日々草子 熱海の夜 後編
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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熱海の夜 後編

「あれ…?」
琴子はいつの間にか眠ってしまったことに気がついた。
「やだ、寝ちゃうなんて…。」
慌てて立ち上がる。部屋には一人しかいない。
「直樹さん、退屈して出かけちゃったんだ…。」
部屋を出て、宿の帳場へと向かった。
「あの…。」
帳場に座っている番頭に、直樹がどこに行ったか訊こうとするが、何と呼んでいいのかわからない。「主人」とか呼べばいいのかと思うが、恥ずかしくて声が出なくなる。
「あら!梅の間のお客様!」
もじもじしている琴子に、女将が声をかけた。
「御主人様なら、先程お出かけになられましたよ。何かお道具を持って。」
「あ、そうですか。ありがとうございます。」
慌てて琴子も草履を履き、外に出た。

「うふふ…御主人様か…。」
歩きながら琴子は先程の女将の言葉を思い出して笑う。道具を持っていたということは、琴子がこっそりと入れておいた物を見つけたのだろう。やっぱり入れておいてよかったと琴子は思った。

「いない…。」
てっきり、海の絵でも描いていると思ったのだが、そこにはいなかった。
「どこへ行ったのかしら?」
琴子は違う場所を探そうと、再び歩き出した。

「…ここ、どこ?」
いつの間にか日が暮れ始め、琴子は道に迷ったことを悟っていた。
あちこち、景色のよさそうな場所を探したのだが、どこにも直樹はいなかった。
もしかして、街の中心にでもいるのかと思い、道すがら「袴を身に付けた若い男性を見なかったか。」と尋ねて回ったが、皆、首を横にふるばかりだった。考えてみれば、袴を身に付けた若い男性はたくさん歩いている。

「宿へ戻らなきゃ…。」
戻って待っていた方がいいと思い歩き始めていたが、宿の名前も忘れてしまい、人に尋ねることもできない。
泣きそうになっている琴子に、
「おーい。」
と男が話しかけてきた。
「旦那が探しているよ。」
その声を聞き、琴子は直樹も自分を探してくれていたと思い、ホッとする。
「どこですか?」
「あっち、あっち。」
男に連れられ、琴子は歩き始めた。

「え…?」
男が言った旦那は、直樹ではなかった。というより、とてもまともな人間に見えない。
「どなた…?」
と琴子が首を傾げれば、
「こんな奴、いたっけ?」
と、“旦那”は琴子の顔をじろじろと見た。
「旦那ってこの人じゃないのか?」
琴子を連れてきた男も、琴子の様子に首を傾げている。
「あたしの旦那様は、こんな変な人じゃない!」
琴子は血相を変えて抗議した。


「何を訳の分からないことを言ってるんだ。ま、いいや。もう時間ないしな。」
“旦那”はそう言って、琴子の手を取った。
「え?時間って?」
訳が分からない琴子は、周囲を見た。…そこは明らかに遊郭だった。
「観光客が多くて、人が足りないんだよ。早く来い。」
「いえ、私は違う…。」
「とにかく、最初が済めば、後はもう同じことの繰り返しだから。」
「さ、最初って…。」
流石に琴子もここがどういうことをする場所なのかくらいは知っている。そして、どうやら、ここで働く女性に間違えられていることに気がつき始めた。

「た、助けて!」
琴子は引きずり込まれないよう、力を入れて踏ん張り、声の限り叫んだ。
「助けて!助けて!直樹さん!」
「何をわからないことを…。」
男が力を入れて引っ張ろうとしたその時、その手を他の手が取り、そして捻じり上げた。そして、その手は男を殴りつけた。
「汚い手で妻に触らないでもらおうか…。」
直樹が怒りの籠った目をして立っている。
「直樹さん…!」
駆け寄る琴子の手を直樹は取り、足早にその場を去る。

だいぶ離れた所まで来ると、二人は立ち止まった。
「ここまで来れば大丈夫だろう。」
琴子は、
「直樹さん!」
と直樹の胸に飛び込み、そして泣きじゃくった。
「直樹さん…。直樹さん…。怖かった。」
泣きじゃくる琴子の背中を優しく撫でながら、
「もう大丈夫だよ。」
と直樹は声をかける。
「悪い。つい描くのに夢中になって時間を忘れてた。宿に戻ったら、お前が俺を探しに出て行ったって聞いて…。探していたら、お下げ髪の女が袴を履いている男を探しながら、歩いて行ったって聞いたから…。」
直樹の言葉に、琴子は首を振る。
「ううん。寝ちゃった私が悪いんだもの。ごめんなさい。心配かけて。」
琴子の言葉を聞き、直樹は優しく琴子を抱きしめた。

「あ、直樹さん、まだ戻っていないのね。」
お風呂から戻った琴子は、誰もいない部屋を見て呟いた。そして、
「お布団が敷かれてる…。」
二組の布団が既に敷かれていた。その布団はぴったりとくっついている。恐らく、女中が夫婦だからと気を回したのだろう。
「ちょ、ちょっとくっつきすぎかしらね?」
赤くなりながら、琴子は布団を少し離した。いよいよ、その時が来るんだと思うと、緊張してたまらない。

今、どんな顔しているだろうと思い、鏡を覗きこんだ。そして思い出す。
「そうそう。妻たるもの、寝ている時も素顔を晒してはいけないんだったわ。」
慌てて荷物の中から化粧道具を取り出した。
「寝化粧、寝化粧…といっても、お化粧、殆どしたことないのよね。おば…じゃない、お義母様に教えていただけばよかった。」
そんな独り言を言いながら、道具を手に、化粧を始めた…。

「先に上がって…。」
直樹が風呂から上がって、部屋に入ってきた。が、琴子の顔を見るなり言葉をつまらせる。
「何だ、一体…。」
「おかしいわよね…やっぱり。」
琴子が泣きそうになっている。
「寝化粧したつもりなんだけど…私、お化粧したことなくて…。」
「寝化粧がどういうものなのか、俺は知らないけれど、薄くするものじゃないのか…?」
「そうだと思うんだけど、あそこがおかしい、こちらがおかしいとやっていくうちに、こんな状態に…。」
その顔はどう見ても寝化粧というには程遠く、直樹は「おてもやん」を思い出していた。

「…風呂にもう一度入って、落としてきたほうがいいんじゃないのか?」
直樹の言葉に琴子は頷き、顔を隠すように廊下へと出て行った。
それを見送った後、直樹は吹き出し、声をたてて笑った。
「あいつ、やっぱり面白すぎる…!何を考えているんだか…!」
ひとしきり笑った後、直樹はポツリと呟いた。
「でも、おかげで緊張が解けたな。」
そして敷かれた布団へ目をやる。
「気が利かない女中だ…。」
そう言いながら、琴子が離した布団を、ぴたりとくっつけた。

琴子が部屋に戻ると、既に明かりは落とされていた。
「直樹さん…あ、寝ちゃってる。」
直樹は布団の中で目を閉じていた。
琴子は拍子抜けしたが、すぐに笑顔になった。
「お式の前日までお仕事、忙しかったものね…。そして朝早く出てきて、私を探し回ってくれて…。」
寝てしまうのも無理はないと琴子は思った。
そして、自分も布団に入る。

「でも…私ってだめだなあ。居眠りする、迷子になる、挙句の果てにはお化粧に失敗して笑われる…こんなのでいい奥さんになれるのかなあ?」
その時、隣から腕が伸び、琴子の肩を引き寄せた。
「え!?」
琴子が振り返ると、直樹がいたずらっぽく笑っていた。
「…眠っていなかったの?」
「さっきはお前に驚かされたからな。お返ししてやろうと思って。」
そう言って、琴子を抱きしめる。

「やっと二人きりになれたな…。」
「直樹さん…。」
二人は見つめ合った。
「やっぱり…お前は何もしない、そのままの顔が一番綺麗だよ。」
そう言って、直樹は琴子の顔に、自分の顔を近づけた。
そして、
「期待してねえから、そのままでいいよ。居眠りしようが、迷子になろうが、おてもやんになろうが、お前はお前なんだから。」
と優しく微笑んだ。
「聞いてたの?それにおてもやんって…。」
琴子は少し頬を膨らませた。直樹はその膨らんだ頬をつつきながら、
「だから思っていることを口に出す癖、何とかしろって言っただろう?」
そう言って、直樹はそのまま、琴子の顔に自分の顔を重ねた。琴子はそっと目を閉じた…。

--------------------------------------
♪あとがき
「この人もう書いたよ」って呆れた声が聞こえてくるのが分かります…。
ミス・ジュエリー、すっかり私の心はあなたにお見通し♪(笑)
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コメント

笑いました!

水玉様
「おてもやん」最高!!大笑いでした。
また次回、楽しみにしています。

恥ずかしいんですけど!

うんうん、あと一押しでコロリだと思ってたわ、うふv-238

布団離したりくっつけたりのやり取りが何気に好きだわ♪ 居眠りしちゃった琴子を見つめる直樹さんの優しいまなざしがはっきりと目に浮かんでくる・・・。
この二人の末長い幸せを祈っているわv-398

わーい(^o^)

続編、書いてくれたんですね!楽しみに待ってました! 原作のハワイ編やじいちゃん家のアケビ取り編の『迷子になった琴子を探す入江君』、大好きなんです(*^_^*) 水玉さん、今回琴子を迷子にしてくれてありがとう!このお話の遊郭に連れ込まれそうになる琴子を危機一髪で救うところ…たまりませんっっ!! 万華鏡シリーズ…続き、楽しみにしてちゃダメですか?

おてもやん最高!

はぁ~面白かった!大笑いしたわ
おてもやん琴子
このまま新婚生活編も!!!期待してま~す

イタキスは

やっぱり現在進行形じゃなくっちゃね。
ハッピーエンドのing
お布団の攻防がなんともツボでした。

おてもや~~~ん

更新ありがとうございます。
転寝してしまった琴子。直樹の姿が見当たりません。
宿の方に主人といえない琴子。その前に宿の方が、ご主人様ならお出かけにと。画材道具を持ってと。
琴子必死に直樹を捜しますが見つけられません。
迷子になり遊郭の方に来て間違えられてしまって、連れ込まれそうに。
そこで大きな声で直樹さ~~~~んです。
直ぐに直樹が助けに来てくれましたね。
スーパーマンですね。
泣きじゃくる琴子に背中を撫でながら大丈夫だと、抱きしめていました。
部屋にはお布団が二組用意。琴子寝化粧を。
普段お化粧をしない琴子。
見事におてもやん状態(^^)もう一度お風呂です。
部屋の明かりは落とされ、直樹の横に。
抱きしめられやっと二人きりに。
直樹がお前は何もしていないほうがいいと。
期待してないからと。
喜んでいいのか悲しいんでいいのか。
後は二人の時間ですね。

直樹のおてもやんには参りました。
想像するだけで笑いが出てきます。
楽しい新婚旅行1日が過ぎましたが。
何となく続編期待してしまいますね。



気の利かない女中って言った直樹さん。←私の中ではかなりツボでした。
いったいどんな格好で布団を元に戻したのか・・・
想像するとおかしくて・・・・
そして、思ったことを口にして、直樹さんにいつも聞かれている琴子ちゃん、そんな二人のやり取りが好きです♪
お幸せに~!!

嬉しいです。

わ~い♪大好きな万華鏡シリーズですぅ。
琴子の危機一髪を救う直樹さん素敵です♪
初々しい二人のやり取りがなんともほほえましくて
読みながら顔がニヤついてしまいます。

またふっとお話が浮かんだら万華鏡シリーズ
書いていただけたら嬉しいです。

こんばんは。
万華鏡の続編、うれしいなー。
二人のハネムーンですね。遊郭に連れ込まれそうになったところを助けられたり、寝化粧がおてもやんになったり、ドジばかりでも琴子は琴子、どんな琴子でも入江君は大好きなんですもんね。

私も続編、書いていただけるなら、うれしいです。

ドキドキ♪

番外編が新婚旅行編なんて!うれしいです♪
布団をくっつけ直す直樹さんの思惑と行動が妄想に拍車をかけてくれました(^。^)
そういえば昔は寝化粧というのがあったのですね…
私は最近顔も洗わず寝ちゃってます(洗わなくても取れてますが(~o~)

ありがとうございます

foxさん
おてもやん最高でしたか?よかった!
実はおてもやんという言葉は聞いたことがあっても実物をよく確認したことがなかったので、話を書く前に念の為、ネットで調べました(笑)

ミスジュエリーさん
本当にコロリといっちゃったよ(笑)
お布団攻防戦、お気に召していただけてよかった♪
また「直樹さん」が癖になりそうだわ…(>_<)

けろのんさん
私も一緒です!ハワイであの警官の肩をつかんで英語で話すシーン、大好きなんです!
あと、アケビ取りで迷子の琴子を汗かきながら迎えに来る所とか…!あのクールな入江くんが汗かくほど心配したんだなあと思うと胸キュンです!
だから迷子シーンは外せなかったです!

ミルクさん
新婚生活編…いつか書けたらいいですが(^^ゞ
大笑いして下さってありがとうございます!

さくやさん
お布団攻防戦、こちらにもツボな方が…。
ありがとうございます!お布団だけにちょっと雰囲気を出してみました^^

tiemさん
おてもやん…どうやったらそんな化粧に仕上がるのかって感じですよね?(笑)
続編…いつか書きたいなあとは思っていますが^^

ゆみのすけさん
足です!足!きっと足で布団を押したんです←何を突然(笑)まあ手で押してもそれはそれでOKですが←何様?
私も書きながらそこを想像して一人笑ってました^^

ゆんさん
いつからシリーズに(笑)
でもありがとうございます^^ちょっとコメディー風味も入れてみました^^

るんるんさん
ドジな琴子が可愛いんでしょう、きっと!そういう人に男の人は弱そうだし…(笑)
続編、あまり期待せずに待って頂けると嬉しいです^^

ラテさん
そうですね。昔は寝る時すらお化粧…
肌荒れちゃうだろうなあ(笑)
私も落としていないのに、「もうすっかり落としたと思ってた」といわれることが(涙)

皆さま、たくさんのコメントありがとうございました!!!





出遅れコメに上がりました(^^ゞ
私もゆみのすけ殿と同じ、気の利かない女中にはプププとツボでした♪

んもう、水ちゃんよく書いて下さいました~番外編ハネムーン万歳\(^O^)/

しかも舞台は熱海♪
若い頃は湘南に入り浸っていたので西湘に乗って熱海に行くこともよくありました。
なのでアソコかな?あの辺かな?とお話を読みながら情景が浮かび宿まで決め付けてしまった自分(^^ゞ

可愛い琴子にセクシーさ漂う直樹さん。このシリーズが大好きなのであと一回なんて(><)
続きまってます♪

さあやさん
いえいえ、とんでもない!
忙しい中来てくれてありがとうね^^
直樹大好きなさあやにそう言ってもらえてうれしい♪
そっか…さあやの行動範囲なのね、熱海は。
私は熱海に旅行した時、なぜか貫一お宮の置物が欲しくて、熱海中の土産物屋を回った覚えが…笑
作っていなかったらしくなかったけどね。
今にして思うと、本当に作っていなかったことに感謝です(笑)もし買ってたらと思うと…置き場所に困っていること、間違いない!
あと一回?それは↑の話では?
続編…呆れるくらい長くなると思うよ(笑)
さあやが「待ってますとか言って後悔した」と溜息をついてしまうくらいね(笑)

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