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2009.11.01 (Sun)

公爵の秘密 1


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若き言語学者でもあるナオキヴィッチ・イーリエ公爵と、コトリーナ・アイハーラ嬢の結婚式が行われようとしていた。

当日の朝、ナオキヴィッチから公爵であることを、コトリーナと父シゲオは打ち明けられた。
シゲオは平身低頭し、今までの無礼な態度を詫びた。一方、コトリーナがナオキヴィッチの身分を聞かされて最初に口にしたことは、
「じゃあ…先生のこと、公爵様って呼ばないといけないの?」
というものだった。
「いや、別にそのままでいいけど。」
ナオキヴィッチとしては、公爵と呼ばれるより先生と周りから呼ばれた方が嬉しい。無論、それはコトリーナからの呼ばれ方も同じである。
「よかった!公爵様って何か言いにくいんだもん。」
そう言ってコトリーナはニッコリと笑った。どうやら公爵という身分はその程度しか気にならないらしい。そんなコトリーナが愛おしくてたまらないナオキヴィッチ。

「いやいや。ようやくここまでたどり着けたね。」
そんな二人の雰囲気を見事にぶち壊すかのように入ってきたのは、ナオキヴィッチの悪友、ガッキー・ウェスト男爵だった。
「おお!なんて美しい花嫁なんだろう!」
そう言って、コトリーナの手袋に包まれた手にキスをしようとする男爵。すかさず、コトリーナを引き寄せるナオキヴィッチ。
「ケチ!減るもんじゃないだろうに!」
そう文句を言う男爵。そんな男爵をついてきた執事がなだめる。

そして、結婚式は厳かに執り行われた。
列席者は男爵とその執事(男爵が何かしでかさないよう、見張り役を兼ねてついてきた)、ナオキヴィッチの世話係のノーリー夫人、コトリーナの友人であるサティとジーン。名門の公爵家の婚礼としてはいささか質素すぎる気もしたが、新郎新婦は十分幸せをかみしめていた。
シゲオにエスコートされ、ヴァージンロードを歩いてきたコトリーナを見てナオキヴィッチは見とれそうになったし、ベールをナオキヴィッチに上げられたコトリーナは涙を堪えるのに精一杯。そしてやっと二人は初めてのキスでもある誓いのキスを交わし、結婚証明書にサインをし、晴れて夫婦となった。

その後、ナオキヴィッチとコトリーナは、ナオキヴィッチのカントリーハウスへ出発することになっていた。一応、そこの使用人たちにもコトリーナを紹介する目的とナオキヴィッチが領地にて執務を行う目的である。
そして二人は、皆に見送られナオキヴィッチのカントリーハウスへと向かった。

「そっか…エフ村も先生の領地だったんだね。」
列車の中でコトリーナが呟く。
「いつも見ていた遠くのお屋敷が、先生の家だったとは…。」
「今日からはお前の家にもなるけどな。」
そう言われても、コトリーナにはピンと来ない。そもそも公爵夫人になった実感すら湧かない。
「先生、お屋敷の人、みんないい人?」
「ああ、俺の留守をしっかりと守ってくれている奴ばかりだな。」
「そっか。」
いい人と聞かされ安堵するコトリーナ。とにかく、屋敷の人間に気に入ってもらうよう頑張ろうと決心した。

列車での長旅を終え、馬車に揺られ、漸くナオキヴィッチの本邸へ到着した。そこはコトリーナがエフ村から見ていた屋敷より遥かに大きく、広かった。コトリーナが見上げているうちに、ナオキヴィッチは先に玄関へと入って行く。慌ててついて行くコトリーナ。

「お帰りなさいませ。」
入った瞬間、コトリーナは面食らった。そこには両側にズラリとメイド、フットマンが並んでいる。それも相当の人数である。
「ただいま。」
慣れた様子で挨拶をするナオキヴィッチ。

「お帰りなさいませ。ナオキヴィッチ様。」
コトリーナが緊張したままでいると、ナオキヴィッチの前に一人の紳士が現れた。
「ただいま、シゲキスキー。」
「この度は御結婚、おめでとうございます。」
「ああ、ありがとう。」
一体誰だろうとコトリーナが思っていると、ナオキヴィッチがコトリーナを振り返った。
「妻のコトリーナだ、よろしく頼む。コトリーナ、執事のシゲキスキーだ。」
「ようこそ。お待ちいたしておりました、コトリーナ様。」
シゲキスキーはニコニコ笑って、コトリーナに頭を下げた。
「初めまして。コトリーナです。」
コトリーナはシゲキスキーを見て、ホッとした。その笑顔は緊張を解くのに十分だった。執事と聞くと厳つい顔を想像していたが、シゲキスキーは見事、そんなコトリーナの予想を裏切ってくれた。

「少しお休みになられるでしょう?」
シゲキスキーがナオキヴィッチへ訊ねる。
「いや。このまま執務室へ向かおう。仕事が溜まっているのだろう?」
「ですが…。」
シゲキスキーはナオキヴィッチの返事を聞き、心配そうにコトリーナの顔を見た。新妻を放っておいていいのかと思うシゲキスキー。そんなシゲキスキーの態度を見て、ナオキヴィッチは言う。
「コトリーナのことなら心配ない。…ユウキスキー!」
すると並んでいたフットマンから一人、少年が出て来た。
「コトリーナ。ここに滞在している間、このユウキスキーがお前の相手をする。分からないことがあったら、何でもユウキスキーに尋ねるといい。ユウキスキーはシゲキスキーの息子で、将来はイーリエ家の執事になる優秀な少年だ。」
「かしこまりました、ナオキヴィッチ様。」
ユウキスキーと呼ばれた少年は、ナオキヴィッチに恭しく頭を下げた。
「それじゃ、コトリーナ。また後で。」
ナオキヴィッチはそう言い残し、どこかへと歩いて行ってしまった。シゲキスキーは、「きちんとお世話するのだぞ。」と息子へ申し渡し、ナオキヴィッチの後を追った。

「あの…よろしくお願いします。ユウキスキーさん。」
コトリーナはユウキスキーの顔を恐る恐る見ながら、言った。このユウキスキーという少年、朗らかで温かい印象の父に似ず、非常に冷たい感じである。
「ユウキスキーとお呼び下さい。」
ユウキスキーはそう言うと、部屋へ案内すると言い、背を向けた。

「こちらでございます。」
ユウキスキーに案内された部屋は、都会にあるナオキヴィッチの家の部屋よりも遥かに広い部屋だった。中央にはコトリーナが見たこともない大きさのベッドが置かれている。
「それでは、御用がございましたらそのベルをお使い下さい。」
ユウキスキーはそれだけ言うと、一礼し部屋を出て行ってしまった。

「冷たーい…。」
コトリーナはユウキスキーのそつがない態度に思わず本音を漏らす。
「一人ぼっちか…。」
ベッドの上に腰かけ、溜息をつく。
「でも…公爵様としてのお仕事が沢山あるんだもの。仕方ないわよね。」
同じ屋敷にいるのだから顔を見られないということはないと、コトリーナは自分を奮い立たせる。夕食だってお茶の時間だって一緒に過ごせるだろう。
持ってきた荷物を出そうと、コトリーナが運び込まれた鞄に近寄った時、ドアをノックする音がした。入って来たのはメイドが数人。
「お荷物を整理させていただきます。」
そう言ってコトリーナを荷物から遠ざける。どうやら公爵夫人は自ら荷物を解く必要はないらしい。
何もすることがなくなったコトリーナは、屋敷の外を散歩することにした。

敷地内とは思えないほど、広大な森が広がっている。
「気持ちいいなあ。」
花売り娘だったコトリーナは、森に咲く珍しい花などを見ながら楽しく散歩をしていた。時にはそれらを摘む。勿論、ナオキヴィッチの部屋へ飾るつもりだ。
「あら?」
沢山摘んだ花を抱え、コトリーナは足を止めた。
「こんな所に…お墓が?」
それは質素な墓だった。
「一、二…四!?」
しかも四基ある。
「どなたのお墓かな?」
代々の公爵家の人間の墓にしては、あまりに質素である。

屋敷に戻ったコトリーナは、玄関にちょうどいたユウキスキーを捕まえた。
「お一人で勝手に歩かないでください!」
早速お小言を頂戴するコトリーナ。
「ごめんなさい…。」
なぜ、こんな少年に謝らないと…と思いつつ、でもそれが公爵家のしきたりなのなら逆らわないでおこうと思うコトリーナ。
「あの…森にあったお墓はどなたのお墓かしら?」
一応、お墓にも花を供えてはきた。
「お墓…ああ。」
ユウキスキーは思い出したように、声を上げた。
「先生のご先祖様?」
だがコトリーナの質問には答えず、ユウキスキーは「こちらへ」とコトリーナを促す。

案内されたのは、あまり広くない部屋だった。壁には大きな肖像画が飾られている。いずれも美しい女性ばかりだった。
「左から順に、ヴィヴィアン様、マレーネ様、セツコ様、キヌヨ様でございます。」
「え、えーと、マリリン様…?ケイコ様…?」
出鱈目な名前を口にするコトリーナに、ユウキスキーは溜息をつく。
「ヴィヴィアン様、マレーネ様、セツコ様、キヌヨ様でございます。」
とりあえず、後で覚えることにするコトリーナ。
「この方たちは…?」
「いずれも、ナオキヴィッチ様の奥様でいらした方でございます。」
「ああ、そう。ナオキヴィッチ様の奥様、へえ…美しい方ばかりね…。」
ユウキスキーの説明に、素直に頷くコトリーナ。だが、
「え?ちょっと待って!今、何て言った?」
と、顔色を変えた。
「いずれもナオキヴィッチの奥様でいらした方々でございます、と申し上げました。皆様、本当にお美しい方でございました…。」
ユウキスキーはポケットからハンカチを取り出し、目元と拭う。どうやら涙ぐんでいるらしい。
「お、お、奥様…先生の…奥様…!?」
コトリーナはそう口にするのが精一杯だった。そして、手にしていた溢れんばかりの花を床に落としたのだった…。










♪あとがき
抱えていても仕方ないので、さっさと書きます(笑)
と言い訳は置いておいて。

ごめんなさい。
私がこの話、書いていてかなり気に入ってしまいました!
カタカナ苦手なのに…!

懲りずに、上で!!上、中、下…で終わる…といいな!今度こそ!

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*Comment

★続編ありがとうございます。

こんばんは、水玉さま。
又、ナオキヴィッチとコトリーナのお話が読めてすっごく嬉しいです。
仕事で領地に戻るとはいえ、新婚旅行も兼ねてるはずなのに
相変わらずそっけないナオキヴィッチですね。
入江パパと入江弟が使用人として登場するなんて思ってもみませんでした。(笑)
しかし、ナオキヴィッチはコトリーナを含めて、
5回も結婚をしていたなんて・・・
それも前妻はすべて亡くなっているの!?
これからの展開が楽しみです。
りきまる |  2009.11.01(Sun) 19:47 |  URL |  【コメント編集】

★うっれしーな

わーっ、待ってました。
ナオキヴィッチが公爵だとわかり、やっぱりコトリーナ父は平身低頭で謝りましたね。コトリーナの方はあまり気にならないみたいですね。相手によって態度を変えない所がコトリーナらしいですね。
結婚式が無事終わり、二人はカントリーハウスへ、入江パパ、裕樹君登場ですね。
優しいシゲキスキーと冷たいユーキスキー、大変そうな予感...。
えっ、ナオキヴィッチの前の奥さんが四人もいたの?
じゃあコトリーナは五人目の妻?
そして、お墓も気になりますね。

私もこのお話、前から気に入っています。そして続編(続々偏)
のこのお話を読み、もっと気に入りました!
るんるん |  2009.11.01(Sun) 20:25 |  URL |  【コメント編集】

★前妻が4人?

水玉さん、おはようございます。
ナオキヴィッチとコトリーナの続編すごく嬉しいです。
カタカナ名前を覚えるコトリーナ大変でしょうね。
執事にメイドにと。
コトリーナ担当のユウキスキー。
何となくイジワルしそうな予感が(^^)
でもそこはコトリーナ、上手く交わすとは思いますが。
それにしても、ナオキヴィッチ様、4回結婚していたという事。
さらに、奥さんが全て亡くなっているということを。
コトリーナはショックが大きいのでは。
どうなるのでしょうか?
ナオキヴイッチに聞けるのかなぁ。
これから先の展開がもの凄く気になります。
tiem |  2009.11.02(Mon) 05:22 |  URL |  【コメント編集】

ユウキスキー、いじわるだぁぁ!
まさか、主人に対してあらぬ気持ちを抱いていたが故のいじめじゃないよね?
いやいや、そんな背徳ストーリーにはならないよね、さすがに(笑)
さぁ、妄想プリンセス・コトリーナはきっとその妄想力故に落ち込んでしまうでしょう。
そして、解決の鍵は、ナオキヴィッチがどれだけコトリーナを思いやってやれるか…にかかっていることでしょう。
ナオキヴィッチ、コトリーナが身分違いでアナタのようには頭が切れないことを忘れないでね!!
アリエル |  2009.11.02(Mon) 08:59 |  URL |  【コメント編集】

★ありがとうございます!待ってました続編!

こんにちは、水玉さん。

すっかり私のお気に入りになってしまったこのシリーズの続きが
早速読めて嬉しいです。
今月は個人的にイタキス強化月間!と決めましたので(笑)
今まで以上に水玉さんのイタキス二次を読みまくる日々が
訪れるかと思います。

ナオキヴィッチとコトリーナ、結婚式のキスが
初めてのキスというのはこうほほえましいというかなんというか。
原作では初キスはザマアミロつきだっただけに感慨深いものがあります。
いやしかし、気になるラストですね。(私もコトリーナ同様、名前が覚えられない^^;)
ナオキヴィッチほどの推察力もなくコトリーナほど妄想をふくらますこともできない私ですので
先々がまったくよめないです。次のお話が本当に楽しみです♪
藤夏 |  2009.11.02(Mon) 12:45 |  URL |  【コメント編集】

★続編!面白い!

まいふぇあシリーズ続編面白そうですね!
ええ!きっと3回では無理ですよ!
あとがきでのりにのっている水さまの様子を拝見し、きっと面白いエピが次から次へと降ってきそうですからねぇ。期待しちゃいますよ。
シゲキスキー、ユウキスキー(笑)
言いにくそう・・・。舌かむかも。(笑)
わーい。コトリーナちゃんに間違えて名前呼んでもらっちゃった!v-238真里菜ちゃんと並んでますし。(←おバカ)
しかし5人目の妻。ぷぷぷ。何かありそう。
セツコとキヌヨって思いっきし日本名。(爆笑)
謎解きが楽しみですなぁ。
カントリーハウスってよくわからなったから、ウィキせんせに教えてもらったら、載っていた写真がすごいお城でびびりました。
そりゃコトリーナちゃんもびびるよね。
すごすぎる。公爵家・・・。
KEIKO |  2009.11.02(Mon) 12:58 |  URL |  【コメント編集】

★きゃー♪

待っておりましたー!水玉様ありがとうございます♪♪

仮想海外設定ですよね…?(汗)だとしたら、予想が当たってたら良いな…。

でないと、コトリーナが可哀そうすぎですし、良い人なナオキビッチが極悪人?!(笑)

予想が当たっていることを祈りつつ、展開を楽しみにしておりますね~♪

----------
そうそう、overの歌ですね、水玉様がお好きなF山さんも歌ってましたわよ(^^)v
Aska |  2009.11.02(Mon) 23:18 |  URL |  【コメント編集】

★コメントありがとうございます♪

読んで下さってありがとうございます♪

りきまるさん
こちらこそ、読んで下さってありがとうございます^^
ノーリー夫人をナオキヴィッチのお母さんにしなかったので、シゲキスキー&ユウキスキーも家族にはできないなあと思って、使用人に…(笑)
しかし、どこの国の人なんだ、シゲキスキー(笑)

るんるんさん
コトリーナはまだピンと来ない感じでしょうか?
意外とシゲキスキー、執事姿が似合うのではないかと思うのは私だけ?
とりあえず、短く終りそうな話から書いていこうと思ってます^^

tiemさん
カタカナ名前、私も書くのが大変です^^;
うっかり、シゲキヴィッチとか書きそうで…(笑)
メモにしたいくらいです(笑)
何となく意地悪しそう…どころか、すでに意地悪してますが、ユウキスキー(笑)←ユウキヴィッチと書きそうになりました。

アリエルさん
主人って…おーい(笑)
想像すると、相当ウケるんですが!!それこそ、身分違いの恋だわ、しかも究極の!!
妄想プリンセス…確かにそうだわね。
想像力が豊かだと、あらぬ方向へと考えてしまうものだし。

藤夏さん
イタキス強化月間ですか!!私も今月はちょっとそうしてみようかな♪個人的に色々あるので。
結婚式までキスもしなかったという、ウブさがちょっといいかなあと思って^^
そしてその先もお預け状態…
多分最後は…「おい!」と突っ込まずにはいられないことになるかと^^;今のうちに謝っておきます。ごめんなさい!

KEIKOさん
確かに、徹底的にギャグに走っているこの話は書いていてかなり楽しんでいます!!…たとえ滑ろうとも!
そうだ!ケイコさん!!(笑)無断で出演させちゃってごめんなさい(笑)ギャラはあとで、御指定の口座に振り込ませていただきますね(笑)
ちなみに私はフットマンをウィキ先生に聞きました(笑)日本と違ってこの辺が苦労する…^^;

Askaさん
待っていて下さってありがとうございます。
そしてその想像は、絶対外れます(笑)もう本当に…今から最後を書くのが怖いです。ええ、本当に…。
え!F山さん(私が好きなことを知っていて下さってとっても嬉しいです)も歌っていたんですか?T永さんといい、F山さんといい、貴重な情報ありがとうございます!!

水玉 |  2009.11.04(Wed) 12:37 |  URL |  【コメント編集】

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