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2008.12.05 (Fri)

秘密 第7話

「…随分派手に落としましたね、入江先生。」
足音の主は同僚の医師だった。


【More・・・】

「拾うの、手伝いましょうか?」
しゃがんでいる直樹に向って声をかける。
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」
直樹がそう言うと、医師はすぐにその場を立ち去った。医師の後ろ姿を見送りながら、

「危なかった…。」
さすがの直樹も心臓の音が速くなっていたことを自覚した。そして白衣の中でもごもごとしている琴子に気がついた。
「い、入江くん、苦しい…。」
「ああ、悪い。」
直樹は慌てて白衣の中から琴子を解放した。

あの時、直樹はとっさに白衣で琴子の体を包み込み、しゃがんだ。そして落し物を拾うふりをしたのだった。琴子の体が小柄で、直樹の身長が高かったので、琴子の体はすっぽりと直樹の白衣の中に隠すことができた。夜間で明かりが薄暗かったという点も幸いして、何とか通りすがりの医師には見つからずに済んだようだった。

「びっくりした!いきなり何をするのかと思った…。」
そう言う琴子の声はまだ息が荒い。そして顔も赤い。
「白衣って、結構便利なんだな。」
「まあ、確かに…。」
琴子は直樹の白衣をつまみながら言った。
「今、俺、かなりドキドキしたぜ。」
「えっ、本当?そういえば白衣の中に入っている時、入江くんの心臓の音がちょっと早く聞こえたような…。」
琴子が嬉しそうに顔を上げた。「自分だって心臓をバクバクさせたくせに。」そう思いながら、直樹は琴子の顔の高さに自分の顔の高さを合わせて、そして琴子の顔を覗き込んで、いたずらっぽく言った。

「この方法を使えば、お前のこと白衣の中に隠して仮眠室へ連れ込めることも知ったし?」
「え?い、入江くん、何考えてるの?」
更に赤い顔になった琴子を面白がって、笑顔を浮かべながら直樹が言った。
「白衣の便利な使い方も分かったことだし、お前の秘密の恋愛っての、ますます楽しめそうだ。」
そう言って、直樹は琴子にボールペン類を渡すと、直樹は静かにクスクスと笑いながら廊下を歩いていった。
「…もう!結局私の方がドキドキさせられちゃったじゃない!」
琴子のそんな言葉が聞こえたかのように、直樹は呟いた。
「俺だけをドキドキさせるなんて、百年早いんだよ。バーカ。」
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