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2010.07.06 (Tue)

夫の詫び状  -新妻の家出 番外編-


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直樹、琴子夫妻は琴子の母国、トンブリ王国にいた。
が、とんでもないことが直樹を待ち受けていた。

「第一情夫?」
信じられない言葉を耳にした直樹は、怪訝な顔を見せた。
「そうなの。それで…今夜が新枕の儀なの。」
「新枕?」
ますます理由が分からない。
「待ってくれ。それはつまり…俺以外の男と?」
はっきりと頷く琴子。
「…正気か?」
「うん。そういうしきたりだから。」
どこがおかしいのかという様子の琴子。
「我が国は一夫多妻…あ、この場合は一妻多夫と申すのでしょうか?それなのでございます。」
二人の横から侍従が口を挟む。
「何せ、コトリーナ王女殿下は国王陛下の唯一の後継者でおいでですから。」
「つまり…世継ぎが必要ってことか。」
「左様でございます。」
さすが直樹様、呑み込みが早いと侍従が顔を綻ばせる。
「そういうわけだから…。」
そして琴子は、その“新枕の儀”へと向ったのだった。

「はあ?」
翌日、また直樹は怪訝な顔を見せた。それでなくとも、昨夜、琴子が自分以外の男と枕を共にしたと思うといい思いがしていない。いや、それどころか腸が煮えくりかえっている。
「10日に一回しか琴子と一緒に過ごせないって?」
今日、驚かされたことは…琴子と夜を過ごすのは“5の付く日”だけだと告げられたからだった。
「はい。何せ…王女殿下には第一情夫、第二情夫と…合計で7人の情夫様がおいでです。その方と公平にお付き合いいただかなくては。」
「7人…。それじゃ、昨日はまだ手始めだったのか…。」
「はい、今夜は第二情夫様との新枕でございまして、明日は第三情夫様、明後日は…。」
「もういいです。」
手を振る直樹。とてもではないが、聞いていられない。
「だけどね、入江くんが私の正式な旦那様であることは変わりないのよ?」
琴子が直樹の手を取って、優しく話す。
「正妻ならぬ…正夫ってか?」
冗談のつもりで口にしたが、とても笑えない直樹。
「だから、お食事は入江くんといつも一緒に取れるから。」
「食事だけ一緒って言ったって…。」
本当に面白くない。というより、ますます腹が立ち、そして理解不能に陥る。
「とにかく、直樹様にはこの生活、しきたりに慣れていただきませんと…。」
侍従が言った。


そしてそれから一年が過ぎた。

本日のトンブリ王国の首都、キリタンポは晴天。そして盛大に花火が打ち上げられている。
第一王女、コトリーナに待望の男子が生まれたのだった。
だが…父親は直樹ではなかった。

「僕の優秀な遺伝子が後世に残ることになって、よかったです。」
そう。コトリーナこと琴子の子供の父親は…エドワード、またの名をキュウイチ。琴子に振られたはずのこの男が、なぜか第三情夫として名を連ねていた。
「はい、入江くん。」
琴子は赤ん坊を直樹へと渡す。
「…何だよ。」
「入江くんがこの子の父親なんだよ。」
「はあ?」
もう何度目になるか、数え切れないくらいである、怪訝な顔をする直樹。
「何で?」
「だって、入江くんは…私の正式な旦那様なんだもん。」
「だからって。」
「この子の父親は、入江くんってことになるの。それが…。」
「しきたりか。」
頷く琴子。
戸惑う直樹の背後から声が聞こえた。
「世継ぎも作れない夫なんて…意味ないですけどね。」
振り返る直樹。そこには得意気なキュウイチがいた…。





*******

「…夢か。」
汗だくになって、ベッドから起き上がる直樹。
「何か悪い夢でも見たの…?」
隣で琴子も起き上がる。が、その体には何も身につけていないことに気がつき、慌ててシーツを胸元に寄せる。
昨夜、派出所へ連れて行かれそうになったところで、危機一髪、琴子が出て来てくれて助かった直樹である。
「大丈夫?汗びっしょり。」
手を伸ばして、汗でくっついた直樹の前髪を直す琴子。されるがままの直樹。悪夢としかいいようがない。直樹は琴子の顔を見た。
「ん?」
気分はどうかと思い、直樹の顔を見つめ返す琴子。その両頬を直樹はそっと両手で挟み…唇をつける。そしてそのまま…ベッドへと再び押し倒す。
「ちょ、ちょっと入江くん!」
再び…と気がつき、慌てて止める琴子。直樹は明日仕事だ。疲れを残したら大変である。だが、直樹は何も言わず、そのまま…。


―― 隣で心地良い寝息を立てている琴子を見て、直樹は息を吐く。
「何で、あんな夢見たんだろう…。」
これも夫婦喧嘩のせいなのかと思う直樹。そしてその、何とも言えない気持ちを抱いたまま、琴子の体をそっと抱き締める。
「…俺だけの琴子でいてくれよな。ずっと、ずっと、いつまでも。」
まるで直樹の言葉が聞こえたかのように、琴子は微笑んだ ――。


「ただいま。」
数日後。早く帰宅した直樹は何と、ケーキと花を手にしていた。
「ど、どうしたの?」
お土産など買って来たことのない直樹の突然の行為に、目を丸くする琴子。
「別にそんなに驚かなくても。」
ケーキと花を琴子へ渡す直樹。
―― この間の喧嘩のお詫びだよ。ばあか。
口に出しては言えないことを心で呟く直樹。

直樹の胸には、まだあの夜の悪夢があった。
「琴子。」
「なあに?」
ケーキを冷蔵庫へ入れた琴子は、直樹を笑顔で見る。
「…お前、キュウイチとの間に子供…作る気あるか?」
バサッバサッバサッ!!
琴子の足元に、直樹が買って来た花が落ちる。
「…そんな。」
忽ち、琴子の大きな目には涙が。
「私、入江くんがああしてほしい、こうしてほしいって言うなら…全部叶えたいと思ってる。入江くんが喜ぶことなら、何でもしたい。でも…。」
ポロポロと涙を零し、琴子は続けた。
「…入江くん以外の男の人との間に赤ちゃんなんて、嫌。それだけは入江くんにどんなに頼まれても嫌。」
「琴子…。」
自分の言ったことに罪悪感を持った直樹は、琴子の体をそっと抱き締めた。
「私、入江くんの赤ちゃんしか産みたくないもん。」
直樹に抱きしめられたまま、声を上げて泣き出す琴子。
「ごめん、琴子。」
直樹は優しく話しかける。
「ごめん。俺も…琴子との子供がほしい。琴子には俺以外の男の子供、産んでほしくないよ。」
まだ、ひっく、ひっくと泣き続ける琴子の背中を撫でる直樹。
「頑張るから…Cカップになるまで頑張るから。」
泣きながら、ピントが外れたことを口にする琴子に、直樹の頬が緩む。
「いいのに、そんなこと。」
「だめ!入江くん、離れちゃうもん!」
「大丈夫だよ。俺は…琴子のその可愛い胸が大好きだから。」
心からの思いを、直樹は打ち明ける。

―― だから、絶対俺以外の男に関心を持ったりするなよ。

そう思いながら、直樹はなかなか泣きやまない琴子の背中をいつまでも優しく撫で続けた――。








☆あとがき
家出のその後が書きたくまりまして。
あと、まだ直樹を懲らしめ足りなかったので(笑)
側室の男版って、なんて言うんだろうって調べたのですが…出てこず「情夫でいっか!」って思い、そうしてしまいました。
タイトルは、某有名作家さんのエッセイをもじってしまいました^^;
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*Comment

★夢でよかったねv

琴子が、直樹以外の男の子供を産むなんて、夢じゃなかったら立ち直れないですよね、入江くん(笑)

しかも、産んだ子供が琴子ちゃんを苦しめたキューイチだなんて☆

そして、情夫の中に西垣もいたりして(笑)



そんな夢の後で、花束とケーキをお土産に持って帰る入江くん…琴子ちゃんじゃなくてもそんな珍しいことがあったら驚くと思いますv
でも、花束を持った入江くん、似合いそうvv

この、ゴム離婚の危機をのがれた二人の絆は、より太いものになったことでしょう(´▽`*)
愛結美 |  2010.07.06(Tue) 23:41 |  URL |  【コメント編集】

★お待ちしてました。

 お待ちしてました。 水玉さんのサイトを知ったのが 6月です。 
その前に ごめんなさい アドレス等 主人と共有と、アドレスにも もろ 主人の名前が入っているので 書きません。 私の携帯なら書けますが 

 でも 不真面目にコメント書いていません。以前のコメントに
色々と書いた方があったのコメントもありましたが、決して私は違います。
 以前も 幸運の女神にコメントを書きましたが、届いたのかな?
 琴子の離婚届け   直樹~の指輪が カーデガンに入ってた時~気持ちが高ぶり ボロボロ泣きながらラストまで読みました。 イタキスの色々なサイト様で グット 泣く手前は数度経験してますが、ボロ泣きは初めてです。すごく泣きながら、無我夢中で読みました。 お互いの気持ちの もってきが すごく 上手いです。   だから 休止は寂しかったですが 復活ありがとうございます。 だから 他の作品を読み漁ってました。 円舞曲、 昭和の29回(スペル書くの苦手なんで名前は パスで ゴメンなさい。 )も好き
 やっぱり  琴子 直樹シリーズ(チャイナドレスのスリットに 縦連続のキスマーク お見事 爆笑しました。直樹らしい。) 病院シリーズ リピートしてます。 
復活されて連続でワクワク読んでます。 とってもウレシイですが、  
 無理して 再休止は 辞めて下さいね。お願いします。 
 お忙しいと 思いますが 
楽しみにしています。
コンタ |  2010.07.07(Wed) 00:42 |  URL |  【コメント編集】

★琴子の涙 

 コメントすっかり忘れてました。 そりゃぁ泣くって 直樹以外の人の 赤ちゃん作るのかって 言われたら。 直樹も本心でなく だから 許すけど 琴子が かわいそうです。 一途だもん琴子は 素直じゃないけど、直樹も琴子に一途だから やきもちやくんだし。 二人の赤ちゃん かわいだろうなぁ
   
コンタ |  2010.07.07(Wed) 01:06 |  URL |  【コメント編集】

★あら!

新聞の見出しは、間逃れて良かった!

警察に連行されかかった旦那を見て琴子は慌てたでしょうね!

プレゼント、普段何もくれない旦那がいきなりそんな事したら、あなた何したと疑ってしまうかも?

大奥逆バージョンですね!

キュウイチの子?考えるだけでイヤかも?

いつか、二人に可愛い赤ちゃんが出来ますように!
kobuta |  2010.07.07(Wed) 05:58 |  URL |  【コメント編集】

★No title

おぉ~びっくりした!!!
夢でよかったです♪
確かに休日シリーズでは琴子ちゃんのほうが
痛い目に遭っているような・・・・・
けどけど、そういえば私たち、直樹イ●メの会員だった。。。←歪んだナオキスト。
前話の下着ドロ疑惑、今回の悪夢!面白かったです♪
キュウイチの夢での登場に
流石の直樹も動揺しているし!!
けど大丈夫!!琴子ちゃんは入江君が大好きなのよ~!!


ゆみのすけ |  2010.07.07(Wed) 10:13 |  URL |  【コメント編集】

琴子の妄想癖が直樹に移ったのかと思いましたが、夢でしたか。今回は直樹、素直に謝りましたね。本当に琴子可愛い!直樹の望む事は何でもするなんて、直樹、男冥利に尽きますね。琴子の『Cカップ』発言に『かわいい胸が好き』なんてここまで素直になるなんて、ちょっとビックリしました。
祐樹’Sママ |  2010.07.08(Thu) 03:37 |  URL |  【コメント編集】

コメントありがとうございます^^

愛結美さん
情夫の中に西垣…絶対いる!!!!(爆笑)
もう自分から手を挙げて、ついてくるにちがいないです!!で、「なんでこの俺がお前の後ろに」とかぶつぶつ文句言って、入江くんの後ろに控えていそう。それでもって、入江くんと張り合いそう。
でも琴子ちゃんの寵愛を手に入れられるかは疑問符ですけどね(笑)
入江くんは花束、絶対似合うと思う。きっとお花屋さんもボーッってなっていそうです。

コンタさん
こんにちは!!コメントありがとうございます!!
メールアドレスは気になさらないで下さい。これは任意ですので。というか、テンプレートがもうそうなっているものなので…。今のテンプレートはたまたまアドレス欄がないですが。
そしてスペル…私も苦手です(笑)だからいつも自分でつけておきながら「Daddy…」とか略しているという。これは特に「え?LONGが先だっけ?」とかいつも迷ってました(笑)
それにしても、その「幸運…」(←ごめんなさい。この頃の話はもう恥ずかしくて恥ずかしくて読み返せないんです)にそこまで…本当にありがとうございます。
この頃は恥ずかしいけど、でもいつも戻れるものなら…と思っているんです。初心忘れるべからずですね。
そして、入江くんも一途ですよね。琴子ちゃん以外の女性なんて関心ないし。でも琴子ちゃんがそれだけ魅力的なんでしょうね♪

kobutaさん
大奥逆Versionというより、はまっていた韓国時代劇の影響が大きくて(笑)
あれをなんとか表現したい、じゃあトンブリで…と思って書いたのがきっかけです。
これでも…事実なら、琴子ちゃん、体がもたないでしょうね…。いやあ、夢でよかった、よかった。

ゆみのすけさん
そうなんですよ!!歪んだナオキストでした、私は(笑)だからこの話は書いていて、ちょっと爽快感が…いつも琴子ちゃんが不安になっている分、入江くんにも不安になってもらおうかと。
夢って印象が大きい人間とか出てきますしね(笑)きっとキュウイチのことなんて、早く忘れたいだろうに…でも入江くんの夢には今後も登場してくるに違いない(笑)琴子ちゃんをいじめるたびにね(笑)ケケケ…←なんて奴

祐樹'Sママさん
何気にうちは夢オチの話が多いんです(笑)
そして…入江くん、時々信じられないくらい素直になるという(笑)きっと私が琴子ちゃんにもっと優しくしてほしいという願望があるからでしょうね!

佑さん
その儀式に平然と向かう琴子ちゃんと、それを見送る入江くんが書いてみたくて(笑)
入江くん、夢の中で1年、どんな気分で過ごしたんでしょうね…お気の毒(笑)
でもたとえ本当にトンブリが一妻多夫でも、琴子ちゃんは入江くんだけを一途に愛する気がします。というか絶対そうでしょうね!!

まあちさん
そうそう!!で、「よかったら参考までに、このDVD貸しましょうか?」とか入江くんに差し出してきたりして!!キュウイチとの子はまさか生まれた時から9対1の髪とか…いや眼鏡までかけていたりとか、なんだか信じられない赤ちゃんのような気がします。まあ、キュウイチ、子育てとかしそうになしいな…て、何を言っているんだか、私は(笑)

若草智紀さん
その漫画…一度だけ読んだことがありますが…。そういえば逆転大奥でしたね。すみません、あの方の絵が苦手で…
先のコメントにも書いたのですが、韓国時代劇のイメージで書いたんです^^;
側室って辞書で調べても、反対語が出てなくて。なんというんでしょうね…まあ、その制度自体が存在しなかったから、言葉も存在しないのかもしれないですね。

Foxさん
ですよね!!私も二話連続で困る入江くんを書けて、満足しています(笑)
琴子ちゃんを大事にしないと、困るんだよって感じですよね!!
これからもちょくちょくと入江くんを苦しめ…いえ、琴子ちゃんの味方でありつづけたいと思ってます(笑)

水玉 |  2010.07.08(Thu) 14:17 |  URL |  【コメント編集】

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