日々草子 別冊ペンペン草

別冊ペンペン草

インターホンが鳴り響いた。
出なくとも、分かっているので無視する。

「こんにちは!別冊ペンペン草編集部の相原です!」
直樹の想像通りの声がやがて部屋に響いた。

やってきたのは本人が言ったとおり、少女漫画誌『別冊ペンペン草』(略して別ぺ)の編集部の相原琴子。
そしてここは…その別ぺの看板漫画家、入江直樹の自宅兼仕事場である。

「原稿はいかがですか?」
部屋へ入るなり、琴子が大声で訊ねる。
「…今最終チェック中。」
机に向ったまま、無愛想に答える直樹。
「さすが!先生、一度も締め切り破ったことありませんものね!」
琴子はそう言いながら、勝手知ったる他人の家といった調子で、ソファに座った。

数分後。

「ほら。」
出来上がった原稿を直樹は琴子に渡す。
「ありがとうございます!」
そう言いながら受け取り、チェックする琴子。といってもせいぜい枚数を数える程度だが。

「はい!確かに42ページ。お疲れさまでした!」
確認し終わると琴子は、原稿をケースへとしまった。

この相原琴子という編集者。
元気はいいのだが…ドジである。
…とんでもない伝説を作り出している。

伝説その1
漢字もろくに知らない相原琴子。
彼女が競争率高い大手出版社『散米社』になぜ入社できたのか?
…噂では会長の隠し子とかいうが事実は謎のまま。

伝説その2
とりあえず被害の少ない担当をということで、最初は懸賞担当だった相原琴子。
しかし…
普通はゲーム機やコスメ用品、バッグなど女性読者が喜びそうなものを集めるところ、なぜか彼女は怪しいお面や壺など、触るだけで呪われそうな代物を集めてきた。
編集部も取り替える時間も予算もなかったため、仕方なくそのまま掲載…。

そんな状況が数カ月続くと、
『アンケートは採用してください。お願いですからプレゼントは当てないで。』
『プレゼント送らないで』
といったアンケートはがきが山のように…。

このままでは雑誌の命ともいえるアンケートが集まらなくなるということで、仕方なく配置換え。

しかし普通の漫画家の担当にすると、進行に影響が出ることは間違いない。

そこで白羽の矢(?)が立ったのが…別ぺの一番人気作家、入江直樹だった。

この入江直樹、男性ながら何年も人気ナンバー1の座をキープ。
コミックスも売れるという実力の持ち主。
その上…締め切りを破ったことがない。
破るどころか、締め切り1週間前に仕上げるというプロであった。

もちろん、編集との打ち合わせもいつも一発OK。

なので相原琴子が入江直樹の元へ来ることになったのだった。
打ち合わせもほとんど必要なし、締め切り守らせる努力も必要なし。
彼女がやる仕事…それは原稿の受け取り程度だった。

「あ、来月は表紙と巻頭カラー50ページお願いしますね。」
琴子は手帳を見ながら直樹に確認する。

「あと、付録、『ナオキン・コンパクトミラー』のデザインも。」

「分かったよ。」
さっさと帰れという仕草をする直樹。

ところが。
「あーっ!」
琴子が手帳を見たまま悲鳴を上げた。
「何だよ。」
「忘れてた…読者プレゼント用の図書カードのデザインもお願いするんだった…。」
「…いつまでだ?」
「…今日が締め切りです。」

琴子の頭にげんこつを一発見舞わせたあと、直樹は文句を言いながら仕事部屋へ戻った。

数時間後。
デザインを仕上げた直樹が戻ると、琴子は泣いていた。

「また読んでるのかよ。」
直樹は溜息をつく。
「だって…何度読んでも最高なんです。『それいけ!ナオキン』の13巻。このナオキンがマヨネーズを見て思い出すシーン…。」
そう言って琴子は盛大な音を立て鼻をかむ。

確かにそのシーンは読者からの支持も多かったなと直樹は思い出していた。

ちなみに『それいけ!ナオキン』は、現在直樹が連載中の漫画のタイトルである。

「でも…この絵からだと、絶対原作者は50過ぎのおじさんだと思ってたのに…まさか私と同じ年とは…。こんなにごつい絵を描くのが先生だったなんて…。」
琴子は漫画を元に戻しながら、今までに何度となく言ったセリフを繰り返した。

「…悪かったな。」
直樹はブスッとして答える。

そして琴子は図書カードのデザイン画も無事受け取り、会社へと戻って行った。

数週間後。
『別冊ペンペン草』の最新号が直樹の手元へと届いた。
直樹は自分の作品を開くなり、「1、2、3…」と数え始めた。

「14って…。」
そして深い溜息をついた。

14…それは『それいけ!ナオキン』の誤植の数だった。

相原琴子という編集部員。
彼女は…パソコンのタッチタイピングができなかった。
一本指打法…それも人差し指ではなく、なぜか薬指で打つという、器用な打ち方をするのである。

そして…直樹の原稿が完璧なのに、なぜか写植を間違えて打ち、そのまま発行されるのだった…。

「あいつが写植にかける時間も考えて、かなり余裕をとって原稿仕上げてるのに…何でだ?」
直樹はあきれながら、別ぺをソファへ放り出した。



☆あとがき
いきなりこんな話でごめんなさい。
リハビリのつもりで即効で書いてみました…。
どうも…いまいちの気が…。
ごめんなさい。
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No title

お帰り水ちゃん^^♪
早速、笑える話でのカムバックに元気浮上しました^^
しっかし、水ちゃん『別ぺ』に『それいけナオキン』に大爆^^
流石、水ちゃんだわん♪
お見事な復帰振りで、また水ちゃんのSSを毎日楽しみにできる
なんて夢のようよ!さあや^^

てか水ちゃんがリアルに集〇社で活動しているようなシンクロで
アッパレ♪

おかえりなさいーーーーっ。待っていました!!!
見事な復活♪
別冊ペンペン草…ぜひ定期購読したい~。

いやいやいやいや

全然パワー全開だと思うよ、十分にね(笑)
これでリハビリって・・・あなたにリハビリなんて必要ありません!!!

しかし、一体どんな絵を描くのだろう、直樹先生。
カラー原稿とか、真剣に拝んでみたいです!!!

おかえりなさい

お帰りなさい~!素敵なお土産を有難うございます。復帰されているのをを見つけて思わず万歳!水玉さん宅を訪問させていただくという私の日々の楽しみが・・・ククク(涙)うれしい~~~

まってましたっ!

「別ぺ」購入希望です(笑)漫画家と編集者とは・・・意表をつかれました。
復帰一作目からとばしますね水玉さん。
水玉ワールド全開でお願いします!

お帰りなさい。

水玉さん、お帰りなさい。

リフレッシュできましたか。
長いような短いようなぁ。
即このようなお話。
すごいです。
看板漫画家と編集者。
やはりドジな琴子。
意表をつくお話でした。
これからもまた、水玉ワールドを
全開して行ってください。
楽しみにしております。

水玉さん、お帰りなさい。
キリン同盟末席からお待ちしていた甲斐あって、復帰早々こんな楽しいテキストをありがとうございます。全然リハビリ必要ありません。もう完全です。私も「別ペ」定期購読、お願いしまーす。

水玉さんお帰りなさい。
お待ち申しておりました。
リハビリとおっしってますが始めからとばしてらしてもううれしゅうございます。
これからも水玉さんのペースでいってくださいね。
次の作品も楽しみにしております。

水玉さんおかえりなさい。
ずっとキリンになって待ってましたよ。
早速おもしろいお話、すっごくうれしいです。
リハビリなんて必要ないない!「別ペ」読みたいです~いまいちどころか、もう最高ですよ。
これからも水玉さんのペースで^^更新楽しみにしています。

お帰りなさい、水玉さん!!

こんなに早くに帰ってきてくださるなんて…(^ω^)
これから毎日また新しい日課が増えて嬉しいです。

復帰作品の『別ぺ』のお話のほうも水玉ワールドが広がっていてすっごく楽しめました。
続きも楽しみにしていますね。
これからも自身のペースで頑張ってください!

おかえりなさーい ^^

さっそく楽しいお話、うれしいですっ *^^*
これからも 楽しみに来させていただきますね♪

でも ほんと「別ペ」読みたいです ^^

ありがとうございます!ここを覚えていて下さった皆様!
訪れる方がいらっしゃっただけでもうれしいのに、コメントもこんなにたくさん!
この気持ちを忘れないようにしないといけませんね!

さあやさん
ありがとうございます。
「別ぺ」略すると、結構楽しいかなあと自己満足(笑)
久しぶりに書いた話、早速さあやが一番乗りでコメントしてくれてすごくうれしい!!
なんかね、新人の編集さんはまず最初は懸賞ページを担当するらしいって小耳に挟んだことがあったの♪それでこんなネタ(笑)ナオキン…他に名前が浮かばなかったの~!!
またぜひ遊びに来てね!

えまさん
ありがとうございます。
別冊ペンペン草…ロゴが私は気になってしょうがない(笑)ていうか、絶対つけないでしょう、こんな名前(笑)
えまが「トーンが…」とか書いていたから、「このネタ使える!」と勝手に使っちゃったよ(笑)ごめんね。
これからもよろしくね~^^


アリエルさん
ありがとうございます。
いやいや…リハビリは必要だぜよ(来年の大河に合わせて使ってみた)
なんか…オチが決まらないというか…まあそのうちなんとななるだろう←おい!
入江くんは…漫画の世界でも天才ということで(笑)

Roseさん
ありがとうございます。
お土産…というほどのものではないのですが、とりあえず書いてみました~。
Roseさんの貴重な涙を頂戴できるものではございませんが、またお気軽にコメントいただけたらとてもうれしいです。

さくやさん
ありがとうございます。
なんか書きながら、ドリフの「もしも…なら」というコントを思い出してました(笑)
さくやさんの意表をつきましたか?やったってかんじです(笑)
ワールドなんて大したものではございませんが、またお気軽に足を運んで下さるとうれしいです。

tiemさん
ありがとうございます。
リフレッシュ…かどうかは分かりませんが、自分の書いたものを客観的に見ることはできました(笑)。…あまりのくだらなさに両手で顔を覆ってましたが(笑)
またコメント楽しみにしています♪

るんるんさん
ありがとうございます。
その…キリン同盟って嬉しいやら恥ずかしいやら(笑)
でもそんな風に言っていただけて幸せです。

ゆんさん
ありがとうございます。
飛ばしているように見えますか?じゃあ、そんなに自分が思うほど、ひどくはないのかな?
調子を取り戻すまでちょっと時間がかかりそうですが(いや取り戻すほどの調子はあるのか)、またよろしくお願いします。

emiさん
ありがとうございます。
別ぺ…よかった、受けて(笑)
明るい話は書いている自分も楽しくなれて好きです。…ただ滑っているのが心配ですが(笑)
またお気軽にコメントいただけたら嬉しいです。

natukiさん
ありがとうございます。
日課になんて…勿体ないです。でもペースとか、あと色々周囲のことも考えてのんびりと続けて行けたらなあと思っています。
コメントありがとうございました。

erikanahahaさん
ありがとうございます。
別ぺ…他にも色々姉妹誌がある設定なんです(笑)だってモデルはあの雑誌だし(笑)
ぜひまた遊びに来てくださいね。


華麗なる復帰第一弾!お待ちしておりました!

ずっこさん
華麗…では全然ありませんが、ありがとうございます。
覚えていてくださって嬉しかったです。

精神安定剤

こんばんは。ピコティムです。
なんだか、もやもやしたり落ち込んだりしていると、
別ぺを読みたくなります。
ラブコメ度が高いからですかね。
ハラハラドキドキ、不安にならない、そのお気楽さが気分を軽くしてくれます。ありがとうございます。水玉せんせい!
そういう意味では イリエアン・ナイト も安心してよめます。
いま、メランコリーなので、別ぺで救われています!
ということをお伝えしたかったのです。
それでは失礼しましたでございます。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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