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2009.08.19 (Wed)

円舞曲 22


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「直樹さん!」
踊り終えた琴子が息を弾ませながら戻って来た。
「私、変じゃなかった?ちゃんと踊れてた?」
「大丈夫だよ。」
直樹の言葉を聞き、琴子は花のような笑顔を見せた。
「あのね、閣下にお芋のことでお礼を言われたの?どうしてかな?」
それを聞いて直樹はクスッと笑った。
「琴子…あの閣下は薩摩の出身だ。」
「薩摩?」
「そう。薩摩といったら…。」
「サツマイモ!」
どうやら琴子も気がついたらしい。
「自分の故郷の名物を好きだと言われて喜ばない人間はいないだろう?」
「確かに…。じゃあ、直樹さん。そのことを知っていてわざとあんなことを話したの?」
「さあね。俺はただ…。」
「ただ?」
「…お前の蒸し芋を食べたいだけだよ。」
直樹はそんなことを言ったが、琴子はだから直樹がこの夜会を選び、琴子を連れて来てあんな話をしたのだと気がついていた。琴子が蒸し芋を作ることに引け目を感じることがないように。

「あのね、直樹さん…。」
もう一度直樹にちゃんと謝ろうと琴子はした。が、
「俺は…閣下にも嫉妬してたよ。」
と直樹が先を取った。直樹も今度は琴子も嫉妬の本当の意味に気がつくだろうと思った。
しかし、
「直樹さん…。閣下と呼ばれたいの?そりゃ直樹さんは将来そう呼ばれても不思議じゃないくらい何でもできそうだけど…でもまだその若さで閣下の呼び名は早いんじゃない?貫禄だって年相応についてくるとおもうから、焦る必要はないと思うわ。」
とやはりとんちんかんな返事が琴子から返って来た。
「こいつ…本気で自分が嫉妬されるくらいの人間だと思っていないんだ。」
直樹はそう思い、また笑いが込み上げてきた。そんな直樹を琴子は不思議そうに見つめていた。

「さて帰るか。」
まだ夜会が終了するには少し時間があったが、混雑する前に帰ろうと直樹が言った。
「あの…私…。」
歩きながら琴子が心配そうに言う。
「…家に帰ってもいいの?」
まだ気にしていたらしい。直樹は、
「お前、他に帰る家あったっけ?」
とからかった。
「…ないです。」
「なら付いてくるしかないだろう。」
「…はい。」
そんな会話を交わしながら琴子は直樹と一緒に、数週間ぶりの懐かしい我が家へと向かった。

帰ってきた琴子の姿を見て、紀子は泣きながら迎えてくれた。紀子だけではなく重樹も裕樹も、他の使用人たちも同様だった。そんな皆の姿を見ながら琴子も泣きそうになったが、疲れているからという紀子の言葉に甘え、話もそこそこに直樹と一緒に部屋へ戻る。

そして寝支度を整えた二人は、久方ぶりに同じベッドへ入った。
「ごめんなさい、直樹さん。私、自分勝手なことをペラペラと捲し立てて…。」
漸く直樹に琴子は謝った。
「私、モトちゃんから聞いたの。直樹さん…モデルは私だけって言ってくれたんでしょ?」
「あのおしゃべりニシンが…。」
直樹はブスッと呟いた。そんな愛想のない顔も琴子には愛しくてたまらない。
「それ聞いた時、すごく嬉しかった。それなのに…私ったら…。」
泣き出した琴子に、直樹が言った。
「さっき話していた嫉妬の意味、お前間違っているからな。」
「え?どういうこと?」
直樹は琴子の目を見つめて、言った。
「俺は別に鴨狩の料理や閣下の貫録に嫉妬しているわけじゃない。鴨狩がお前と仲良くしている様子と、閣下がお前と手を握って踊っている様子、それから…お前に声をかける全ての男に嫉妬しているんだよ。」
「そ、それって…。」
さすがにそこまで言われて琴子も気がついたらしい。だんだん琴子の顔が赤くなっていく。そんな琴子を見て直樹はにっこりと笑い、琴子に顔を近づけ、唇を合わせる。

「でも…正装姿の直樹さん、本当に素敵だったな。」
琴子はうっとりとして言った。
「あの場所にいた女性みんなが、直樹さんが通る度に目で追っているのが分かったもん。こんな素敵な人が私の旦那様なんだって、私誇らしかった。」
そして琴子は直樹の目を見つめて言った。
「直樹さん…私をお嫁さんにしてくれてありがとう。私、本当に幸せ。」
「お前は自分を嫁にしてくれたって何かにつけて言うけれど。」
直樹も笑って続けた。
「忘れるなよ。最初に惚れたのは俺が先なんだってこと。そして…お前が俺を選んだってことを。だからお礼を言うのは俺の方なんだから。」
そして直樹は琴子の両頬を優しく挟んで言った。
「だから…俺と結婚してくれてありがとう、琴子。」
そして直樹は琴子を抱き締めた。琴子も直樹を抱き締めた。

「疲れたか…?」
少し抱き締める力を緩めながら直樹は琴子に訊いた。
少し…と答えようとした琴子だったが、直樹の目を見て気がついた。そして優しく微笑んで答えた。
「ううん…疲れてなんてない。」
琴子のその言葉を聞き、直樹は琴子に唇を落としながら、一緒にベッドへと倒れ込んだ…。




★あとがき
すみません。
皆さんがあまりにも閣下へ夢を抱いて(?)おられるので(笑)、ちょっと真実を早めに公表したくなり…。このまま黙っているのは胸が痛かった(笑)

といってもこの話、前の話と一緒にUPする予定だったのですが、ちょっと長かったので切ったものです。
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*Comment

★よかったよかった

無事に誤解がとけて(琴子ちゃんがちゃんと理解できて・・・笑)よかったよかった。
これから続くんですか?
何が待っているのか?
楽しみです。
KEIKO |  2009.08.19(Wed) 06:54 |  URL |  【コメント編集】

★NoTitle

どうしよう~
凄く直樹さん素敵で、私ドキドキしているんですが・・・・
琴子ちゃん、良かったね♪
ゆっくりと寝れますね。うふふふふふふっ♪
ゆみのすけ |  2009.08.19(Wed) 10:10 |  URL |  【コメント編集】

★Happy

よかった!仲直り出来て。

閣下は薩摩出身だったのですね。だからお礼
を言われたのですね。

お互いの誤解が解け、琴子が家に戻れて、本当
によかった。
るんるん |  2009.08.19(Wed) 18:30 |  URL |  【コメント編集】

★ありがとうございます

コメントありがとうございます♪

KEIKOさん
琴子ちゃんの天然ボケっぷりは…書くのが楽しいです♪
大丈夫!そんなに長くはなりません!
もうラストスパートかけるところまで来てますから(笑)

ゆみのすけさん
いやーん♪ドキドキだなんて…←私にドキドキしているわけではないのに(笑)
たまにはヒモじゃない直樹さんも書かないとね(笑)
ちと男らしくしてみました~^^

るんるんさん
サツマイモって薩摩で合ってるよね?と確認しちゃいましたよ(笑)思い込みだったら恥ずかしいですし(^^ゞ
本当にhappyな二人が一番ですよね!
水玉 |  2009.08.19(Wed) 23:35 |  URL |  【コメント編集】

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