日々草子 花火

花火





「花火大会、明日の夜だってね。」
洗濯物をたたみながら、琴子は直樹を見た。直樹はテーブルに本を広げている。
「…一緒に行きたかったな。」
ポツリと漏らす琴子に、直樹が顔を上げた。
「行ってもいいけど?」」
すると、
「ダメ!絶対ダメ!」
と、洗濯物を放り投げて琴子が叫んだ。
「絶対、病院の人とか来てるもん。その人たちに一緒にいる所を見られたら…。」
どうなるかを想像したのか、琴子はブルルッと震えた。
「バカバカしいお遊びのために、そんな些細な楽しみも味わえないんだな。気の毒なお前。」
言葉の割には、琴子に同情している様子が微塵も感じられない直樹の態度。
「だって…。」
「ったく、いつまで続けるんだか。院内感染ごっこ。」
「院内恋愛だってば!!」
琴子はムキになって言い直した。

神戸にいる間、結婚していることは同僚たちには内緒にしている二人。それは結婚までの恋愛期間が殆ど皆無だった琴子の提案だった。

「明日、カミングアウトすれば、夜は出かけられるぞ?」
「絶対しません!!」
「イーッ」という顔をして、琴子はまた洗濯物へと戻った。そんな琴子を見て直樹は溜息をついた。

翌日。
お互い日勤だった二人。琴子が先に上がったところを直樹は病院で見ていた。なので部屋にいるだろうと思いながら、直樹はドアを開けた。
「お帰りなさい!」
現れた琴子を見て、直樹は目を見張る。
「エヘヘ、どう?」
浴衣姿の琴子は、玄関先でクルリと回って見せる。
「どうした、それ。」
確か浴衣までは持ってきていないはずだ。
「あのね、駅ビルでバーゲンしていて…買っちゃった!」
もしかしたら、家から見えるかもしれないと思い、それなら気分を少しでも盛り上げようと思い買って来たのだという。
「あとね、これも!」
琴子はビールやおつまみ等の飲食物も沢山買い込んでいた。

「そろそろ始まるかなあ…。」
ベランダに出て、今か今かと花火を待つ琴子。
「お前、一人で浴衣着られたんだな。」
ビールを手に、部屋の中から直樹は声をかけた。
「うん。だって、ふぐ吉でバイトしてたし。」
言われて直樹は思い出す。ふぐ吉…琴子の父の経営する店で、琴子は和服で働いていた。
「まさか金ちゃんに着付けをしてもらうわけにいかないでしょ?」
そう言って笑う琴子。そんなことを琴子にしていたら…金之助は今、包丁を握っていることはないだろう。

「ね、こっちに出て来ないの?」
部屋から出ようとしない直樹に琴子は訊ねる。
「…別にいい。」
直樹はそう言って、ビールをまた口にする。
「んもう…。」
不満そうな琴子の頭上に…花火が大空に上がった。

「うわあ…やっぱり見えた!!」
空を見上げる琴子。一発、また一発と花火が打ち上げられていく。
「綺麗…。」
その琴子は今日は浴衣に合わせて、髪をアップにしている。直樹は花火ではなく、その白いうなじを見つめる。

「あ…やっと出て来た。」
漸くベランダに出て来た直樹を見て、琴子が笑った。
「部屋の中より、ベランダの方がよく見えるでしょう?」
「…まあな。」
「素直じゃないなあ、もう。」
相変わらずな直樹の様子に苦笑しつつも、琴子はすぐに花火に目を戻す。その琴子の肩を、直樹はそっと抱く。
「入江くん…。」
描いたとおりの雰囲気になり、琴子は直樹を見つめる。そのまま…花火の下でキスを交わす二人。
「綺麗だな。」
「綺麗でしょ?花火…。」
「いや…綺麗なのは…。」
そう言うと、直樹は琴子の肩を抱いたまま、部屋の中へと連れ込む。
「え?まだ花火終わって…。」
言いかける琴子の口を直樹が塞ぐ。
「…いいから。」
唇を離した後、直樹は優しい笑顔で琴子の唇に人差し指を当てた。そして…琴子の帯に手をやり…。

花火はまだ打ち上げられている。
「…ベランダから見るよりも。」
花火の音が部屋に響く中、直樹が琴子の耳元で囁く。
「どこから見るよりも…お前の白い肌に映して見るのが、花火は一番綺麗だな。」
直樹が言うとおり、琴子の白い肌には、うっすらと花火の色が照らし出されていた。
「…そういう見方って、どうなの?」
口を尖らせながら、琴子は花火を見ようと首を伸ばそうとする。その顔を直樹はそっと自分へ向ける。
「だめ…花火より…俺を見ろよ。」
そしてまた、琴子の白い肌には花火の色が照らし出される。その照らし出された場所に、そっと直樹は唇を落とす。

―― やがて、二人の耳には花火の音は聞こえなくなった。









☆あとがき
久しぶりに書いた神戸のイリコト…(原作の神戸の隙間ではないです!)
二人きりで花火を部屋の中から見るという設定にするには…神戸のイリコトがいいかなと。
肌に花火が映るかどうかは…ちょいと謎ですが(笑)
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comment

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花火~(´▽`*)

ベランダで見る花火、きっと情緒ありますよねv

大好きな琴子ちゃんの浴衣姿にはきっと入江くんにとっては大いなる破壊力があったことでしょう(笑)

入江くんがわざわざ混んでる花火大会会場に一緒に行ってくれるって言うのにもったいない、って思ったけど、二人っきりでラブラブな時間を過ごすにはベランダで花火でじゅうぶんだったかもですねv

でも、入江くんにとってはなにげにモテてる琴子ちゃんとのラブラブを、病院の人たちに見せて牽制するチャンスだったかもしれないですよね(笑)

まぁ、琴子ちゃんは入江くんしか見てないから牽制なんて必要ないかもですがvv

あ、甘すぎる❤

こんばんは!

ベランダから花火が見えるなんてとってもうらやましい。
そして、あっま~いセリフを囁いてくれる旦那さま。

冷たい入江君もそそられるけど、やっぱり奥さんの琴子には甘く囁いている入江君を拝める方が、私は好きです。(笑)

2人っきりだから、余計に囁けるのかも!

ラブラブ♪

直樹と二人で見る花火は綺麗でしょうね~ 二人の甘甘な様子が見られて私も幸せです。カミングアウトする時の二人の様子を見たいなぁ(笑) きっと上手に直樹に誘導されるんでしょうね!

神戸だー

久々ですね!

何時位かな?

遅くやって来た、新婚さん気分、恋人気分の時だから、二人ラブラブですよねー!

神戸のイリコト大好き!!

水玉さん、こんにちは♪
久しぶりですね、神戸の入江くんと琴子^^
まだ院内感染(恋愛(笑))中だったんですね!

花火とイリコトは似合いますよね~。
だって琴子、浴衣姿すごく似合いますし!!そりゃ、入江くんだって甘くもなろうってものです。

「いいから・・・」って部屋に連れ込むのを想像しただけでほわ~んとなってしまいました(きゃっ!!)

で、暗い部屋に照らし出される明かりが琴子の肌に反射して・・・!!いいです、素敵!!!

と、職場のPCから一人ニタつきながたコメント打っている私は相当気持ち悪いなぁ(--;)

この季節にぴったりなお話ありがとうございました!!

花火だぁ。

 水玉さん こんにちは   
神戸のお話しだぁ。 二人っきりだから・・・ラブラブだぁ。 
 入江さん家の中は 今から花火みたいですね。 誰も見れないけど、ねぇ。見たいね。
直樹には お外の花火には興味なそうだね。 琴子は 見たいのにねぇ。 花火に やきもちですか。 
  
直樹は琴子の花火が大好きだから 咲かしぱなしかな(笑)
 琴子がよそ見したら すねちゃったのか嫉妬か  俺を見ろ 言われてみたぁ~いなぁ。 

俺の花火は琴子しか見せないんだぁ~。琴子の花火も直樹だけだよね。 
 絵になるぐらい綺麗な二人だろうなぁ。

ロマンチックですね(*^_^*)

こんにちは~(*^_^*)

ベランダから花火が見れるなんて、なんて羨ましい\(≧▽≦)丿

琴子ちゃんは、現場に行って、露店なんかをブラブラしたかっただろうけど(^_^;)

でも、結局、入江くんとだったら何処でも良いか(*‘‐^)-☆

琴子ちゃんと一緒に入江くんも浴衣着て欲しいなぁ…(*^_^*)

やほぉー♪ 
 
久しぶりにコメ書きにやってきましたぁ。
 
 
だって、だって、だって、(///)
 
やっぱ水ちゃんの書く、(描く)甘あまゎ大好きだ(///)
 
 
うん。映ってたとおもう^^
 
白魚のように白い琴子の肌にも
 
そして直樹の背中にも…(照)
 
水ちゃんの“謎”にゎ
 
妄想フル回転!!
 

 
 

 

コメントありがとうございます

コメントありがとうございます♪

愛結美さん
実は…我が家、毎年ベランダから地元の花火大会が見えるんです。それもほとんど目の前という感じで^^
とってもきれいなのですが、音はすごいです^^;
浴衣姿の琴子ちゃんを見ながら「あの帯を解けば…」とか思っていたに違いない(笑)
結果的に、家で見た方がいいことになっちゃいましたね♪

りきまるさん
久しぶりに甘い入江くんを書きました。
たまにはいいものですね^^こんなに甘い言葉をささやかれたら、琴子ちゃん、拒否できないでしょう。
楽しみにしていた花火より違う思い出ができたことでしょうね!

祥チャンさん
ほんと、どうやってカミングアウトするんでしょうね!!
入江くんが耐えきれずに誘導するのか、琴子ちゃんがうっかりポロリと口にするのか…いつかは来るのか、それとも来ないまま、東京に帰るのか…
最初は秘密にしている設定が楽しくて書き始めたこの話、ここまで続くとは思ってませんでした。

ぴくもんさん
そうなんです、まだ「院内感染ならぬ院内恋愛」中だったんです。ここまで黙っていると、却って言いづらくなっていそう…。
たまには季節ネタを書かないとな~と思って。花火を二人きりで見るため、しかも部屋の中から…旅行とかも考えたのですが、そういうのじゃなくて、普段の生活の中での二人みたいな感じにしたかったんです。
いや~久しぶりのパラレルじゃない?イリコトは…ちょっと緊張しました!!

吉キチさん
花より団子ならぬ、花火より琴子ちゃんなんでしょうね、入江くんは。
浴衣姿にやられてしまって、もう理性がきかなくなったのかな?
花火にまでヤキモチやいて可愛い気もします♪
神戸は二人きりのイリコトが書けるので…その分は助かります。

ナッキーさん
手をつないで露天見たかったでしょうね。
でも、それよりもっと思い出のある花火大会になったから♪
きっと入江くん、こんなにかわいい浴衣姿の琴子ちゃんを他の男の目に触れさせるのが嫌になったに違いないです。

さあやさん
きゃ~ッ久しぶり!!(肩をバンバン叩くイメージ)
うれしい~!!私のこと、まだ覚えていてくれたのね(ポッ)
もう…さあやったらつれないんだから…(いじいじ)
それより、コメントの直樹の背中にも…うん、うん!!きっと映っているよね。で、琴子ちゃんにそこをキスさせたり…あ~私としたことが、こんな真昼間から妄想が…。
コメントありがとう!とっても嬉しかった!!!!!


まあちさん
東京の自宅ではできないし、九州でも無理だし…後は旅先くらいですよね!
でも神戸だったら、誰にも邪魔されないでしょうし^^
思う存分、妄想して下さいね~♪

nomariさん
そんな楽しみ方もあって、楽しんで下さっているんですね!!
パラレルばかりという悩みを持つ私に、何よりの励ましになります!ありがとうございます!!
で、今回はどの時代だと思われたんですか?^^

Foxさん
突然、振ってきたんですよ~天より(笑)
たまにはこういう話も書きたいなあと…しかも「琴子の肌に映る花火」というフレーズが一番に浮かんだという…(笑)

佑さん
まだやってるんです、はい。
確かに、このシリーズは琴子ちゃんが主導権握っている感じですよね。決めたのも琴子ちゃんだし…元をたどれば、入江くんが琴子ちゃんを追いかけて来たのだから、そうなるのも無理ないかな?

名無しさん
すごい!!私…教授の下の名前と奥さんの名前…すっかり失念していました(笑)ありがとうございます!その話を覚えていて下さったのが嬉しい!!本当に昔昔に書いた話を覚えていて下さるのって…感激です!!
ニアミスって…パーティーの時とか?←書いたのに自信がない奴…
いや、本当にうれしいです♪
そして拍手コメント欄、ちょっと変えていたんです。そこで名無しさんにコメント頂いて、確認したら…どえらい書きにくいことに!!慌てて直しました!!ごめんなさい!

るんるんさん
恋人時代がない二人ですもんね~新婚当初から同居だったし。その分、この神戸でおもいきりラブラブな時間を過ごしてほしいなと!誰の手も借りず、二人で色々乗り越えていってほしいです♪

あまーーい

きゃーあまーーい(#^.^#)
二人きりなら 直樹ったら 琴子独り占めだもんね!
外に行かなくて正解だよね(^▽^)
白い肌に写る花火って 凄く色っぽいわ

直樹も いつものクールさはどこかに置いてきぼりですね! それも素敵!

いいな~☆

こんばんは。一年ほど前に貪るように読ませていただいた、水玉さんの神戸のイリコト~☆
この季節にまた読めるなんて、幸せです(*^_^*)

直樹が琴子を見る目はと・く・べ・つですから♪
絶対花火、映ってましたよ~信じてやみません( ̄m ̄*)

「だめ…花火より…俺を見ろよ」

たまりませんね~~~!!
言いそう、直樹だったら、絶対言います!!
花火も背景も(笑)、楽しませていただきました(^_-)

コメントありがとうございます♪

さくらさん
花火も普通に見るよりはちょっと色っぽく…と、考えてみました(笑)
せっかく浴衣着たのに、すぐに脱がされちゃって…ちょっと可哀想な琴子ちゃんです^^

chan-BBさん
花火なんて入江くんにはどうでもいいんでしょうね^^
花火よりも自分を見てほしい、自分が常に一番であってほしいっていつも思っているんだろうな、入江くんは♪
こんなとこもお子ちゃまなのかも…
神戸編、何かきっかけがあったら書きたいんですけど、すでに琴子ちゃんに横恋慕する人は登場させたし、ネタが~(涙)
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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