日々草子 続・私の美しい貴婦人 4

続・私の美しい貴婦人 4



翌日は見事な晴天。
「カエル獲り競争には、絶好の日だわ…。」
思わず呟くコトリーナ。

そしてコトリーナとナオキヴィッチは、カエル獲り競争が行われるケロリン沼へと向かう。

「何だ、これは。」
思わずナオキヴィッチが息を呑んだ。ケロリン沼の周囲には沢山人が集まっている。
「コトリーナ!」
そこへ現れたのが、本日の対戦相手であるキーン。
「どうや、すごいもんやろ!」
キーンはナオキヴィッチを挑発する。
「これ、皆、わいの応援や!」
確かにキーンの言うとおりのようだった。「キーン!キーン!」という応援の声がする。
「何か思い出さへんか?」
キーンは、ナオキヴィッチに意地悪く囁いた。
「何かって?」
何も思い出さないナオキヴィッチ。
「ここはな…甲子園球場や!!」
「…はあ?」
突然、何を言い出すんだと思うナオキヴィッチ。しかし、キーンはナオキヴィッチに構うことなく話を続ける。
「ここは甲子園。わいは言うなれば…阪神や!すなわち、ここはわいのホームってことやな。そんで、お前は…。」
そしてキーンはナオキヴィッチを指さし、叫んだ。
「巨人や!あの憎き巨人や!」
「…。」
呆れて何も言えないナオキヴィッチ。しかしキーンは、そんなナオキヴィッチの様子を怖気ついているとしか見ていない。
「だからここには、お前の味方なんて誰一人おらん!一人ぼっちで戦うしかないんや!」
そう言ってキーンは、ケラケラ笑った。

「そんなことないもん!」
そこへ割って入ったのはコトリーナ。
「先生は一人ぼっちなんかじゃない!私がついている!」
そしてコトリーナはナオキヴィッチの腕にしがみついた。
「コトリーナ…お前、目え覚まさんかい!」
情けない声を出すキーンに、「フン」とそっぽを向くコトリーナ。そしてナオキヴィッチに言った。
「先生、頑張ってね!“巨人、大鵬、卵焼き”よ!」
「お前、昭和何年生まれだよ…。」
励ましているんだかないんだか、分からないコトリーナの言葉に溜息をつくナオキヴィッチ。

そして勝負の時を迎えた。

「見てろや!」
そう言って、手慣れた様子で次々とカエルを捕まえて行くキーン。一方、ナオキヴィッチもキーンほどではないにしろ、器用に捕まえて行く。
「それにしても…。」
手や足を泥だらけにしながら、ナオキヴィッチは思った。
「うるさい…。」
ナオキヴィッチが眉を潜めるのも無理はない。周囲は…キーンを励ます『六甲おろし』の合唱に包まれていた。

「先生…大丈夫かな?」
カエルを捕まえるナオキヴィッチを心配するコトリーナ。自分も一生懸命応援したい。

「しかし…なかなかやりよるなあ。あの変態教授。」
ナオキヴィッチを横目で見ながら、キーンは思っていた。とても初めての手つきとは思えない。だが、負けるわけにはいかない。
そんなことを考えていると、コトリーナの声が沼に響いた。

「もやし!もやし!もやしはとっても栄養がある!一袋39円でみんなが助かる!もやし!もやし!もやしは偉い!」

「…だから、何で俺をもやし扱いするんだ。」
カエルをバケツに放り込みながら、コトリーナの応援になっていない応援に眉を潜めるナオキヴィッチ。コトリーナにしてみれば、『六甲おろし』に対抗できる、インパクトのある応援をしているつもりである。

「こりゃ、キーンの勝ちだっぺ。」
ナオキヴィッチを見守るコトリーナの背後に声がした。コトリーナの父シゲオが立っている。
「そんなことないっぺ!最後まで分からないずら!」
ムキになって反論するコトリーナ。だがコトリーナの目から見ても、ナオキヴィッチは不利な様子だった。

「ん?」
沼に手を突っ込んだナオキヴィッチは、今までと違う感触に気がついた。
「何だ、これは?」
掴んだものを上げてみる。それは今まで捕まえたカエルより、遥かに大きいカエルだった。
「こんな奴もいるのか…。」
ナオキヴィッチが呟いた時、周囲の雰囲気が変わった。

「あれは…。」
「この沼の主のキングだっぺ!」
「ロミオ、キングを捕まえたっぺよ!」
一斉にざわつく観客。
「一体、何なんだ?」
周囲の変化に戸惑い、ナオキヴィッチはカエルを掴んだまま、キーンを見た。が、キーンは真っ青になって震えている。

「先生!それ、キングよ!ケロリン沼の主なの!」
コトリーナの声が響いた。
「キングを捕まえたら…その時点で捕まえた人の勝ちなの!」

「…何だって?」
思わず捕まえた巨大ガエルを見るナオキヴィッチ。
「一体、何なんだ、この勝負のルールは…。」

「すごいだっぺ!キングなんて見るの、何十年ぶりさ?」
「確か…45年前に、マゴロク爺さんが捕まえたのが最後だっぺ!」
「それを、村民じゃないロミオが捕まえるとは!」
そして湧き上がる拍手。ナオキヴィッチが立っていると、
「先生!やっぱり先生はすごい!」
と、コトリーナが沼の中へ入り、ナオキヴィッチに抱きついた。
「キングを捕まえちゃうなんて!先生は天才!」
嬉しそうに叫ぶコトリーナ。
そして、審判(一応存在する)がナオキヴィッチの勝利を告げ、カエル獲り競争は終了した。

…甲子園球場で負けた阪神が受けるもの。それは…。
「ふざけんな、キーン!」
「何、外部の人間に負けてるっぺ!」
「連続優勝の名が聞いてあきれるずらよ!」
…野次のみである。そしてキーンは沼の中で肩を落とした。

「おい。」
声をかけられたキーンは顔を上げた。そこに立っていたのはナオキヴィッチ。
「男に二言はないんだよな?」
ナオキヴィッチに言われ、怯むキーン。
「なら…コトリーナは俺がもらっていいんだよな?俺、勝ったみたいだし。」
「うう…。」
「二度とコトリーナをアウトレット扱いするなよ。」
そしてナオキヴィッチは顔をキーンに近づけ、凄味のある声を出した。
「…コトリーナをアウトレットにできるのは、俺だけなんだから。」
ナオキヴィッチはそう言い残すと、ズブズブと沼から出て行った。

「先生、キーンに何を話してたの?」
待っていたコトリーナが訊ねる。
「別に。もう余計な真似するなってことだけをね。」
「ふうん。」
大して気にする様子もなく、コトリーナは「早く帰ってお風呂へ入らないと」と、ナオキヴィッチと共に家路についた。

キングを捕まえ、これでシゲオもナオキヴィッチを分かってくれるはず。コトリーナは期待していた。
しかし、コトリーナの期待は見事に裏切られた。
「たかがカエルさ、捕まえたくらいで!」
そう言って、コトリーナの話を聞こうとしないシゲオ。
「たかがカエルって!先生はキングさ、捕まえただべ!」
真っ赤になって反論するコトリーナ。
「あのキングだっぺ!マゴロク爺さんが45年前に捕まえたきりの…伝説のキングずらよ!先生はちゃんと勝負に勝ったっぺ!」
「おらは、勝負に勝ったら結婚を許すとか、一言も言ってないずら!」
シゲオは自分の部屋へ籠ってしまった。


「ひどすぎる!」
コトリーナは涙をポロポロ流して叫んだ。
「もういい!私、村もお父さんも捨てる!何もかも捨てて、先生と結婚する!」
そう言って泣くコトリーナを、ナオキヴィッチは黙って見つめている。
「分かったでしょう?あの頑固じじい、もう話すだけ無駄なのよ!」
「…そうはいかないだろ。」
興奮するコトリーナと対照的に、ナオキヴィッチは落ち着いている。
「カエルを捕まえたくらいで、親父さんに結婚を認めてもらえるなんて思っちゃいないさ。」
「そんな…。」
ナオキヴィッチとしては、カエルを捕まえられた、なら娘をやろうと言われも、正直困る。
「何か俺に気に入らない点があるんだろう。昨日会ったばかりだし、よく知らない男が突然現れて娘と結婚したいって言われても困るのは無理ないしな。」
「先生…。」
ナオキヴィッチの優しさに、感動するコトリーナ。
「さ、俺は寝るから、お前も家へ戻れ。」
ナオキヴィッチは、コトリーナに言った。昨夜も今夜も、ナオキヴィッチの寝床は馬小屋である。
「私も今夜はここに寝る!」
コトリーナは強く言った。
「だめだ。」
即答するナオキヴィッチ。
「どうして?お父さんなら部屋に籠ったきり、出てこないもん。私がここに寝てもばれないわよ。」
「尚更だめだ。」
ナオキヴィッチは厳しい顔でコトリーナを見る。
「親父さんの目が届かないからといって、お前と一緒に寝るなんてこと、俺にはできない。それが俺のけじめだ。」
「先生…。」
「だから、家に戻れ。また明日どうするか考えるから。」
それでも心配するコトリーナを、半ば無理矢理馬小屋から追い出し、ナオキヴィッチは馬を見た。
「またお前と一緒に寝るんだな…。」
そして窓から空を見る。窓には雨の滴がつき始めていた。
「やっぱり降ってきたか…。これは荒れそうだな。」
夕方、空を見て天気が荒れるとナオキヴィッチは予想していた。だからこそ、こんな馬小屋にコトリーナを泊め、何かあってはいけないと思い、家へと追い返したのだった。

ナオキヴィッチは、次第に激しくなる雨音を聞きながら、藁の中で目を閉じた。


「…先生、先生!」
眠っていたナオキヴィッチは、コトリーナの声で目が覚めた。見ると、ずぶ濡れになったコトリーナがナオキヴィッチの顔を見ている。
「先生、お父さん、とっても苦しそうなの!」
泣きながらコトリーナは叫んだ。ナオキヴィッチは急いでコトリーナの家へと向かった。










☆あとがき
カエル捕り競争で捕まえたカエルは、キャッチ&リリースとなっております…。
あと、阪神ファンの皆様、巨人ファンの皆様、勝手に使ってごめんなさい。
関連記事

comment

管理者にだけ表示を許可する

ナオキヴィッチ勝利!!

こんばんは、水玉さま。

ナオキヴィッチ、勝利おめでとう。キングを捕まえられて良かったね。
でも、キーンを退けただけでシゲオの許可はえられず。
まだまだ、山あり谷あり。
コトリーナと結婚するためだから頑張れ。

認めて貰える迄頑張るのかなぁ?

水玉さん、こんばんは。
ナオキヴィッチ頑張りましたね。
カエルの王様を捕まえたのですね。
これで勝負が付いたのかと思ったのに。
まだ高々カエルでは認めないようですね。
コトリーナの父は。
ナオキヴィッチ今夜も馬小屋です。
今夜はコトリーナには部屋で休むようにと。
そんな時、コトリーナが血相を変えてナオキヴィッチの許へ。
コトリーナの父の様子がおかしいと。
どうしたのでしょうね。
これでコトリーナの事を認めて貰えたらいいのでしょうが。
巨人、大鵬、玉子焼き。水玉さん、お歳は?
巨人、阪神これは永遠のテーマですね。

なんとまあ・・・・

長寿なカエル・・・・さすが主。

折角ナオキヴィッチがカエル捕り競争に勝ったっていうのに、コトリーナ父からまだ結婚Okが出してもらえず、がっかりですね。
愛するコトリーナのために、また馬小屋に泊まり、次の日も頑張ろうとするナオキヴィッチ。いっそ二人のために応援団でも作ってあげたいくらいだわ。
雨が激しくなった時、急にコトリーナの父親が苦しみだしたみたいですね。一体、どうなってしまうのでしょうか?

主さま

お会いしてみとうございました。
というか、カエル捕りしたいなぁ・・・。田んぼが遊び場、カントリーむすめだったので、カエルは大好物です!(注:食べるわけではない)
ところで、話の舞台なんですが、勝手に仮想英国だと思ってたんですが、もしかして仮想日本国だったのでしょうか???
アイちゃん、どうしたんでしょう?心配です。・・・とかいいつつ、きっと団円への第一歩なのだろうとも思ってはいるのですが。

少しだけ浮上中

イロイロとまとめ読みしています。
しかし・・・水玉さんいくつ?!長谷川一夫とか巨人
大鵬玉子焼きとか。アッと驚くタメゴローだっぺ。

圧勝だっぺ

ナオキビッチ圧勝ですね。
うなだれる金ちゃんの姿が目に見えるようです。(笑)
言語学者で医者でもない入江くんが、アイちゃんパパを救えるのか?!
待て次号!!

まさかの阪神ネタ!!(喜)

こんにちは、水玉さん

やはりキーン(このネーミングもGOODです”)
に勝っちゃったナオキヴィッチ!よくわからんルールではありましたが(笑)

阪神ネタありがとうございます。実はファンです♪
まあ、実際の甲子園はピー音かぶせないとやばい罵声も
かな~りとびかっておりますが・・・^^;)

私は二次小説で自分が好きなものがコラボした瞬間が
たまらなく好きなので>▽<
この4話はかなりツボでリピート率高くなりそうですvv

一応、昭和フタケタ生まれです…

コメントありがとうございます。

りきまるさん
キング…すごい勝負です、こうして見ると(笑)
でも確かに、カエルを捕まえたから娘をやると言われても…複雑でしょうね(笑)

tiemさん
え?私の年齢ですか?
そんな…昭和フタケタ生まれです(笑)
でも『巨人、大鵬、卵焼き』はクイズ番組でもよく見るので♪ただ、現役の大鵬は知らないです。…一応、若貴世代なので(笑)

名無しさん
本当にそうですね。
蛙って、どのくらい生きるのでしょう?^^

るんるんさん
応援団!ぜひとも作ってあげて下さい!!
ことごとく父に反対されるナオキヴィッチ…書いていて、かなり愉快痛快です(笑)
ああ、私ってなんて鬼なんだろう…!

アリエルさん
うん…私も仮想E国のつもりだったんだけどね(汗)
誰かさんのブログを拝見した後に、最終話を書いていたら…脳内がすっかりテキサスでいっぱいになり、ウエスタンなイメージが広がり…最後は嵐が丘なイメージに(あ、嵐が丘はE国舞台だから、結果としてOKなのか)
だって、だって…外国事情詳しくないから、これで誤魔化すしかなかったのー!許してえ!涙

さくやさん
どうかされました!?大丈夫ですか?
と言いつつ、私も浮上中ですが(^^ゞ
私は…年齢不詳なミステリアスなイメージで売っていこうかと思っています←どこへ売るんだ(笑)
長谷川一夫、たまたま今日見ました!…顔、大きいですね(笑)でも若い頃は美形だったんだろうなあと思う顔立ちでした。

KEIKOさん
待て、次号!その昔、某少女漫画誌の連載漫画でよく見た覚えがあります(笑)
待つまでもない内容なので、さっさとUPしてきました(笑)
それにしても、方言の書きすぎで、普段話す言葉も危うく「…だっぺ」とか言いそうな今日この頃です(笑)。

藤夏さん
本当、よく分からんルールですよ!(笑)
阪神ファンなんですね!ごめんなさい、勝手に使ってしまって!でもそんなヤジが飛ぶんですか…。ちょっと一度聞いてみたい気がします^^
ありがとうございます!こんなどうしようもないネタを気づかって下さって!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ
 
最新コメント
最新記事
カボチャの世界
Private
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
リンク