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2009.10.20 (Tue)

続・私の美しい貴婦人 1


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とある国に、若いながらも学会で一目置かれる、眉目秀麗な言語学者がいた。その言語学者は最近、とある花売り娘と婚約し、二人で暮らしていた。

「はい、男爵様。お茶どうぞ。」
「ありがとう、コトリーナ。」
コトリーナ、それが花売り娘の名前。今は花を売らず、婚約者のこの家で花嫁修業をしながら暮らしている。
「いや、可愛い女の子から入れてもらうお茶は格別おいしいね。」
そう言いながら、ちゃっかりとコトリーナの手を握るのは、この家の主の学者の悪友でもあるウェスト男爵。社交界一の女たらしとして有名。

「熱っ!熱っ!」
男爵は突然太ももに感じた熱さに驚き、コトリーナの手を離した。
「ああ、すみません。ティーカップと間違えて。」
男爵の太ももに、ポットから熱いお茶を注いだ男性、この男性がこの家の主であるナオキヴィッチ。コトリーナの婚約者だった。

男爵の太ももを、慌ててコトリーナは拭こうとした。が、ナオキヴィッチにお茶のお代わりを持ってくるように言われ、部屋を出ていく。
「はい。」
そしてナオキヴィッチはコトリーナが置いて行ったタオルを男爵へ投げつけた。
「すみません。何せ徹夜で論文を書いていたものですから。」
「君…その嫉妬深さ、何とかしたまえ。」
自分で太ももを拭きながら男爵は恨めしそうにナオキヴィッチを睨んだ。

やがてコトリーナがナオキヴィッチの母親同然である、この家の家事を一手に引き受けているノーリー夫人を伴って現れた。
「ところで、コトリーナちゃん。お父様にはいつご挨拶に行くの?」
ノーリー夫人の何気ない一言に、コトリーナは動揺した。
「熱っ!熱っ!」
動揺したコトリーナは、男爵の太ももにポットから熱いお茶を注いでしまった。
「もう、君たちは!僕の太ももを何だと思っているんだ!」
今度はノーリー夫人が男爵の太ももを拭いてくれた。
「あ、あの…特に行く予定は…。」
まだ動揺しているコトリーナに、ナオキヴィッチは眉を潜める。
「そういうわけにはいかないだろう。」
「いや、本当に。大体、お父様とかいう代物ではないし。後から“私たち、結婚しました”っていうハガキでも送ればいいから。」
「だめよ、コトリーナちゃん!」
それにはノーリー夫人が大反対した。
「お父様にそんな失礼なこと、できないわ!」
「親に事後報告っていうのはまずいだろう。」
ナオキヴィッチも夫人に同意する。
「結婚式にも来ていただきないとだめだし!ナオキヴィッチ様にもきちんと挨拶をしてもらわないと!」
「…いや、本当に。うち、すごい田舎だし。」
「お前の故郷が田舎だということはとっくに分かっている。」
ナオキヴィッチの言葉に、ノーリー夫人もウェスト男爵も頷いた。
それからも拒否し続けたコトリーナだったが、ノーリー夫人とナオキヴィッチの大反対にあい、結局来週早々に、コトリーナの父親に、ナオキヴィッチとコトリーナの二人で挨拶に行くことが決まった。

「もし、お父上がナオキヴィッチを見て大反対され、結婚式に出ないと言われたら、僕がヴァージンロードは歩いてあげよう。」
男爵がコトリーナに申し出た。
「でも、コトリーナのウェディングドレス姿が可愛かったら、そのまま回れ右して連れて帰っちゃうかもしれないな。ハハハ。」


「…大丈夫でございますか?旦那様。」
執事は心から心配した。
「大丈夫じゃないよ…ああ痛い。」
男爵は自宅のベッドの上で、お尻を突き出していた。
「ナオキヴィッチも、本気で蹴り上げることなかろうに。」
ナオキヴィッチに蹴られため、あまりの痛さに普通にベッドに横になれない男爵。
「いい加減、教授をからかうのはおやめになった方が…。」
本当に懲りない人だと、執事はため息をついた。


コトリーナは、ノーリー夫人からお土産をたくさん持たされ、そしてナオキヴィッチは「愛想よくするように」としつこく言われ、二人はコトリーナの故郷へ向かう汽車の中にいた。
「はあ…。」
コトリーナの様子がおかしい。先程から、何度もナオキヴィッチの顔を見ては溜息をついている。
「何か俺の顔についているのか?」
そう何度も顔を見られて溜息をつかれると、さすがのナオキヴィッチも心配になる。
「…先生、本当にきれいな顔をしているなあと思って。」
コトリーナからの返事に、ますます首を傾げるナオキヴィッチ。
「…お前も可愛いけどな。」
コトリーナの心配を少しでも軽くしようと、普段はめったに言わないことをナオキヴィッチは口にした。もちろん、コトリーナを可愛いと思っているのは本当である。こういうことを口にすると、コトリーナは顔を赤くして恥ずかしがるはずなのだが、今日のコトリーナは違った。
「そんなきれいな顔をしている先生に言われても…。」
そしてまた深い溜息をつくコトリーナ。ナオキヴィッチは一体何がそんなに不安なのだろうと、汽車からの車窓を眺めながら思った。

「へえ。ここがお前の故郷か。」
長い汽車の旅を終え、ナオキヴィッチとコトリーナは、コトリーナの故郷、エフ村に降り立った。
「こっちです。」
やはり元気のないコトリーナに導かれ、ナオキヴィッチはコトリーナの家へ向かう。

しばらく歩いていると、
「コトリーナ!」
という声が前方から聞こえてきた。
「帰ってきたっぺ!コトリーナ!」
「あ!サティにジーンじゃないずら!」
どうやらコトリーナの友達らしい。コトリーナも方言に戻り、その友人と抱き合った。
「んま!しばらく見ねえうちに、べっぴんになったんじゃなかっぺ?」
「サティもジーンこそ、べっぴんさんになったずらよ!」
お互いを褒め合う三人を、ただただ驚きながら見つめるナオキヴィッチ。
「やっぱり、この村はこういう言葉なのか…。」
言語学者として興味深く、三人の会話に耳を澄ませる。

「コトリーナ、後ろの人、誰だべさ?」
ジーンと呼ばれた、魚類に似た女性がナオキヴィッチの顔を見た。
「ああ。この人さ、ナオキヴィッチ先生っていって…おらの婚約者だっぺ。」
頬を染めながら、ナオキヴィッチを紹介するコトリーナ。
「ええ!」
驚くサティとジーン。
「はじめまして。」
ナオキヴィッチは、二人に挨拶をした。
「素敵な人だっぺ?」
胸を張るコトリーナに対し、サティとジーンは青ざめる。
「あんた…こんこた、父さんは知ってなさるかね?」
妙に色気のあるサティが、コトリーナに訊ねた。
「まだだっぺ。その挨拶に二人で来ただべさ。」
「いや…大丈夫かんね?」
魚類ジーンが心配する。何をそんなに心配されるのだろうとナオキヴィッチは不思議に思った。
「大丈夫だっぺ。心配はいらねえずら。」
コトリーナは明るく言った。
「だども、こんなきれいな人さ、連れて帰ったら…。」
お色気サティがナオキヴィッチの顔を見ながら言う。
「大丈夫だっぺ!…多分。」
さすがのコトリーナも不安になってきたらしい。
「…騙されてないべさ?コトリーナ、あんた、ノホホンとしてっから。」
魚類ジーンがとんでもないことを口にする。
「んなことなか!先生は、“お前がいないとだめなんだ。俺にはお前が必要だ。お前がいないと朝も昼も夜もないも同然だ。”って言ってくれたっぺよ!」
そこまで言った覚えはないがとナオキヴィッチは、コトリーナに心の中で突っ込む。
「まあ…コトリーナが大丈夫って言うからには、平気かもしれんべさ…。」
お色気サティと魚類ジーンはそれでも不安のようだった。


さすがのナオキヴィッチも、コトリーナの友人たちの態度には不安になってきた。一体何が待ち受けているのか?出発前のコトリーナの態度といい、何かがあるには違いない。

「先生、あそこが私の家!」
コトリーナが指した。そこは素朴な民家。
「ただいま。お父さん!」
コトリーナは大声で挨拶をして、ドアを開けた。
「コトリーナ!」
「お父さん!」
コトリーナは父の姿を見つけると、抱きついた。父もコトリーナを抱きしめる。どこから見ても感動的な親子の再会シーンだった。

「コトリーナ、こちらは?」
父がナオキヴィッチの姿に気が付き、コトリーナに訊ねた。
「あ、えーとね。」
ナオキヴィッチの傍に行き、コトリーナは笑顔で言った。
「こちらは、有名な言語学者のナオキヴィッチ先生!」
「ほう!学者先生だっぺか。それはそれは。遥々こんな村までようこそ。」
丁寧に挨拶するコトリーナの父。もちろん、ナオキヴィッチも挨拶をする。
「で、この村にはどんな用件で?」
父の問いに、コトリーナは顔を赤らめて言った。
「お父さん…実は私、先生と結婚するっぺ!」
「何だって…?」
驚く父に構わず、コトリーナは続ける。
「だから、先生と結婚するだべさ。先生ったら“お前がいないとだめなんだ。俺にはお前が必要だ。お前がいないと朝も昼も夜もないも同然だ。お前が傍にいないと生きていけない。俺は一人じゃ何もできない”と言ってくれたっぺよ。」
さっきより言葉が増えている…と、またもや心の中でコトリーナに突っ込むナオキヴィッチ。

「…許さん。」
「え?」
一瞬、何を言ったのかと、ナオキヴィッチとコトリーナは父の顔を見た。
「わしは絶対に許さねえだべさ!結婚?ふざけんなずら!」
「お父さん!」
あまりの父の剣幕に、慌てるコトリーナ。
「落ち着いて下さい、お父さん!」
ナオキヴィッチも思わず叫んだ。
父はナオキヴィッチの顔を睨んだ。
「おめえにお父さんなんて呼ばれる覚えはないずら!図々しか!」
そして父はコトリーナに向き直った。
「わしは…わしは、こげな男といちゃつくために、おめえを都会へ出したわけじゃないずら!コトリーナ!」
「いちゃつくって…おらたちは真剣に愛し合っているべさ!」
反論するコトリーナ。
「いや。真剣なんかじゃないずら!」
だが娘の言葉に、父は耳を貸そうともしない。そしてナオキヴィッチを指さして叫んだ。

「ええずら?こん男は…男は…どっからどう見ても、結婚詐欺師に間違いないっぺ!コトリーナ、お前は騙されとるずらよ!」











♪あとがき
 
いつまでも 続くと思うな わがブログ 書ける今こそ 華だと思え

…あの時、書いておけばよかった!と後悔するのは嫌なので(^^ゞ
書ける今、この状況を幸せだと思いたいです。

で、そういう理由からあの話の続きを^^
「もう書いたのか!」と突っ込まれることは覚悟してます(笑)
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*Comment

わ~い!!水玉さん♪
ご無沙汰しています♪
先週色々とありまして、なかなかPCを見る余裕がなく・・・・
で、真っ先に水玉さんのところへお邪魔しましたら♪
えへへ♪何だか面白そうなお話がいっぱい!!!
もう!!コトリーナの続編、嬉しいずら♪
けど、エフ村の方々コトリーナの結婚に消極的ずらね。。
コトリーナの父をどう納得させるのかしら??
ナオキヴィッチ先生の動向もとても気になるわ♪
ムクムクと1人妄想へ♪
それにしてもコトリーナすっかりもとの方言に戻ったけど・・・
何だか強烈な方言ずらね。
元に戻すのはナオキヴィッチ先生の教えがまたいるのかしら??

とっても楽しみずらね~~♪

ゆみのすけ |  2009.10.20(Tue) 09:30 |  URL |  【コメント編集】

★続編だ!続編だよ!~キタ━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ ━━━━━━!!!!

水玉さんありがとうです!ワクワク
ガッキーに笑いが・・胸がくすぐったい(゜∇ ゜)ブヒャヒャヒャヒャ
お湯を膝にアチっ! 懲りない奴(そこがまたいい~)
コトリーナも追い討ちかけてるし・・(確信犯的ボケ)
ナオキヴィッチにお仕置きされ・・・
枕を抱えお尻突き出し執事に哀れまれている場面を想像ブハッ!
サティ(里美)ジーン(じんこ)コトリーナの親友も登場!
魚類顔に(´゚ω゚):;*.':;ブッ !確かに!(コミック本通り)
さてナオキヴィチのお手並み拝見イリコトのラブラブもあるのでしょうか?
美優 |  2009.10.20(Tue) 12:23 |  URL |  【コメント編集】

★続き待ってました~>▽<///

水玉さん、こんにちは。早速の続編、ありがとうございます!!

続編でも相変わらず懲りないガッキーにもう爆笑!
でもそれでこそ私たちの?ガッキーなので。
真面目になったりせず
ずっとこのままでいて欲しいですw

サティとジーンもいい味出してますよね
で、ナオキヴィッチのツッコミにこれまた爆笑。あまりにも的確すぎて…

原作イリコトでは親たちから反対という反対がなかったので、
このお話はなんだか新鮮な気持ちになりますね。
藤夏 |  2009.10.20(Tue) 13:06 |  URL |  【コメント編集】

★続編、待ってました!

こんばんは。
続編、ありがとうございます。

ガッキー、相変わらずコトリーナにチョッカイだそうとして、ナオキヴィッチからお湯をこぼされて、嫉妬するナオキヴィッチもいいわー。

二人はコトリーナの父に挨拶するため、コトリーナの故郷へ。
なぜかコトリーナの父の反対にあった二人。
さあ、これからどうなるのでしょうか?
次回が楽しみです。

るんるん |  2009.10.20(Tue) 18:27 |  URL |  【コメント編集】

★魚類って・・・(爆笑)

辛辣だなぁ。ナオキビッチ。
お色気と魚類・・・。バカウケしました。
ネーミングも最高!
でました!水さまの原作エッセンスネタ!
続編も面白そう!!
次もUPされてるから、早く読まなくてはっ!!
KEIKO |  2009.10.20(Tue) 23:08 |  URL |  【コメント編集】

★皆さん、ありがとうずら

コメント、ありがとうごぜーますずら。

ゆみのすけさん
忙しい中、足を運んで下すって、ありがとうずら!
コトリーナ、故郷へ戻ったらすっかり方言に戻ったずらよ。
おかげで書いているこちらも、普段の言葉が「ずら」「っぺ」になりそうで、怖い怖い(笑)
エフ村話、かなり楽しんで書いているんで、またぜひ読みに来ておくんなまし!!

美優さん
続編、そんな喜んで下すってありがとうずら!!
書いてよかったっぺ!!
ジーンを登場させてからには、サカナに触れんわけにはいかんぜよ(笑)
ガッキーの登場もやっぱり外せないずら!!
まさしく、美優さんが想像されている通りの絵を、こちらも想像してたけん、伝わったみたいで嬉しか~!!

藤夏さん
ガッキーは私たちのガッキー!!それは間違いないずら!!
我らがガッキーの辞書に「懲りる」という文字は存在しないっぺ!
ナオキヴィッチの突っ込み、これも書いているのが楽しいずら~♪
原作と違うコトリーナ父の反応、これもかなり楽しいずら!!
またぜひ気軽にコメントおくんなましね!

るんるんさん
とにかく、最初にナオキヴィッチにお湯をこぼされるガッキーを書きたかったんで!!
今回はちょっとガッキー、出番が少ないけども、その代わりにあの人さ、登場させる予定だっぺ、そこで我慢してくれたら嬉しいずらよ^^

KEIKOさん
私にしては珍しく、二人の外国名がポンポンと浮かんだずら!ジーンとサティは自分でも気に行っているずら♪
ナオキヴィッチの辛口もちゃんと書かなまずかろうと思うて、頑張ったずら♪
水玉 |  2009.10.21(Wed) 14:13 |  URL |  【コメント編集】

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