日々草子 薄衣の姫君

薄衣の姫君




「本当に大丈夫でしょうね…?」
琴子は不安そうに桔梗を見る。
「大丈夫でございます!直樹様は、ちい姫様とご一緒ですし。当分こちらにはおいでになりませんとも。」
「こんな姿を見せたら、嫌われてしまうものね。」
そう言って、琴子は今着ている物を見た。連日の暑さに悲鳴を上げた琴子に、桔梗が着せたのは…薄衣。その薄さは、琴子の白い肩が透けて見える程。
「ですので、どうぞこちらでごゆっくり遊ばせ。」
「それじゃあ。」
暑さに加え、琴子は育児で疲れていた。乳母に任せっぱなしにすることなく、できる限りちい姫の相手をしている琴子。直樹の訪れのない夜は、傍に寝かせ、泣く度に起きてあやす日々。
そこで桔梗が、少しでも暑さが和らぐようにと薄衣を勧めたのだった。
間もなく、脇息にもたれ、琴子はウトウトと始めた…。それを確認し、桔梗はその場を離れ、直樹たちがいる部屋へと向う。

「…手は洗っただろうな?」
「はい。石鹸で隅々まで洗い、30秒、流水で流しました。」
「…息は?」
「ACUOでこの通り!」
そう言って、鴨狩は「ハアッ」と息を吐いて見せた。
「よし、それじゃあ、いいだろう。」
直樹はやっとちい姫を鴨狩に抱かせる。
「…柔らかい。」
その小ささと柔らかさに、感動する鴨狩。今日、やっと初めてちい姫を抱かせてもらえたのだった。

「落とさないでよ?」
そこへ桔梗が現れる。
「大丈夫。この日のために座布団で練習したから。」
「座布団ってお前な…。」
呆れる直樹。だが鴨狩はその直樹の声すら耳に入っていない。
「可愛いなあ…。」
その時、ちい姫がニコッと笑った。
「まあ!」
その可愛らしさに、桔梗も声を上げる。

「本当に、ちい姫様がお生まれになった時は…お祝がすごかったですわ。」
帝の覚えめでたき直樹の初の子ということで、あちらこちらの貴族から祝いの品が届けられた。その品専用の部屋までもが設けられたにも関わらず、そこにも入りきらずに蔵の中まで一杯になったほどだった。
「今では、ちい姫様には山のように御縁談が。」
まだ生まれて1年も経たないというのに、縁談が山のように来ている。

「笑うと姫様にそっくりですね。」
抱いている鴨狩が言った。
「でもそう申し上げると、“直樹様にそっくりだったら、もっとよかったのに”と仰るのよ。」
「俺は琴子そっくりで満足してるけどな。」
本心から直樹は言った。今は琴子とちい姫の三人の時間が何より大切だった。

「ですが、本当に…どちらの公達と御夫婦になられるのか。」
鴨狩が呟く。
「“誰とも結婚させない”などとは、仰らないで下さいましね。」
桔梗が直樹をからかった。
「まさか、そんなことは言わないさ。」
直樹は笑う。その言葉に安心する鴨狩と桔梗。
「…俺より立派な男だったら、喜んで結婚させるさ。」
「え…?」
鴨狩と桔梗は顔を見合わせた。
―― 直樹様より立派な男なんて…この世にいるのか?
それはすなわち、誰とも結婚させないということに繋がるのでは…?そう二人は思った。

「ところで、琴子は?」
「ただいま、お休みでございます。最近暑さでお体が参っておいでだったので。」
「そうか。」
どこかつまらなそうな直樹。

三人がいる部屋を、風が通り抜けた。
「ああ…いい風が入りますわね。」
「本当だ。」
直樹は視線を、対の屋へと向けた。そこで琴子は休んでいるはず。

「あら、ちょっと強いわね…。」
風が少し強くなる。桔梗はちい姫に障らないかと、心配する。
その時、一段と強い風が吹き…対の屋の御簾をめくった。

「あ…。」
三人は同時に声を発した。めくられた御簾の向こうには…脇息にもたれて眠っている琴子の姿が。

―― いけない!私としたことがあのような端近にお連れしてしまった!

もっと中で休ませるべきだったと、後悔する桔梗。しかも御簾はどこかに引っかかってしまったらしく、上がったまま。薄衣を身に纏った琴子の姿がこちらから丸見えだった。それは衣の下の肌まで…。

「直樹様…?」
鴨狩の声に、桔梗は我に返る。気がつくと直樹が立ちあがり対の屋に向かって歩き出していた。
「直樹様!」
止めようと後を追う桔梗。だが直樹の足は速く、あっという間に対の屋に。

「あの、姫様は…。」
直樹は足を止め、桔梗を見た。そして自分の口に指を当て「静かに」と小声で言った。その絵になる美しい姿に桔梗は何も言えなくなる。
そんな桔梗を見て、直樹はフッと笑うと…琴子の傍へ寄り、御簾を下ろしてしまった…。


「ゆっくりお休みに…。」
「…なれなかったわ。」
御寝台に横たわっている琴子は、桔梗を睨んだ。どうやら直樹はここまで琴子を連れて来たらしい。
「お前が大丈夫だって言うから、あのような格好で休んだのに。」
「申し訳ございません、風が…。」
「こんな昼間から…。」
そう言うと、琴子は顔を赤らめ、夜具の中に潜ってしまった。
「とにかく、お着替えを。」
桔梗はそう言い、琴子の着物を探す。が、例の薄衣が見当たらない。
「姫様、あの薄衣はどちらにお脱ぎあそばして?」
「脱いだのは私ではなく…。」
そこまで口にすると、また顔を赤くして、琴子は夜具の中にもぐってしまう。
「おかしいわねえ?」
いくら探しても見当たらない。桔梗は首を傾げてしまった。


鴨狩は目のやり場に困っていた。目の前に座っている主人の直衣は少し乱れている。が、それがまた、その主人の色気を引き出している。
「つい持ってきてしまった。」
そう言って直樹が手にしている物、それは…琴子の薄衣だった。
「うん…琴子の香りがまだ残ってる…。」
その台詞と、衣を抱きしめる直樹の姿に、鴨狩は顔を赤く染める。
「悪いのは俺じゃなくて…この薄衣だからな。」
そして、琴子の白い肌…直樹は鴨狩に笑いかけた。鴨狩は顔をますます赤く染めるだけで、何も言うことができずにいた。











☆あとがき
久しぶりの平安琴子ちゃんです。
ごめんなさい。文章が下手で、情景が分かりにくいと思います…m(__)m
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comment

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  直樹の猛ダッシュ

 水玉さん こんばんは
ドッヒャァ~。 琴子の薄衣を脱がし香りを抱きしめる直絵になりますね。  
琴子は恥ずかしい のに 直樹はニンマリだぁ。

現代でいえばシースルー?

こんばんは、水玉さま。

産後と育児疲れという事で、お昼寝をしていた琴子の姿を見た直樹。
その服装を見て、欲情しちゃったみたいですね。(笑)
こちらの直樹は、琴子にラブラブ光線を出しっぱなしなので、読んでいて本当に楽しいです。

琴子を愛していることを公にしている分、愛情表現も過激になりがち・・・
薄衣を自分の部屋まで持ち帰ってしまうほど・・・
確かに琴子の匂いが残っているから嬉しいのかもしれませんが、早く桔梗に返して、琴子に着せる方が萌えると思うので、
早く元に戻しておきましょうね。(笑)

嬉しいなぁ

今晩は~


平安のお話大好き(^з^)-☆Chu!!

直樹の俺様ぶりが、冴えていますょ!


姫様を前にすると、理性も吹っ飛んで、本能のままって感じです(^_^;)

平安時代も夏は暑い?

鴨狩も見ちゃったのかな?

嫉妬より欲望の方が勝ったのかな?

琴子も大変だねー!

ちい姫の世話とでっかいあかちゃんの世話とじゃ疲れるよね!

コメントありがとうございます♪

コメントありがとうございます♪

吉キチさん
絵になりますよね!!なんかこう…ちょっとけだるい感じで、でも色気がプンプン漂って…という感じで!!
で、大事そうに薄衣を抱きしめて…。
ありがとうございます!!

りきまるさん
そんな感じだと思います←シースルー
琴子ちゃんの寝顔が好きなんです←私が
あのあどけない寝顔と、ちょっと透けて見えるお肌…この2点が揃ったら、もう直樹はだれにも止められない!
モトちゃんたちには、どれだけ夜を過ごしたとかバレバレだから、隠す必要もないですしね。
でも琴子のことだから、恥ずかしくて戻ってきても着るのを嫌がりそうな気がします^^そこをまた無理に着せたりして楽しむのでしょうか…?

ナッキーさん
昼でも夜でも、愛情表現はたっぷりですよね!
そんなに愛される琴子ちゃんがうらやましいです♪

kobutaさん
昼は赤ちゃん、夜は大人…本当に大変でしょうね♪
でもそれだけ愛されているってことで…頑張れ、琴子姫!!

佑さん
情景浮かびましたか?よかったです。
きっと琴子姫の体を大切にいたわりつつ、でも我慢できない~という感じなんでしょうね、入江くん♪

ぴくもんさん
平安ってすごいですよ!久々にこの話を書くちょっと前にあさきゆめみし読んでたんですが…光源氏っていまさらですが不倫OKどんと来い!って人なんですよね…^^;
そして寝室に忍び込むのも全然平気…なんか本当、凄い時代です。
最初は琴子ちゃんのあどけなく、でもほんのり色っぽい所を書きたかったのですが、途中で「満足している、ちょいと乱れた直樹」と書きたくなって、最後付け加えました。いい男のそういう姿は堪らないだろうなあって思って!!

ちい姫が笑った~♪
笑うと琴子ちゃんにそっくりなちい姫が笑ってる~ラブリー♪
抱っこしている鴨狩は、顔を緩めてなんともいえない満足感を味わった事でしょうね!!
努力の甲斐がありましたネ~♪

直樹様。。。(笑)
ちい姫に弟君か妹君が出来る日も近いですね!!
確かに何もいえません!!(笑)

コメントありがとうございます^^

あおさん
ちい姫は琴子姫に似ている方が…♪というか、常に二人の子供は琴子ちゃん似であってほしいのが私の願望です(笑)
落とさないように、ヒヤヒヤだったでしょうねえ~鴨狩。
本当に大家族になる日も夢じゃないのかも…(笑)母になったらますます直樹の愛情が増えた琴子姫です♪
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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