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2010.01.13 (Wed)

Daddy Long Legs 24


【More】


「…おじさまからは何も言ってこない。」
あしながおじさんへ手紙を出して、もう何週間も経つ。返事も来なければ、秘書の渡辺も何も言ってこない。
「やっぱり…お世話になっている身なのに勝手なことを言うって怒ってるのかしらね?当然だけど…。」
これで自分は二人の大切な人間に見放されたと思う琴子。
「いっそのこと…大蛇森孤児院へ戻った方がいいのかな?」
そこまで思う毎日を過ごしていた。

「琴子ちゃん!」
家の前を掃除していたら、郵便配達人が声をかけた。
「これって、琴子ちゃんのこと?」
そう言って配達人は、首を傾げながら手紙を渡す。封筒にはひどい文字が書かれている。
「よく見たら、相原琴子様って書いてあるみたいだったから。」
確かに、よく見ると相原琴子と書かれている。よくここまで無事に届いたものだと思ってしまうくらい、乱れた文字だった。
配達人にお礼を言い、琴子は手紙を手に部屋へと階段を上る。

「誰だろう…?私に手紙をくれる人は、渡辺さんと啓太くんと…。」
もう一人の名前を口にしそうになり、慌てて口をつぐむ。
「もう手紙なんて出すはずないわよね。…あ!」
もしかして、大蛇森院長からではないかと思う琴子。
「このミミズが死んだような字…あの嫌な院長の字だわ!」
きっとそうに違いないと思い、琴子は汚い物を持つ手つきで手紙を手にし、嫌々封を開ける。中の便箋にも、宛名同様のひどい文字が書かれている。

だが、琴子は読み始めて声を失った。

『相原琴子様。
今まで沢山の手紙をどうもありがとう。
返事は出さなかったけれど、全て目を通しておりました。女学校での生活、私も楽しませていただきました。
この度、卒業されたということもあり、そろそろ対面するのにいい機会ではないだろうかと思い、こうして初めて手紙を書きます。

色々苦しんでいたようですね。

あなたが悩んでいる手紙を受け取った時、私は病にて伏せっておりました。今、ようやくこうしてペンを持つことを医者から許され、この手紙を書いております。文字が乱れているのは、まだ手に力が入らないためです…。』

「あ、あしながおじさまからの直筆の手紙!」

震える手で手紙を持ちながら、琴子は読み進めて行く。

『…漸く、あなたに会える体力を少しですが取り戻すことができました。
近いうちに、私の家においでいただけないでしょうか?
お会いした時に少しでもあなたの悩みが解決できればと願っております。

短い手紙で申し訳ないのですが、これが限界です。
都合の良い日時を教えて下さい。

鈴木太郎』

「会える…!おじさまが私に会って下さる!」
琴子は感激に震えた。そしてすぐに机に向かい、返事を書き始めた。


一週間後。
琴子は東京駅に降り立った。いよいよ、鈴木太郎に会う日がやってきた。緊張している琴子に声をかける人物。
「相原琴子様でいらっしゃいますか?」
鈴木太郎の運転手だという。琴子は車へ乗り込んだ。

高級車はやがて、古い門をくぐりぬけ、大きな屋敷の前に止まった。運転手にお礼を言い、琴子は車を降りる。
すぐに玄関の重い扉が開かれた。
「いらっしゃいませ、相原様。」
「…渡辺さん。」
そこに立っていたのは、女学校を訪れていた時と何一つ変わらない渡辺だった。その時と同様、優しい笑顔を浮かべている。ただ一つだけ違うのは…。
「その格好は…?」
琴子は渡辺の格好をまじまじと見た。いつもの背広姿と違う―― 執事姿。

「最初に謝らねばなりません。」
渡辺は申し訳なさそうに言った。
「私は…鈴木様の秘書ではありません。鈴木様の…このお屋敷の執事なのです。」
騙していて済まなかったと、琴子に頭を下げる渡辺。暫く琴子はぼんやりと渡辺を見て、そして口を開く。
「渡辺さん。」
渡辺は琴子の顔を見た。
「…執事のお姿、とてもお似合いです。」
そう言うと、琴子はにっこりと笑った。渡辺も笑い返す。

「琴子さんこそ、そのお姿…。」
「おじさまから頂いたスーツです。」
琴子が今日着てきたものは、卒業祝いに贈られたスーツだった。
「ほら、これも!」
そして襟元には、あの蒔絵のブローチも飾られている。

「よく…。」
お似合いですと言いかけて、渡辺は口を閉じた。その台詞を誰よりも先に言いたい人間がこの屋敷で待っている。

琴子は渡辺に案内され、屋敷の中へ足を踏み入れた。

「大きなお屋敷ですね…。おじさま…鈴木様のご家族は?」
屋敷内を見回しながら、琴子は渡辺へ訊ねる。
「ご家族はいらっしゃいません。お一人で、こちらでお暮らしです。」
「こんな広い所でお一人で…。」
それはさぞ寂しかろうと思う琴子。

やがて二人は、ある部屋の前で止まる。

「こちらが旦那様の書斎でございます。旦那様は今日、初めて起きてもいいという許可をお医者様から頂戴しました。」
「御病気だったんですよね。それなのに私ったらあんなお手紙を出してしまって…。」
反省する琴子に渡辺は言う。
「いいえ…琴子さんのお手紙に旦那様は大層元気を出されました。今日、お会いすることもとても楽しみに待っていらっしゃいます。」
「本当でしょうか?」
それでも心配そうな琴子に、渡辺は続ける。
「ええ。そして…琴子さん。」
「はい。」
「…旦那様は決して琴子さんを面白半分で…援助していた訳ではありません。それだけは御理解下さい。」
「勿論です!」
琴子は語気を強めた。
「私はどれだけ感謝してもしつくせません。孤児の私を…二年間も学校へ通わせて下さり、色々な贈り物を下さり、そして卒業後も住む場所を与えて下さいました。私は、おじさまに何とお礼を申していいか!」
「…それを伺い、安心致しました。」
渡辺はホッとした表情を見せる。そして、ドアをノックした。琴子はたちまち緊張で身を固くする。

ノックの返事はなかったが、渡辺はドアを開けた。
「相原琴子様をお連れ致しました。」
そして、琴子に中へ入るよう促す形を取った。琴子は小さく深呼吸して、中へ入る。
「それでは私はこれで。」
「え…?」
てっきり一緒にいてくれるものだと思っていた渡辺が部屋を出ようとするのを、琴子は止めようとしたが、
「…お二人でお話したいことが沢山おありでしょうから。」
そう言うと、渡辺はドアを閉めてしまった。

琴子は部屋の中を見た。

琴子に背を向けるように、椅子が置かれており…誰かが座っている様子が見えた。
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*Comment

水玉さん♪この度は色々お世話になりました。
本当にありがとうございます♪

ミミズ字を大蛇森院長だと思い、汚いものを持つような手で・・・・
ぷーーーっ!!
すごくリアルに絵が浮かんできますよ!!
ただのミミズ字の郵便物ではなく大蛇森が出てくるところが最高♪
やっぱり水玉マジックね♪


いよいよ!キタキタキターって感じですね♪
ハラハラドキドキです♪
さぁ直樹さん♪病み上がり!!無理しない程度に
琴子ちゃんをちゃんと捕まえるのよ!!!
頑張れ!!!

やっぱり私の病気はまだ続きそう!!!
けどけど今日は水玉さんのおかげでいっぱいいっぱい幸せに♪
ありがとうございました♪
あ~語彙の少ない自分がむなしい!!
ゆみのすけ「 |  2010.01.13(Wed) 22:56 |  URL |  【コメント編集】

★さっそく更新有難うございます。

先ほど、今日も眠れなさそうですとコメントを入れたところに、
続きのお話がupされていてとっても嬉しかったです。(泣)

やっと入江くんは琴子に正体を現すことに決めたんですね。
きっと心臓が早鐘を打っていることでしょう。
自分の正体をしって、受け入れてくれるか、それとも拒否されるか、
かなり心配しているんじゃないかと思います。
でも、心やさしい琴子ですからきっと許すんじゃないかなって、勝手に想像していますが、

二人の再開。この先が気になります。

結局、水玉さまのお話は、どれも続きが気になるくらい私の心を虜にしています。惚れてしましそうです。(笑)
りきまる |  2010.01.13(Wed) 23:01 |  URL |  【コメント編集】

キタキタキタ~( ^o^)ヾ とうとう、あしながおじさま=直樹に会う時が!!
琴子ちゃんの反応が楽しみ♪直樹が、口角あげて琴子との再会に楽しみにしてる姿が目に浮かぶ~(^з^)
連続更新ありがとうございました☆
続きを楽しみに、今日は自分勝手に続きを妄想しながら寝ます☆彡
リンリン☆ |  2010.01.13(Wed) 23:05 |  URL |  【コメント編集】

★ついについにぃぃぃ!!!!

琴子と直樹、やっとご対面ですね!!
琴子ちゃんはどんな反応をするのでしょう?
そして、直樹のとる行動は…?

ケータイの充電がなくなっちゃって仕事中に読めなくて仕事から帰ったら2話もアップされていてすっごく嬉しかったです(^v^)

ありがとうございます(*^_^*)

きょうもまた、続きが気になって眠れない夜を過ごしそうでドキドキですが、このお話の続きを楽しみにしてます♪
愛結美 |  2010.01.13(Wed) 23:45 |  URL |  【コメント編集】

ミミズが死んだような字(爆笑)
と、思いきや読み進めていくうち胸かいっぱいになり。。。。。
琴子ちゃんの可愛らしさ、たくましさ、直樹さん(入江君)の不器用さ、優しさ、
水玉さんの優しさ、
お腹いっぱいです♪まだまだ別腹もありますが♪
最終回では無いのに今御礼させてください。
素敵なお話ありがとうございます!!
あお |  2010.01.13(Wed) 23:47 |  URL |  【コメント編集】

★別のマンガ7巻の

レイク〇ッドのシーンを頭に浮かべてしまったアタシです(汗)。そういえば、あの話も「あしなが」がベースになっているんだよね、確か?

うーーーーん!!次が待ちどーーーーーしーーーーーー!!
琴子ちゃんとあしながおじさんのご対面シーン!!!
勝手に色々想像して待ってます!!!!!

あ、入江くん、ご快復おめでとうございます。
今後は何卒ご自愛くださいますようお願い申し上げます。

スーツに蒔絵のブローチの琴子ちゃん、魅力的だろうな~~。
今日ばっかりは、啓太のプレゼントしてきてないわよね??(心配・・・)
アリエル |  2010.01.13(Wed) 23:48 |  URL |  【コメント編集】

★ジャジャジャーン

今日二度目の更新、ありがとうございます♪

病床の入江君、力を振り絞ってやっとの思いで琴子に手紙を書いたのですね。そして、琴子を家によんで 感動のご対面ですか?
何も知らない琴子は今までお世話になったあしながおじさんに会うのを楽しみにしていますが、入江君の方はきっと、ドキドキしているでしょうね。
「恋する青年」最後はちゃんと決めるのよ!頑張って!!
るんるん |  2010.01.13(Wed) 23:50 |  URL |  【コメント編集】

★2作品つづけて

拝読いたしました。

スーツ姿の琴子に背を向けて座っている直樹の絵が、頭の中にくっきりと見えます。なんで水玉さんの文章は絵が浮かぶのか?不思議です。
ちなみに、直樹の寝ているベッドは天蓋付き。琴子のスーツはフレアースカートに小さなテーラーカラーの丈の短い上着←以上私の妄想でした。
あ!もし作品中に記載があったらごめんなさい。
あわてものなので、読み飛ばしているかもしれません(汗)
さくや |  2010.01.14(Thu) 00:43 |  URL |  【コメント編集】

★やっと会えるあしながおじさんへ

水玉さん、おはようございます
更新ありがとうございます<(vv)>
琴子はひたすら直毅からの手紙を待ち続けていたのですね
そんな琴子へ手紙が
直毅からの手紙が、病に伏せていて、やっと手紙が書けたことが
近いうちに自宅へお越し下さいと
琴子、直毅から送られたスーツでそして蒔絵のブローチも付けて。
琴子は執事の渡辺さんを見てお似合いですと。
渡辺さんは琴子の手紙を見て元気になられたと
そして琴子さんを面白半分で援助していた訳ではないとうことを。
部屋へ案内です
渡辺さんのお役目はここまでです
琴子さんをお連れしましたと
渡辺さんは部屋を後に、お二人でお話をと
琴子、おじさんの顔を見たら驚くでしょうね
直毅ですから。
ドキドキ、ワクワクしてきています。
第一声の言葉は?
続きお待ちしています。



tiem |  2010.01.14(Thu) 06:04 |  URL |  【コメント編集】

★とうとうこの時が

会えるんですね?

また喧嘩にならなければ良いんですけど!

相思相愛の二人ですもん、大丈夫ですよね?

あー直樹の座ってる椅子が、回る瞬間が・・・・・・!

ドキドキしちゃいます。
kobuta |  2010.01.14(Thu) 09:03 |  URL |  【コメント編集】

★きゃ~~~~~~!!

こんにちは、水玉様。  更新ありがとうございます。

やっと、ホントにやっと会える。
鈴木太郎に・・・・・ もう小説と言うより、ドラマ感覚なんですけど・・・
ココで終わりって・・・いやぁーーーっ! 馬鹿みたいに1人で興奮しています(笑)

続きを楽しみにしております。
rin |  2010.01.14(Thu) 10:18 |  URL |  【コメント編集】

★コメントありがとうございます♪

コメントありがとうございます^^v

ゆみのすけさん
こちらこそ本当にありがとうございました!!
いや~テンション上がりまくりでした!!
すっごい久々、こんな気持ちは!!本当にありがとうございます!!
ここで一応、大蛇森院長を思い出してもらおうかと(笑)いや、別に思い出す必要ないのですが、ちょっと琴子ちゃんらしさを出してみたかったというのが実情(笑)
「病み上がり、無理しない程度」に捕まえるって(爆笑)
直樹さん、網か何かを持って待ち構えているの!?(笑)
しかも虫取り網とかのレベルではなく…川とかに使う投網レベルとか(笑)
私の方こそ、いつも皆様から素敵コメントを頂戴しておきながら、語彙が少ないために粗末なお返事で…それだけが申し訳ないといつも思ってます…(涙)

りきまるさん
二人にラブラブの兆しが見えると、ちょっとテンションが上がるんです(笑)
…いつもこのパターンです。テンション上がると、怒濤の更新(笑)
単純な私です(笑)
こんな私が書く話の続きが気になるとおっしゃっていただいて、本当に嬉しいです。
これを書いていたら…何か一番最初に投稿サイト様に乗せた時の気分を思い出しました。うーん、本当に初心って大切です!!

リンリン☆さん
口角上げて…凄いリアルに描写が浮かびました!!!
でも二人ともドキドキしているでしょうね。長い間の秘密が明かされる時が近づいているんですもの!!
私はリンリン☆さんや皆様の想像もとても気になります。
ていうか、そちらの想像の方が絶対面白いと思う…(笑)

愛結美さん
携帯の充電切れちゃうと、結構焦りますよね!!
パソコンから読んで下さってありがとうございます!!
本当に、こちらもついにという気分でいっぱいです。「あ~やっとここまで来た~」ってホッとしています♪
ここまでくれば、もう辛い展開もないですし…あとはゴールテープめざして走ればいいだけですから♪

あおさん
書いてみて思ったのですが、「ミミズが死んだような字」ってどんな字!?
ミミズがのたくったような字とは聞きますが(笑)何でこんな風に私書いたんだろ?あ、そうか、大蛇森先生を出すからつい…(笑)
なんか私まで二人と並べていただいて、勿体ないです♪そんな二人と並べて頂き、あおさんにそんな風に言って頂くような人間ではないので…(照)
お腹一杯になって頂けて、本当に良かった!!
こちらこそ、コメントを本当にありがとうございました!…て、まだ最終回ではないですが、お礼を言わせて下さい♪

アリエルさん
そうだね、あのマンガもそんな感じだわ♪
だた、あっちは本名を明かしていた…よね?
…なんか、入江くんの回復おめでとうコメントが、ものすごーく笑えたんですが(笑)
もうあれでしょうか?琴子ちゃんが幸せになってくれれば…という感じ?(笑)
さすがに啓太のプレゼントはつけてきてないよ~この日は頭からつま先まで、あしながおじさんからのプレゼントで全て身を固めているという設定なので♪

るんるんさん
そうなんですよね!この話、「恋する青年」の物語になってしまっていますものね。
ここで決めないと…もう後はないし!!
それにしても…琴子ちゃんを追いかける入江くん、いやあ…楽しかった!!
一番楽しかったのは、全く入江くんの気持ちに気づかずに啓太からのプレゼントやら何やらを見せる琴子ちゃんを書くことでした(笑)

さくやさん
私も丈の短いジャケットを想像してました!!!
ボレロのような感じで…フレアスカートで!!ほぼ一緒ですね!!
文中には描写は一切書いていないので、全然平気です!というより、お恥ずかしい話、私が服にあまり詳しくないので…書けなかった(恥)
それから帽子もちゃんとかぶっています。
ベッドもお金持ち=天蓋ですよね!!ちょっと広めでね♪

tiemさん
本当におじ様の顔を見たら驚くでしょうね♪
だってずっと好きだった人なのですから。
最初の一言…琴子を苛めるような言葉ではないことだけを祈りつつ(笑)

kobutaさん
顔を合わせればほとんど喧嘩してましたものね…といっても、殆ど直樹が八つ当たりしていたようなものですが^^;
でもここは素直になると思います(笑)だってここで素直にならなかったら…一生離れ離れになるところですもの♪
椅子回る瞬間…ドキドキしながら待っていて下さるとうれしいです。

rinさん
ドラマ感覚!!すごい嬉しいです!!じゃあ…毎週見ていて下さったような感じですか?
私もちょっと引っ張ってみようかと無謀にも、こんな所で終わらせてしまいました^^
続きはいかがだったでしょうか?
水玉 |  2010.01.15(Fri) 14:12 |  URL |  【コメント編集】

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