日々草子 祖父襲来 2

祖父襲来 2

午後、車が到着した。
玄関に直樹と共に琴子は緊張して待っていた。
祖父は維新前までは九州でお殿様と呼ばれていた人物で、紀子の嫁入りと共に関東へ移り住んだとのことだった。
車の中から降りてきたのは、どことなく直樹に似た老人。禿頭を見ながら琴子は内心、直樹の髪の毛を心配してしまう。

「ようこそ。爺様。」
直樹が笑顔で歓迎の意を述べた。
「おお、直樹。久しぶり。」
祖父も笑顔で直樹に答える。
「あ、わしの荷物運んでおくように。」
祖父は旅行鞄を琴子へ渡す。
「ところでお前の嫁は?出迎えにも来ないとね?」
祖父が辺りをキョロキョロと見回した。
「あ、あの…。」
恐る恐る琴子が話しかけようとした時、
「爺様、そこに立っているのが俺の嫁の琴子。」
と直樹が琴子を示した。祖父は琴子を見て、
「この冴えない小娘がお前の嫁ね!?」
と叫んだ。
「初めまして、お爺様。琴子です。」
琴子は頭を深く下げて挨拶をする。
「これが…これが直樹の嫁とな…!わしは女中かと思った!」
琴子の頭の先からつま先まで、ジロジロと見ながら祖父は言った。
「直樹…。」
一通り琴子を見た後、祖父は直樹へ話しかけた。
「お前…自棄になって嫁をもらったと?」
「や、自棄…?」
琴子は祖父の言葉に耳を疑った。
「そんなに結婚を急がんでも…。お前、何か自棄を起こして、売れ残りを嫁にもらったとね?」
「う、売れ残り…?」
ますます琴子の目が点になる。
「違いますよ。ま、疲れでいるでしょう?とりあえず中へ入って休んで下さい。」
直樹は祖父の言葉を受け流し、祖父と共に家の中へと入った。
「あれが直樹さんのお爺様…。性格は間違いなく孫へと受け継がれているわね。」
琴子は変な所を納得して、重い鞄を運んだ。

「で、琴子さんといったかな?」
お茶を飲み、一息ついた後、祖父は琴子へと話しかけた。
「は、はい!」
祖父に名前を呼ばれ琴子は緊張する。
「今夜は何を食べさせてくれるとね?」
「あ、それなら今夜は外でお食事しようかと…。」
本当は二人きりで出かけたい所だが、来てしまったものはしょうがない。
ところが祖父は溜息をついた。
「わしは外食というもんがあまり好かん。」
その言葉に琴子は嫌な予感がした。
「なので家で食べたか。」
「でも、あの、一週間、女中さんも料理人さんもお休みなので…。」
予感が的中し、琴子は何とか言い訳をする。
「あんただっておなごの端くれ、料理くらいできるやろう?」
琴子は青ざめた。料理は得意ではない。紀子に少しずつ習っているがあまり上達はしていない。
「そうだな。俺もお前の手料理が食べてみたい。」
頼みの綱の直樹まで祖父に同調した。二人に言われて琴子は台所へ立つしかないとあきらめた。

「…しょっばい!」
夕食の席で、味噌汁を一口すすった祖父は叫んだ。
「あら?お味噌…入れ過ぎちゃいました?」
琴子は笑ってごまかす。
「入れ過ぎという話じゃなか!こげなもん飲めん!」
そう言いながら、今度は祖父は味噌汁の具である大根を口へ入れた。ガリガリ…と変な音がする。
「年寄りには硬すぎる!歯が折れる!」
「よく噛んで下さいね。よく噛むことは顎の発達にもいいんですよ。」
琴子はお櫃からご飯をよそいながら言った。
「わしはこれ以上顎を発達させたくはなかよ!」
琴子の言葉に祖父は更に機嫌を悪くした。
「直樹…。」
同じような音をさせて大根を食べている直樹に祖父が声をかけた。
「この家の飯は白じゃなく黒いとね?」
琴子が炊き上げたご飯は見事なまでに焦げている。
「あ、お焦げもおいしいんですよ!お塩を振って食べるとこれがまた…。」
琴子はにこやかに誤魔化し…いや、助言する。
「直樹!このおなごはわしを、塩分の取り過ぎの高血圧で殺す気ね!?」
と祖父の雷が落ちる。
「そんな…。」
琴子は助けを求めようと直樹を見るが、直樹は我関せずといった感じだ。
「…ったく、気は利かん、料理はできん、こげな嫁をもらうとは…。」
祖父はこれ見よがしに溜息をついた。

祖父が客間へ引き上げた後、琴子は溜息をついた。
「私、お爺様に嫌われてる…?」
「まあ、ちょっと一癖ある人だけどな。」
直樹が言った。
「一癖どころか数え切れないくらいあると思う。認めてもらう自信ないなあ。」
直樹がしょうがないなといった風に琴子を見て、そっと近づいた。
「大丈夫さ。お前なら爺様とうまくやっていけるよ。」
そして直樹は琴子を優しく抱きしめた。
「直樹さん…。」
直樹の優しさに琴子がうっとりしていた時、
「琴子さーん!」
と祖父の大声が響いた。
「…爺様が呼んでいる。」
直樹はあっさりと琴子を解放してしまった。琴子は、渋々立ち上がり、客間へと向かう。

「何か御用でしょうか?」
いい雰囲気を邪魔された不機嫌さを必死で隠して琴子は客間のドアを開けた。
「わしはベッドっちゅうもんはどうも合わん。なので座敷に寝たいけん、すまんが布団を運んでくれんと?」
…琴子は座敷まで重たい布団を運ばされることとなった。

「これで大丈夫でしょうか?」
布団を敷き終え、もう勘弁してほしいといった感じで琴子は祖父へ言った。
「ああ。すまん。それから…。」
まだ何かあるのかと琴子は思った。
「この家にいる間は久しぶりに孫と枕を並べて寝たか。直樹にそう伝えといてくれんね?」

寝室へと戻っていた直樹へ琴子が話すと、
「そういえば、爺様の家に泊まりに行った時はいつもそうしてたな。久しぶりに爺様孝行するか。」
直樹はあっさりと祖父の頼みを引き受けてしまった。
「え、じゃあ、私、しばらくここで一人で寝るの?」
泣きそうな琴子に直樹は、
「お前、最初はこのベッドで一人で寝る予定だったんだろ?良かったな。思う存分、大の字になって寝ろよ。」
と言い残し、さっさと祖父の部屋へと行ってしまった。
「そんな…。」
残された琴子は、その夜寂しく大きなベッドで一人で眠るはめになった。



☆あとがき
さあて、来週の『琴子さん』は?
琴子、叱られてしょんぼり
直樹、青筋を立てて怒る
祖父、更に髪の毛が薄くなる

の3本です!ジャーンケーン…ウフフ

…つい乗っちゃったじゃん!しかも滑りまくり!恥ずかしい!
でもちょっと気分がスッキリしたので、今手を叩きながらフラメンコを踊ってる気分なので(笑)
…踊れないけどね。
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NO TITLE

水玉様
いいですね、祖父とのやりとり・・。特に「おこげ」大好きです。
ウフフ、次回が楽しみです。

「あとがき」面白すぎます(笑)。

ばっくしょーーーー

バラくわえて、顔の脇で手拍子する(←西〇輝彦風に)水ちゃんの姿が脳裏に・・・

いやはや、こちらの爺様もつわものの曲者だね~~、琴子大変だぁ!!
さぁ、水ちゃんはあのエピソードこのエピソード・・・どう料理するのかしらン??
(↑やんわりとプレッシャーかける鬼:笑)
ふふふ・・・でも琴子料理風の味付けでも、水ちゃんの料理ならアリエル喜んで食べちゃうから!!

漫才?

水玉さん、まぁ面白いお爺様で。
琴子とのやりとり、テンポがあってとても楽しいです。
この1週間琴子のご飯食べられるお爺様、さぞや丈夫になられて、
お帰りになられるのでは。
そのぶん、琴子は大変でしょうが。
料理は欠点だらけの琴子。
次は何でお爺様に怒られるのでしょうか?
夜、琴子直樹さんとゆっくりお楽しみかと思いきや。
直樹さん、お爺様とご一緒です。
いとも簡単にお爺様の元に。
大きなベッドに一人です。
大丈夫なのでしょうか?
直樹さん、琴子を一人にさせて。
新婚さんですよ。
続きご期待申し上げます。

可笑しすぎ~!!

あとがきが~~!!
サ○エさん、昔はクッキー食べてたのになぁ…
お爺さん、さすが強者! 琴子がどうやってお爺さんに認めてもらえるようになるのか楽しみです。

じいちゃん、襲来って・・!!
もはや使徒と化しとりますがな!!(←エヴァネタ)
琴子ちゃん大丈夫でしょうか?華族様と同じ学校に通えてたくらいなんだからそこそこの家の子だろうに・・・。
て、未来の琴子ちゃん以上に下手なんじゃ・・・。
どっちが先にギブするでしょうか(>_<)

どんなテンションだったのだろう?

foxさん
あとがきスルーしないで下さってありがとうございます(笑)
お焦げ…私は食べたことないですがそうするとおいしいって何かの本に書いてあったので…(^^ゞ

アリエルさん
そう!まさにその曲「好きなんだけど~チャチャチャ♪」が流れてたわ!どんなテンションなんだ…私(笑)
で、どのエピソードのことを?…もう逃げていいですか?

tiemさん
よかった!テンポよかったといってもらえて!
掛け合いみたいな感じを出したかったので安心しました!
ありがとうございます!
…セリフばかりになっちゃいますけどね(^^ゞ

くみくみママさん
え?あれクッキーでしたっけ(笑)私、ピーナッツだと思ってました(笑)
でもいつの間にかジャンケンに変わってた時は驚きました~時代?

花祥さん
最初はタイトル決まらなかったんですが、1のコメントから突然ひらめいたんです^^
何か漢字オンリーなタイトルが好きなんです、私^^

読んでくださってありがとうございました!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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