日々草子 ついていない女 3

ついていない女 3


いつの間にか、「あんた」と呼ばれることから「お前」と呼ばれるようになった、可哀想なあたし。
これはまだいい。
「あんた」より「お前」の方が親近感がある感じ、うん。

「琴子、邪魔。」
振り返ると、まんまるなチビがあたしを睨んでいる。これ、入江家の次男坊。小学生。
小学生にあたしは…呼び捨てにされている!
「“琴子お姉ちゃん、ちょっとどいてもらえますか?”でしょう!」
あたしは年上として、きちんと指導する。すると、大してでかくもない目でアッカンベーをしやがる!兄貴に似て、なんて生意気な礼儀知らずなのかしら!!

これも…そう!
その生意気な兄貴のせい!

「入江くん!」
あたしは廊下で、その兄貴を呼び止めた。
「何だよ。」
「あたしのこと、琴子って呼び捨てにするのやめてほしいんだけど!」
「やだね。」
うわ!即答!
「じゃあ、何で呼び捨てにするの?」
そうよ、そこが知りたい。
「“相原”って呼ぶとさ、おじさんがいちいち反応するんだよ。自分が呼ばれたんじゃないかって。で、その度に違うって否定するの、面倒なんだよな。」
確かに…。いや、丸めこまれるわけにはいかない!
「しょうがないじゃない。あたしもお父さんも相原なんだもん。」
「だから、お前は下の名前で呼んでいるわけ。」
うーん…仕方ないか…。いや!また丸めこまれそうになった!

「それなら、“琴子ちゃん”って呼んでよ!」
「やだね。お前、ちゃん付けで呼ばれるようなキャラじゃねえよ。」
キャラ…?キャラで区別ですか?
こんな可愛い女の子をちゃん付けキャラじゃないって…どういう神経なんでしょ!
「じゃあ、“琴子さん”は?」
「何で同年齢の奴にさん付けするんだよ?やだね。」
「じゃあさ…じゃあさ…“琴子様”ってのは…どう?」
「…。」
すみません、調子に乗りすぎました。
入江くんのその顔が答えを出してます…はい。

「とにかく、入江くんがあたしを呼び捨てにするから、裕樹くんが真似して呼び捨てにするの!」
「仕方ないだろ。」
ケロリとして答える、憎たらしい男!

「だって俺もあいつも、お前を敬ってねえもん。」

うやまう…?え?どういうこと?
そんなあたしの表情を見て、入江くんは溜息をついた。

「いいか?さん付けってのは敬称なんだよ。」
「けいしょう…?」
「おい…もしかして敬称の意味がわかんねえとか言わないだろうな?」
「し、失礼ね!それくらいわかるわよ!」
けいしょうね。後で辞書で調べておこう。
「敬称とは敬う称と書く。つまり敬う相手に付けるものなんだな。」
“うやまう”も、辞書で調べておこう。
「だが、俺たちはお前を敬っちゃいない。故に、お前に敬称を付ける必要はない。」
「何それ…!」
ど、どこまであたしを見下せばいいの!この人!
「だからお前は呼び捨てで十分なんだよ。分かったらもう行っていいか?」
いいともだめともあたしが言わないうちに、入江くんはどこかへと行ってしまった。

すっごい腹が立つ!!
何が呼び捨てで十分よ!!
敬っていないから、だとお?

あたしだって、あたしだって、入江くんを敬っていないわよ!
よく意味分かんないままだけど、とりあえず呼び捨てで十分な人になっちゃってるわけね、あたし!
それなら…それなら、あたしだって呼び捨てにしてやる!!
入江くんのことなんて、敬っていないんだから!!




入江くんはこの時間、リビングでテレビを見ているはず。
見てなさいよ!
驚くがいいわ!!

あたしは思いきり、リビングのドアを開けた!

「入江!テレビ見るから、そこ貸しなさいよ!」

フフフ…
思い知るがいいわ、入江!

「え…?」

…あら?

「あ…こ、琴子ちゃん…何チャンネル見るのかな?」
「お、おじさん!」
そこにいたのは、入江は入江でも…おじさんだった!!

しかも…。

「こら琴子!お前って奴は、目上の人間に対して何ていう口の利き方するんだ!」

あちゃ…!
お父さんまで一緒だったとは!

「いや、アイちゃん。わし、確かに入江だから…。」
おじさん、そこはフォローしなくていいんです!
余計お父さんの怒りが…。

「いいや!ここはきちんと叱っておかねえと!琴子!俺の部屋へ来い!」
「はあい…。」

お父さんの部屋へ行く途中、一番見られたくない人間とすれ違う。
「ばあか。」
しかもすれ違いざまに、一番言われたくないことを言われる、ついていないあたし…。
でも一番ついていないのは…こんな性格の悪い人を好きになってしまったことかもしれない…。








☆あとがき
お約束パターンで、相すみませぬ…。
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comment

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VIVA お約束パターン!

そのお約束こそがミラクルなんですよ!!
ぃや~~、噴いた噴いた!!

最後の、しゅんとなってる琴子と「ばぁか」って言ってる入江くんのすれ違いざまの表情一つまで、ありありとこの目に浮かびます。
これ、いったい何の魔法?
何度かけられてもわからない、この仕掛け。
水ちゃんは、イタキス二次界のセロですわ!!!

あ~笑った、笑った。

ホントにアリエルさんの言うとおり!
「これ、原作のどのへんにあったかしら?」って
思えるくらい絵が浮んできます。
琴子もどうせ呼び捨てにするなら、いっそ「直樹」って
呼んでみればいいのにね。恥ずかしくて言えないか。

やらかした・・・

こんにちは
お話すごくおもしろかったです。
最後は入江パパ・・そうだったパパも入江!瞬間琴子と同じ気持ちに・・「やらかした感」で自分がおかしかったです。
初めての「入江」呼び捨てもおかしかったし、「ばあか」これがあってこそ直樹だなぁと思って、はまりました!!

さすが水玉さん

皆さんの言われるように、水玉さんの作品を読むとリアルに 
入江くんと琴子の様子が目に浮かんできます。
呼び捨てにされて怒ったり、叱られてシュンとなったり、そうそう、
入江君の「ばあか」もそうですよね。

あっ、やっちゃた。

こんにちは。
琴子、イリちゃんパパにやっちゃいましたね。
入江くんに仕返しをするつもりが・・・
アイちゃんパパにお説教をされてしまいました。
入江くんにリベンジしても負けてしまうと思うので、
敗北を認めた方がいいかも!?

少し、自信が持てました♪ありがとうございます。

コメントありがとうございます♪

アリエルさん
ありがとう~♪
お約束でもそう言ってもらえると、とても励みになる!!
「コンプリート!」だっけ…?ああ!セロ、知ってるのに、セリフが出てこない!!
原作の隙間って、あまり書いたことなくてうまく書けるか自信がなかったんだけど、こうやっておだてられると、どこまでも木に登りつける豚さんになれるわ~!!ありがとう!!

さくやさん
うわ~!さくやさんまで、ありがとうございます!!
本当、こうやって励まして頂いて、調子に乗って続きが書けます!
琴子の頭の中では『入江くん』→『入江』という式だったんですよ♪でも、結婚しても入江くんだもんなあ…初々しくて可愛い♪それをやめさせない入江くんも可愛いなあ♪いつの日か、その辺の話も書いてみたいです♪

ふーちかさん
あ、その反応、とても嬉しいです^^
よく電話なんかで「○○(苗字)さんいらっしゃいますか?」とあったりすると、「うちは全員○○だけどね!」と思ったりするし。
しかし、「ばあか」入れてよかった…(笑)

るんるんさん
入江くんといえば「ばあか」な気がする…。
そしていつまでも「ばあか」と呼ばれる琴子ちゃん(笑)
可愛い♪
ありがとうございます!自信のない隙間もこれで頑張れそうな気がします!!
しかし、こんなにほめていただいていいのかしら(テレテレ…)

りきまるさん
きっとこれに懲りて、琴子は二度と呼び捨てにしないでしょうね♪
それにしても本当についていない、可哀想な琴子…でもこの可哀想は、ちょっと楽しいので琴子派の私はOKです!…済みません、意味のわからないコメントのお返事で^^;

大爆笑!!
敬う??呼び捨て??
いったいどんな展開になるんだろうと・・・・
びっくり!!凄い展開に!!
琴子の「しまったぁ~!!」という様子が
目に浮かびます
そして入江君の「ば~か!」
入江君には琴子のあきれた行動も
「それでこそ琴子」って感じなんだろうなぁ~

意外と…

ゆみのすけさん
実は、すべて入江くんの企みだったりして♪
こうなることを、全て見越してたりして♪
それで、お父さんに叱られている琴子を見て「ザマーミロ」とか言ってるとか(笑)
この頃の入江くんは、それくらいしそうなんですが、いかがでしょう?

確かに❓兄弟そろって、態度のでかい、兄弟の家なのは確かなだけど、少しくらい、頭よっくても、かっこいくっても、最初の、入江君と、祐樹君嫌なやつでしたよね、それが、どんどん、優しく、人間らしくなっていくんだよね
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多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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