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2009.08.02 (Sun)

円舞曲 13


【More】

「やっぱり飲んでいると思った!」
幹は店へ入り啓太を見つけ、はしゃいだ声を上げた。が、
「な、何で琴子がここに?」
と酔いつぶれている琴子を見て目を丸くした。
手短に啓太が事情を話す。
「…どうするの、この子。」
「どうするって…俺の家に泊めるわけにもいかないし。」
「そりゃそうよ。そんなことしたら…。」
入江家訪問の折に見てしまった直樹の表情を思い出し、幹は両腕を摩った。
「とにかく、こいつの家に連れていくしかないな。」
啓太は溜息をつき、幹に手伝わせ背中に琴子をおぶった。

「で、今日はどうだったの?」
「どうって…相変わらず。」
背中で眠りこける琴子が落ちないよう、時々体勢を直しながら啓太は返事をした。
「そんなことだろうから、絶対アンタは飲んでいると思ったのよね。」
幹は頷く。
「…こいつが初めてうちの店に来た時のこと、覚えてるか?」
幹は啓太が意図して話題を変えようとしたことに気づいた。
「眠りこけてたわよね。どっかの女中さんかと思ってたけど。まさか伯爵さまの若奥様とは…。」
思わず噴き出す幹。
「その時、こいつなりに一番大変だった時だったらしいぜ。」
先程琴子が話したことを思い出しながら、啓太は言った。
「あんなに大事にされているのに?」
首を傾げる幹に啓太は続ける。
「…それを言えないんだろうな。きっと。」
やがて入江家の門が見えてきた。
「ここに捨てるわけにもいかねえしな。やっぱ中まで入るしかないか。」
屋敷を見て啓太は溜息をつく。
「ま、これだけの家なら家令もいるだろうし、お前の言うとおり大事にされているなら亭主にばれないよう、うまくやってくれるだろう。」
そして三人は門の中へ。

啓太の想像通り、そっと玄関を叩くと家令と思われる男性が出てきた。背中に背負われた琴子を見て驚いた声を出した。
「できれば…」
直樹にばれないようにと啓太たちは頼むつもりだった。
しかし、
「どけ。」
冷たい声が響き、その声を聞いた途端、家令が慌てて身を引いた。そこに現れたのは、幹が依然見たよりも、もっと恐ろしく冷たい表情をした直樹。
直樹は琴子を啓太の背中から下ろし、抱きかかえると言った。
「…悪かったな。こいつが迷惑かけて。」
「別に。あ、誤解されては困るけどこいつが自分からついてきたんだからな。」
あらぬ想像をされ、恨まれては敵わない。

「鴨狩。」
早々に立ち去ろうとする啓太の背中に、直樹が声をかけた。
「まだ何か?」
「…後で、改めて礼に行くよ。」
それは礼というより、別の話があるといった調子だった。啓太は答えず、幹を促して玄関から足早に去った。

翌朝、目覚めた琴子は一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。がすぐに見慣れた寝室の天井だと気付き、起き上る。
「痛い…。」
それは二日酔いの頭痛だった。
「どうしたんだっけ…昨日…。」
そしてまた昨日の出来事を思い出し、琴子は気分が沈んだ。
「嘘をつかれたんで、つい自棄になって…。」
溜息をついていると、直樹が入ってくる。
「目が覚めたのか。」
明らかに機嫌が悪い。
「あ、あの…。」
とりあえず、断りもなしにいなくなったことを琴子は詫びようと思った。しかし、
「みっともないよな。」
という直樹の声に、思わず出かかった謝罪の言葉をつぐんだ。
「限界を知らずに酒飲んで、挙句の果てには酔いつぶれて他人に迷惑かけて送らせるなんて。みっともないこと、この上ない。」
恐らく初めて耳にする、その冷たい言葉は琴子の二日酔いを途端に醒ました。
「…ごめんなさい。」
「下へ下りる前に、風呂入れよ。」
「え?」
「お前、具合が悪くて帰って来られなかったと家族に言ってあるから。そのまんま来られちゃ、酒臭くて一遍にばれる。」
そう冷たく言い残し、直樹は部屋を出て行った。

「…みっともないって、言われちゃった。当たり前よね…。」
琴子は泣きながらまた布団へと潜り込んでしまった。

「何であんなこと言ったんだか。」
部屋の外では直樹が何をするともなしに立っていた。
本当はもっと気遣う言葉をかけてやるつもりだったが、琴子の顔を見た途端、昨日無防備に啓太の背中で眠りこけていた琴子の安らかな表情を思い出し、つい八つ当たりをしてしまった。
「今頃、泣いているだろうな。」
“みっともない”という言葉は、今の琴子にとっては一番傷つく言葉だと十分知っていたのに、言ってしまったことを後悔する。今すぐ部屋へ戻って言い過ぎたと謝り、慰めてやればいいとは分かっているが、足が全く動かない。
「どうしてこんなことになったんだろう…。」
直樹は外へ出るため、歩き出した。



♪あとがき
いつも読んでくださり、ありがとうございます^^
入江くんの嫉妬…うまく書けているかが心配です…^^;
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16:27  |  円舞曲  |  TB(0)  |  CM(5)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

★うまく書けてるよ

その分辛いわ・・・クスン。
でもこのエピソードが無いと、鴨狩戦争の重みが出ないもんね。

それにしても、啓太に何か「秘密」の匂いがするなぁ。しかも、モトちゃんもなんか絡んでそうだし・・・。
ワクドキワクドキ・・・ハラハラ

ところで水ちゃん、この部分書くの何気に辛いでしょう??アナタ、結構親琴子派だからね。
アリエル |  2009.08.02(Sun) 16:55 |  URL |  【コメント編集】

うわ~~~ん!幹ちゃんが現れて良かったよ~!!
幹ちゃんがいなければ、連れて帰った時、ますます夜叉のような顔をした直樹が思い浮かぶ…
お~ぉ、恐っ!!!

やっぱり、出て来ましたね。
『直樹の嫉妬=琴子への八つ当たり』の構図が。
話の都合上、仕方ないシーンだとわかっていても、読んでいて辛い……

早く元のサヤに戻った二人が見たい…

眞悠 |  2009.08.02(Sun) 21:16 |  URL |  【コメント編集】

★嫉妬の炎!

水玉さん、こんばんは。
啓太が飲んでいる場所に幹まで。
酔いつぶれた琴子。
連れて帰っていく二人。玄関に出てきたのは直樹。
怒り爆発寸前です。琴子を奪い取るようにした直樹です。
後でお礼に伺うと。
目覚めた琴子、自分が何処に居るのか解らなかったようですね。部屋の天井で自分の場所が。
直樹も琴子も素直ではないですね。
一言ゴメンなさいで済むのに。
余計な一言で二人又最悪な状況。
どうなるのこの二人は?
啓太に対してすごい嫉妬を。
又疑問を持つ直樹ですが。
琴子に対して余計な事を言って又泣いているのだろうと、
思いながら外へ出た直樹です。
凄いですね、男の嫉妬は。
琴子が好きで好きで仕方が無いんだよね直樹は。
どうするの直樹?

tiem |  2009.08.02(Sun) 22:51 |  URL |  【コメント編集】

★NoTitle

コメントありがとうございます^^

アリエルさん
いや、そんな大層な秘密じゃないって。あなた、考え過ぎ。
書いてるの、私だから(笑)
そうね…辛くないと言えばうそになるけど、この後百倍返しすることを考えると…プププって感じ(笑)
でもやっぱり入江くんいじめの方が最高だよ(笑)

眞悠さん
そうそう。八つ当たりしないと、この後が…というよりここらでオーバーに書いておいた方が、後に拍子抜けされることを回避できるかなあと…(汗)
そんな理由です(笑)
確かにこの時の直樹はあの夜叉の面みたいな顔していそうですよね。

tiemさん
男の嫉妬も怖いだろうなあ…と思います。
そうなんですよね、だれよりも琴子が好きだから、こういった行為に出てしまうんでしょうね♪
水玉 |  2009.08.03(Mon) 18:02 |  URL |  【コメント編集】

★NoTitle

入江君の嫉妬、十分伝わりますよ。

琴子、啓太におぶわれてのご帰宅、でもモトちゃんが付いて来てくれたのだけが救いでしたね。
二人だけで帰って来たら...考えるだけで恐ろしいです(笑)

あやまろうとする琴子に冷たい入江君、「みっともない」と言われ、さらに落ち込む琴子、今後二人はどうなってしまうのでしょうか?
るんるん |  2009.08.03(Mon) 18:07 |  URL |  【コメント編集】

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