言のまま、そして溜息をつく・・・???
そのうち、戻って来ると言っているのは、軽く考えているのではなく、
ナオキヴィッチに戻って来るという何か確信があるのでは???

今回は探偵気分でシリアスに。。。(笑)

エフ村でのゴシップは、次聴く時はどんな内容になっているのか・・・?←期待大(笑)

次回も楽しみにしています!!~♪

 三人まとめて あほんだれ

  こんばんは 
ノーリ婦人 お見事(拍) 一番の権力者だから きちんと琴子の気持ちも 伝え スゥ~としました。
 論文がピンクチラシ ナイスです。水玉さん。
ナオキウ``ッチは迎えに行かないだとぉ~ (怒)ここまで言われて行かんのは 話にならん(怒) こじれるでぇ~  
  
  
 シゲオとキーンの会話・・・面白すぎ ここまで話が膨らむんだぁ(笑)しっちゃかめっちゃかですねぇ。
  これでナオキウ``ッチが 迎えに来たら 知ぃらぁ~ない。(笑う)
 














コメントありがとうございます

コメントありがとうございます。

アリエルさん
アリエルさんの仰るとおり、一生繰り返すんでしょうね(笑)前回、あれだけコトリーナちゃんを泣かせたというのに…。
怒られると余計意固地になるタイプなのか?先生は。
ノーリー夫人のお叱り…私も書いていて気持ちよかったです♪

りきまるさん
そばにいると、その愛らしさに気がつかなくなっているんでしょうね。
いつまでも自分だけを見ているって…図に乗ってるんでしょう!!(笑)
コトリーナちゃんも、浮気してやれ!!!

美優さん
サロンパスってね、案外高いんですよ(笑)
肩こり、腰痛、ひざ痛もちの私、シップは常にお家になければ不安なんで、ストックしてるんですが…とてもとても!!!
つい24枚入りの特売品に手が伸びます。
あんだけCMやってるから、買いやすい値段かと思ってたのに…CM出演料高い芸能人使っているから?

あおさん
あおさんの「シリアス」という文字に、胸が痛く痛くなりました(笑)
まあ…すぐにその大きな勘違いに気がつかれたかと思いますが(笑)

吉キチさん
書いた後に気がつきました。ピンクチラシって今使っても通用する言葉なんだろうかって(笑)意味が分かって頂けて何よりです(笑)
何せ、あの金ちゃんですからね…うわさの発信源が。100倍、いやいや1000倍にも膨れるのも仕方ないでしょう(笑)

佑さん
ノーリー夫人も堪忍袋の緒が切れたんでしょうね。何せ、息子同様の入江くんよりも、実の息子の裕樹よりも愛する琴子ちゃんが、家出しちゃったんだから…。
ゲイ疑惑も、自分が招いたことだから、頑張って晴らしてもらいましょう~♪

fさん
そうなんですよ~どうも書いてみたら、上中下で終わりそうもなかったので…^^;一応5話で完結する予定なので、しょうもない話なのですが、お付き合い頂けたらと思います♪
ヨサク爺さんのハート型大根…ニュースで時々見ません?変わった形の野菜が出てきたとかって。あれ意識してみちゃいました^^
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ
 
最新コメント
最新記事
カボチャの世界
Private
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
リンク