日々草子 見つめられると顔がほてる

見つめられると顔がほてる




フフフ…何度も見てもよく撮れている。
勿論、一切修正なし。だって偽りの愛なんて、あの人…入江先生と僕には似合わないもの。
さて、この写真をどこへ入れるかというと。
僕は医局の入江先生のロッカーの前にやってきた。
入江先生の本の中にでも挟んでおこう。
パラパラとページをめくるうちに、「おや?」と僕の写真を発見する。
「こんな所に大蛇森先生の写真が…運命かもしれない。」
とか思ってくれるかもしれない。
そう、恋は努力の積み重ねさ。フフフ。

あ、鍵かかってる。
それはそうだな。僕だってかけている。
ええと、暗証番号はと…。

…チッ!やっぱりこの番号か。
一発で開けてしまった僕も凄いけど、何か腹が立つことだ。
さてさて、何か挟むものは…あまり漁るとばれてしまうので、そのまま手を突っ込む。
あ、これ本か。先生は読書家だものな。
よしよし、ここに挟んでおこう。

これで、よしと。


ああん、もう、最悪!
入江くんの文庫と、あたしのマンガ、間違えちゃうなんて!!
今日、モトちゃんに貸すつもりで持ってきたマンガ、貸す前にパラパラとページをめくったら、入江くんの小説だった!
同じ書店で買ったからカバーも一緒。マンガは文庫サイズだし。何かの拍子で入れ換わっちゃったのね。

しかも…入江くん、その本を今日、西垣先生に貸すとか言ってた。
西垣先生があたしのマンガを受け取ってしまったら…絶対入江くんのこと馬鹿にするもん!!
なんかあの人に馬鹿にされると、自分のことのように腹が立つのよね。
西垣先生にそんなことで入江くんの弱みをつかまれたくないし。


よし…!
医局には丁度誰もいない!チャンス!!
入江くんに直接話してもいいんだけど、「お前は職場にマンガ持ってくるのか!」って怒られそうだし。それに入江くん、今外来だし。
ええと、ロッカー、ロッカー。
あ、まずいかな、勝手に開けちゃったら。
うーん…でもごめん、入江くん!今日は緊急事態だから!
夫婦だってことで…許して?ね?

しまった。
鍵かかってる…。
うーん、番号、番号…。

入江くんの誕生日…あ、だめだ。
じゃあ…結婚記念日とか?だったら嬉しいけど…あ、だめか。チェッ。
ええと…お義母さんの誕生日?違う。
お義父さんの誕生日、裕樹くんの誕生日…え?もしかして…うちのお父さんの誕生日?お母さんの命日?
嘘!!どれも違う!
まさか…チビが家に来た日とか!?
そんな、あたしそこまで覚えてないよ!!

いいや、落ち着け、あたし。他にも何かあったような…。

…。

あ!!

ビンゴ!!
ああ、もう入江くんたら!あたしの誕生日を暗証番号にしていたなんて!
愛を感じるなあ…ああ、あたしって…愛されてる…。

おっと、いけない、いけない。
こんな余韻に浸っている暇はない!
ええと、本、本…あった!!
さ、これを入れ替えて…完了!!

元通りにロッカーを閉めて…と。

やれやれ、よかった、よかった。



さて、休憩ね。
琴子から借りたマンガを読めるわ。
これ…結構泣けるって話なのよね。
どれどれ…。


う…う…。
どうしよう…メイク直しが必要になりそう!!
想像以上に泣けるじゃないの、このマンガ!!
職場で読むもんじゃないわね…。

ああ…どうなっちゃうの?この二人…!!
次のページは…。

…ゲッ!!!
ここは…主人公たち2人の見開きシーンのはずが…なぜゆえ、大蛇森の写真が!!

しかも、琴子が何でこんな物を!!
だって琴子と大蛇森といえば、この病院では犬猿の仲で有名じゃないの!
琴子がこんな写真持ってるなんて。
それにしても…。

「すごいコーティングされてるわね…。」
この大蛇森のスナップ、見事にパウチングされてるのよね。皺ひとつ寄らないようにって感じで。

「そんなに大事なのかしら?この写真。」
思わず声出し始めちゃったわよ。
だってあの子だったら、こんな写真があったら間違いなく、この広いおでこに「肉」とか描きそうなのに。

「入江先生の写真なら分かるけど…なんで大蛇森?」
そうよ。入江先生の写真だったら、あの子のことだからフォトフレームに入れたまま持ち歩くことも考えられるわ。

「もしかして…今までのあの態度は好きの裏返しとか?」
本人目の前にすると悪態つかずにいられず、でもそれは?

「まさか…大蛇森と不倫願望があるんじゃないでしょうね?琴子…。」

「…誰が不倫願望?」
え?ちょっと、誰もいないと思って独り言呟いてたのに、誰かいるの?

「これ、琴子のマンガだよな。この間買ってた。」
こ、この声…もしかして…。

「へえ。結構よく撮れてる写真じゃん。」
間違いない。
…一番聞かれちゃまずい人に聞かれた!!

「このマンガと写真の関係、そして不倫願望について説明してくれるよな?」
ああ…。
顔を上げるのも怖い…でも…上げないともっとひどいことに…。

アタシは思いきって顔を上げた。

「な?桔梗?」
そんな…そんな綺麗な顔で見つめないで下さい、入江先生!!
見つめられると…顔がほてります!!

「さ、どうぞ。」
どうぞって…どうぞって…!!!


…さっきから、じっとあたしのこと見ている入江くん。
ベッドの上には、あたしが今日モトちゃんに貸したはずのマンガと…なぜか大蛇森の写真。
あたしはチラリと入江くんを見る。
…見つめられると、ドキドキする。こんな緊張感溢れる場でも。
顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。
ああ…睨まれてもあたし、入江くんのことがつくづく好きなんだなあ。

「大蛇森の写真は…分からないってば。」
本当なんだもん。
どうしてこんなものが挟まれていたのかも分からないよ。
あ…もしかして!

「入江くんのロッカーに、あいつが入れたのよ!!」
あたしは名探偵になったかのように、入江くんへ言った。
「俺のロッカーに?」
「そうよ!ロッカーに入っていた本が、実はあたしの本だと知らずにあいつ…。」
そこまで言いかけて…あたしは自分の過ちに気がついた…。
「へえ…ロッカーねえ…。」
まずい…。
あたしも入江くんのロッカー、無断で開けたんだった…。

「お前、俺のロッカー、無断で開けたのか。」
「あ、あの…それは…。」
「俺の承諾もなしに。」
「ごめんなさい!!」
ここは素直に謝っておこう。うん、悪いのはあたしなんだから。
「だって…あのままマンガ入れていたら、入江くんが西垣先生に笑われると思って…それであたし…。」
ああ…入江くん、もう完全にあたしのこと、軽蔑してる!!

そう思った時…あたしの体が反転した。

「え?え?」
気がつくと、あたしはベッドの上に仰向け。そして入江くんがあたしを見下ろしている。
その顔は怒っていないみたいで、ちょっとホッとするあたし。
「じゃあ、俺も開けていいよな?」
「え?あたしのロッカー?」
そりゃ、お互い様だから開けてもいいけど…でも看護師のロッカーは更衣室の中だから、入江くんが入ってきたら…ちょっとまずいんじゃない?

「お互い様だよな、これで。」
「え?ああ…うん?」
何かよく分からないけど、これで許してもらえるなら返事をしておこう。

すると入江くん、あたしのパジャマのボタンを次々と開け始めた…!!

「ちょ、ちょっと、入江くん?」
「…お互い様。開けてもいいんだろ?」
入江くんはあっという間に、あたしのパジャマを全開に…。

「あ、開けてもいいって…これはちょっと違うでしょ?」
「だって、俺、お前のロッカー開けることできねえし。」
「だからって。」
「他に開けるとこ、ねえし。」
そ、そんな!!そう思っているうちに、入江くんにあっというまに口に含まれて…何も言えなくなる。

「あたし、明日は…日勤なんだけど?」
「俺もだけど?」
入江くんはあたしを見下ろして笑い、
「医者も看護師も体力勝負だよな。一晩寝ないくらいで参ってたら、仕事にならねえよな?」
と言った。
「そんな…。」
「ほら、もう黙ってろ。」
あたしの思考回路は、そこで途切れた――。


…やだなあ。
看護師のみんなも、他の先生も、患者さんまで、みんなジロジロ見てる…。
絶対今、あたしの顔、真っ赤だろうな。
「…徹夜したからって、ミスするなよ。」
あたしの前を歩く入江くんが、冷たく言う。
誰のせいで徹夜したと思ってるのよ!!

「だから絆創膏付けるって言ったのに…。」
「余計目立つぞ。」
はあ…。ああ…視線が辛い、恥ずかしい。
あたしの首、制服の襟が開いている所には…はっきりと入江くんの痕が!!
わざと、あたしが寝ている間につけたのよ!!
しかも…今日に限って、回診にあたしを指名する入江くん!!
そんなにあたしに恥をかかせたいってわけ!?
絆創膏付けるって言ったら、「堂々としていれば、誰も気にしない」って言ったから…でもみんな、じっと見ているわよ!!

「…元はと言えば、俺のロッカーを覗いたお前が悪いんだからな。」
あたしの考えを見透かすかのように、入江くんが言った。
うっ…!
それを言われると…何も言えなくなるあたし。
今日一日、何だか罰ゲーム受けているみたいだ…はあ。


ったく、お前が元は悪いんだからな。
これくらいやらないと、俺の気が済まないっての。
大体、お前の本に大蛇森先生の写真が挟まっていたことが許せない。
何か…お前が汚された気分でさ。

一番腹が立つのは…どうして大蛇森先生がお前の誕生日を知っているのかってこと。
まさか、あの人…実は琴子を狙っているのか?
冗談じゃない。
琴子に付きまとわれるくらいなら、俺に付きまとってもらった方がマシだ。

「ほら、行くぞ。」
「はあい。」
恥ずかさのあまり、こうして顔を真っ赤にしている琴子を見ているのは、正直楽しいけどな。
しかしまあ…我ながらはっきりと付けたもんだ。
でもこれだけ付ければ、こいつに変な気を起こす輩は出ないだろう。










☆あとがき
お題第3弾です。
すごい無理矢理こじつけてしまいましたが。
本当は、片思い時代の話にしようかと思ったのですが。
前半の大蛇森先生が写真を忍ばせるところまでは前に考えていたのですが、どうしても先が進まずにそのままお蔵入りかと思っていたのですが、こうして日の目を見ることができて良かった(笑)
あとお題2つ。出来れば全部完成させたいなあ。
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いいですいいです!
入江くんってば~やきもち焼きなんだから~(笑)
でも暗証番号・・愛ですねぇ♪

それぞれの視線での一つのお話、これ楽しいです!!
またお願いします(*^_^*)

こんばんは。

やきもち焼きの入江くん。

琴子の天敵の大蛇森にまでやきもちを焼くなんて・・・

やきもち焼きすぎて、入江くん。自分のものだと言わんばかりに、琴子にマー
キングをしてしまいましたね。(笑)

しかし、入江くんのロッカーの暗証番号は、琴子の誕生日だったようで、ここで一つ疑問が・・・
琴子のロッカーの暗証番号は、入江くんの誕生日なのかなって・・・

琴子に聞いてみたいです。(笑)

大蛇森何がしたい?

琴子の妄想も酷いですが、大蛇森の妄想も凄いですね!

どうしてそこまで行く?そんな訳ないじゃんねー!

そして直樹、御印見られても平気なのですね?あなたは?

付けた本人と、付けられた本人が一緒に回診なんて周りが迷惑のような?

でも、周りは慣れっこなのかな?何か血圧上がりそうで・・・・・!

コメントありがとうございます

コメントありがとうございます♪

くーこさん
暗証番号、本当に愛を感じますよね♪
ちょっと今回は、強引な入江くん&意地悪な入江くんにしてみました(笑)
特に最後は…「可哀想に、琴子ちゃん…」と思わず呟いてしまったくらい(笑)
普段、こういう入江くんは書き慣れていないので(いや、自分で気づいていないだけ?)ドキドキしちゃいました。
またお題、挑戦してみたいです!!

りきまるさん
マーキング琴子ちゃん、一日大変だったでしょうね。周りも「見ちゃいけない」と思いつつ、つい視線が…という感じでしょうか?
まさか入江くんが琴子ちゃんの誕生日を暗証番号に…とはだれも思っていないでしょうから、その盲点を突いているのではと思って書いてみました。
そして、琴子ちゃんのロッカー。これはきっと誰もが入江くんの誕生日か結婚記念日だと思いそうなので、プロポーズをされた日とか、一部の人間しか知らないような日を番号にしているような気がします♪

kobutaさん
ほんと、大蛇森、何がしたいんだ(笑)
写真見ただけで、気持ちが変わるなら…世の中の片想い人間全員がそうしてるだろうに(笑)
ある意味、本当に健気と言える人です、大蛇森先生…。
そして御印(笑)、きっとみんな「あの二人、やるこたやってたんだ!」って思っているに違いないです(笑)

まあちさん
大蛇森先生は、入江くんの誕生日を教えろと琴子に詰め寄って、どうしても教えたくない琴子が自分の誕生日を入江くんの誕生日として教えた…後日、事実を大蛇森先生は知った…とか想像してしまいました(笑)
でも、ほんと、一発で当てた大蛇森先生もすごい(笑)入江くんを知り尽くしているというか。それだけ知り尽くしてあきらめないあなたが好きです、大蛇森先生(笑)

chan-BBさん
GW中にお越し下さり、ありがとうございます♪
直樹にとって、琴子のロッカー=琴子のパジャマの中なんですね(笑)
いやあ、すごい理由だし、いいなりになる琴子ちゃんもすごいし…
それだけじゃ飽き足らず、マーキングして、困らせるところが…と、自分ですごいこと書いたなあと思ってしまいました。
でもchan-BBさんのツボに入ってよかった。ちょっとやり過ぎたかしら?と内心びくびくしていたものでして。

佑さん
入江くんにとって、琴子ちゃんの持ち物に自分以外の男性の影がちらつくことが何よりも許せないんだと思います^^
独占欲の塊だから、入江くん…。
大蛇森先生を久々に登場させることができて、ちょっと楽しかったです♪
やっぱり最高、大蛇森先生!!そのまま叶わぬ愛を貫いて下さい。実ることはないけどね。さすがに私も実らせるわけにはいかないんで(笑)

いたさん
自分で書いていて、疑問なのですが、あの写真はどうなったんだろう?(笑)
入江くんが命じて、琴子ちゃんがナースステーションのシュレッダーで処分したのだろうか?(笑)
でも本当、結果として屈辱的なことになっちゃいましたね、大蛇森先生にとっては(笑)
きっと二人並んで歩いている様子を見て、「キィーッ」とハンカチ噛みしめていそう(笑)

プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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