2017年10月 / 09月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11月

2010.02.28 (Sun)

私の愛する先生 1


【More】

呼び鈴が鳴り響き、玄関のドアを開ける。
立っていたのはウェスト男爵だった。
「やあ、コトリーナ。」
「ごきげんよう、男爵様。」
「君の大事な旦那様は?」
「先生は今、図書館に出かけています。もうすぐ戻ってくるかと思うのですが。」
「それじゃ、待たせてもらうおかな。」
そして二人は家の中へと入る。
玄関にて、帽子を取りながら男爵が、
「しばらく見ないうちにコトリーナ、可愛くなったね。」
と、コトリーナの手を取った。暫く、といってもこの間二人が顔を合わせてからは1週間も経っていない。そんな調子の良いことを言いながら男爵がコトリーナの手にキスをしようとした時…

ガツン!!

と、男爵の頭上にステッキが振り落とされた。

「先生!!」
コトリーナは頭を殴られた男爵そっちのけで、先生こと、夫であるナオキヴィッチの元へ駆け寄る。
「ったく、この人は…。」
勿論、男爵にステッキを振り落としたのはナオキヴィッチ。
「何で家の中へ入れるんだ。」
コトリーナに帽子を渡しつつ、ナオキヴィッチは訊ねる。
「だって、気が付いたら入って来ていて…。」
「君たち、自分たちの愛のキューピッドをまるで野良猫扱いするんだね…。」
痛い頭を擦りつつ、男爵は呻く。

やがてナオキヴィッチの乳母でもあるノーリー夫人も交え、四人でお茶の時間を過ごす。
「お夕食も召し上がって行かれるのでしょう?」
ノーリー夫人が男爵へ訊ねた。
「ええ。ノーリー夫人の料理は天下一品ですからね。」
「料理、足りるのか?」
お茶を飲みつつ、ナオキヴィッチがコトリーナへ確認する。
「大丈夫。足りなかったら私のお肉、半分上げるから。」
「じゃあ、俺のサラダも分けてやるか。」
「駄目よ。そう言って先生、嫌いなキュウリ食べないつもりでしょ?」
二人の会話を聞いていた男爵が、
「野良猫扱いの次は、お弁当を忘れた幼稚園のお友達扱いか…うん、うん。君たちってそういう人たちなんだよね。」
と溜息をつく。そんな扱いを受けてもこうやってこの家に足を運ぶのは、やはりこの家、住人が好きだからなのだが。

「そういえば、君、今度…とんでもない学生を預かるんだって?」
話を男爵が変えた。
「とんでもない学生?まあ、どんな方なんです?」
ノーリー夫人が眉を潜めた。
「野蛮な方ってこと?」
「違いますよ、その逆。」
男爵が手を振って、夫人の想像を否定する。
「…何と、王子ですよ。」
「王子!?」
ノーリー夫人とコトリーナが同時に同じことを叫んだ。
「すごい!本当なの?先生!」
コトリーナは隣に座っているナオキヴィッチに迫る。
「外国からやって来た、王子様だよ。」
男爵がコトリーナに説明する。
「すごい!どうして教えてくれなかったの?王子様とお勉強するのなら、お洋服もちゃんとしないといけないし、靴だってピカピカにしないと…。」
「別に今だって服も靴も恥ずかしくしてないけど?」
素っ気ない返事に、コトリーナはムキになる。
「だけどもっと!!」
「別に王子だろうが庶民だろうが、学生には変わりないだろ?」
ナオキヴィッチは冷静だった。確かにそれはその通りだと思うコトリーナ。

「どんな方なのかしら?王子様?」
コトリーナは想像してみる。
「そうだ。」
その言葉で、ナオキヴィッチは思い出した。
「今度、王子の歓迎のパーティーが開かれるんだった。それに招待されていることを今、思い出した。」
「もう!どうしてそんな大事なことを忘れているんです!」
ノーリー夫人が今度はカンカンになった。
「指導教授になるってことで、行かないとまずいだろうし…そこで初めて顔を見ることになるんだろうな。」
大学創設以来の若さで教授にまで登りつめ、更にこの国一の名門貴族、イーリエ公爵は大のパーティー嫌いでも有名だった。だが、今度ばかりは王子への挨拶に出席しないとまずい。
「だからお前も仕度しておけよ。」
ナオキヴィッチはコトリーナにも命じる。
「え?」
一瞬、何のことを言われたのか分からず、コトリーナはポカンとしてしまった。
「私も一緒に行っていいの?」
「当たり前だろ。パーティーは夫婦で出席するものなんだから。」
コトリーナは興奮で顔を真っ赤にした。
「すごい!!じゃあ…先生と踊れる?前に一緒に行ったパーティーは踊れなかったから…。」
「ああ。あの時は誰かさんがつまらない嫉妬で先に帰ったから…痛い!」
そんな口を挟んだ男爵の足を、テーブルの下でナオキヴィッチはおもいきり蹴飛ばす。

「コトリーナちゃん、この間新しく作ったドレスで行くといいわ。」
コトリーナを実の娘のように愛しており、コトリーナを着飾らせることに命をかけるノーリー夫人も、興奮する。
「はい!」
そしてコトリーナとノーリー夫人は忽ち、当日の支度の話に夢中になった。


その夜、ベッドでのコトリーナはどこか元気のない顔をしていた。
「何だよ?」
昼間の元気さはどこへと思い、ナオキヴィッチもコトリーナの隣へ潜り込む。
「うん…先生はやっぱりすごいなって。」
「すごい?」
「うん。王子様の先生になったり、凄い人なんだなって。でもね、それはとても嬉しいことなんだけど…先生が何か遠くへ行っちゃうみたいで、少し寂しい。」
コトリーナは寂しそうに言った。
「別にどこへも行かないよ。」
そんなことを気にしていたのかとナオキヴィッチは呆れる。
「ね、先生。」
コトリーナがナオキヴィッチの袖を引っ張った。
「たとえ王子様が先生の生徒になっても…一番の生徒は私でしょ?」
コトリーナは不安そうに、ナオキヴィッチを見上げる。
街で見つけて、言葉遣い、行儀作法を一通り教えてくれたナオキヴィッチを、コトリーナは結婚した今も「先生」と呼ぶ。
「私のこと、一番の生徒だって言って?」
「…一番の生徒だよ。コトリーナ。」
あまりに可愛らしい生徒であり、妻でもあるコトリーナの願いに、ナオキヴィッチは顔を綻ばせる。それを見てコトリーナも笑顔を漸く見せた。そんなコトリーナの唇に思わずキスをするナオキヴィッチ。

「…!」
そのキスが深くなるのを知り、コトリーナは慌ててナオキヴィッチを止める。
「…先生。」
唇を離したナオキヴィッチは、
「…俺の一番の生徒なんだろ?コトリーナは?」
と、微笑む。そして、
「なら…生徒は先生の言うことを聞かないと。」
と、言いながらナオキヴィッチは再び、愛する『生徒』に深いキスをする。
長い時間かけてキスをし、そして漸く唇を離す。

「…先生にお返事は?」
真っ赤になり俯いたコトリーナの顔を下から覗き込むナオキヴィッチ。
「…はい、先生。」
恥ずかしそうに、消え入りそうな返事を確認すると、ナオキヴィッチはコトリーナの体を優しく倒した…。


やがて王子のパーティーの日がやってきた。
「可愛いわ、コトリーナちゃん!!」
ノーリー夫人が心を込めて仕度しただけに、コトリーナは美しかった。
「どう?ナオキヴィッチ様。」
誇らしげに胸を張る夫人。

「これで、先生と一緒に立っていても大丈夫?先生の奥様にちゃんと見てもらえるかしら?」
心配するコトリーナ。

そんな二人に、ナオキヴィッチは、
「…まあまあじゃない。」
とつれない。だが、本心はあまりにコトリーナが美しくて他の男に言い寄られないかが心配でたまらない。
それでなくとも、妻となったコトリーナの美しさは日に日に増していっている気がしてならないナオキヴィッチ。できることなら家から一歩も出したくないのが本音。


二人を見送り、居間へと戻ったノーリー夫人。そこへ暖炉の上に飾っていた置物が突然落ち、割れてしまった。
「まあ…何かしら?」
不思議に思うノーリー夫人。
これが、これから起きる騒動の前触れとは、その時のノーリー夫人は思いもよらかなった…。














☆あとがき
『私の美しい貴婦人』の続きです。お言葉に甘えて(^^ゞ
初めて読まれる方は、『私の美しい貴婦人』だけは読まれてからの方が分かりやすいかもしれません。
カテゴリーの『私の美しい貴婦人』から、よろしければどうぞ♪
尚、『続・私の美しい貴婦人』『公爵の秘密』とその後続いて書きましたが、この二つは特に読まれなくてもストーリー展開に影響はないと、思いますが…。
まだお試し段階なので、タイトルもなく…。
そして前もって御連絡。
お言葉に甘え(「んなこと、誰も言ってない!」とお叱りを受けそうですが)、恒例ワンパターンです。
あ、でも言い訳させていただくと(本当はしたらまずいんだけど)、『続~』書いていた頃から考えていた話なんです。
本当、皆様のお優しさに甘え、早速続きからでごめんなさい。

そして…
本文に力を使い果たし、あとがき以降は「琴子」「直樹」(他の人物も同様)と呼ばせて下さい。
カタカナ、苦手で…。(なら、書くなって感じですが)
関連記事
15:39  |  私の愛する先生  |  TB(0)  |  CM(9)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

★続きを!!!!

試験勉強の疲れをずっとここのお話を読む事で癒してもらってます
もうすぐ試験も本番・・・・・・・・・・・

そんな私にぜひぜひコトリーナちゃんのお話を!!!!!(おねだり)


ミルク |  2010.02.28(Sun) 23:37 |  URL |  【コメント編集】

★ぜひぜひ!!

こんばんは♪

ぜひ、続きも読んでみたいです~(^v^)

続きが気になっちゃいます(>_<)

『騒動』……何が起きちゃうんでしょう…ドキドキ☆


あたしも、「コトリーナ」「ナオキヴィッチ」よりもやっぱり「琴子」「直樹」のほうが呼びやすくて好きですv
でも、ウエスト男爵の「ガッキー」は「西垣せんせ」よりも気に入ってますけど♪

愛結美 |  2010.03.01(Mon) 01:08 |  URL |  【コメント編集】

★お待ちしておりました~(≧∀≦)

水玉さんおはようございます。

やった!(*^▽^*)
私の大好きな貴婦人シリーズ!またコトリーナやナオキヴィッチたちに会えて嬉しいです♪^-^)

ラストか~なり気になる終わり方なので早くも続きが気になって気になって仕方ないという状態です(^^;
藤夏 |  2010.03.01(Mon) 08:16 |  URL |  【コメント編集】

★NO TITLE

可愛い琴子ちゃん大好き!!←やはり私は漢字琴子推奨人間!!笑
とぉっても続きが気になるわ♪
琴子ちゃん可愛くなりすぎて、直樹さんもさぞご心配でしょうねぇ~
ゆみのすけ |  2010.03.01(Mon) 09:42 |  URL |  【コメント編集】

★NO TITLE

王子様が誰か気になるところですが、原作から予想すると『のんちゃん』かな?どんな嵐が吹き荒れるのかドキドキです。
祐樹’Sママ |  2010.03.01(Mon) 20:13 |  URL |  【コメント編集】

★楽しみ

可愛い春らしいテンプレートですね!

王子様は、誰?どんな波乱?待ちどうしいよー

嫉妬深い直樹がどうなるのかな?
kobuta |  2010.03.01(Mon) 20:29 |  URL |  【コメント編集】

★ヤマをはってます

どのキャラが王子として登場するのか、、脳内でオッズが、、。
水玉さんのことですから、、また万馬券?なんじゃーないかと。。
ドキドキしながら王子様が巻き起こす嵐を楽しみにしています。
あと、名前ですが、、あたしもコメントでは直樹&琴子で便乗させてください☆
コトリーナとナオキヴィッチは打ちながら口が開いちゃうので(笑)
なおき&まーママ |  2010.03.01(Mon) 22:58 |  URL |  【コメント編集】

★コメント、拍手ありがとうございます

コメントありがとうございます♪

ミルクさん
試験シーズンですものね!!頑張って下さい!!
試験の直前に遊びに来て下さり、ありがとうございます^^
少しでも息抜きになれば…嬉しいです♪

愛結美さん
私もガッキーはガッキーでいいです(笑)
何だろう、こんなにしっくりガッキーがくるのは…。
やっぱりカタカナは大変です~^^;
続き、読んで下さると嬉しいなあ♪♪♪

藤夏さん
ありがとうございます♪いや、覚えていて下さっただけでも…♪
それにしても、こうやって読み返すと…なんか最後またとんでもないアオリをした気が…^^;
マイペースでいこう、マイペースで(笑)

ゆみのすけさん
大蛇森フェスティバルと同時並行して、キュート琴子祭りが自分の中で…(笑)
たまーに、ひたすら可愛い琴子だけを書きたくなる時が来るんです!!
直樹はどうでも…いや、そりゃかっこよく書きたいけど、それは私には無理だと分かってきたので(笑)、可愛い琴子だけをめざそうと!!
そう、人間割り切ることも必要、必要。

祐樹’sママさん
のんちゃんも、ちょっと考えたんですよ!!
でものんちゃんだと、直樹のライバルになるのは難しそう…やはりのんちゃんは裕樹のライバルかなって感じで♪

kobutaさん
ありがとうございます♪
3月になったので、春らしくしてみました♪
私自身は、国民病で散々ですが…涙
嵐…いっそのこと、後悔のないよう、とことん大荒れしてみようかなんて考えつつ…。

なおき&まーママさん
その万馬券は一体何だったのか!!私はそれが知りたいです!!!
今思うと、大蛇森王子もありだったか~などと考えたり。
うーん、でもこれはいつかのネタに取っておくことにします(笑)いつかっていつなんだか(笑)
よかった、漢字推奨派の皆様がこんなに多くて!!

拍手コメントありがとうございます
foxさん
それにしても、凄い扱いだ、ガッキー(笑)
それでもやってくるガッキーが好きです、私(笑)
ありがとうございます、このような話にそこまで言っていただけて!!
…最近壁にぶつかっているので何よりの励みになります♪

佑さん
なんだかんだ言っても、そのパターンが好きな私です(笑)
でもって、直樹の嫉妬がエスカレートするのが好きです(笑)

まきさん
わーありがとうございます!!!
御期待にこたえられるか自信がないのですが、でもその言葉を励みに頑張ります!!
まずは…タイトルを何とかしないと(笑)
このままでは、※タイトルと内容は関係ございません、と毎回注意を書くハメに(笑)

まあちさん
いや、そこが書きたかったので(お弁当を忘れた幼稚園児)、そこに触れて頂けると、こちらは嬉しいです。
そういう小ネタを拾って下さるまあちさんが私は好きです♪ポッ!

るんるんさん
お疲れ様です!!体調大丈夫ですか?気をつけて下さいね!!
ぜひまた、思い出したころにでも遊びに来ていただけると嬉しいです♪
ちょっと大蛇森フィーバー状態な私です(笑)

がっちさん
予想大当たり!!て、分かりやす過ぎなんですよね、私が(笑)
でも…大蛇森のためには啓太だったんです!!!
と言いつつ、そんな出番がなかったらどうしよう…大蛇森(笑)
既に出番が減りそうな予感大なのですが^^;
水玉 |  2010.03.02(Tue) 17:55 |  URL |  【コメント編集】

★No title

また❓ナオキビッチの、嫉妬の、嵐に、巻き込まれなきゃいいけどね、コトリーナー。
なおちゃん |  2015.05.13(Wed) 15:33 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

*Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://suisen61.blog77.fc2.com/tb.php/719-00556b07

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |