日々草子 ついていない女 6

ついていない女 6



ベッドの中。
すぐ隣には入江くん…。
こんな信じられないことが、今まさにあたしの身に起こっている。

バレンタインのチョコを渡しに行ったら、そこで胃痛で倒れ、おばさんの策略(?)で入江くんのマンションに泊ることになったあたし。

ベッドは一つ。
最初はあたしが奪った形だったけど、やはりちょっと申し訳なく…でこうなっている。

入江くんのパジャマを借りているあたし。
ちょっと大きくて、袖をまくったりして。
女の子のこういう姿を見ると、男の子はみんな可愛いと思うって雑誌に書いてあったんだけど、入江くんは全然そんなことないみたい…。

やっぱりあたし、魅力ないのかなあ…。

こんな至近距離で、女の子と寝てるってのに。
それも、自分を好きだと言っている女の子。
「俺のこと好きなら…いいよな?」とか言って、手の一つや二つ、出したくなるもんじゃないの?
シチュエーション的にはバッチリなのに。

なのに…なぜ?
なぜ、何もしないの!?

「俺は何もしない」って宣言までされてしまった…。

もしかして…もしかして、入江くん…。

あたしどころか…女の子自体に興味がないとか?

思い当たる節、ある…。

性格は問題あるのに、あんな美人な松本姉ですら相手にしない。
男だったら、あんな美人に言い寄られたら嬉しいと思うんものじゃない?それなのに、あの態度…。
まあ、あたしよりは優しくされてるけどさ、松本姉。

もしかして…入江くんって男の人が好きとか?

もしかして…その相手は…もしや…須藤さん!?

そうよね。
考えてみれば、須藤さんに頼まれてテニス部に入っているし。嫌だったら断るもの。
そういえば、一人暮らしをすることも須藤さんに相談してたみたいだし。

は!
もしかして、一人暮らしの本当の目的って…この部屋に須藤さんを連れ込むため!?
今も「あーあ。ここに寝ているのが琴子じゃなくて須藤さんだったらなあ」とか思ってるとか!

あたしが入江くんの写真を見て溜息をつくように、入江くんもこの部屋で須藤さんの写真を見て溜息をついているとか?
「須藤さん…。今頃何してるんだろう…」とか考える夜を過ごしてるの?

もしかして…今日あたしが借りた石鹸やシャンプー、全部須藤さんと同じ物とか?
あたしが「入江くんと同じシャンプー…」とかドキドキしたように、入江くんも「須藤さんと同じ石鹸…」とかドキドキして使ってるの?

「あの髭がたまらないんだよな」「ラケットを持つと人が変わる所のギャップがまた何とも…」とか、毎晩毎晩、須藤さんを想ってるのかしら?

そんでもって、「俺…松本になりたい。松本になって須藤さんに追いかけられたい」とか、そんな叶わぬ願いを抱いて眠りにつくのが日課になってるなんてことは…!

そして…あたしが密かに「入江琴子」になることを想像するように、「須藤直樹」とか想像してるなんてこと…まさか!

『親父、お袋…紹介したい人がいるんだけど…あ、琴子、お前も一緒に聞いてほしい。』
そして入江くんの後ろから現れる、チョビ髭。
『俺は…この須藤さんと一緒になりたいと思ってる。』
驚くおじさんとおばさん、そして勿論あたしも。
『そ、そんな!須藤さん、あなた松本姉一筋だったんじゃ!』
あたしは須藤さんに叫ぶ。
『いや…叶わぬ恋に身を焦がすうち、俺を必要だと言ってくれている入江の存在の大きさに気がついてね。』
『今頃気がつかなくても、入江くんはずっと存在が大きかったわよ!』
脳天気に笑う須藤さんに噛みつくあたし。
『そんな…お兄ちゃん、それなら孫は…どうするの?私、お兄ちゃんそっくりの女の子の孫の顔が楽しみだったのに…。』
泣くおばさん。
『ごめん、お袋。俺は…どうしても須藤さんじゃないとだめなんだ。』
『直樹、考え直す気はないのかい?そりゃ、こちらのチョビ髭さんも素晴らしい人だろうが…でも男同志というのは…。』
穏やかに説得するおじさん。
『いや。俺はこのチョビ髭がないと生きていけないんだ。』
頑固な入江くん。そして入江くんはあたしを見て言う。
『そういうわけで済まない、琴子。お前の気持ちは嬉しいけれど、俺はこういう体質なんだ。分かってくれ。』
『相原。お前が命より大事な入江を奪ってしまってごめんな。だけど俺は誓うよ。必ず入江を幸せにする。』
『分からないし、誓われたくもないわよ!』
絶叫するあたし。でもそんなあたしをもう、二人は見ていない。
『須藤さん。日本は色々面倒だから、いっそのこと海外へ行きましょう。』
『いいな、ハネムーンも兼ねて!』
『アメリカなら男同士も結婚できますしね。』
『さすが入江!何でも知ってるな!よし、二人でアメリカで思う存分テニスをしよう!』
『負けませんよ!』
笑いながら出て行く二人。涙に暮れるおじさんとおばさん、そしてあたし。
『待って、入江くん!待って!』

いや、落ち着け、あたし。
男と男は結婚できないわ。間違っても入江くんが「須藤直樹」になる日は来ない!うん、絶対!


そりゃ、そりゃいいわよ?
男を好きになろうが、女を好きになろうが、個人の自由だもん!
男が男を好きでも問題はないわよ!愛は自由!フリーダムなのよ!

でもね…
須藤さんに負けるってのが、どうにもこうにも!
よりによって、あの須藤さんよ!
あのチョビ髭より、あたしの方がまだ魅力あると思うんだけどな…。

はあ。色々考えたら疲れてきちゃった。
整理してみよ。
ええと、須藤さんは松本姉が好き、松本姉は入江くんが好き、そして入江くんは須藤さんが好き…。
え!ちょっと待って!あたし、どこへ入るの!?
あたしが入る余地ないじゃない!何?この三角関係!

いや、入江くんが須藤さんを好きというのは、あたしの妄想、妄想。
何を本気になってるんだ、あたし。

はあ。余計疲れちゃった…。
何か落ち込んできた…。

「落ち込んでんだろ?」
え?まるであたしの気持ちが分かるような入江くんの台詞。
「お、おちこんでなんか…!」
そうよ!
須藤さんごときで落ち込んでなんてないわよ!あんなチョビ髭に、あたしの数年間の片想いは負けない!
あ…でも、入江くんが女の子に興味がない体質なら仕方ないけど…。

「俺、お袋の思うツボにはなりたくないから。」

へ?それは一体…?

「…今日お前と何かあってみろ。まんまと引っ掛かって、一生あの人の思い通りにされちまうからな。」

確かに…それはそうかも。
「琴子ちゃんに手を出した責任を!」とか、おばさん、言いそうだもんなあ…。
そんな責任、入江くんに取らせるのは可哀想…。

てことは!
そういう理由であたしに手を出さないってことか!
おばさんへの対抗からなんだ!

そっか!よかった!
須藤さんへの叶わぬ想いからじゃなかったんだ!

「…ゲイかと思った。」
いけない!安心したあまりに、つい本音がポロリと!

「もう話しかけんなよ。」

ああ、嬉しい!
少なくとも、あたしのこと嫌っていないんだ!
須藤さんのことも気にしなくていいんだ!
あたし、チョビ髭には勝ってるんだ!

ああ、よかった…!
何かもったいなくて眠れそうにないな…。

大好きな入江くんの隣…。
ずっと、ずっと夜が明けなければいいのに…。











♪あとがき
ギブアーップ!
やはり、隙間は無理でした…。
もっと色々考えてたんだけど、いざ書いてみるとうまくいかない…。

一応結婚式は頑張ってみたいと思ってますが。
隙間、難しい!
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comment

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たくましい妄想!

こんばんは。
ヴァレンタインデーの「琴子お泊り編」ですね。
それにしても、琴子おたくましい妄想にお腹の皮がよじれそうです。
同じベットに寝て「何もしない宣言」され、自分に女としての魅力なしと落ち込む琴子。そして思いついた先が「入江君と須藤先輩が出来てる!」
きっと琴子はベットの中で、妄想しながら、真っ赤になったり、真っ青になったりしていたのでしょうね。

水玉さん、隙間が無理だなんてとんでもない!
十分楽しませていただいてます! 

ナニ イウテマンネンナー! アキマヘンデー!!

『ナニ オッシャッテマンネンナー!大丈夫デンガナ!!水玉ハ ソンナ ヨワキ ナ オヒトヤ アラヘン ヤッシャイマショ! キ ツヨーモタナ アカンデッセー!!水玉ファイト デッセー!』と言うことで(笑)変な大阪弁クリス応援バージョンで応援させていただきます♪♪(←一部、呼び捨てすみません。クリスちゃんだと思ってやってくださいまし(汗))

水玉様、大丈夫ですわ♪隙間話、十分過ぎる程、水玉様カラーになってる上、原作から飛び出したのかと思うほど多●先生を彷彿とさせてくださってます♪自信持って続けてくださると嬉しいです(^^)

おなかが痛い!

笑いすぎました!!なんで、何で須藤さん?
そーかぁ、あの時の琴子はそんな妄想をしていたのか。うんうん。でも・・・プププ須藤さん!アーお腹が捩れる(爆笑)こんなおもしろいBL読んだことありません。一度水玉さんの頭の中を覗きたいです。ギャグマシーンMAXですね。

No title

 ぶうっ……げ、げほごほっ。すみません、須藤さんと直樹さんが愛を語っているシーンを想像してしまいました。
 そりゃ本人の自由なんですけどね、本人の自由なんですけどね、同性で結婚できる国もありますけどね!(滝汗
)

 改めまして、お早うございます。暢気猫です。今回もおいしかったです、ご馳走様でした^^

 いってらっしゃーい♪ おみやげは、フルーツをお願いしますねー♪ じゃなくて!!
 言われてみれば確かに、直樹さんは須藤さんのことを気に入っていますよね。命令されることは嫌いなはずなのに、テニス部に入部したり、新居を相談したり、アルバイト先を相談したり。
 素直じゃない分、素直で一生懸命で真っすぐな人が好きなのではないでしょうか? 琴子さんのように。

 ではでは、そろそろお邪魔しますね。ご馳走様でした^^

入江くんと須藤さん!?

おはようございます、水玉さま。
琴子の妄想、今回も炸裂していますね。
入江くんと須藤さんの愛の逃避行。
想像すると怖い物がありますね。

面白い、面白すぎます。(笑)
これからもお話の隙間楽しみにしてます。

こんな私にありがとうございます!!

皆様、励ましのお言葉、本当にありがとうございます!
もう少し頑張れそうです!!

るんるんさん
こんな隙間を楽しんで下さって、ありがとうございます!!
何とか頑張って、結婚式の隙間をめざします!!
と、これも大風呂敷広げることになったら…ごめんなさい!!
いつもいつも優しいコメント本当に励まされてます♪

Askaさん
うわ!すごい嬉しい!!!
涙が出そうになりました!!ありがとうございます!!
クリスに励まされたみたいで、すごく嬉しい!!
なんか…調子に乗ってたのでガツンと落ち込んでたんですが、浮上できました!!ありがとうございます!!
Askaさん、優しい~♪

さくやさん
確かに…セリフだけ読むとBLですね(笑)
ちょっと入江くんが須藤さんを追いかけている姿を想像して、私も笑ってました。
でも…考えたことありません?好きな人がもしそういうタイプだったら…って。友達と昔、「もしそうだったら…」と話したことがあります(笑)
さくやさんこそ、素敵な文章、読まれている本のせいかなあと勝手に想像しちゃってます♪

暢気猫さん
ありがとうございます!そこを想像してくださって!
フフフ…狙い通りです!!
ええ!琴子と須藤さん、入江くんから見て同じライン!?(爆笑)
でも、確かにそうなんですよ。なんで入江くん、須藤さんのことをあんなに信頼?してるのかなあと。
琴子同様、裏表がないから?あの抜けているところが彼のツボなのか???
結婚後も学祭の試合で審判してるし…面白い関係ではありますよね!!

りきまるさん
美しい人と(以下自主規制)の組み合わせって、ちょっといいかも…と思って。いや、この思い違いを今になって後悔してるのですが。
面白いと言っていただけてありがとうございます!!
優しい方ばかりだ~うちのコメンテーターさん!!

あの~~またまた面白すぎるんですけど・・・・
入江君が知ったら激怒しそうな妄想!!
けどその妄想を平気でするのが琴子ちゃん!!
須藤先輩、そうきたか~!!って
あまりの面白さにびっくりです♪
バレンタインのちょっぴりだけ入江君に近づけた
あの夜に須藤さん!!!
いいわ~いいわ~水玉さん♪
やっぱり水玉マジックね♪もう私はうっとりよ♪
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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