日々草子 子守唄
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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子守唄

ボン!と琴子のお腹も目立ち始めた。
「動く?」
「うーん、まだ?」
裕樹に訊ねられ、笑顔で答える琴子。その手には針と布。琴子は現在、褓を縫うことに夢中になっている。
「着物ってきつくないの?」
お腹がふっくらとしてきたのに、まだ和服姿の琴子を裕樹は心配する。
「大丈夫。帯もゆったりとしめているから。」
妊娠直後、一旦は洋装姿を見せたものの、すぐに琴子は和装に戻ってしまった。それが直樹に言われたからだというのは、琴子と直樹の二人だけの秘密である。

そんなある日、二人の部屋に入ろうとした直樹はノブを回す手を止めた。中から琴子の声が聞こえてくる。
「…はい!パリちゃん、気持ちいいですか?」
そっとドアを開け、隙間から中を除く直樹。中では琴子が何かやっている。人形を相手にどうやら褓替えの練習中らしい。
ちなみに「パリちゃん」とは、琴子が呼んでいるお腹の赤ん坊の呼び名である。

「え?お母様はおむつを替えるのが日本一上手ですって?パリちゃんたら!!」
琴子の独り言に、思わず直樹は噴き出しそうになった。
「…おむつ付けてる赤ん坊が、んなこと言う訳ないだろうが。」
だが、琴子は直樹に覗かれていることにも気がつかずに、
「うーん。もうちょっと早く替えられた方がいいわよね。よし、もう一度!」
と、人形から褓を外すと、再び、
「はい、はい。さ、パリちゃん。おむつ替えましょうね。」
と練習を始める。傍らには琴子が縫った褓が山のように積まれていた。
お腹をかばいながら、練習に夢中となっている琴子の表情は本当に楽しそうで、直樹も自然と笑顔になる。
「はい、できあがり!」
そして人形を抱き上げる琴子。しかしそのつけられた褓がずり落ちる。
「あら…ちょっと緩かったか。」
そしてまた、琴子は笑顔でおむつを外す。外しては付けて、外しては付けて…その練習を繰り返す琴子の邪魔をしないよう、直樹はそっとドアを閉めた。

それから数日経った日のこと。
「そろそろ、適当な人を探しておかないとね。」
夕食の席で紀子が口にした。今日の夕食の席には直樹はいない。何のことだろうと琴子が思っていると、
「そうだなあ。いい人を早く見つけるに越したことはない。」
と、重樹も同調する。
何だろうと不思議そうな顔をしている琴子に紀子が気がつき、
「赤ちゃんのお乳母さんのことよ。」
と教えてくれた。
「お乳母さん…。」
そう言われても、まだ琴子にはピンと来ない。
「お乳母さんがいると、琴子ちゃんも子育て楽だし。」
紀子が琴子に優しく話す。
「あの…お乳母さんって、ずっと赤ちゃんの傍に?」
「それが仕事だもん。」
裕樹が口を挟んだ。
「お乳飲ませて、あと…色々教えたり。」
「色々?」
「そうだよ。僕も兄様もそうやって来たんだ。」
それが普通だと言わんばかりに裕樹は琴子に話した。

「そろそろ見つけないとね。遅くなって生まれたのにいないと言うことになったら大変ですし。」
紀子と重樹は話を続ける。
「何と言っても、わしらの初孫だもんなあ。人柄も申し分ない、最高の乳母をつけないと!」
笑顔で重樹が話した。
「直樹さんと裕樹さんの時も、いい人だったし。」
「琴子ちゃんの意見も聞きたいから、面談の時は一緒にいてもらうといい。」
「そうですわね。」
重樹と紀子に笑顔を向けられ、琴子は、
「はい…。」
とだけ返事をした。

「お乳母さんか…。」
夕食後、琴子は部屋に戻り呟く。
「そっか…華族様はお乳母さんがいるのが当たり前だものね…。」
てっきり、生まれてくる子供は自分の傍でずっと面倒を見られるものだと琴子は思っていた。紀子は夜泣きとか夜中に起こされると琴子が大変だからと言っていたが、それも琴子には楽しみの一つだった。
本当は紀子たちに言われた時に、自分の手で育てられると琴子は言おうかと思った。が、やはり華族には華族のしきたりがある。それを琴子が好きに破るわけにもいかない。そして、もし琴子がそんなことをしたために、将来、生まれて来た子供が恥をかくことになったら大変である。紀子たちも琴子と子供のためを思って言ってくれているのだからと、自分に言い聞かせたのだった。

そして琴子は山のように積まれた、せっせと縫い溜めた褓から一枚を手に取った。
「せめて…このおむつだけは使ってもらえるよう、お乳母さんにお願いしてみようかな。」
そして一日一回くらいは、自分の手で褓を取り替えられればいいのだけどと思い、褓を元へ戻した。


それから数週間後。
今日は乳母の候補者が入江家に面談にやって来る日である。直樹と裕樹のそれぞれの乳母の出身地から年齢等を考慮して選んだ人物だった。

「…これで女中さんには見られないよね?」
鏡に映った自分に琴子は話しかけた。今日は髪も高く結いあげ、洋装姿。自分が恥を書くことは、子供も恥をかくと思い、華族の若奥様に見えるようにしてみたのだった。

「それにしても…遅いわね。」
ところが、時間になっても乳母候補の姿は現れない。紀子と琴子は何度も時計を確認する。
「時間を守れない人はちょっと困るわね…。」
紀子は溜息をついた。
「道に迷ったのでは?」
不慣れな東京、人の多さで困っているのではないかという琴子に、紀子も、
「そうかもしれないわね。迎えを駅までやればよかったわ。」
と、自分の落ち度だと反省する。

二人が心配して待っていると、居間の扉が開かれた。入って来たのは、直樹。
「あ、直樹さん。ね、お乳母さん見なかった?」
紀子が直樹に訊ねる。
「ああ、門の所にいたよ。」
直樹は平然と答えた。その答えに驚く紀子と琴子。では、なぜ中に入って来ない?
「いたけど、帰ってもらった。」
「帰ってもらった!?」
紀子と琴子は同時に叫んだ。
「なぜ、そんな失礼なことを?」
紀子が血相を変え、直樹につめよる。琴子は驚きのあまり言葉も出ない。
「だって、乳母なんていらないし。」
直樹は冷静に紀子に言った。
「いらないって。」
「乳母は必要ない。」
直樹はきっぱりと紀子へ告げた。そして居間を出て二階へと向う。

「直樹さん!!」
慌てて琴子は直樹の後を追った。
「慌てるとパリ夫によくないんじゃない?」
部屋に入った直樹は、冷静なまま。
「パリ夫って…まだ男の子かどうか分からないのに。」
思わずそんなことを口にする琴子だったが、本題にすぐに戻る。
「何でお乳母さん、帰ってもらっちゃったの?」
琴子には直樹の考えが分からない。
「だから必要ないって言っただろう。」
「そんなことないでしょう?」
直樹は琴子をゆっくりと傍らの椅子に座らせた。自分も傍に座る。
「俺とお前が育てれば問題ないだろう。」
「だけど…。」
「乳だってお前がやればいいし。」
「それはそうだけど。」
「勿論、夜中に起こされたり大変だろうけど、俺だって協力するし。」
「だけど…お乳母さんは…華族様の世界では普通なんでしょう?」
琴子は心配そうに直樹を見た。
「まあな。でも別にそうしないといけないって決まりはないし。」
「だけど…色々教えたりする役目もあるって聞いたもの。」
教えるというのは、きっと華族の世界の色々なことであり、華族ではない自分には教えられないと琴子は不安な気持ちを直樹へ正直に告げた。
「別に教えるものなんて何もないと思うけどね、俺は。」
直樹はいたって楽観的に考えていた。
「どうしても何か教える必要があるっていう時は、俺が教えればいいし。両親だっているし。」
「でも…。もし、お乳母さんがいなくて、パリちゃんが将来いじめられたりしたら…?」
自分の経験から琴子はそれを心配する。
「平気だよ。」
心配ばかりしている琴子の頭を、直樹はそっと自分の胸へと押しつけた。
「きっと…自分が乳母じゃなくて、母親の手で育てられたことを自慢するような子に育つだろうから。」
「そうかなあ…?」
琴子の不安はまだ払拭できずにいる。
「それに…。」
「それに?」
直樹は自分を見上げる琴子の顔を優しく見つめて、
「俺、見てみたいんだよ。日本一のお母様におむつを取り替えてもらって気持ちいい顔のパリ夫。」
と笑った。

「…見てたの?」
誰もいないと思って、独り言を思う存分言っていたのにと琴子は恥ずかしくなった。
「あんなに楽しそうな琴子、俺、もっと見たくて。」
直樹は両腕で琴子のお腹を庇いつつ、優しく琴子を包み込む。
「絶対幸せに違いないさ。あんなに楽しくおむつを替えてくれる母親に育てられるんだから。だから、乳母なんて必要ない。」
「直樹さん…。」
直樹の優しさに、琴子は自分の不安が拭われていくことを感じていた。
「…ちゃんと、いいお母様になれるかな、私。」
直樹の腕の中で、琴子が呟く。直樹は笑って、
「大丈夫。琴子は俺の最高の奥さんで、最高の母親になれるから。」
と励ました。琴子はその言葉が心にしみわたることを感じながら目を閉じた…。


乳母は必要ないという直樹と琴子の考えは、あっさりと重樹と紀子に受け入れられた。
「それが当たり前だと思って、疑いもしなかったわ…。」
そして紀子は乳母がいないのなら、自分も褓を替えたり世話ができると喜んだ。
「そうだなあ。家族みんなで助け合って育てるのもいいものだ。」
重樹も頷いた。

「よかった…。みんな分かってくれて。」
琴子はそっとお腹をさすった。その髪はいつものお下げ、そして着物姿に戻っている。
「いつもの琴子でいることが、パリ夫も喜ぶ」
という直樹の言葉に従ったのだった。実は直樹が一番、その琴子の姿が好きだというのが真実である。

「パリちゃん、優しいお父様でよかったですね。」
家族全員が自分たちの考えを受け入れてくれたことも嬉しいが、一番嬉しかったのは自分の気持ちを直樹が気が付いていたことだった。
「…お母様も優しい旦那様で幸せ。」
そして、「早く会いたいね」と言い、琴子は優しい声で子守歌をパリちゃんに歌い始める。

「…俺も眠くなりそうだ。」
隣から流れてくるその歌声に、直樹は聞き惚れながら笑顔で絵筆を握った。










☆あとがき
『オルゴール(仮)』の続きが読みたいとおっしゃって下さった、嬉しいお言葉におこたえしてみました!
話の内容はずっと前に浮かんでいたのですが、いつUPしようかとタイミングを実は見計らっておりました(笑)
ありがとうございます!!

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コメント

続編、嬉しいな!

こんばんは、オルゴールの続編ありがとうございます。

お腹の赤ちゃんも目立ってきて入江くんと琴子は幸せそのものですね。

バリ夫orバリ子も順調に育ってきてそろそろ乳母のお話が出て来たようですが、華族の家柄とはいえ琴子としては自分の手で子供を育てたいと思っているようですね。
将来の子供の為、そして琴子の事を心配してくれている義理の両親の温かい心を思うと言い出せない感じがちょっとだけ切なくなりました。
そんな琴子の気持ちを察してくれた入江くん。
本当にいい夫婦ですね。

羨ましすぎる(笑)

おめでとう

明治編、おめでたですね!

着物で妊婦大変そう?昔は皆そうだったんですよね!

尊敬しちゃいます。

直樹が琴子の気持ちを理解してくれて良かったです。

生まれてきた赤ちゃんは本当に幸せですよね!

無事に可愛いあかちゃんが生まれますように!

パリちゃん~

水玉さん更新お疲れ様~
今日はお天気もよく春らしくって気持ちいい!て思ってたら、なななんですか~いや~ん♡直樹優しい~
パリちゃん!いいな~こんなにステキな両親がパリちゃんを思って待っていてくれるなんて!
んにゃ~初めてパパやママになる人は皆そうだろうけど!
直樹の「パリ夫」にニタニタが止まりませんって~笑

コメントありがとうございます

コメントありがとうございます♪

ひっそりと、忘れたころに書いているこのシリーズ(笑)
初めて書いたパラレルなだけに、思い入れがあるんです^^だから…自分が飽きるまで続けてみようかと。

りきまるさん
亀のようなスピードにて進むマタニティ琴子ちゃん(笑)
きっと琴子ちゃんは、自分の手で育てたいだろうなと思ってこんな形にしてみました♪
それにしても、直樹兄弟の乳母は…大変だったろうなあ。何も教える必要もなさそうだから楽かもしれないけど、緊張の連続だったのではないかと思います。

kobutaさん
そうなんですよね。昔はみんな着物だから…大変だったろうな。お風呂だってある家は珍しかったでしょうし…。
いや、何より自宅出産…今はわざとそれを選ぶ人も多いようですが…それでも大変だったろうなと思います。
現代は現代で産婦人科がいなくて大変みたいですが…。
時代が変わってもお産は本当に大変です。

美優さん
本当、やっと太陽が見えるように…と思っていたら、また明日から崩れるとか…涙
初めてパパとママになる時って、もう色々大変でしょうが、何よりも待ち遠しくてたまらないでしょうね。あ、でもこれは二人目でも三人目でも同じか♪
入江くんは自分が男だから、生まれてくる子も男だと思っているんでしょうか(笑)

佑さん
確か少し前に「出産カーニバル」とか書いた覚えたあったことを思い出しました(笑)
まずはこちらからいってみようかと(笑)
本当、何気ない幸せが一番です^^

藤夏さん
そんな~一言でもポロリと漏らしてくださればよかったのに~。
私としては、覚えていて下さるのが何より嬉しいので、「あの話は」というお言葉は本当に感激します♪
愛する琴子ちゃんが産んでくれる自分の子供ですから、本当に何でもしてあげたくてたまらないんでしょうね♪
藤夏さんに褒めていただけたので、もうすぐ、「仮」を消して本タイトルにしました(笑)単純な私。

るんるんさん
最後まで読んで下さってありがとうございました^^
そして続編をとのお言葉、本当にありがとうございます♪
琴子ちゃんが何を考えているか、入江くんには全て分かっているんだと思います。もちろん、それは琴子ちゃんも…。
きっと赤ちゃんが生まれたあとは、琴子ちゃんは喜んでオムツを洗っているんだと思います^^

まあちさん
ありがとうございます。いや~あまりに治りが遅いので、仕方なく病院に行って薬もらってきました…熱ないから他は元気なんですが、喉と鼻が…涙
なので、ぼけっとしている頭を覚ますため、時折気分転換(の方が多い気が)で書いています(笑)
この頃は、男子がお台所へ入るのも非難の的でしたものね~いやあ、今の時代に生まれて良かった(笑)
琴子ちゃんの不器用さを入江くんがフォローしながらお手伝いしている様子が私も目に浮かびます♪

foxさん
トンブリの余韻が残っているのか…なんだか甘い入江くんが続いております(笑)
これ、しばらく続くかも(笑)
ありがとうございます。体…声がどうもおかしくて。それくらいしか調子が悪いところがないので頑張っております。早くすっきりしたい~
この話に出てくる二人は本当に優しくて、私もだからしつこく書き続けている気がします。

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