日々草子 トンブリの休日 4

トンブリの休日 4





「今日はとっておきの場所へ連れて行ってあげるね。と、言っても、この王宮の中だけど。」
琴子が言うには、本当は王宮の外へ直樹を案内したいのだが、はやり警備等色々問題があるらしい。
「私の突然の思い付きで警備の人を困らせるわけにいかないから。」
一か月、王女の生活を離れていたとはいえ、王女としての自覚は忘れていないらしい。そんな琴子に密かに感心する直樹(勿論、口に出しては言わない)。

案内されたのは、倉庫めいた場所だった。
「ちょっと待ってね。ええと…暗証番号、暗証番号と。」
ブツブツ言いながら、ピッピッピッとボタンを押す琴子。途端に、
ブビー!ブビー!
と、大きなブザー音が響きわたる。そして警備の者が数名駆けつけて来た。
「ごめんなさい。ちょっと間違えちゃった。」
ペコペコと警備の人間に頭を下げる琴子は…王女とは思えない。

「あ、開いた、開いた。」
どうぞと促され、直樹はその場所へ足を踏み入れた。

「…すげえ。」
思わず感嘆の声を上げる直樹。そこには…トンブリ王国の王宮の宝物が集められていた。
「一番見せたいのは、これ!!」
ジャーンと言いながら琴子が見せた物、それは宝冠だった。
「見て見て。ここ、ここ。」
そして琴子が指したのは宝冠の中央に埋められている宝石。
「…サファイア?」
「ピンポーン!!さすが入江くん!」
直樹の回答に、琴子は手を叩いた。
「この宝冠ね、代々国王や女王の戴冠式に使われる物なの!」
それは見事としか言いようがない宝冠だった。サファイアの大きさといい、その周囲に埋められている数々の宝石といい、さすがに直樹も言葉を失う。
「ほら、見て!」
次に琴子が指したのは、肖像画。そこにはこの宝冠を戴いた男性が描かれていた。
「お父様よ!」
「へえ。」
優しそうなその男性は、君主とは思えない。そして琴子には似ていない気がした。
「お前、お袋さん似?」
隣に飾られていたのは、どこか琴子の面影を感じる女性だった。自分で口にしながら、王女の母親なら王妃だろうに、それをつかまえてお袋さんとはと思う直樹。
「そう。亡くなったお母様に似ているってよく言われる。」
そして琴子は、昔からこの宝冠、特に自分の誕生石であるサファイアが大好きで、よくここに足を運んでいたと直樹に話した。


宝物庫を出て、二人は王宮内へと戻った。
二人で歩いていると、
「あ…。」
と、琴子が何かを見つけ声を上げた。反対側から歩いてきたのは男性だった。男性は廊下に飾られている絵画の前に足を止めては、何だか勝手に角度を直している。
「キュウイチ…。」
琴子が呟いた。直樹は男性を見る。成程、頭髪がピシッと9対1に分けられており、乱れの一つもない。
―― これが…噂のキュウイチか。
キュウイチ、琴子の婚約者になる寸前だった男性である。

「あ。」
どうやらキュウイチも琴子たちに気がついたらしい。二人へ近づいて来た。
「トンブリへ戻って来ていたんでしたね。」
先に口を開いたのはキュウイチだった。ちなみにキュウイチとは琴子がつけた渾名である。
そしてキュウイチは、直樹に目をやる。その視線が冷たく、直樹は少々気になった。
「こちらが馬鹿王女の新しいお守になった生贄ですか。」
「生贄…。」
思わず直樹が口にする。いくらなんでもその言い方はないだろうと思う直樹。何か言い返したいが、きっと琴子がカンカンになって何か言い返すだろうと思い、我慢している。
しかし、琴子は、何一つ言い返さず、
「元気そうだね…ええと…。」
と、にこやかにキュウイチに話しかけた。
「エドワードです。まったく、人の名前一つ覚えられないんですね。本当に大馬鹿。」
「大馬鹿」の部分を口調を強めて、キュウイチ、本名エドワードは嫌味たっぷりに言った。
―― エドワード…。
申し訳ないが、その名前がこれほど似合わない男はいないだろうと直樹は思った。9対1に分けられた、寸分の隙もない髪型(せめて7対3にすればマシなのに)、銀縁眼鏡、髪同様、ピシッと締められたネクタイ…正直、絶対近づきたくないタイプ。

「…ごめんなさい。」
その一言を口にするのが精一杯で、俯いてしまった琴子。そんな琴子を更に見下すキュウイチ。
「しかし、本当に王女に生まれた自覚ゼロなんですね。頭も悪い上に…まったく、どうしてこんな人間が王女になんて生まれたんだか。」
あまりの侮辱のされように、さすがに直樹が口を出そうとした。が、琴子が直樹の袖をそっと掴む。それはまるで「黙っていて」と琴子が言っているようだったので、直樹は我慢した。
「それじゃ。」
言いたいことだけ言うと、キュウイチは去っていく。その廊下を曲がる時に90度の角度に見事曲がる後ろ姿を見て、直樹は、
「お前らしくないじゃん。何であんな言われっぱなしなわけ?」
と、琴子に訊ねた。
「ううん、いいのいいの。それより、ごめんね。入江くんにも嫌な思いさせちゃって。」
琴子は逆に直樹を気遣う。

何となく気まずい雰囲気のまま、二人は別れ、それぞれ自室へと引き上げた。
直樹は荷物の中から、小箱を取り出し、中を開けた。
「あんな立派な物を見慣れている奴には…おもちゃにしか見えないよな。」
「一応、本物なんだけど」と一人呟いて直樹が見ているのは、小さいサファイアの石がついた指輪だった―――。













☆あとがき
うわ…なんかすごい極悪人になってしまった、キュウイチ…。
さすがの私も好きになれない…。
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エドワード?

キュウイチ君改め、エドワードは誰?うーん思いつかない!

小さくても、直樹の心のこもった物なら琴子はなんだって喜ぶと思うよ!

指輪があるってコトはそうゆうコトなんだよね直樹!

うんうん早くその指輪をはめてあげてね!

2度目のお邪魔です。

キュウイチなんてムカつくやつなんでしょう。
私の大事な琴子をこんなに侮辱して・・・

言われっぱなしの琴子ですが、この二人の関係は、過去に何かあったんでしょうか?

もう少し、入江くんと会うのが遅かったらこんなやつと婚約していたと思うと本当に入江くんと会えて琴子は幸せだと思いました。

婚約指輪を用意してトンブリ王国来ていた入江くん。
きっとサファイアの大きさじゃないと思うので、早く琴子の指に嵌めてあげてほしいです。
琴子なら石の大きさでは無く、入江くんの気持ちがこもった指輪に感激すると思うので・・・

(-_-;)ムムム~

キュウイチ、究極にムカつきます(-_-メ)

でも、実は琴子ちゃんの事が好きだけど子供が好きな子をいじめるようなか感じで、幼稚なことをしちゃってるんじゃないか、そして入江くんとの三角関係!?なんて展開も妄想してみたりしちゃってました☆

入江くん、早く琴子ちゃんに指輪を渡してあげて欲しいです!!
きっと琴子ちゃんはサファイアの大きさにこだわらないし、入江くんの気持ちに感激するはず!!

それにしても…キュウイチ…私も好きになれないタイプです(水玉様、ごめんなさい)
でも、キュウイチの姿を想像するとインパクトがありすぎて、今日あたり夢に出てきちゃうかも(笑)

悪役は非難されるために存在します

コメントありがとうございます♪

kobutaさん
いや~色々かっこいい外国男子名を考えたのですが、いかんせん、カタカナ苦手なもので…結局超平凡な名前に(笑)
でも私、エドワードと聞くと金髪を浮かべるんですよね…なぜか。
そうですよ、大きさじゃないです、心、心、その心プライスレスです。

りきまるさん
「私の大事な琴子」に爆笑しました。
いや~私も辛いんですよ?こんなに可哀想な目に遭わせて…グスン
でもそれくらいいやな奴にしないと、なんかメリハリのない話になりそうだったので…
でも本当に憎いやつだ、キュウイチ。いやだな、こんな奴、本当に。

愛結美さん
ええええ、もう究極にムカついて下さい(笑)
なんかそう言われることに、快感すら覚え始め…
でもよくドラマの悪役とかって見ていて「こいつ腹立つ」「まだ生きていたか」「だれか何とかしてくれ」「いつ流刑されるんだ」とか口にしませんか?いや、私今、そうなんですが(笑)
だからそこまで言われるくらいの人間にしないと悪役とは言えないんだろうなと思いつつ、初悪役を書くことに挑戦中です。
だから御遠慮せず、もう存分に悪態ついて下さいね(笑)←すごい変な返事(笑)

佑さん
本当、気がつかなかったけど上から目線だ~
私としては佑さんに「琴子ちゃん可哀想」と言ってもらえるくらいの悪役街道を走らせたいのですが…キュウイチ。
果たしてそれは実現するのか?

まあちさん
お返事を書いているうちに、本当に快感に(笑)
だからまあちさんが待ち焦がれるような男じゃなかったんですよ、キュウイチ(笑)
もうちょっとおもしろく描ければなと思い、不可能だと早々に気がつき、それで悪役決定(笑)

藤夏さん
しかも指輪見て、自信なくしている入江くん(笑)
これが自分でもツボに入っています。
頑張って買っただろうにねえ…
これでキュウイチにも自信なくしたら…それはそれで面白いけど、そうはいかないと思いますが(笑)
何か意味不明なお返事になってしまってごめんなさい!!!

foxさん
ほえさせたくとも、飼い主ちゃんが止めちゃったから~。
取りあえず、読んで下さった皆さんが腹を立てたということで、悪役路線は成功したのか、キュウイチ(笑)
あとは、9対1の髪形をどう利用するか(笑)
なんか頭の中がキュウイチでいっぱいになってきました(笑)
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Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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