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2010.02.18 (Thu)

東京の休日 4


【More】



「入江さん。」
「何だよ?」
直樹が振り返ると、そこには大層不満な顔をしている琴子がいた。
「私、ここに行きたいって言ったんだけど。」
琴子は付箋だらけの『るるぶ』を見せる。そこには“東京ミッドタウン“の案内記事。
「ここ、違うわよね?」
直樹は記事の東京ミッドタウンの文字をトントンと指で突き、
「ここは、500円玉一枚しか持っていない奴が行っても何もできない。」
と言い、更に「ばあか」と続ける。

「だからって、なんでここなのさ?」
二人の話を黙って聞いていた西垣が口を開いた

三人は浅草・雷門の前にいた。

「外国人なら外国人がいっぱいいる所で十分だろ。」
二人に説明ともいえない話をする直樹。
琴子はまだ何か不満があるかのように、ふくれっ面をして雷門の大提灯を見る。
「妄想王女のわがままに付き合っているだけでもありがたく思って欲しいよ。」
直樹は「行くぞ」と雷門の下をくぐろうとした。その時、
「あーっ!!」
という琴子の悲鳴が上がり、直樹と西垣は何事かと振り返る。

「髪!髪!」
そう叫びながら、自分の髪を両手で広げて見せる琴子。
「髪、切らないと!!」
「馬鹿か!お前は!髪切るなら出国する前に切ってこい!」
直樹は怒鳴りつけた。
「違うの!」
弁明しようとする琴子に西垣が援軍となる。
「ああ、そういえば…あの映画、王女が髪切ってたよね。」
「そう、それ!」
琴子は西垣の言葉に助かったという顔をして見せる。
「新しいことをするのに髪よ、髪切らないと。」
この辺に美容院は…とキョロキョロする琴子。
「あ、あそこでいっか!」
そして琴子はそこへ向かって走り出してしまった。

「あそこって、床屋…。」
琴子が飛び込んだのは床屋だった。
「いいのかなあ、床屋で。」
心配する西垣に、
「本人がいいって言ってるんだから構わないでしょ。」
と直樹は気にする様子もない。

「でもさ、入江。」
西垣が直樹を見る。
「あの髪…切っちゃうの勿体ないよね?」
「…。」
それは直樹も少し思った。琴子の手入れされた長い髪、それを短くするのは…少し勿体ない気がする。

二人がどんなことになるかと心配しつつ待ち続けて、1時間が経過した。
「お待たせ…。」
漸く現れた琴子を見て、二人は言葉を失う。
「そ、それ…?」
と西垣が絞り出すように口を開けば、
「…これはまた。」
と直樹までもがどう言っていいのか困る。

琴子の髪は、昭和の高度成長期を思い出させるかのような、グリグリパーマに変わり果てていた…。

「あのね、この記事見せて、これと同じようにして下さいってお願いしたの。」
琴子はスクラップ記事を見せながら話す。そこには髪をショートにした可愛らしいアン王女の姿。
…言うまでもないが、ここにいるグリグリパーマとは似ても似つかない。

「そしたらね、おじさんが…“こんな頭、どうなってるかわかんねえ”って言って。それを見てた奥さん?がね、“それじゃ、これかぶっておいで”と言って渡してくれたのが、これ。」
幸い、琴子のグリグリパーマは鬘だった。

「…似てるかなあ?」
傍の店のショーウィンドウに姿を映す琴子。その店は喫茶店で、突然グリグリパーマに覗きこまれて中の客がコーヒーを噴き出した。

「ま、よく見れば…似てないこともないかな?」
スクラップ記事と自分の姿を見比べて呟く琴子。一応カメラマンの役割ということで、そんな琴子を撮影する西垣。
そしてそのまま歩きだそうとした時、直樹の手が琴子の鬘を取り上げた。その瞬間、バサッと元の琴子の髪が背中へ落ちる。

「ちょっと、何するの?」
抗議する琴子に、
「いいから、そのままで歩けよ。」
と直樹は答える。
「そんな…このままじゃ…王女ってもしばれたら…。」
困る琴子に直樹が、
「大丈夫だ。」
と自信たっぷりに答える。その答えに不思議な顔を見せる琴子に直樹は続けた。

「なぜなら…残念なことに、お前からは王女のオーラがまったく出ていない。だから絶対ばれない。」

「ひどい…。」
泣きそうになる琴子。だが次に直樹が口にしたこと、それは、

「いいからそのままで歩け。お前、せっかく綺麗な長い髪してるんだから。」

というものだった。

―― おや?
その瞬間、琴子の顔が赤くなる。西垣は素早くその様子を見つけた。
―― へえ…可愛い。
これはシャッターチャンスだとばかりに、西垣がこっそりその琴子を撮影する。

直樹の言いつけ通り、琴子は鬘を床屋へ返した。
「じゃ、行くぞ。」
ったく、ムダな時間をとブツブツ文句を言う直樹にまたもや、
「あーっ!!」
と琴子が叫んだ。

「今度は何だよ!」
「ジェラート、絶対これは譲れない!!」
直樹の腕を掴んで「ジェラート、ジェラート」と繰り返す琴子。
「アン王女がジェラートを食べながら階段を歩くシーンは“ローマの休日”の代名詞だもんね。」
また琴子を援護する西垣。そして西垣は、
「それくらい叶えてやれよ。」
と直樹に言った。
「ったく…。」
直樹は仕方なく、「そこで待ってろ」と言い残して、人混みの中へと消えて行った。

数分後。

「ほら。」
そう言って直樹が琴子へ渡したのはジェラート…ではなく、饅頭だった。
「何、これ?ジェラートは?」
「この辺に売ってなかったんだよ。それで我慢しろ。」
「えー嫌だ!」
「うるせえな。おごってやっただけ有難く思え!」
それを言われると、琴子は何も言い返せない。

渋々、饅頭を一口パクリと口にする。饅頭は蒸したてで湯気が出ている。
「…おいしい!」
どうやら琴子は饅頭が気に入ったらしい。パクパクと食べる。

その様子をきちんと言いつけどおり、カメラにおさめる西垣。
「あれ?」
西垣は気がついた。琴子の口元に餡子がついている。
「琴子ちゃ…。」
教えてあげようとした時、直樹の指が琴子の口元へ伸び、ついている餡子を拭った。
「あ…。」
琴子が見ている前で、直樹はその指をさりげなく自分で舐める。その様子を見て、琴子は先程、髪を褒めてもらった時よりも顔を赤くした。

―― こいつ、こういうキザなことが平気で出来る奴だったのか。
勿論、その様子を西垣はバッチリ撮影する。

「食い終わったなら、行くぞ。」
「はい…。」
まだ直樹の指の余韻でも残っているのか、琴子は先程の威勢の良さはなく、恥ずかしそうに顔を赤らめて直樹の後ろをついて歩き始めた。















♪御挨拶
この場をお借りして、改めて500000ヒットのお礼を申し上げます。
本当にこんな数になるまで…続けられるとは思っておりませんでした。信じられない思いです。
何度もこちらで申し上げたことがありますが…最初「めざせ10人」の時から比べると…(涙)

これもこのような海に浮かぶ孤島ブログへ、船を操って遊びに来て下さる皆さまのおかげでございます。
大したこともできない私に、いつも温かいまなざし、お言葉、本当にありがとうございます。

しみじみと…「インターネットっていいなあ」と思う日々です。
そして下手なSSだけでなく、何を書いているのか分からない日常の戯言も目を通して下さり、本当にありがとうございます。

飽きっぽい私がここまで、本当に…(涙)

いや、本当に飽きっぽいんです。
気の迷いで集めた漫画とか、1カ月後とかに「何でこんなの集めたんだろう?」って思っているくらいですから(笑)

ブログ続けられたってことは、他も続けられるんだろうな♪という自信にはつながりました。

何度も申し上げますが、本当に私一人の力でできることではなく、色々な方のお力添えを頂いてこそのことです。
本当にそれだけは絶対忘れないよう、感謝の気持ちを忘れずにこれからも、細く長く続けていけたらなと思います。

本当にありがとうございました。
本当はきちんと記事にして御挨拶をすべきことなのですが、ちょっと恥ずかしいので…こういった失礼をお許しください。



☆あとがき
すみません…私、ミッドタウン、いまだに行ったことないんです…。
参考に図書館で見たるるぶは古かったので載っていなかったのですが…最新るるぶにはミッドタウン、載ってますよね…?
密かに「東京ホリデー」にタイトルすればよかったと、また後悔(笑)
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16:53  |  東京の休日  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

★おめでとうございます。

500000達成、本当におめでとうございます。
私は途中からお邪魔させて頂くようになり、すぐ水玉ワールドに引き込まれて行きました。
本当に楽しい場所で、一日に何度も、お邪魔させて頂いて色々なお話を読めて嬉しかったです。
これからも、どんどん水玉さまの世界に浸りたいと思いますので、これからも宜しくお願い致します。<(_ _)>

『ローマの休日』を堪能しているはずが、どんどんずれていっている琴子。
東京で『ローマ』を再現するにはちょっと無理があるような気もするんですが、なんとか頑張って、つきあっている入江くんが可愛い気がします。(笑)
なんだか、二人の関係が、ちょっとずつですが近づいていっていますね。それを目ざとく見つけた西垣カメラマン。
今後の展開が楽しみです。
りきまる |  2010.02.18(Thu) 20:36 |  URL |  【コメント編集】

 ……わあ、今回も直樹さんが先に好きになるんですか?(笑)

 こんばんは! お久しぶりです!

 500000突破、おめでとうございます! 凄いですよね、500000人もの方が更新したんですよ!
 水玉さんなら1000000も10000000も行けるんじゃないですか。だってこんなに美味しいですから。
 本当にお疲れ様でした(笑)

 うっ。いま、私がこの世界にいたら絶対にこういってますよ。

「西垣さん、デートでも何でもしますから、その写真をわけて下さい!」(笑)

 だってだって、ツーショットですらむぎゃーなのに、こんなに美味しいと、絶対に欲しいです。悪魔に魂を売ってもいいです!
 特に直樹さんが琴子さんの口元の餡子をちゃっかり食べるシーンが絶対に欲しいです。あーどうして私は、おとぎの国の人ではないのでしょうか!?(泣)

 甘いなー、甘いなー。ふわふわカスタードシュークリームみたいだなーあつあつあんまんみたいだなー。
 美味しかったです、ご馳走様でした^^ 次回、楽しみに待っていますね。

 おまけ
 人魚姫の返信、有難うございました。
 たしかにあんなに悲しいと呪いたくなりますよね! リトルマーメイドとかポニョとか、結構幸せ作品が生み出されているんですから、親指姫のようにちょちょいと幸せに終わらせて欲しかったです。
黒豆茶 |  2010.02.18(Thu) 23:01 |  URL |  【コメント編集】

★東京見物

はとバスツアーみたいですね?

東京に住んで○9年ですが、東京タワーに行ったのは20歳過ぎて初めて行きました。

何とかヒルズ、タウンには未だに行った事はありません(何せ東京でも田舎ですから)

これから、直樹と姫様は何処に行くのでしょうか?

そしてどんな恋をするんでしょう?楽しみです。
kobuta |  2010.02.19(Fri) 01:40 |  URL |  【コメント編集】

★本当に本当にありがとうございます

コメントありがとうございます♪

りきまるさん
ありがとうございます。
これも本当に励まして下さる皆様あってのことです。
…そろそろ終わりかなと思ったりもする今日この頃だったりしますが…後悔だけはしないよう、自分が何か書きたいと思ううちは、続けていけたらなと思っています。
東京でローマは…どう考えても無理でしょう!!!(笑)

黒豆茶さん
…一瞬、「だれ!?」って思いました。最後まで読んで…ああ…(笑)とちょっと安心しました。びっくりした~。
ありがとうございます。どうでしょう…?そこまで行けたら素晴らしいですね♪
ちょっと最近、そろそろネタ尽きたなあと思ってきたり、ワンパターンさにあきれたりしているので…二次を書き始めた初心に戻りたいと思う毎日です。
人魚姫…本当に悲しかったです。あの童話レベルなら綺麗な話、切ない話という感想で終われますが…あれは辛すぎる!!!

kobutaさん
ありがとうございます!!
東京タワーは東京及びその近郊在住者はめったに足を運ばないものですよね!!いつでも行けるから~って感じだから?
何とかヒルズ、ろが付く方は開業して間もない頃、冷やかしに行きましたが、おがつく方はいまだ行ってません(笑)

拍手コメントありがとうございます
さくやさん
ありがとうございます!キリ番踏んで下さってありがとうございました!!
リクエストお待ちしております♪
…そのカウンターは壊れていました、絶対。障害情報とか載ってないけど、間違いないです!!
…どうなんでしょう?最近むしょうに初心に戻りたくて仕方ありません。

まあちさん
ありがとうございます!!
…なんて素敵なお嫁様!!!
それはそちらの方が大事ですよ!うん!
ありがとうございます、こんなサイトに大切な時間を使って遊びに来て下さって♪

KEIKOさん
ありがとうございます!!
私もどんなリクエストを頂戴出来るのか、今からドキドキ、ソワソワです(笑)
でもそれが…今の状況を打破できるきっかけになったらなあと待ち遠しいです。皆さん、素敵な想像力をお持ちで、本当にうらやましいです。

佑さん
ありがとうございます!!佑さん、いつもコメントありがとうございます♪
純真琴子ちゃん…さすが箱入り王女(笑)
なんだかんだ言っても逆らえない入江くん…(笑)

ぴくもんさん
ありがとうございます!!
いや…最近、私もそろそろ隠居する時が近づいた気が…。
こんな孤島にジェットなんて…勿体ないです!!もう沈まない程度の泥舟で十分、十分(笑)
この直樹は無意識ですよ(笑)だからガッキーが驚いているんです(笑)
それにしても…いい男がやるから決まるのよね、きっと。
お体、お大事に!!お子さんの気持ち、私にはよく分かります(笑)

foxさん
ありがとうございます!!
foxさんとも最近はおせんべい情報交換の友として(笑)ところで見つかりました?柚子胡椒(笑)
ちなみに昔ながらのしょうゆ味の堅い厚いおせんべいも大好きです。
素敵な愛の告白(笑)、ありがとうございます。
お会いしなくて正解です、会ったらきっと…「こんな奴かよ!!」(失礼、foxさんはこんな汚いことは言いませんね(笑))と思われます。

tiemさん
ありがとうございます。
そんな毎日お越しいただく様な場所ではないので…勿体ないです。
tiemさんもDVDでご覧になっていらっしゃるんですね。やっぱり名作はすごいなあ…そんな名作を下手なくせに題材にするダメ私を今後もよろしくお願いします。

水玉 |  2010.02.20(Sat) 22:36 |  URL |  【コメント編集】

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