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2010.01.30 (Sat)

続・琴が苦手な姫君


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無事に直樹様の御両親様、太政大臣様とその北の方様、そして直樹様の弟君の裕樹様と御対面遊ばされた琴子姫様。嬉しいことは重なるものでございまして、何と姫様、御懐妊されたのでございます。
それに伴い、直樹様はお二人がお暮らしあそばす御屋敷を整え、きちんと姫様を北の方様として御迎えあそばしました。本当に御寵愛はますばかりでございます。

でも…姫様、つわりが大層ひどくいらっしゃいました。
御食事も殆ど喉を通らない有様。桔梗様が姫様のお好きな物を次々と御用意されるのですが、一切口にできない御様子。見ているこちらが辛くなってまいります。

「少しでも召し上がらないと…。」
桔梗様は今日も姫様のお好きな物を御用意し、お勧めいたします。
「…いらない。」
姫様は脇息にもたれたまま、顔を伏せておいでです。
「そのままでは…お腹のお子様にも…。」
「分かっているけど、食べられないんだもの。」
そして袖で顔を覆っておしまいになられます。

可愛らしいお顔が、どんどんやつれていっておしまいで…そしてそれは姫様ご自身も気にされておいででございます。
「こんなみっともない顔では、直樹様にお会いできないわ。」
そうおっしゃられて、直樹様にお会いしようとなさいません。
「そんなことございませんよ。」
桔梗様始め、女房たちが皆で姫様をお慰めいたいしますが、姫様は頑として直樹様にお会いしようとなさいません。
直樹様がおいでになっても、「お断りして」の一点張り。勿論、直樹様はそのようなことを気にされるようなお方ではございません。だけど相手は普通のお体ではない姫様。無理に押し込むような真似もできず…もう何日、お二人はお顔を合わせておいででないでしょうか?

「何とかしてくれ!」
とうとう直樹様の従者、鴨狩様が桔梗様に泣きつかれました。何でも姫様のお顔を見られない直樹様は大層御機嫌が悪く、周囲の人間に当たり散らしておいでだとか。その筆頭が…鴨狩様だそうでございます。
「そんなこと言っても、御本人がお会いしたくないと仰っているから。」
姫様だって直樹様にお会いしたくてたまらないのです。だけど、
「こんな化け物のような顔では嫌われてしまう。」
と、終いには泣かれるほどでございます。
「面やつれの女性は、殿方にはまた格別の思いを抱かせるとか申しますよ。」
と、桔梗様がお話になるのですが、
「それは元が美しい姫君の場合よ。私など…元が元なんだもの。だめ、直樹様、こんな顔を見たらもう二度と会って下さらなくなるわ。」
と、首を縦に振ろうとなさりません。

直樹様はそんなことを仰る方ではなく、そして姫様が身ごもられているのは直樹様のお子様。そこまでご遠慮なさらずとも…と周囲の者は思うのですが、こればかりは御当人のお気持ちでございますので。

そして今宵も直樹様がおいでになりました。姫様はやはりお会いしようとなさりません。桔梗様がそのように申し上げます。
「…分かった。」
…御気の毒な直樹様。

…え?
…ちょ、ちょっと?
…直樹様、どちらへ!?

分かったと仰ったので、そのまま御自分のお部屋へお戻りかと思ったら…なんと、姫様のおいでになるお部屋へずんずんと歩いていかれます。
これには桔梗様も驚き、後を追います。

突然現れた直樹様のお姿に驚かれた姫様、慌てて袖で顔を覆い隠し、几帳の陰へと隠れられます。
「待て!」
そしてその着物を捉え、姫様を捕まえる直樹様。これでは妻を訪れる夫…というより、強盗と被害者でございます。
「なぜ、こそこそ隠れるんだ!」
ああ…そんなに怒鳴ると…姫様のお体が…。
「だ、だって…顔がひどいんだもの。」
直樹様は姫様のお顔を両手で挟むと、無理矢理御自身の方へ向けさせました。
桔梗様も私共も、これからどうなるのかとハラハラしながらお二人を見ておりました。

「こんなにやつれて可哀想に…。」
直樹様は優しく仰ると、姫様をそっとお抱きになられました。きっとお腹にさわらないようにと気を遣っておいでなのでしょう。
「でも我慢してくれ。お腹の中の…俺たちの子のためにも。」
「直樹様…。」
姫様は目に涙を浮かべられました。
「我慢はいくらでもできます。私と直樹様の子のためだもの。でも…こんなに酷い顔になってしまったので、直樹様のお心が離れてしまうことが怖くて…。」
「馬鹿か、お前は。」
直樹様は笑われました。
「…俺の子を産むために頑張ってくれるお前にそんなことするわけないだろ?」
「でも…。」
「どんな姿になっても、俺が琴子を愛していることは変わらない。」
「直樹様。」
そしてお二人は暫しの間、抱き合っておいででございます。私たち女房は皆、お二人だけにしようと御遠慮申し上げました。

「食べないと…。」
直樹様はそう申されて、と自分のお食事と御一緒に、姫様のお食事も運ばせました。
「だけど…。」
食べ物を見ただけで、姫様は袖で口を覆っておしまいになります。すると直樹様、
「ほら。」
と、御自身でお料理をお箸にお取りになり、姫様のお口へと運ばれました。姫様、おもわずパクリと食べられました。
「あ、召し上がった。」
思わず桔梗様が口に出されます。もぐもぐとお口を動かされる姫様。
「もう一つ、頑張れ。」
また直樹様がお箸で姫様のお口へ。姫様、またもやパクリと食べられます。
「…おいしい。」
何ということでしょう。姫様がニッコリと笑われたではございませんか。御懐妊後、笑顔が見られたのは初めてかもしれません。
「だろ?」
直樹様も笑顔になられます。そしてまた、
「この調子で頑張れ。」
と姫様を励まされながら、お箸で姫様のお口へ。姫様はまたパクリ。
こうして直樹様が励まされながら、姫様のお口へお料理を運ばれることが続きました。その結果…何一つ召し上がれなかた姫様が、お料理を半分召し上がることができたのです!これには桔梗様も私共も大喜びでございます。

驚くことに、直樹様お手ずから、姫様へお食事を食べさせられることはこの後、何日も続いたのです。直樹様は面倒がられることなく、お箸で一口、一口、姫様を励まされながらお食事を姫様のお口に運ばれました。
やがて姫様はお食事を残さず召し上がることができるようになったのでございます。

「もう大丈夫だな。」
姫様が全て召し上がったのをご覧になり、直樹様が安堵されました。やつれておいでだった姫様のお顔も、今ではすっかり元の愛らしいお顔に戻られました。
「…もう直樹様と一緒にお食事できないの?」
姫様が寂しそうに呟かれます。この所、直樹様はご公務でお忙しい日々を送られていたため、お二人でお食事ができなかったのでございます。

その後、御公務が落ち着いたこともあり、直樹様は姫様とご一緒にお食事を取られるようになりました。どうやら姫様がお食事が進まなかった理由はつわりの他に、直樹様のお顔が見られなかったことがあったようでございます。

「本当に…うちの姫様ほど、背の君に愛されておいでの方はおいでにならないわね。」
今日も仲睦まじく、お二人でお食事をされているお姿を見て、桔梗様が笑顔でお話になります。

きっと姫様は、そんな直樹様の愛に包まれて、愛らしいお子様をお産みになられることでしょう。
その日が来るのが、私共女房たちも待ち遠しくてたまりません…。









☆あとがき
『君がため』『琴の苦手な姫君』の続きです。
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22:39  |  君がため  |  TB(0)  |  CM(7)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

★あ~、熱いな~!!

こんばんは。
直樹と琴子のラブラブシーン、読んでいて照れてしまいました。(笑)
確かに自分の妻が自分の子供を身ごもって、つわりに苦しんでいるのに、心配しない夫はいませんよね。
それにしても、あの直樹が、琴子にご飯を食べさすなんて・・・

超ーうれしいです。

今日のお話もとっても美味しく頂きました。
ごちそうさまでした。(*^。^*)
りきまる |  2010.01.30(Sat) 23:01 |  URL |  【コメント編集】

★わーい!

私の好きな平安だ!

平安何度読み返しても、泣けて来ちゃうんですよね!

今回は、妊婦編ですか?

悪阻の時に食べさせてあげるなんて、やさしいですね直樹!

kobuta |  2010.01.31(Sun) 08:47 |  URL |  【コメント編集】

★優しい入江君!

こんにちは♪
「君がため」も大好きなので、続編が読めてうれしいです。

妊娠中、つわりで苦しむ琴子に入江君優しいですね。
熱々な二人、大好きでーす!
ご馳走さまでした。
るんるん |  2010.01.31(Sun) 14:07 |  URL |  【コメント編集】

★いいな~いいな~♡

入江く~ん!優しい~!!
琴子姫 いいなぁ~「ああ~ん」って食べさせてもらって!!!
今度はコロッコロッ!ダルマさんに成らないように気をお付け下さい←経験者
もっとイチャイチャしても許すわ~
美優 |  2010.01.31(Sun) 14:59 |  URL |  【コメント編集】

★優しすぎる直樹にメロメロ*>▽<*

平安といったら几帳に隠れる姫。可愛いなーと思わずつぶやいてしまいました。

そしてなかなか姫に会えない直樹は不機嫌で周囲にやつあたり…。
いつの時代も直樹の周りの人間(身近であればあるほど)は大変ですね(笑)
藤夏 |  2010.01.31(Sun) 16:33 |  URL |  【コメント編集】

★コメントありがとうございます

こんばんは♪コメントありがとうございます。

りきまるさん
妊娠→出産までは書きたいなと思っていたので、タイミングを見計らってました(笑)
特に平安時代の出産は色々ドラマがありそうなので^^書き甲斐があるかなと♪
ラブラブシーンは書いているこちらも照れました。「直樹、こんなこと言わないよなあ!」とか、またもや一人突っ込みしつつ(笑)

kobutaさん
密かにご好評頂いている平安、kobutaさんにもお気に召して頂けて何よりです。そうです、今回は妊婦編です。この後出産まで書いて行けたらな…あと裕樹もちょっぴり出したいなんて欲張りなことを考えています。

るんるんさん
最近すっかり優しい入江くんと御無沙汰だったので(笑)、書いていてちょっと照れてしまいました(笑)
でもやっぱりラブラブはいいですね。

美優さん
ハハ(笑)確かにコロコロしそう…こんなに素敵な旦那様に食べさせてもらってたら。
最近、優しい入江くんにすっかりご無沙汰なので…たまには♪

藤夏さん
そうなんですよね、八つ当たりは時代が変わっても(笑)
そして、平安=几帳に隠れるは、やっぱり外せないかなって。
でも冷たい直樹書いていると、優しさが引き立つので助かります♪

拍手コメントありがとうございます
佑さん
私も書いていて、「可愛い」と思ってました。小鳥みたいで♪
…餌付け(笑)?
でもそんな風に可愛く食べてもらえると、もっともっとって見たくなっちゃいますよね。

ぴくもんさん
平安直樹は確かに優しいかも…^^大好きだなんて仰って下さってありがとうございます♪
つわりは人それぞれみたいですね~ある食べ物しか受け付けられなくなったりとか。でも赤ちゃんのためだから、お母さんは頑張るんだろうなあ…
こちらこそ、時々UPさせてください♪

がっちゃんさん
読み返して下さったんですか!!ありがとうございます♪
出産までは何とか…書きたいと思ってます。『あさきゆめみし』の出産シーンとか、結構ドラマチックなので書いてみたいなあと大それたことを考えたりして。
こちらこそ、お返事が遅くなってしまい申し訳ございませんでした<(_ _)>

foxさん
本当に優しい旦那様ですよね!!!この直樹は私も優しくて結構好き…(笑)
また琴子姫が結構いじらしくて…だから時々書いているのかもしれません^^


水玉 |  2010.01.31(Sun) 21:49 |  URL |  【コメント編集】

読んでほっくリと幸せいっぱいになりました♪
几帳に隠れる琴子ちゃん♪とっても愛おしいわ♪
こんなに可愛いお姫様、直樹様が放っておくはずがない!!
二人いつまでも幸せいっぱいでいてね~
ゆみのすけ |  2010.02.02(Tue) 13:54 |  URL |  【コメント編集】

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