日々草子 そばに居ないとそわそわする

そばに居ないとそわそわする



琴子は昨日から留守だ。
試験前ということで、看護科の奴らと泊り込みで勉強しているんだって。

「あれ?」
僕はリビングに入って、お兄ちゃんの姿とあるものを見つけ、驚く。
お兄ちゃんはリビングで本を読んでいた。が、それはいつも読んでいる医学書ではない。
こち亀…そう、未だ連載が続いている長寿マンガのこち亀だった。
しかも机の上に十冊以上、積み上げられている。

「これ、お兄ちゃんが買ったの?」
「ああ。」
お兄ちゃんはマンガから目を離さずに返事をする。
「全部?」
「ああ。」
僕は読まないけど、こち亀がどれくらい出ているかは知っている。確か100冊は超えてたよな。さすがに全巻は買わなかったみたいだけど、それでも相当な量だ。いわゆる、“大人買い”ってやつだな。

そういえば、琴子の馬鹿が試験前ってことは、お兄ちゃんも試験前ってこと…だよな?
いいのかな?勉強しなくて?
まあ、愚問か。

僕はソファに座り、テレビのスイッチを入れる。さ、ニュース、ニュースと。
「え?」
ニュースを見ていた僕の前で、チャンネルが突然変わり、番組がバラエティになる。
僕は慌ててリモコンを探す。
「え?」
なぜか、こち亀を読んでいるはずのお兄ちゃんの手にリモコンが。
「お兄ちゃん、これ、見たいの?」
「たまにはうるさい番組もいいかなって。」
だけどお兄ちゃんはテレビを見ず、すぐにこち亀に目を戻した。
ま、いいけどね。たまにはバラエティも。

アハハ。結構面白いや。

…え?

またチャンネルが変わった。今度はドラマになる。
僕はまたお兄ちゃんを見た。

「お兄ちゃん、バラエティが見たいんじゃ?」
「たまにはドラマもいいかなって。」
だけどお兄ちゃん、テレビに目をやらずにこち亀を読んでいる。

その後も、テレビはほぼ10分おきに、番組が変わった。お兄ちゃんがザッピングを続けたから。
勿論、僕に文句が言える筈もなく…。


「ただいま!!」
やがて帰宅した琴子がリビングに顔を覗かせ、お兄ちゃんの隣にちゃっかりと座る。
「勉強、進んだのか?」
お兄ちゃんはリモコンを手から離した。僕はその隙に、しっかりとリモコンを手にする。
「うん、それなりにね。だけど…。」
「だけど?」
琴子は溜息をついた。
「一つ、どうしてもわからない所があってね。啓太が一生懸命教えてくれたんだけど、それでも分からないの。」
琴子が「啓太」という名前を口にした時、お兄ちゃんの眉がピクリと上がったのを、僕は見逃さなかった。
「啓太、凄い教え方上手いのよね。何ていたって、学年でトップだから。それでもあたし、分からなくて。モトちゃんったら“アンタ、こんなに優しく教えてもらっても分からないなんて、もう終わりね”とか言うんだよ?」
「…鴨狩も泊ってたのか?」
お兄ちゃんは、そっちが気になったらしい。
「うん。だけど、誰も寝ずにいたけどね。」
うわ~泊ったのかよ…。
あ、お兄ちゃんの眉がまた上がった。

琴子とあのロン毛、「毎晩、アジエンスは欠かしません」って感じの髪の毛の鴨狩って奴との間は、色々あったんだけどね。アジエンス(どうも琴子と金之助以外の年上の人間を呼び捨てにするのは気が進まないから、こう呼ばせてもらう)が趣味の悪いことに、琴子に熱を上げてたんだけど。
いや、あの時は大変だった。
このまま、お兄ちゃんと琴子が離婚なんてことになるんじゃないかってね。
だけど、お兄ちゃんが素直になったため、めでたく元の鞘に収まったんだけど。

琴子の中では、もうあのアジエンスは“いいお友達”になってるんだよな。
だけどお兄ちゃんの中では…この顔が物語っているよ。

「見せてみろ。」
「え?」
お兄ちゃんが琴子に手を出した。
「分からない所。」
「教えてくれるの?」
琴子はいそいそと、本を取り出した。お兄ちゃんはサッとそこへ目を走らせ、
「これはお前が分かるまでには、時間がかかるだろうな。」
と、溜息をついた。
「そう?」
「ああ。」
そしてお兄ちゃんは立ち上がった。
「ほら、書斎で見てやる。」
「わ!うれしい!」
2人は連れ立って二階へ…。


「さすが入江くん!!よく分かった!!」
その声とともに、琴子が書斎から出て来た。
「あ、裕樹くん。」
「分かったんだ。」
「うん、やっぱり入江くんが一番。あたしの先生は入江くんが一番!」
そう言って、琴子は風呂へ入りに行ってしまった。

何となく書斎に入る僕。
「琴子、分かったんだ。」
「ああ。」
お兄ちゃんは琴子が広げた本やノート、ペンケースを片付けていた。
「さすがだね。」
「そりゃあ、俺のあいつの教師歴はそんじょそこらじゃないからな。」
ん?今の口調、何だか嬉しそうな。
「昨日今日現れた奴になんて、あいつを納得させられない。」
お兄ちゃん、やっぱり…アジエンスに対抗意識燃やしたんだ。
琴子を分からせることができなかったアジエンスに負けまいと。
どんだけ、負けず嫌いなんだか。

僕はリビングへと戻った。
ソファに座ると、何かが足に当たった。それは、先程までお兄ちゃんが読んでいたこち亀。
僕は一冊取り出し、ページをめくる。

たった一晩、琴子がいないだけで、暇を持て余して普段全く読まないマンガ買って、落ち着かないからって、テレビをザッピングして…。
それだけ、琴子はお兄ちゃんの一部になっているってことなんだろうな。
しかも、琴子にばれないようにと、マンガをさっさと隠してさ。

その後、琴子がお兄ちゃんの傍にいない日が来る度に、お兄ちゃんの書斎にはこち亀が増えていった。勿論、琴子はそんな理由でこち亀が増えているなんて、今でも知らないままなんだけどね。







☆あとがき
お題、第4弾です。
まともに、お題に沿った内容だと思えるの、最初の一つだけ…。
もう無理だらけでごめんなさい。
上手に書ける人は書けるんだろうなあ…。
やっぱり、お題ってハイレベル…。
でも…はまりそう♪←恐れを知らない奴

あと、啓太とモトちゃんって、なんかすごく勉強できそうなイメージなんですよね。
二人で結構、トップとかにいたりしてるんじゃないかなって。
そんなイメージを入れてみちゃいました♪
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NO TITLE

『アジエンス』って、裕樹君ナイス・ネーミング!しかし、直樹も大人気ないというか懲りて無いというか…その直樹の微妙な変化を見逃さない裕樹君もさすが。『入江君が一番の先生』直樹にとって最高の褒め言葉ですね。恥ずかしげもなくそう言える琴子もかわいい!しかし、琴子がいないと淋しいなんて、直樹ってウサギさんみたい(笑)

今も昔も、琴子の先生は入江くんだけ・・・

琴子が一晩居ないだけで、入江くんは落ち着かないんでしょうね。
普段、態度にも言葉にもださない入江くんだけど、きっと夜も眠れないほど、琴子を欲しているんだと思います。

そんな入江くんに気づかない琴子だけど、(入江くんは琴子に知られたくないみたいだけど)
たまには、琴子にわかるように言葉に態度に表してほしいなって思います。
だって、不安になる琴子を見ているのは、辛いんだもん。

私も

今も学生だったら、直樹に勉強見てもらいたかったな?

以前は一人の方が良かったんでしょうが、今では琴子無しじゃダメなんですね?

そして相変わらずの鴨狩への嫉妬、可愛い直樹の行動ですね!

コメントありがとうございます♪

コメントありがとうございます♪

祐樹'Sママさん
本当に、何よりのほめ言葉ですよね、「一番の先生」って!
ずっと入江くんは琴子の勉強の面倒を見てきたわけで…やっぱり自分以外の誰にも、この座は渡したくないんじゃないかなって思うんです♪
そんな風に素直に気持ちを表現してくれる琴子ちゃんだから、入江くんは大好きなんだろうなって思います。

りきまるさん
あのベッドなんか、眠れたもんじゃないでしょうね!!(笑)
「広い…」とか呟きながら、何度も寝がえり打ってそう…。
そして、本当に気がつかれたくないんでしょうね。気づかれたら「んもう、入江くんたら」って琴子に勝ち誇られそうで(笑)そこも可愛いだろうに、それは許せないんだろうなあ~
だから、たまにみせる素直さに、琴子ちゃんはノックアウトされちゃうんだと思います♪

kobutaさん
きっと今は二人で一人って感じなんでしょうね!!
部屋にも一人じゃいられなかったりして(笑)家の中のどこかに琴子ちゃんがいるということで、安心しているんじゃないかなって思います。
私も勉強、教えてもらいたい…でもあの言い方には傷つきそう(笑)

佑さん
原作でこち亀があったことに、受けまして(笑)その意外性に。でもあのマニアックな漫画は入江くんのツボに入りそうな…
本当、琴子ちゃんがいないだけで暴君になってそうです。だけど「縛り付けるのはいや」とか自分に言い聞かせて我慢しているんだろうな~。

藤夏さん
琴子ちゃんは集めないかなって(笑)琴子ちゃんは少女漫画のヒロインに、自分を重ねそう!!(笑)
琴子ちゃんの中では啓太はもうすっかり「いいお友達」なのに、入江くんにとってはいつまでも油断ならない男なんでしょうね~。
いつまたチョッカイ出してくるかとヒヤヒヤもんじゃないんでしょうか。だったら少し優しくしてあげればいいのに(笑)

ばななさん
ばななさんのお好みは、こんな入江くんですか!!
お気に召して頂けて、嬉しいです♪
私も久しぶり?に素直?な入江くんを書きました^^

まあちさん
私も最初、このお題を見た時「入江くん!!」と思ったんです!これはだから…結構すぐに浮かんだかな♪
そしてそうそう!!あのグループは全員頭よさそうですよね!
真里奈も「医者狙うためにナース目指します」とか言いながら、実は自分も相当優秀。だからこそ、そんなことが言えるみたいな?
なるほど、だから学年でビリを争うだろう、琴子ちゃんがメンバーに入れられたんですね!!まあちさんの案に私も乗ります!!
そして、入江くん、こち亀、まちがいなく頭に入ってないでしょう!!ただページを繰っているだけ。「主人公は?」と聞かれても「ああ、俺、マニアックなところしか読んでない」とか返ってきそうです(笑)

ぴくもんさん
啓太のあの髪は、相当毎朝毎晩、お手入れに時間をかけていそうな(笑)
トリートメントはもとより、ヘアパックまできちんとしてそうな気がします。
そして智子ちゃんも成績よさそうですよね!!あのメンバー全員がTOP10に入っているんじゃないかって気がします。
そして直樹、なんといっても、あの琴子ちゃんを看護科へ入れられるくらいですもん!!文系から看護科、理系って相当難しいんじゃないかって気がするんですが…それをやってのける直樹はすごい!!


さすが。

琴子ちゃんの、先生は、今も、そして、昔も、入江君が、琴子ちゃんの先生でもあるんですよね、琴子ちゃんがいないと、入江君は、そわそわしてしまうんですね。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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