日々草子 vs.イ/チ/ロ/ー

vs.イ/チ/ロ/ー

今日は休日。
目を覚ますと…同じく休みが重なった琴子の姿はもうなかった。
時計は午前11時。ちょっと寝過ぎたか。
起きて、パジャマのまま洗面所へと向かう。

「随分ゆっくりだね、今日は。」
顔を洗い終わった所で、鏡の中に琴子が現れた。
「たまの休みだし。」
何の文句がある?
「うん。そうだよね。」
何も文句がないらしく、琴子は頷いた。

「ところで…入江くん。」
琴子が俺の目を見つめて話しかけてきた。
「…そろそろ、家を出ない?」
俺は突然の琴子の申し出に一瞬、戸惑った。

家を出る…。
結婚する前もした後も、ずっとこの家で大所帯で暮らしている俺たち。共働きの俺たちにとって、かなり恵まれた環境。
それなのにこんなことを言い出すということは…琴子も俺と二人だけで暮らしたくなったのか。
自立したくなった…そんな所だろうか。

琴子と二人きりの生活。
家事音痴のこいつにとって楽ではないだろう。だが何をしようが人の目を気にせずに済む。
それに…どっちにしろ将来、俺たちはここを出なければいけないだろう。
この家は…親父が建てたこの家は、親父の後を継ぐ裕樹が住むことが一番ふさわしいからだ。
だから、今この家を出ることは、その予定がちょっと早まっただけ。

「そうだな。お前がそうしたいのなら、考えてみるか…。」
色々考えて、俺はそう返事をした。
「本当!考えてくれるの!」
「ああ。」
そんなに俺と二人きりで暮らすことが嬉しいのか。

「じゃ、そうだなあ…半年以内には。」
「半年!?」
そりゃまた計画的というか…。
「ま、半年もあれば部屋も見つかるだろう。」
「うん。一人暮らしの部屋だからそんなに大変じゃないと思うよ?」
…ちょっと待て。
今何て言った?一人暮らし?誰が?

「入江くんが出て行ったら、入江くんの部屋、この子の部屋にする予定なんだ。」
琴子はお腹を優しく撫でながら言った。
何だって?この子?
「裕樹くん!入江くん、独立してくれるって!」
そこへ裕樹がひょっこり顔を出した。
「悪いね、お兄ちゃん。“こいつ”のために。」
「何でお前がそんなことを言うんだ?」
「え?だって琴子は僕の奥さんだもん。お腹の子も僕の子。」
「…何だって!?」
俺は裕樹の言葉の意味が全く分からない。

「お前と琴子が…いつそんなことに?」
「いつって…。先週、あたしに赤ちゃんができたことが分かって、入籍したんじゃない。」
琴子の説明に、俺は裕樹を見て言った。
「お前、まだ18…。」
「お兄ちゃんらしくないね。男は18で結婚できるじゃない。」
琴子と裕樹ができちゃった結婚…。頭がクラクラしてきた。

「相手にされてないのに、お兄ちゃんを追っかけてるこいつがけなげでさ…。」
「あたしも慰めてくれた裕樹くんの優しさに段々気がついて…。」
「お前と琴子…年齢差があるだろう?」
すると、二人は顔を見合わせた。
「年齢差って…お兄ちゃん、いつの時代の人?」
「そうだよ。入江くん、イ○ローだって松○だって姉さん女房じゃない。」
…裕樹はメジャーリーガーじゃないだろ。

「入江くんが出て行ってくれたら、入江くんの部屋とあたしたちの寝室の間の壁にドアつけようね。」
「そうだな。そうすれば赤ん坊が泣いてもすぐに駆けつけられるし。」
とても幸せそうな裕樹と琴子…。

「あ、入江くん。おはよう…ていうより、こんにちはだね。」
目を開けると、琴子が俺の顔を覗きこんでいた。
「夢…?」
どうやら全て夢だったらしい。
「何かいい夢見たの?」
とんでもない夢だった。俺は息を深く吐き出す。

「どこか出かけてたのか?」
見ると琴子は外出着姿だった。
「うん!ジャーン!」
ベッドに腰掛けて、俺の目の前に何かを自慢気に見せた。
「母子手帳…。」
それは真新しい母子手帳。母親の名前の欄にはきちんと“入江琴子”と書かれている。
そうだった。先週、琴子の妊娠が分かったこと、これは紛れもない事実だった。

「区役所でもらってきたの。こういうの手にすると、お母さんになるんだなあって実感する。」
愛しそうに、大事そうに手帳を撫でる琴子。そんな琴子を見ていると俺も優しい気持ちになる。

「さてと!下でテレビ見よう!入江くんも早く着替えて下りてきてね。」
「ああ。」
何とも言えない幸福感に包まれて、俺は返事をする。
「今日はイ○ローが張本の記録を超えるかどうか、大事な所だし!」
「イ○ロー?」
その言葉を聞き、俺は先程の悪夢を思い出してしまい、複雑な気持ちになる。
「うん。裕樹くんも見てるんだよ。」
「裕樹?」
イ○ロー、裕樹…。何だ、このもやもやとした気持ちは…。

「キャッ!」
俺は琴子の腕を引っ張り、抱きしめた。
「もう少しこうしていたいな。」
「え?だ、だって、イ○ローが…。」
「イ○ローと俺、どっち取る?」
「ど、どっちって…。」
琴子は困ったように呟く。そして、
「夜、ニュース見ればいいか…な?」
とあっさりと陥落した。

そうだよ。
イ○ローに俺が負けてたまるもんか。
勿論、裕樹にもな。
俺はそんなことを思いながら、琴子と唇を合わせた。



♪あとがき
先週、とある所で「イ○ローになれ!」と言われました。
なれるかなれないかは別として、こんな内容が浮かぶ私って…。
しかも、原作は冬に分かったんですよね?
捏造までする私って…。
とりあえず、日本記録おめでとう!イ○ロー!(笑)
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comment

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イチロー

我が家の女三人はイチローのファンです。
でも・・・でも・・・入江くんとは比べられません!!
今回も夢見の悪い入江くん。
次はいい夢が見られますようーに。

本当に水ちゃん^^面白すぎですぅー♪
もう。『参ったっ』

水ちゃんの捏造話、大大歓迎です^^
むしろ水玉ワールドが拡がって行くなんて素敵だもん。

しかし、水ちゃんの書く直樹のヤキモチはツボなのです^^
『ヤキモチシリーズ』カテゴリに来るかなぁ?
うふふっ♪

イ、イ〇ローになれと?!

凄いアドバイス(?)をする方がいらっしゃるのね・・・。どのような意味でおっしゃられたのかしら?
しかし、あの人はまさしく勝負師だね。ここ一番の時の眼光の鋭さがたまらなく好きだわ。世界の北島〇介も同じ目をしている!そしてきっと、オペの時の入江くんもそんな目をしているのだと思うわ。でもイチ〇ーもやっぱり人の子だったのね・・・と思ったこの春。胃もすっかり良くなったようで、あまりにもスバラシイ記録達成にビックリです。頑張る彼に神様のプレゼントかしら?いえ実力ですよね!
しかし、悪夢にさいなまれてしまうほど琴子にぞっこんな入江くん、もう琴子以上に重症かもね(笑) そして、琴子はきっとそれに気づいていないのよね~~。かわいい夫婦~♪

比較するかなぁ?

水玉さん、おはようございます。
直樹と琴子が家を出る?
エ~~直樹だけ。何故。
裕樹と琴子が赤ちゃんで来て入籍。
驚く直樹?
全て夢の中の出来事だったのですね。
もう驚きました。
琴子はお出かけして直樹に母子手帳を見せています。
そうなんだぁ、琴子妊娠したんですね。
おめでとう、直樹&琴子。
イチローが記録を抜くかも、裕樹も応援。
直樹、琴子のイチロー、裕樹にカチン。
イチローか直樹どっちが好きかだって
そんなの決まってると思うけど。
もうこの二人は、見ていられません。

しかし、イチロー選手はすごいです。
まだまだ記録を達成するでしょう。
張本氏は記録を抜かれて悔しいと話しておられましたが。
記録は抜かれるのです。
心を大きく持たないと。イチロー選手みたいに。
ねぇ、直樹も。

ニヤリ!!

水玉さ~ん!!
直樹のヤキモチシリーズ大好き。最高!!ブラボー!!
パチパチパチ!!!←だって私、同好会のメンバーだから。。。(笑)
イ●ローにまでやきもちを焼く程、琴子ちゃんが好きなのに
それに気付かない鈍感な琴子ちゃんがとてもかわいい!!!
っと、裕樹くん、今日はお兄ちゃんの前で琴子とお話しないほうがよろしくてよ~←私から裕樹へささやかな忠告。
けど裕樹(本人何もしていない)にヤキモチ焼く入江君も大好き!!

さくやさん
イチローファンですか!彼、侍って感じですよね!
それにしても入江くんの悪夢…よく書くなあ、私(^^ゞ

さあやさん
久々に書いたよ、入江くんのヤキモチ!
いえね、すっごーい甘甘を書きたくなったの!でもうまく書けない!こう、とろけるようなもうメロメロな話を書きたいのよ!!!
そして、お言葉に甘えて、捏造続けます(笑)

アリエルさん
イチローが記者会見で「記録を達成して見たことのない景色を見てみたかった」と言ったらしいのね。で、これは何かを目指す人間全てに言えることらしい。それくらいの気持ちで頑張れと。目標を達成するまで、「イチローめざすぞ、イチローになるぞ」と呟けと言われました(^^ゞ
単純な私はそれから「イチロー、イチロー…」と言っています(笑)

tiemさん
そうですね。かつて王元監督が記録を抜かれそうになった時、「記録は破られるものだ」みたいなことを言ってました。私はそれを聞いて懐の大きさに感動した覚えがあります。
記録を作る人は、やがて抜かれることも覚悟しておいた方がいいのかも…。抜かれた時に自分がされたように、賞賛できる人はやはり凄いと思います。

ゆみのすけさん
おお!同好会会長に誉められちゃった!(笑)
でも本当に、裕樹、何もしてないのにね…哀れ(笑)
vs.裕樹も書いてみたいです^^

皆様、コメントありがとうございました\(-o-)/


プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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