日々草子 君と交わした約束 2

君と交わした約束 2



「はあ…。」
幹が溜息をついた。
「本当に格好いいわよねえ…。」
「…そう?」
横で作業をしている琴子は、首を傾げる。幹は琴子を睨んだ。
「アンタはね、ガキばっかり相手してるから、大人の男の良さが分からないのよ!」
「いや、だけど…あの先生、いつも眉間に皺寄せてる感じじゃない。あの皺、何本あるか今度数えてみようかな?」
琴子が話していると、幹が「シッ!」と指を口に当てた。
噂をしていると、その張本人が歩いてきた所だった。白衣をひるがえし、スタスタと歩いていく。
「はあ…入江先生、今日も素敵だわあ。」
「いつも機嫌悪いよね。」
「だから、あれは寡黙なんだって!!」
「大体さあ。」
琴子は消毒綿の支度をしながら口を開く。
「こんな時に、あの若さでどうして戦地からこっちへ戻ってきたのかしらね?なんか
ヘマでもやらかしたんじゃないの?あ、左遷?」
「あの先生に限ってそんなわけないじゃない!!」
「とにかく。」
琴子は消毒綿の支度を終え、幹に言った。
「ただでさえ、先生の数は少ないんだから!仕事のできないお医者は困るのよね!」
そこへ窓から、
「琴子姉ちゃーん。お仕事、終わった?」
と、またいつもの子供たちからお誘いの声がかかる。
「あ、終わった、終わった。今いくね!」
そして今日も琴子は白衣の長いスカートを翻し、外へと向かう。
「本当…精神年齢同じなのよねえ…。」
そんな琴子を今日も見送りながら、幹は呟いた。

そして…新任の男性医師に憧れているのは、幹だけではなかった。
「今日、見たよ!」
「見たって、何を?」
輪になって楽しくお喋りしている時、さよという女の子が琴子に嬉しそうに報告した。
「入江先生!!」
「あ、あたしも見た!」
節子という別の女の子も琴子に報告する。そして二人は、
「かっこいいよねえ!!」
と頷き合った。
「そう…?」
こんな子供まで虜になるとは、おそるべし、入江直樹と思う琴子。
「二人とも、もっと男を見る目をつけた方がいいと思うけど。」
「そうだよ!!」
男の子たちが琴子に同調する。
「あの先生、怖いよ!」
「いつも、目こんなんでさ!」
勇という元気な男の子が自分の目を吊り上げる。思わず噴き出す琴子。
「そうだ!」
琴子が声を上げた。
「みんなで、あの先生の眉と眉の間に皺が何本あるか、数えてみようか!」
「え…?」
なぜか子供たちの顔色が変わる。琴子は気がつかずに、
「当ったら、お姉ちゃんがいいものあげる!!さ、勇、あんたは何本?」
「ね、姉ちゃん…。」
勇は琴子に目で合図を送る。
「ほら、さよちゃんも遠慮せずに!」
「お姉ちゃん…。」
さよも目で合図する。
「あ、そっか。見当つかないか。じゃ、お姉ちゃんからね。そうねえ…あの皺は…。」
「…おい。」
琴子はぴたりと口を閉じた。そして…恐る恐る後ろを見る。
「ひえっ!!」
思わず変な声を上げた。当の本人が琴子の背後に立っていた。
「診察の時間だけど。」
「は、はい!」
琴子は急いで立ち上がる。そしてスカートについた草を払い、子供たちに別れを告げて直樹の後を追った。

「看護婦がお前以外いないんだ。」
「はあ…。」
診察室で準備をしながら琴子は、
―― いきなり、お前呼ばわりかい。
と内心突っ込む。
「じゃ、お呼びしますね。」
準備ができたので、琴子は患者を中へ入れ始めた。

―― うーん。仕事は…できるんだなあ。
初めて見る直樹の診療ぶりに、琴子は自分の想像を訂正する。手際良く患者を診ていく直樹。だが、琴子には気になる点があった。
―― あまりにも…冷たいような?
他の医師たちも無駄話をするというわけではないが、患者に話しかけられればそれなりに話はする。
しかし、直樹の場合は、患者が話しかけるどころか、怖くて話しかけられない雰囲気が漂っているのだった。
―― なんか、距離を置いている感じ?
患者との関係を重視している琴子から見ると、もう少し親しみを持って患者に接してもいいのではと思う。

しかし、琴子本人は医者をどうこう言える資格は…ない看護婦だった。

「痛い!」
患者の悲鳴で、直樹は振り返った。
「ちょっと我慢してください!あれ?ここじゃないのかな?」
見ると琴子は採血をしているところ。どうやら血管が取れないらしく、次から次へと場所を変えている。しかも上手ではないので痛みを伴っているらしい。
「おかしいな?」
琴子は注射針で血管を探ろうとした。
「た、助けて!!」
患者の悲鳴で、直樹は琴子から注射器を奪う。
そして、ものの1分もかからず、採血を終えた。


「…すみませんでした。」
患者の数が落ち着いた時、琴子は直樹に頭を下げた。
「採血、苦手で…。」
「ガキと遊んでいる暇があったら、練習しろ。」
直樹は琴子を睨んだ。
「あ、それじゃあ、先生、練習台に…。」
「断る!!」
直樹は診察室を出て行ってしまった。

「やれやれ。」
琴子は後片付けをしながら、溜息をついた。
「どんなに格好よくても…やっぱり苦手だな、ああいう人は。」










☆あとがき
予定では12回くらいで終わるはず…!!
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琴子が直樹に一目惚れしない話! 今後の展開が楽しみです。
直樹が頑張るパターンはいたキス二次小説をいろいろ拝読してますが初めてのパターン~

頑張ってください

水玉様 お久しぶりです。 rinと申します。
 
ゴールデンウィークは、どうお過ごしでしたか?
君と交わした約束 更新ありがとうございます。
楽しみにしていました。
今回は、琴子の一目惚れじゃない・・・?
でも、琴子は相変わらず・・・(笑) 次回楽しみにしています。

どっちがさき?

水玉さん!おニューな展開ですね!←私語
琴子が入江直樹に惚れてない~ってすごいこと!!!!!
直樹が先か?やはり琴子が先か?どっちが先に好きになっちゃうの~
「むふふ」な楽しみ!ワクワク(。→∀←。)キャハ♡
癒される~年中5月病な私です

コメントありがとうございます

コメントありがとうございます。

名無しさん
実は…琴子ちゃんが入江くんに一目ぼれしない話は過去に書いてたりするんです^^
でもここまでなんの感情も持っていない琴子ちゃんは初めてかもしれません。

rinさん
お久しぶりです!!
今年の連休は天候にも恵まれ(暑いくらいでしたが)、お出かけ日和でしたね~。
私は日帰りで出歩く程度でしたが(笑)
時代が変わっても、琴子ちゃんは琴子ちゃんということで♪
だけどこんな看護師さん、実在したら大変だろうなあと思ってしまいました^^;

美優さん
ここまでクール?な琴子ちゃんは初めてかもしれないです。
琴子ちゃんの口から入江くんの悪口を言わせるのは、結構楽しいです。この二人がいつか…な関係になるのか?

みかんさん
初めまして!!コメントありがとうございます!!
いいんですよ、そんなに緊張されなくとも!!
何せ、ヌシの私がこんな文章力ですから。みかんさんのコメントは私のやる気を奮い立たせて下さいました。これだけでももう、素敵なコメントです♪←何様なんだ、私?
本当に私のコメントのお返事の方がお恥ずかしい…こんなお返事で「ちっ!コメントするんじゃなかった!」と思われていないことを本当に祈っております(笑)
ぜひまた、お気軽にコメント頂けると嬉しいです♪

佑さん
そうなんです。一目ぼれしない琴子ちゃん。
どっちからその気になるか、いや、その気になる日が来るのか(いつか来るんだろうけど)、ちょっとそれ考えて、こちらも楽しんでおります♪

RuRuさん
うわ~お疲れ様です!!
確かに、学徒出陣は文系学生でしたよね。で、戦争も終盤になってもう理系だろうが、長男だろうが徴兵されていったという話を私も聞いたことがある気が…。
あと、年配の男性も内地にて従事していたとか。
確かに、今回の話は私も今迄書いたことがない感じになりそうです…でも結果、いつものパターンになっても(きっとなる)優しい目で見守っていただけたらと思います。

まあちさん
どうぞ、どうぞ!!御遠慮なさらずに!!
もうなんでしたら…ポイントカードとか発行しますか?(笑)来店したら1ポイント贈呈とか(笑)あ、商品がない(笑)
入江くんに興味皆無な琴子ちゃん…私も書いていてすごく新鮮です。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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