日々草子 I Love You

I Love You

「やっと最終ステージだ!」
リビングから聞こえてきた琴子の声。時刻は午前1時30分。
「ああ、半年かかって…!」
本当だよ。
俺は半年間、そのゲームをやり続けたお前の根性に脱帽する。そう思いながらリビングのドアを開ける。
「あ、入江くん!見てて!もうすぐこいつ、やっつけちゃうから!」
そしてゲームのコントローラーを真剣な顔で握る琴子。

自分がモデル、しかも発案者は毛嫌いしているオタッキー連中ということで、俺が作ってヒットさせた『ラケット戦士コトリン』に見向きもしなかった琴子。
いつもなら俺のやることなすことは、無条件で誉めてくれるだけに、そこが面白くなかった俺。

で、興味のない琴子の前でこのゲームをやり、裏技として隠れキャラを見せた。すると見事に食いついてきた琴子。

それから半年…。
隠れキャラを見たいがために続けたその根性は本当にすごい。
…もっとも余りの進みのなさを見かねて、途中俺がこっそりゲームを進めていたので三分の二は俺がやったわけだけど。

「あーん。また失敗した!」
…通算7度目のラストボス攻撃に失敗。時刻は…午前三時。
「もう一回。今夜はクリアするまで寝ないんだから!」
おいおい。俺は寝たい。だけど琴子が隠れキャラに感動する姿も見たい。

俺はテレビの前に座り込んでいる琴子の背後から両手を出し、コントローラーを握る琴子の手の上から、自分の手を重ねる。
「お前はとろいんだよ。」
そう言いながら、琴子の手の上からボタンを動かす。
「わ、わ、わ…!」
難なく敵を倒していき、とうとうラストボス。
「す、すごい…。」
そこまでの時間の速さに驚きの声を上げる琴子。


そして…。


「うわー!やっと倒せた!」

はい、ラストボス倒れた。

あとは例の操作をちょこっと…。

「や、やっと…見られたよ!」
出てきた隠れキャラ…それはオタッキーキャラがボンと弾けて出てくる…俺。
画面にはコトリンと並ぶ俺の姿。

「すごい!すごいね、入江くん!」
興奮して俺を見上げる琴子。
「あ…。」
あまりの至近距離だったことに驚き、そして、
「え?」
とまた驚く。そりゃそうだろ。ゲームに夢中になっていたけど、お前、俺の両足の間に座っている状態なんだから。俺は琴子の髪から漂うシャンプーの香りが心地よかったけどね。

「琴子。」
急に恥ずかしさのあまり、モジモジし出した琴子に声をかける。
「…誰のおかげでラストボス倒して、隠れキャラ見られた?」
「…入江くんです。」
「じゃあ…報酬をくれる?」
「報酬?」
また俺を見る琴子。そう、報酬。本当は琴子に凄いって言われれば十分かと思ったんだけど、欲が出てきた。

「あの…あたし、あんまりお金なくて…1500円くらいで足りる?」
おい、誰が金を要求した?しかも1500円かよ。…安すぎ!

「違うよ。金じゃない。」
「じゃあ、何?」
子供みたいに見上げる琴子。
「あのさ…。」
後ろから琴子をギュツと抱きしめて俺は言う。
「…愛してるって言って。」
「はあ!?な、な、何それ?」
うろたえる琴子。
こいつは昔から俺を大好き、大好きと、所構わず誰が見ていても口にしてきた。それはそれで悪くないけど、結婚した今、もうちょっとグレードアップした言葉を聞いてみたい。
「…俺のこと、愛していないの?」
「い、いや…そんなことは…。」
真っ赤になって口をパクパクさせる琴子。普段のあの図々しさはどこへいったやら。

「ほら、言ってみて。」
「あ、あ、あ、あ…。」
発声練習じゃあるまいし。琴子を抱きしめたままその言葉を待つ俺。

「あい…アーイアイ。アーイアイ。おさーるさーんだよー…。」
「…歌は後でゆっくり聞かせてもらう。」
いきなり歌い出すか、普通?

「あい…あい…。」
もう少し。
「あい…アイちゃんって呼ぶよね?お義父さんってあたしのお父さんのこと。」
「…そうだな。」
別に今ここでお義父さんの呼ばれ方について、お前と話し合う気はない。

…そんなに困ることか?

「琴子。」
俺は琴子の顔に自分の顔をおもいっきり近づけた。
琴子は俺の顔が好きらしい。一目ぼれしたとか言っているくらいだしな。なので、こうやって顔を近づけると、凄く困る顔をする。というより恥ずかしくて見つめられないといった風情。
俺は今まで、自分の顔を好きとも嫌いとも思わなかったが、こんなに可愛い琴子を見られるなら、この顔に産んでくれた両親に感謝せずにはいられない。
…俺の顔も役に立つもんだ。

「あい…あい…あいし…。」
俺に間近で見つめられ、更に真っ赤になっていく琴子。さて口にしてくれるか…待っていたら、
「あいし…。」
と、呟いて俺の中に倒れ込んでしまった。
「おい、琴子?」
だめだこりゃ。こいつ…のぼせやがった!


苦笑しながら、俺は寝室へと琴子を運ぶ。
仕方ない、その一言は当分お預けだな。

俺もベッドの中へ入る。
「入江くん…。」
暗くなった部屋の中から、琴子の声が聞こえる。

「愛してる…。」

…寝言か?でも…やっと口にしてくれたか。俺は思わず微笑み、
「…俺も。」
と小声で返す。するとクルリと寝返りを打って、俺に背を向ける琴子。

…気がついていたのか。

いつか、俺の目を見てその言葉を言ってくれる日は、まだまだ遠そうだ…。









すごい久々に書いた普通イリコト(普通って…(笑))
普通イリコト、私にも書けるでしょうか…?おかしくなったらどうしようと思うと、なかなか書く勇気が出ないんです。

ちなみに、この話は『二つの報酬』『最高の報酬』『午前二時の出来事』と続いた、最終話です。

7月に休んでいる間に浮かんでいた話だったのですが、こうして書けて嬉しかったです。

あとカテゴリ、また修正しました(^^ゞ
『直樹&琴子』をクリックしても何も出なかったんで驚いた…。
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comment

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うんうん!!あのお話の続きってすぐにわかりましたよ♪
だって私、水玉マニアだもの←うわっドン引きしないでね。
もう!!読んでいて顔がニヤニヤ!!何だかとっても嬉しくなりました
あ~入江君の俺もってところが何ともたまらないわ~~
琴子は呼吸も出来ないほど顔が真っ赤になって
のぼせているのかしら??
とってもいい感じの二人です♪パチパチパチ!!!

琴子、可愛い!

このシリーズの続き、待ってました!
琴子が一生懸命格闘している様子が目に浮かびます。
入江君が見かねて手伝ってくれたお陰で、やっと入江君のキャラを見ることが出来、よかったですね。
入江君に手伝ってもらった報酬が「愛してる!」ですか、「入江君、大好き」とは簡単にいえるのに...
でも、真っ赤になって恥ずかしそうな琴子を見ている入江君はきっと、可愛くて可愛くて仕方がないのでしょうね。
水玉さんの書かれるLOVE LOVEなイリコトなら、現代物も、時代物もどれも皆素敵ですので、大歓迎です!

やったね!

入江くん、琴子に『愛してる』と言ってほしかったのね。琴子の『大好き』はいやと言うほど聞いているから、大人の告白を聞きたいだなんて、なんて甘えん坊さんなんでしょう。
ラブラブな二人大好きです。
普通のイリコトもパラレルのイリコトも
水玉さまが書くものは、私は大好きなので、
何でもOKですよ。

ご馳走様でした。

 こんばんは^^ 水玉さん、今日もお邪魔します。

 改めて、水玉さんって凄いなあと思いました。実は今、初の恋愛小説(?)に挑戦しておりまして。
 いきなりつまりまして(蹴)
 普通の小説なんですけど、やっぱり難しくて。恋愛小説を毎日のように書ける(しかも凄く美味しい)水玉さんがすごいと思いました。
 どんな小説を読んで、どんな体験をすれば、こんな素敵な作品が出来上がるのか。良ければぜひ、教えてください(照

 気持ちがよくわかります。言い難いですよね、恥ずかしくて頭から湯気が出ちゃいそうになりますよねーっ。
 私はいつもそれを全力で笑ってごまかします!(蹴
 いや。うん。無理。友達にすら冗談でようやく十年に一回くらいしか言えないのに、異性でしかも好きな人なんて……。
 気絶するなというほうが難しいです(滝汗

 さて、ではそろそろ失礼しました。美味しかったです。ご馳走様でした^^

どれもスキ

水玉さんが、書くイリコトはどの時代でもスキですよ!

現代も昔も未来もパラレルも普通でもね!

直樹も起きてる琴子に中々、愛してるなんて言わないんだからお相子ね!

うしろから・・・

ものすごく好きなシュチュエーションです(デレデレ)
もう、コントローラーなんてどうでもいい!
(でも現実に旦那がやったら、はったおしますが)
入江君だからイイのです。
「愛してる」と琴子に言わせるなんて、水玉さんナイスですわ。
私も言いたい!「水玉さん、愛してる」
あぁ~引かないでぇ~!!

またまた妄想させて頂きました!!

琴子がゲームに熱中している後ろから抱き抱えるようにして座ってそれを手伝う入江くん…一度目の発狂。

クリーアー後、報酬に「愛してる」と言わせるために赤くなる琴子を見つめる入江くんに…二度目…

もうっリアルに映像を妄想しまくって一人悶死しちゃいました。
なんだかんだ理由をつけて琴子にちょっかいを出す入江くんってかなりツボですε=(/*~▽)/

しかし…確かに、私も旦那様に…愛してるは言えないなぁ。大好きすら微妙。大好きを言い慣れている琴子にも愛してるはさすがに無理なんですねぇ。(>▽<*)ちなみに子供たちには、もうシツコイくらいに毎日、愛してるよ~♪大好きぃって連呼してます。

……って、もし琴子が同じことしてたら入江くんって子供と張り合いそーo(>▽<)o


ありがとうございます

コメントありがとうございます^^

ゆみのすけさん
そんな、マニアだなんて!すごくうれしい!ドン引きなんてするもんですか!
嬉しいので、じゃあマニア限定の私のお宝セクシー写真をプレゼント←絶対いらないって!
すごい久しぶりに普通イリコトを書いてみたので、ちょっとドキドキしていたのでコメント頂けたうえ、前のお話にも気がついていただいて、本当にうれしかったです!!

るんるんさん
るんるんさんも覚えていて下さったんですね!嬉しい~!
そして、るんるんさんのコメントのタイトルが何よりも私への贈り物です♪可愛い琴子ちゃんがとにかく、書きたかったので!!あんまり、琴子ちゃんが愛してるって言うの…見たことがなかったような気がしたので。でも面と向かって愛してるとは…確かにいいづらいかも(笑)

りきまるさん
ありがとうございます!たまには現代も…と頑張ってみました^^
甘えん坊の入江くん、結構好きなんです…笑
何でもOK、その優しい言葉に感涙です!がんばろうっと!!

暢気猫さん
いや、そんな!でもイタキスは原作がやっぱりすごいから、こうやって私ごときが勝手にいじっても大丈夫何だと思います(いや、大丈夫かどうかは分からないですが(笑))全ては原作が素晴らしいからですよ!
恋愛小説…読まないんです、実は。もっぱら歴史小説と時代小説専門なので。たまに推理小説を読むくらいです。漫画も、主人公の恋愛をひたすら描くものより、イタキスみたいに主人公を取り囲む人たちも交えて、ワーワーキャーキャー騒ぐ…というものが好きです!

kobutaさん
ありがとうございます!じゃ、何を書いてもOKってことで(笑)←そこまでは誰も言っていない
ちょっと勇気が出てきました!!
確かに、入江くんも琴子には愛してるとは言わない気が…大好きもめったに言わないから、お誕生日に琴子がおねだりしたくらいだし。あのおねだり琴子は可愛かったです♪

さくやさん
すみません…カッコ書きに爆笑しました!
私も後ろ抱っこは大好きなシチュエーションなので、きっと今後も頻繁に出します(笑)原作のカバー見返しだったかな?そこに後ろ抱っこの二人があってすごい好きなんです!!
引きませんよ!!私もさくやさん、愛してます!!
で、私のお宝セクシー写真、プレゼントします!(だからいらないって!)

なおき&まーママさん
こちらにも私と同じ好みの方が!(後ろ抱っこ好きってことです)
私も入江くんに顔をのぞきこまれてみたい~!そんな叶わぬ妄想をしつつ書いたお話です。
ちょっかい入江くんは私もかなりツボです!
ちなみに私は母に(そこもまた悲しいのですが)「愛してるわ」というと、「愛されたくないわ」と即効で返ってきます…涙
確かに琴子も子供に愛してるを頻繁に言いそう!そして「俺には言ってくれないんだ…」とすねる入江くんもまた、見たいかも!

お宝写真希望

くぅっ!昨日はこっちもコメントしようと思ったら、奴(←ミスター)が急に帰還して、電車の中でケータイ、手から滑り落とすほど急激に眠りの森へさらわれた…(←だからと言って、姫でもなければ美女でもないので要注意)。今、ちょっと留守してるので、その隙にコメコメウォー!!
入江くんの大きな手が、琴子のかわいい手を包み込んでコントローラーを操作する、その手元の情景にブルブル!っときました(←注:バイブではない) 入江くんて、めちゃめちゃ手がきれいなイメージあるから、手元描写はモノスゴク萌える!!やばい!!!…と言って自分の磨き粉だらけの指先(爪に詰まって、もう取れない:泣)を見て悲しくなったり…。
暗闇に紛れて「愛してる」て言う琴子に「愛してる」と液晶画面に念を送るアリエルでした。
あぅ~、帰って来たっぽいので、この辺でお暇します…

奇特な人だのう…(笑)

アリエルさん
熟睡要注意よ!でももしかしたら、素敵な王子様がキスで起こしてくれるかも(笑)「その寝顔にまいりました」とか言って(笑)
コメコメウォー…懐かしい^^
入江くん、手は奇麗だと思う。この話はまだ学生だけど、医者になってからは何度も洗うから(とくに手術が多い外科医は奇麗な手が多いんだってね)。
そうなの、そうなの、大きな手で小さな手を包み込む…そこが書きたかったのよ!ありがとう♪

…すみません、コメントのタイトルは私へのメッセージでしょうか?よろしければサインもつけますが(笑)
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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