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2010.04.03 (Sat)

シンドウくん


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あたしも花の女子高生か!って、ちょっと言い方古かったわね。
猛勉強して入った第一志望の斗南高校。
大学の付属だということで、かなり倍率は高かった。頑張ったわ、あたし。
人生、こんなに勉強したことなかったわ。
制服もブレザーにネクタイ、少し大人になった気分。

…だ・け・ど。
なんと…クラス分けは偏差値別という、ハッキリ言って人権無視ではないかという残酷さ。
そして…あたしはF組。F組…一番最後のクラス。
つまり、あたしは入試の成績は学年でも下の方だったという事実を突き付けられたってわけ。

同じクラスの男子も、頭が悪いってことよね…。
はあ…。
高校に入ったら、素敵な彼を作ろうって思ってたんだけどな。
正直、頭悪い男は懲りてるのよね、中学で。

入学式の最中にこんなこと考えているあたし。
だって式って退屈なんだもん。
よく知らないおじさんとかが延々と話し続けちゃってさ。
さっさと終わってほしいわよ、まったく。

誰かが話している声が聞こえて来た。
そりゃそうよね。退屈でたまらないもん。
みんな、考えていることは同じってことよね、うん。

「ねえねえ、新入生代表の挨拶する人のこと、聞いた?」

新入生代表?ああ、そんな挨拶まであるんだ。
ま、あたしのことじゃないことは確かよね。
だってあたし、何も言われてないし。
でも、もしあたしが挨拶しろって言われたら、今話しているおじさんより受ける自信あるけどな。

「…シンドウだって。」
シンドウ?
ふうん、シンドウくんっていう人が挨拶するんだ。よく名前まで知ってるな。

「凄い天才少年らしいよ。IQ200!」
天才少年のシンドウくんか。
てことは、A組よね。
やっぱり勉強できる子が挨拶するのね。

でも、頭のいい男って、これもロクな男じゃないのよ、うん。
そうねえ…。
まず、頭はおかっぱね。あのほら、「おそ松くん」に出てくる「シェーッ」ってやってる男、何て名前か忘れたけど、あの頭よ。
それで、歯も出てるの。
あ、そうそう!!
忘れちゃいけない、あのアイテム!!
レンズが分厚い、渦巻いているようなメガネ!!
そう、天才ってこんな感じよ、きっと!!

ああ、やだやだ。
なんで入学早々、そんな変な男を見なきゃならないのよ。
外には桜が美しく咲いているというのに、そんな醜いものを見せつけられるこっちの身になってほしいわ。

あ、いけない、いけない。
醜いは言い過ぎだったわね。
シンドウくんだって、人の子。その子の親に悪いわ。うん、反省、反省。

「新入生代表…。」
あら、いつの間に、おじさんの長話終わったのかしら?
どうやらその天才のシンドウくんの挨拶の番みたい。

「1年A組 入江直樹。」

え…?
あ、あれが…天才のシンドウくん…?

シンドウくんの声が体育館内に響き渡る。

嘘…。
すごいかっこいい!!
髪の毛もおかっぱじゃないし!!
歯も出てないし!!
メガネもかけてない!!

嘘!!
こんな素敵な天才少年が、この世にいるの!?

どうしよう…。
あたし…この人…シンドウくんのこと、好きになったみたい…。

シンドウくんの話は長すぎず、短すぎず、よくまとまっていたわ。
あ、こっちへ来る…。
そっか、A組って後ろだもんね。

うわ…。
かっこいい…。
足、長い。
もう全て素敵…!!

あ、今、こっちをチラリと見た気がする!!
シンドウくん、もしかして…あたしを見たとか?
「F組に可愛い子がいるな。」とか?
「僕の好みだな。」とか?

素敵…。

ん?
ちょっと待てよ?
今、「いりえなおき」って呼ばれたわよね?
シンドウくん、「しんどうなおき」じゃないの?
先生が間違える訳はないわよねえ。

てことは…。
スポーツとか芸能人で「シンドウ」という人の大ファンで、それがそのまま渾名になったとか?
いや、あんなかっこいい、天才がそんな追っかけとかしている訳ないわ。

または…。
複雑な家庭の事情…?
中学までは「しんどうなおき」だったけど、何らかの事情にて、「いりえなおき」になったとか?

うん、きっとそうだわ。
きっと…今は女手1つで育てられているのね、シンドウくん…じゃない、イリエくん。
で、「お母さんに早く楽をさせてあげたい」って親孝行なことを考えていて、勉強を一生懸命頑張っているんだわ。
ああ…あたしも一緒、一緒。
イリエくん、あたしも男手1つで育てられたのよ!!
ほら、二人にはもう共通項があるの、運命よ、これは絶対!!

だとしたら、シンドウくんと呼び続けるのは失礼よ、あんたたち!
もうシンドウくん、いや、イリエくんには新しい人生が始まったんだから、きちんとイリエくんとお呼びしないと!!

大丈夫よ、イリエくん!!
あたしはイリエくんの新しい人生を応援しているから!!
これからもずっと…!!




*******

「…て、思ってたんだけど。」
「はあ!?」
いきなり「4月ね、入学式のシーズンね」とか言い出したと思ったら、延々と琴子の妄想劇場を見せられた俺。
しかも今日の妄想は…呆れ果てて物も言えやしない。

何だ、シンドウくんって?
いつ俺がそんな名前になったんだ?

「あたしもそう思うんだよね。なんでシンドウくんってみんな呼んでたんだろ?」
首を傾げる琴子。
…もしかして。
それは「シンドウ」という名字ではなく、「神童」という意味だったんじゃないか?
でも自分で自分を神童とか言うのはバカバカしいので、それは黙っておくことにする。

「いやあ、あの運命の出会い…。」
またもや自分の世界に入ろうとする琴子。ああ、はいはい。好きなだけ自分の世界にいろ。いっそのこと、もう出てくるな。

「ね、入江くんもあたしのこと見てたでしょ?」
「見てるか。」
「嘘!!だってあの時、横を通り過ぎながらあたしのことチラッと見てたもん!!」
「あ…。」
俺は思い出す。
「何?何か思い出したの?」
期待に目を輝かせる琴子。
「あれは…小森を見てたんだった。」
「小森って…じんこ!?じんこを見ていたの!?」
そう。
あの時俺が見ていたのは、琴子ではなく…隣に座っていた小森だった。
あ、そういえば馬鹿そうな女がいると思った覚えはなきにしもあらず。

「どうして!?入江くん…もしかして、密かにじんこに想いを寄せていたの!?」
卒倒しそうなばかりに青ざめ、叫び続ける琴子。
「もしかして…じんこがナラサキくんと付きあったから…それで自棄起こしてあたしを選んだとか…?」
フラフラになりながら、俺にすがりつく琴子。…叫んだりショック受けたり、忙しい奴だな、こいつも。

そう。
俺は確かにあの時、小森を見ていた。
だが別に小森に一目ぼれしたからではない。
それは…。

F組もとうとう生徒が足りなくなって、人間を入れることを諦めて…半魚人を入れたのか。

と、思ったからだった。
小森には申し訳ないが、あの顔は…それくらいのインパクトがあった。

だけど、そんなこと口が裂けても俺は言えない。
何といっても女って奴は友情にあつい。
それは琴子と小森も例外ではない。
こんなこと言おうもんなら、俺は琴子に絶交されかねない。
まあ、こいつのそういう所が好きではあるんだが。

「そうか…入江くんは…ずっとあたしじゃなくて…じんこを…そうか…。」

ちょ、ちょっと待て!!
すっかりお前の中で、俺は小森に報われぬ片想いをしていたことになっているじゃねえか!!

「だけど…仕方ないよ。じんこはナラサキくんが好きなんだもん。こればっかりは人の好みだし…。」

いや、だから待て!!
何かその言い方だと、まるで俺があのバンド野郎より劣るような意味じゃねえか!!

「入江くん…あたし、じんこと同じ顔に整形してこようか…?」

いや、それはやめてくれ!!

「ごめんね、入江くん。あたしで我慢してね?」
そう言って、俺にぴとっと体をくっつけてくる琴子。
こいつのこんなところが可愛くてたまらないんだよな。ったく。
思わず、そんな琴子にキスする。

「…我慢どころか、お前以外俺にはいらないし。」
「…本当?」
まだ不安そうな琴子にもう一度キスをする。
「本当。」
やっと安心したのか、琴子が笑った。

「あの時、俺が挨拶しなかったら今ここに二人でいなかったんだな。」
「うん。」
成程、それはまさしく…運命というものに違いない。

「あの時、嫌々ながら挨拶を引き受けてよかったよ。」
俺は琴子の体を優しく抱きしめて囁く。
本当に心からそう思う。
俺は運命の女神に感謝しよう。

あ、待てよ?
感謝するのなら…運命の女神の前に…俺に挨拶を命じた校長か担任なのか?

ま、どっちでもいいや。
とにかく、俺が琴子を愛しているってことには変わりないんだから。

「入江くん、大好き。」
腕の中で琴子も囁く。しょっちゅう琴子が口にする言葉だけど、何より俺が好きな言葉。
「俺も。」
琴子も俺と同じように思ってくれたらいいけどな。











☆あとがき
以前A様にお会いした時に「入学式の話でも…」と仰って下さったので、書いてみました♪
なんか、最後がしまらなかった…。(ごめんなさい、A様)
原作ではきちんと「神童」という意味を理解していた琴子ですが、ちょっと変えてしまいました。

「私の…」がもうすぐ終わるなあと思ったら、無性に寂しさを感じてしまって…。
書いている私が感じることは変ですが(笑)
今までは話が終わっても寂しさを感じることはなかったのですが、もうすぐコトリーナとお別れかと思うと…なんか辛くて←ほんと、バカですよ、私(笑)

きれいな桜を見たことと、入学シーズンに入ったということで書いてみました。
あ、じんこのファンの方、ごめんなさい。
いや、私もじんこ好きですよ!!
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23:33  |  直樹&琴子  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

更新お疲れ様で~す★

あいかわらずいろんな意味で激しい琴子さんですねっ
妄想も想像力も勘違いも…^^;

そんな琴子を優しく、少々突き放しつつ(笑)見守ってくれる入江君サイコー!

うん、でも半魚人は言わなくて正解です…
優しい琴子ですもんねっ

そろそろ別ぺも懐かしくなりませんかぁ?(*^_^*)
あの入江君も好きなんです…
ぐりぃぜ |  2010.04.04(Sun) 00:15 |  URL |  【コメント編集】

こんばんは☆

琴子の妄想&暴走っぷりに、大爆笑でした(笑)

入江くんがそうしろと言えば、ショックを受けつつもホントにじんこの顔に整形しそう、とか思っちゃいました☆

そして、直樹の琴子ラブっぷりに、心があったかくなりましたvv

妄想に入ったら放っとくけど、それが度を超すと焦ったり(笑)

琴子の事を、好き、愛してる、って、心の中ではいっつも言ってるけど言葉にはあまり出さなくて、ポーカーフェイスで顔に出なくて琴子は気付いてないんでしょうね、直樹のラブっぷりに☆

でも、琴子が可愛すぎるから顔に出なくても、キスという愛情表現になっているのかな、って一人勝手に解釈して、ニマニマしてました(笑)

直樹の気持ちが態度にも表情にも言葉にも出てたら、知らない人から見てもバカップルに見えるんでしょうね(笑)

そんなイリコトも見て見たい気もしますが、そんな入江くんは壊れ過ぎですかね(汗)

でも、ポーカーフェイスのままの入江くんと妄想膨らませちゃう琴子でも、ラブラブバカップルに変わりはないですよねvv

イリコトのラブラブはあたしも幸せになるから大好きですvvv
愛結美 |  2010.04.04(Sun) 00:39 |  URL |  【コメント編集】

おはようございます。水玉さま。

入江くんが『神童』と呼ばれていたという事を思い出しました。琴子と出会って接していく入江くんを見ていたらどんどん『神童』とはかけ離れていったような・・・
琴子に、怒る、怒鳴る、笑う。
琴子と接するようになって人間らしくなっていった入江くんは、本当に素敵になって行きましたよね。

しかし、私もじんこを見たとき、魚に似てると思いました。(笑)
(多田先生ごめんなさい)

りきまる |  2010.04.04(Sun) 09:18 |  URL |  【コメント編集】

コメントありがとうございます。
ぐりぃぜさん
別ペ…そういえば最近とんと御無沙汰ですね。
ネタ、ネタさえ降臨してくれれば…という感じなのですが(^^ゞ
久しぶりに琴子ちゃんの妄想ぶりを書いたのですが、やっぱり楽しい♪

愛結美さん
じんこの写真持っていって「この顔に!」とか言っているところを、入江くんが止めに入る…という感じ(笑)
普段愛情表現をしないからこそ、時々に見せる入江くんに、毎回ドキドキしているんでしょうね、それでますます好きになっていきそう、琴子ちゃん♪
いや~ポーカーフェイスの入江くんとべたべたな琴子ちゃん、傍から見ると「彼氏、もっとかまってやれよ」と突っ込まれてそうです(笑)

りきまるさん
琴子が一目ぼれした頃の入江くんは、本当に「神童」という感じでしたよね。
その神童がまさか学生結婚するとは…神童と勉強苦手な女の子…すごい組み合わせだ(笑)
琴子ちゃんはどんどん自分の知らない自分を引きだしていってくれたから、だから入江くんは琴子ちゃんが必要なんじゃないかなと思います♪
あと…原作で琴子ちゃんが家出した時、「あのヒラメ顔(魚顔だっけ?)の子だくさんの家にいつまで」とか言っていた裕樹くん!あのセリフがツボに入って入って…。だから半漁人にしちゃったんです。私こそ、多田先生ごめんなさい!!!

藤夏さん
寂しいと思って下さってありがとうございます^^
今回は本当、なんかさびしくて…終わらせるのを引きのばしたいのか、途中このような話を書いてみました。シーズン話というのもありますが(笑)
琴子の妄想は書き始めると次々と浮かんでくる感じで…楽しいです♪

まあちさん
おめでとうございます!!新しい制服(あるのかな?)、新しい学校…きっと息子さんは胸躍らせていることでしょうね♪
それにしても、息子さんが選んだ女の子はきっと幸せでしょうね。まあちさん、紀子ママみたいな素敵なお義母さんになるでしょうし♪
水玉 |  2010.04.04(Sun) 18:01 |  URL |  【コメント編集】

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