日々草子 トンブリの休日 2

トンブリの休日 2




飛行機を乗り継いで、漸くトンブリ王国の首都、キリタンポに到着したのは、日本を出発してどれくらい経っただろうか?
「想像以上に遠かった…。」
思わず直樹が呟く。そして、そんな遠くから一人、日本へ来ている琴子の凄さを知る。
「うーん…。」
空港内で、琴子はキョロキョロと辺りを見回していた。しかも、その様子がおかしい。
迎えを探しているというより、誰かに見られていないかといった様子なのだ。
「あ!」
琴子が声を上げた。そして、
「入江くん、隠れて!」
と、なぜか二人で柱の陰に隠れる。
「…やっぱり来ていたか。」
直樹は琴子の後ろから、首を伸ばして一体何があるのかと見た。
「な、何だ!?」
空港の外には…
『お帰りなさいませ!!コトリーナ王女殿下!!』
『ようこそトンブリへ!!人江直樹様!!』
という派手な横断幕を持った人々が集まっていた。
「“ひとえ”って誰だよ…。」
あんな簡単な字を間違えるなんてと、直樹は溜息をつく。そんな直樹に琴子は、
「漢字は難しいから…。」
と一応、王女らしく国民をフォローするのだが、
「もう、私は王女じゃないっていうのに…。」
と、想像以上の歓迎に口を尖らせている。でもこれだけ迎えが来るということは…琴子が慕われている王女かということだろうと、直樹は思い、そんな琴子を誇らしく思える。勿論、本人には言わないが。

「…王女様、王女様。」
「あ、じいや!!」
琴子の前に、老人が現れた。
「お帰りなさいませ、王女様。」
「ただいま…ね、あれ何とかならない?」
琴子は老人に縋る。老人は、
「大丈夫でございます。どうぞこちらへ。」
と、琴子と直樹を導いた。

老人の正体は、琴子が住む王宮に長年仕えてくれている侍従とのことだった。その侍従が、
「これにお乗り下さい。」
と、二人に見せた乗り物。
「さすが、侍従!!これならばれないわよね!!」
琴子は感心したが、直樹は、
「…マジかよ。」
と泣きたくなった。

侍従が用意した車、それは…護送車だった。

―― 何だか極悪人になった気分だ。
護送車に揺られながら、直樹はそんなことを思う。琴子は、
「あ、見て。あそこが国会議事堂。」
「あそこはね、トンブリ大学よ。」
と、直樹にキリタンポ市内を案内する。が、
「違います、王女様。あちらは裁判所でございます。」
「あちらは大学ではなく、図書館でございます。」
と、侍従の訂正がすぐに入る。どうやら…生まれ育った国なのに地理がよく頭に入っていないらしい。

やがて護送車は王宮内へと入った。
「広い…。」
小国の王宮だからと思っていた直樹だが、それは予想に反していた。
「王宮内には、郵便局、病院と一通り揃ってございます。」
侍従が直樹に説明してくれた。つまり、王宮内は一つの街を形成しているとのことらしい。

―― 成程、琴子が王宮の外に出なくても生活できるわけだ。

直樹は思う。そして、そんな生活を送っていたからこそ、東京であんなにはしゃいでいたことも…。

王宮に入ると、国王は…留守だった。
「本日は公務で数日後にお戻りでございます。」
「ええ!!人を呼びつけておいて何よ!!」
国王付きの侍従に言われ、琴子が文句を言う。すると、
「お手紙にそう書かれておいでかと…。」
と、言いにくそうに侍従が言った。琴子は手紙を取り出す。
「あ…本当だ。そう書いてある。」
直樹は琴子を睨んだ。睨まれて琴子は、
「だって…時差を考えてなかったんだもん。」
と、訳の分からない言い訳をしたのだった。

「ここが入江くんのお部屋!!自由に使ってね!!」
琴子は直樹を部屋へと案内した。
「すげえ…。」
さすがにそう漏らしてしまう直樹。その部屋は直樹の日本の部屋の何倍あろうかと言うくらいの、広い広い部屋。そして調度品も豪華だった。
やっぱり琴子は王女なんだと、今更ながら思わずにいられない。
―― こんなすごい所で育った奴が、俺とあんな狭い部屋で暮らしていけるんだろうか。
ふと、そんな不安が頭を過った。

「それじゃ、私は自分の部屋に一旦、戻るわね。夕食の時に!」
琴子は直樹に手を振り、部屋を後にする。が、すぐに、
「ね、じいや…。」
と、直樹に食べ物の好き嫌い等を確認していた侍従の所へ戻ってきた。
「…私の部屋、どこだったっけ?」
恥ずかしそうに言う琴子。
「お前…自分の部屋まで分からねえのか!!」
直樹が思わず怒鳴った。
「だって…広いんだもん、ここ。」
じいやは琴子を連れ、直樹の部屋を出て行った。

直樹が休んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。また琴子かと思っていると…入ってきたのは三名の侍女。
「何か?」
「お風呂のお支度ができております。」
侍女の一人がそう言うと、直樹の部屋の中のドアを開ける。そこがバスルームだということに初めて気がつく直樹。
「あ、どうも。」
食事の前に、長旅の埃でも落とすかと思い、直樹はバスルームへと向おうとした。が、なぜか、侍女たちが部屋を出ようとしない。いや、出るどころか、直樹に近づいてきた。
「何か?」
「…お召し変えのお手伝いをいたします。」
侍女たちは声を揃えて言うと、直樹の体に手を掛け始めた。
―― まさか…。
前に見た映画を思い出す。架空の王室が舞台で、王族は突っ立ったままで侍女たちが洋服を脱がせたり着替えさせたり、また体を洗ったりと…。
直樹はトンブリ国へ来たからには、どんなに日本と習慣が違くともその国の流儀に従おうと覚悟はしていた。だが、これだけは受け入れることができない。

「いえ、自分でできますから。」
直樹は侍女たちの手から逃れようとする。が、
「いいえ、させていただきます!!」
と、侍女たちは直樹を追い詰める。
「お、おい…。」
直樹が困っていると、
「ちょっと待った!!!」
と、勢いよく部屋のドアが開いた。入ってきたのは…琴子。

「あんたたち、やっぱり!!」
琴子は部屋の中へ走り、侍女と直樹の間に割って入る。
「はい、はい、どいて、どいて!!」
そう言いながら、直樹を掴もうとしている侍女たちの手をぺシッぺシッと叩いていった。
「まったくもう!!何をするのよ!!」
真っ赤になって怒る琴子。
「だって王女様…。」
侍女の一人が口を尖らせた。
「こんなに素敵な方なんですもの…。」
別の侍女がウットリとする。
「王女様だけが、こんな素敵な方の肌をご覧になるなんてずるいです。」
ますます琴子の顔が真っ赤になった。
「ちょ、ちょっと!!私はまだ、入江くんの肌なんて見てないわよ!!」
「ええ!嘘!!」
琴子の台詞に侍女たちが声を揃えて驚く。
「一か月も。」
「一緒に暮らして。」
「何もない!?」
そして侍女たちは…直樹を見た。それは「情けない…」という視線。
「結婚するまでは、私たちは清い関係のままなの!!」
そんな直樹を庇う琴子。

そして侍女たちは琴子に追い出された。

「もう!!油断も隙もありゃしない!!」
琴子は腰に手を当てて、溜息をついた。
「おい。」
直樹が琴子を呼ぶ。
「…で、俺の入浴、お前が手伝ってくれるわけ?」
直樹は意地悪な笑みを浮かべ、琴子を見た。
「ば、ば、馬鹿な!!ひ、ひ、一人で入れるじゃない!!」
琴子は真っ赤になり叫ぶ。
「まだ赤くなれたのか…。」
ますます面白くなり、直樹は琴子をからかった。
「もう…知らない!!入江くんの馬鹿!!」
琴子は叫ぶと、直樹の部屋のドアを音を立てて出て行ってしまった。

「…一緒に入ってもいいのに。」
ま、急がなくてもいいかと思いながら、直樹はバスルームへ入り…腰を抜かしそうになる。
「この風呂が…一つ一つの部屋に?」
それは銭湯クラスの広さの、豪華なバスルームだった。
「想像以上にすげえな、トンブリ王国…。」
お湯に浸かりながら直樹はこれからも色々なことが起きるに違いないと思ったのだった。












♪あとがき
ごめんなさい。
多分…『私の愛する…』と内容、ダブるかも(いや、すでにダブっている気が…)
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comment

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すっ、すごい!!

こんばんは。

今回琴子の発祥の地を訪れた入江くん。
天然の琴子を生んだトンブリ王国に初めて訪れびっくりし放題ですね。(笑)

小国とはいえりっぱな宮殿に住んでいる琴子。
入江くんがビビることはないと思いますが、この先の展開がとても気になります。

更新ありがとうです~

「一緒にはいってもいいのに…」なんてまたまたv-238
一人我慢大会記録更新中なくらい大事にしてるくせに…

なんだか私の好きな入江君でてきそうな予感に、いまからうっしっし…です。

またよろしくお願いします~

コメントありがとうございます

りきまるさん
名前が面白い割には、非常に豊かな国、トンブリ(笑)
ある意味、逆玉な入江くんは…ここでも入江ワールドを貫き続けるのか(笑)
それにしても、琴子発祥の地って(笑)その表現になんか琴子がものすごい天然記念物に見えてきました。

ぐりぃぜさん
この分だと、自己最高記録を作り上げそうですね。一人我慢大会(笑)
少なくともトンブリ滞在中は続行でしょうし…。
ぐりぃぜさんの好きな入江くん…それはストイック入江くんでしょうか?(笑)
だとしたら、頑張りますね!!

佑さん
トンブリといえば、次はキリタンポでしょう(笑)
それにしても、今日はキリタンポ鍋が恋しいくらい寒かった!!
確かに小国=そんな豊かでないというイメージがあるかも…。

foxさん
そうですか!!そのfoxさんの励ましにますます調子に乗り始める私です!ありがとうございます!!
私も泳ぎますよ、特に一人しかいなかったら尚更!!
生まれ育ったけど、きっと広すぎて全てに足を運んだことがないんでしょうね、琴子ちゃん♪

わぉ(^◇^)♪

出張から帰ってきてパソコン開いてみたら、3話も更新していただいててビックリでした☆

ケータイの充電器をケチらないでコンビニで買えばよかった…(爆)



元とはいえ王女琴子ちゃん、国民から人気があって凄いですねv

やっぱりトンブリの人たちも漢字はちょっと間違えちゃうんだ…ってそこでも笑えましたv

イケメン直樹はやっぱり侍女たちにも気になる存在で、王女琴子がいるっていうのに手を出そうと?するなんて、そして言い訳(軽く口ごたえ?)を王女琴子ちゃんに対してしちゃうフレンドリーな感じが、琴子ちゃんの人柄と人気を表してるようで心がほっこりとしましたvv

これから続きも読みます~♪

愛結美さん
出張、お疲れ様です♪
国民に愛される琴子ちゃん、可愛いかなと思って。
まあ侍女たちもきっと、琴子ちゃんはあのキュウイチと結婚するものだと思っていただろうから、がっかりしていたところにイケメン登場ですしね!!そりゃあ本気になるでしょう♪
琴子ちゃんの人柄の良さはやっぱり大事にしたかったので、ほっこりしていただけてとても嬉しいです♪
ありがとうございます♪
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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