日々草子 ついていない女 2

ついていない女 2


何がどうなって、こうなったのか、あたしにはわからない。

冷徹非情な男の家に、お世話になることになった、世界一ついていない可哀想なあたし。
自分をふった人間の顔なんて、出来れば当分、いやいや、一生見たくないもの。
学校は同じでも、クラスが違うから見ずに済むはずだった。

なのに、学校で顔を見ることが少ないかわり、家で四六時中顔を突き合わせなければいけなくなった。

世界中、どこを探しても、こんな可哀想な女子高生はいないはず。

だけど、そんな困難にめげるあたしではない。
ちょっと古いけど、一度、あいつをギャフンと言わせてやりたい。

そこで掲げた目標。
今度の試験で100番以内に入ること。
馬鹿じゃないってことを見せてやりたい!

「おい。」
あ、しまった。
あたし、今、勉強中だったんだわ。

「まじめにやれ。」
「はーい。」
慌ててノートに目を戻すあたし。ちなみに隣にいるのは…その冷徹非情人間。
一応、勉強を教えてもらっているという状況。

「あの…。」
「何?」
「ちょっと…ベランダに出て、外の空気を吸っていいかなあ?」
「…。」
無言は了解の意味だと、前向きに受け取り、あたしはベランダへ出る。

はあ。
夜風が気持ちいい。
あんなにぴったり、隣にいたら、息もしづらいったらありゃしない。

そりゃ教え方は上手だけどね。先生なんか、比べものにならないわよ。この人、学校の先生になったら凄いだろうなあ…。
あ、でもダメ、ダメ。
あたしみたいな、か弱い、勉強の苦手な女の子には冷たいもの。
「こんなのが分からない?お前、小学校からやり直せ!」
ってね。
そして可哀想なその女の子は、登校拒否に…。
親が怒鳴り込むのよ。「先生の教育は間違ってます!」って。でも、そんなの、あいつには通用しない。「お宅の娘が馬鹿だからでしょう。もっとちゃんと育てなさい。」とか言ってのけるわ。頭がいいから、口も達者なのよね。それでその親も言葉に詰まって…。可哀想な女の子。

うん。学校の先生は向いてないわね。
予備校!予備校ならいいかも!
『めざせ!T大!』とかいうハチマキ巻いてさ。
…プッ!
想像しちゃったじゃない。悪いけど、ハチマキ似合わないわ。

ちょっと窓から覗いてみる。
こちらに背中を向けたまま。
ちょっと!
ちょっとは年頃の女の子の部屋に入っているという行動、何か取ったらどうなの?
キョロキョロするとか。

『へえ。これが女の子の部屋か。男とはやっぱり違うな』
『散らかっていて、落ち着かないでしょ?』
と、落ち着かないあいつを気遣う、心優しいあたし。
『いや、そんなことないよ。俺なんて弟と一緒の部屋だからガラクタばっかりで。』
『ごめんね…あたしが突然来ちゃったから、お部屋とっちゃって。』
またもや気遣う、けなげなあたし。
『いや、いいんだよ。だって家が大変なことになっちゃったんだもんな。人間、助け合わないと。人という字は人と人が支え合うようにできているだろ?』
『すごーい!入江くんってものしりなのね!』

は!
何、あたし、いい雰囲気になっている様子を想像してるの?
冗談じゃないわ!
あいつは勉強を教えてもらっているだけの関係なんだから!

でもそれも、あたしが、ほんのちょっと弱みを握ったからなんだけどね。
しかし、あんな写真一枚で、こうホイホイと乗ってくるとは…余程嫌なんだろうな。
確かに分かるけどね。プッ!思い出しちゃった!

そういえば、あたし、なんで勉強してるんだっけ?
100番以内に入りたいからよね。
で、何で入りたいんだっけ?
あいつを見返したいからよね。

…どうして、見返したいと思っている男に、勉強を教わっているんだ?あたし。
おかしくない?これ。

これで100番以内に入れたとして…見返すことになるのかしら?

どうも、何か違う気が…。

でも、何やってるんだろ?ちょっと深呼吸とかすればいいのに。
あ、あたしのノート見てる…。
そして、何か書いてる…。

…面倒見いいよね。
こんなに丁寧に教えてくれるとは思ってなかった。
写真を返してほしいからとはいえ…。

「お前、馬鹿すぎてだめ」とか言われて、出て行かれると思ったけど。
もう二人で勉強して、何日にもなるのに、分からなっかったら、分かる所まで戻って教えてくれるし。

あたし、勉強がこんなに楽しいなんて生まれて初めて。
だって、どんどん分かっていくのが、自分でも分かるんだもん。

それも…あいつのおかげ…だよね?


…意外といい人?

「脳みそ、全部夜空へ散らばっていくぞ。」
物思いに耽っていたら、後ろからドスのきいた声が!

「あ、ごめんなさい。」
やだ。ひどいこと言われたのに、素直に謝っちゃった。

さて、勉強、勉強と。

…やっぱりよくわかんないや。この人。

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琴子、可愛い!

続編が読めて、うれしいです。ありがとうございます。

いやな奴、と思った入江君と同居した琴子が、例の写真をもとに、
入江君に勉強を教えてもらうことをきっかけに、少しずつ彼の良さを見つけて、再び彼に恋していくんですよね。
彼といい雰囲気になったと妄想しながら、必死でそれを否定している琴子、可愛いですよね!







つ・づ・き・・・

こんばんは、水玉さま。
琴子ってなんて可愛いんでしょう。
それにおまぬけだし・・・(笑)
でも、そこが琴子のチャームポイントかもしれない。
誰にでも愛される琴子。
本当に可愛いね。

妄想フェア

次から次へと、止まらぬ妄想が大暴走の琴子ちゃん。すっごくかわいい♪
女子高生らしい初々しさがタマラナイです!!
こんなシーン、原作には無かったんだよね?…て確認したくなるくらい、リアルだわ。

琴子の妄想に乾杯☆

こんにちは、水玉さん

私もアリエルさんのように原作にはなかった・・よね?と思うくらいリアルだなって思いました。
原作の隙間(番外編)にフツーにありそうなお話で。いや本当になかったかな・・・?

これぞ琴子!って感じの妄想のオンパレードがすばらしいです>▽<

妄想族です・・・・私も

「脳ミソ、全部夜空へ散らばっていくぞ」
この台詞、入江くんが言いそう!
琴子の後ろで、腕組んで仁王立ちしてそう。
あぁ、また原作が読みたくなっちゃいましたっ!

初めまして!

初めまして!
イタキスにはまり、はや7年。一度テンションが下がり買ったコミックを
全部売りましたが、「やっぱり、寂しい、読みたい」と、思いまた買い集めました。ブックオフで(笑) 琴子可愛いし、入江君の切なさ、つれなさいいですよね❤ 今の時代きっと琴子みたいな子人気ですよね。
水玉様の更新の速さには、脱帽です。とても楽しく読ませて頂いております。ブログ初めたばかりですが、私もイタキス更新させていこうと、考え中です。がんばります!パソコンも初心者ですが、水玉さんみたいに頑張ります。

こんなにコメント、ありがとうございます!

コメントありがとうございます♪

るんるんさん
それまでは入江くんの外見(見た目、頭の良さ、運動神経)しか見ていなかった(見ることができなかった)琴子が、入江くんの意地悪な性格の中にある、優しさ(のかけら)を見つけていくんですよね♪
でも入江くん…知り合ったばかりの女の子の横でうたたねするなんて、可愛い♪

りきまるさん
おまぬけなんですよね。
いつも前向きだし。妄想傾向も前向きだし(笑)
その前向き思考を見習いたい…!
いつも前向きだったから、とびきりの幸運も引き寄せることができた、いや、自分でつかみ取ることができたんでしょうね♪

アリエルさん
琴子の場合は、どんなにとんでもない妄想でも可愛いのよね。
こちらもとんでもない妄想をどんどん書くことができて楽しいわ^^
この頃の琴子ちゃんは、確か入江くんのことを「あんた」とか「あいつ」とか読んでいて、それもとっても新鮮♪

藤夏さん
ありがとうございます!!
原作の隙間って、あまり書いたことがなかったのでちょっと不安でした~!そう言って頂けると嬉しいです^^
あーでもそんなに言われると、次書きにくい(笑)
妄想、妄想…色々考えないと!!(笑)

さくやさん
妄想族(笑)!じゃ、一緒に夜の高速へ飛び出そうぜ!!なあんちゃって。
入江くんが本当に言いそうですか!嬉しい!!
なかなか冷たい言葉が思い浮かばなくて…ちょっとやそっとの冷たい言葉では入江くんじゃないし(笑)

月華さん
初めまして!コメントありがとうございます!
私と同じです!私も一度手放して、再び手に入れたクチです(笑)
あんなふうに『好き!好き!』と言えたら、本当にいいですよね!!
私みたいに…いや、もっと高く目標を持って下さい、ぜひ!(笑)
私など…インターネットの片隅でゴチョゴチョとやっているだけの、地味な人間です。
こちらこそ、よろしくお願いしますね♪
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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