日々草子 円舞曲 15

円舞曲 15

直樹は学校が休みの日も朝から部屋に籠り、絵を描き続けていた。琴子は少し直樹と話をしなければと思い、勇気を振り絞ってドアを叩いた。
「はい。」
直樹の声を確認し、そっと琴子は中へ入る。
「この頃大変そうだね。体とか…大丈夫?無理してない?」
まずは直樹を気遣う琴子。
「別に。」
しかし返ってきた言葉は素っ気ないものだった。

「…夕食も最近、ここだよね?」
ここ数日、課題が山積みとかで直樹は夕食もこの部屋で食べている。
「たまには私も一緒に食べたら…だめ?」
取り敢えず、食事をする時なら顔を嫌でも合わせることができ、会話もできるだろうと琴子は考えた。
「夕食といっても軽くしか食べてないから、お前には物足りないよ。」
遠まわしに拒否をされたことにさすがに琴子は気づいたが、そんなことで落ち込んでいる訳にはいかない。まずは仲直りをすることが先決だ。
「じゃあ、お夜食を一緒に食べていい?私も夕食軽めにするから。」
“夜食”という言葉を耳にした途端、直樹の脳裏に先日見た光景が蘇った。仲睦まじく啓太と一緒に、直樹の好物の蒸し芋を食べていた琴子の姿…思わず絵筆を投げつけそうになったが、何とか堪える。

「琴子。」
直樹は琴子を見ずに名前を呼んだ。
「…夜食、当分いらないから。」
「え?でも…。」
「いらないって言ったら、いらない。」
それはこれ以上何も言うなと、暗に言っているかの直樹の台詞だった。
「…分かった。」
琴子はそれだけを言うのが精一杯だった。

それから琴子は黙って、直樹の後ろから絵を描く様子を見ていた。が、やはり今何とかしないと思い直し、再び口を開いた。
「今、どんな絵描いてるの?あ、やっぱり風景だ。直樹さんって風景画が本当に好きなんだね。」
そう言って、琴子は周りに置いてあった絵を手に取りながら見る。
直樹は黙ってそんな琴子の様子を見ていたが、やがて、
「琴子。」
また琴子の名前を呼んだ。
「何?」
「…邪魔なんだけど。」
「え?」
聞き間違いかと琴子は思った。
「邪魔って言ったんだけど。」
“邪魔”という部分を殊更強調して、直樹は繰り返した。
「…ごめんなさい。出て行くね。」
琴子は泣きそうになるのを堪えて部屋を出て行った。

結婚前も結婚後も、直樹に邪魔と言われたことはある。だがそれは決して直樹の本心からではないことが分かっていた。だが、今日の言葉は明らかに本心から、琴子を邪魔と言っていた。なのでいつもなら言い返す琴子だが、今日は直樹の言うとおりにしなければいけないことにすぐに気がついた。

その夜、直樹が琴子の横に眠ることはなかった…。

「アンタと一緒に出かけるのも楽しいもんね。」
幹が楽しそうに紅茶を飲みながら笑った。琴子は幹と一緒に買い物に来ていた。
「啓太くんのお母様の命日は毎年お店がお休みなの?」
今日は啓太の母親の命日で、啓太は墓参りに行くといって店は休みだった。料理を作る人間がいないのだから当然である。
「そうね。あいつ、この日を一年で一番大事にしているから。」
幹の話を聞きながら、琴子は啓太から聞いた話を思い出していた。
「…啓太くん、お母様に名前を呼ばれたことないって話していたんだけど。」
思わず口をついてしまった。それを聞き幹は内心驚いた。まさか啓太がそこまで琴子に話すとは思ってもみなかった。それだけ琴子に…と思ったが、勿論、そんなことは表情にも口にも出さない。

その頃。
墓参りを終えた啓太は店兼住居へと戻ってきた。すると店の前に人が立っていることに気づく。それは…直樹だった。
「ご覧のとおり、店は休みなんだけど。」
直樹の顔を見るとどうもムカムカする啓太が、ぶっきらぼうに告げる。
「だから奥さんは来てないぜ。」
そう言って啓太はさっさと店へ入ろうとした。が、
「今日はお前に話があって来たんだ。」
と直樹が驚くことを言った。
「話?」
どうやら立ち話で済むような内容じゃないことは、直樹の表情から分かった。仕方なく啓太は店の中へ直樹を促した。


「お茶は出さないからな。」
「いいよ、別に。」
直樹は席についた。

「この間は琴子が世話になったな。」
啓太に背負われて帰宅した時のことを、まずは礼を言う直樹。
「別に。」
勿論、本題がそれだけではないことに啓太は気づいている。

「啓太がそこまで話したなら…大丈夫よね。」
独り言のように幹が呟いた。そして琴子の顔を見て言った。
「啓太の…家族について。」

「で、話って何でしょう?」
啓太は直樹の前に座った。
「訊ねたいことがあってね。」
直樹は言った。
「何だよ?」
直樹は啓太の目を見つめ、口を開いた。

「…貴族院議長の息子がどうしてこのような店をやっているのか、理由が知りたい。」



☆あとがき
すみません…どんどん重い話に…。夏なのに。
そして15(汗)…い、一話がとっても短いので、ご勘弁下さい
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comment

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NoTitle

一旦気持ちがすれ違うと・・・・辛いですよね。
どうか一日も早く二人の縺れた糸が解けますように。
それにしても啓太って「いいところのぼん」だったの?

ますますよめない展開

貴族院議長の息子って・・・。ますます先が読めない展開になってきましたね。
単なる入江くんの嫉妬話ではなくなってきてるぞ。
このシリーズの入江くんは結婚してからはツンぶりがほとんどなかっただけに、拒否られた琴子ちゃんは結構辛そうで、読んでるほうも辛くなってきます。原作も嫉妬エピの辺りは読んでて辛かったですしねぇ。
友人の結婚式に琴子ちゃんを連れていかなかった理由もまだはっきりしないし~、ああっ、もう、じれったいなぁ!
イラつきながら次を待っております。

どうなるこの関係は?

水玉さん、おはようございます。

直樹と琴子の関係は修復出きるのでしょうか。
一緒に食事もしていないようだし、夜食の話をしても
いらないと。おまけに邪魔だといわれて、琴子落ち込んでいますが。
直樹は啓太に会いに出向いていますね。
琴子が世話になったお礼に。
それとまだ何かを言いたいようですよ。
啓太の身分が貴族院の議長も息子だという事が。
啓太どうするのでしょうね。身分ばれてしまいましたよ。
直樹と琴子の関係は?
直樹と啓太の話し合いは?続きお待ちしています。

『邪魔』とまで言うとは!
さすがに冷たい!冷た過ぎるよ、直樹!!
いつになったら二人は仲直り出来るんでしょう??

啓太が貴族院議長の息子だったとは!?(衝撃!!)
啓太の家庭事情とはいったい?

ますます今後の展開から目が離せませんね!

琴子可哀想

琴子、可哀想、入江君に避けられ、冷たくされて、
これからどうなっちゃうの?

啓太は琴子に心を許してるみたいだし...

それにしても、啓太が貴族院議長の息子?

今後の展開に目が離せません。

コメントありがとうございます!

さくやさん
すれ違いって書くのも結構…辛いです^^;じゃあ書くなって感じだかけど。
だから…あっちへ逃げているんだなあ…笑
あっちで鬱憤を晴らしているのさ、ハハハ(笑)

KEIKOさん
いやいや、そんな複雑な展開にしないですって!
だって私が書いているんですから(笑)そんな期待しないでください~
本当に原作も辛かったですよね…琴子が気の毒で、でも最後の入江くんはかっこよかったけど♪

tiemさん
すごい引っ張りすぎですよね^^;
しかも妙にあおり過ぎた気も…うう。
これで肩透かしってことに…なるんですが、ごめんなさい!!

眞悠さん
前半いい人だったから、直樹さん(笑)
後半は…黒全開(笑)
それにしても本当に冷たい…たまにはいいかって思って書いてみましたが^^;

るんるんさん
…こっちが昼ドラっぽく見える気が(笑)
本当に可哀想な琴子を書くのは辛いです涙
早く話を進めねば…!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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