日々草子 秘密 第8話
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Author:水玉
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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秘密 第8話

そして、琴子が休みで直樹が日勤というある日のこと。
「お帰りなさい!」
直樹が帰宅すると玄関でエプロン姿で琴子は出迎えた。
「夕食出来てるよ!着替えてきてね!」
琴子は嬉しそうにはしゃいでいる。
「食えるものなんだろうな…。」
琴子のはしゃぎっぷりに不安を感じて、直樹は言った。神戸に来てからというものの、琴子の手料理はやはり腕が上がっていなかった。まともに食べられたのはカレーくらいで、後は焦げていたり、ゆですぎたり、しょっぱかったりした。だけど琴子が仕事に疲れた体で一生懸命作ったことを知っていたので、直樹は黙って食べていた。

「どうしたんだ、これ…?」
着替えてきた直樹の前に用意された夕食は和食だった。ぶりの照り焼き、里芋の煮っ転がし、ほうれん草のおひたし、味噌汁…。所々焦げがあったり、ゆですぎのようにも見えるが、見かけはほぼ完璧だった。
「食べてみて!頑張って腕を振るったのよ!」
ご飯を運びながら、琴子が言った。
「いただきます。」
直樹は恐る恐るぶりの照り焼きを口に入れた。
「…どう?」
琴子は少々不安そうに尋ねた。
「…うまい。」
「本当?」
「うまい。何が起きたんだ?」
お世辞抜きに味はよかった。今までの琴子の料理に比べると雲泥の差だ。何が琴子に起きたのか知りたかった。

「フフーン。秘密兵器があるの!」
琴子が何かを背中に隠している。
「秘密兵器?」
そして、琴子が「ジャジャーン」という声と共にある物を直樹の目の前に突き出した。それはかなり表紙の汚れた、古いノートだった。

「何、これ?」
直樹は渡されたノートのページを破かないようにそっとめくった。中は手書きで様々な料理の作り方が書かれている。簡単な盛り付けのイラストも付けられている。
「これ、今日突然お父さんから届いたの。」
「お義父さんから?」
「そう。何にも手紙とか付いていなくて、このノート1冊がポンって届いてね。何が何だか分からなかったから、お父さんのお店に電話してみたの。そしたら、そのノート、昔お父さんがお母さんに書いてあげた物なんだって。」

確かにノートの文字は琴子の父の字だ。琴子の母も料理が苦手で、うまいものを食べさせてやらねばと板前である琴子の父が思ったことが二人が結婚したきっかけになったという話を義父から直樹は聞いたことがあった。琴子の母の料理下手のDNAは、残念なことに琴子へと受け継がれてしまったが。

「それで、このノートを見ながら料理を作って、入江くんに美味しい物を食べさせてやれって言ってた。」
「へえ。」
汚れがひどいのは、恐らく琴子の家が地震で崩壊したときに父が必死で掘り起こして探したからではないかと、琴子が言った。
よく見てみると、ノートには料理の初心者でもわかるように優しく書かれている。市販本と違って、ポイントもかなり細かい。

「これ、お義母さんの字じゃないのか?」
「え?」
琴子が直樹の傍に近寄り、ノートを覗き込んだ。よく見てみると、父の字とは違う字でいろいろ書き込まれている。どうやらノートを見ながら実際に作ってみて、分からなかったり、失敗した所を琴子の母が付け加えたものらしい。
「…これ、お義父さんとお義母さんが二人で作ったノートなんだな。」
直樹が言った。
「そうだね。」

二人は顔を見合わせて、自然に微笑んだ。
多分、琴子が将来結婚する時に持たせるため、琴子の父は必死で崩壊した瓦礫の中から探し出したのだろう。しかし、琴子が直樹と結婚することになり、入江家でそのまま暮らすことになったので琴子の父は直樹の母の手前、遠慮してこのノートを琴子に渡さなかったのだろうと直樹は容易に想像した。そして今回、二人で神戸で暮らすことになったので、琴子の料理の腕前を心配して、このノートを送ってきてくれたに違いない。義父の江戸っ子ながら、そういう控えめな性格が直樹は好きだった。

「大事にしろよ。」
そう言って、直樹は琴子へノートを返した。
「うん。」
琴子も嬉しそうにノートを抱きしめた。
「て、ことは、これは相原家の味なんだな。」
里芋を食べながら直樹は言った。
「あ、そういうことだね!」
琴子も食べながら返事をした。
「問題は…。」
直樹が言った。
「問題?」
「お前がいつまで続けられるかだな。この腕を。」
直樹の言葉に琴子は抗議した。
「つ、続けるわよ!ちゃんと!相原家の味をとことん味わってよね!」
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