日々草子 万華鏡 29
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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万華鏡 29



「婚約を解消…。」
大泉家を訪問した直樹の突然の申し出に、沙穂子は驚いた顔を見せたが、すぐに穏やかな表情を見せ、言った。
「直樹さん、他に好きな方がいらしたのでしょう?」
沙穂子の言葉に今度は直樹が驚く番だった。
「私と一緒にいらっしゃる時、直樹さんはいつも私の後ろに違う方を見ていた感じでしたもの。」
沙穂子の言葉に、直樹は何も返せない。
「私…夜会で直樹さんのお姿を初めて拝見した時、こんなに素敵な殿方がこの世においでなのかと驚いたの。だからおじい様にお願いして、入江家に縁談を…。直樹さんのお父様が何度お断りされても、あきらめることができなくて。ですから、今回ご承知頂いた時はとても嬉しかった。たとえお父様の会社のためでも。」
直樹は沙穂子の話を黙って聞いていた。

「直樹さんの選んだ方って、どんな方なのかしら?」
「…沙穂子さんとの話を断る俺はおかしいって皆が笑うでしょうね。」
直樹は自嘲気味に笑った。
「でも、その方でないと、直樹さんはだめなんでしょう?」
「ええ。」
その答えを聞き、沙穂子は少し哀しげな表情を浮かべる。そして言った。
「私たちのいる世界って…結婚は家同士で決められることが多いでしょう?」
「ええ。」
「だから…夫婦仲がいいお家って少ないでしょう。愛情のない御夫婦もたくさんおいでだってことは直樹さんもご存じですわよね?」

沙穂子の言うとおり、華族の家は夫婦仲が良い家は多くはない。当人の感情など、無きに等しいから妻妾同居の家も珍しくはない。そういう世界の中で直樹の両親のような夫婦はかなり稀である。
「だから…直樹さんと一緒に暮らせるのなら、直樹さんが他の方にお心を残しておいででも構わないって最初は思っていたのだけれど。」
沙穂子は話を続ける。
「でも、ご一緒にいる機会が増えるにつれ、やはり直樹さんには私だけを見ていてほしいと欲が出てきて。だけど、直樹さんがご自分の気持ちに正直になられた今、それは永遠に不可能ですわよね?」
沙穂子の言葉に、
「…そうですね。」
としか、直樹は答えることができなかった。

その言葉を聞いて、沙穂子は立ち上がった。
「これ以上、お話することはないですわね。…お幸せに、直樹さん。」
そして直樹を置いて、部屋を出て行った。

直樹は大泉邸を出たその足で、今度は金之助の俥屋へ向かう。今頃、琴子が金之助と話をしている頃だろう。

「ごめんなさい、金ちゃん。」
直樹の予想通り、琴子は店先で金之助に頭を下げていた。
「俥屋。」
頭を下げる琴子の後ろから直樹は声をかけた。琴子は直樹の声に驚いて振り返った。
「…俺の名前は、俥屋ではない。」
直樹の言葉に金之助は腹を立てた。
「琴子、もらうぞ。」
直樹は一言、そう言った。そして続ける。
「俥屋、お前は一人で、短い期間でこの店を立ち上げて、一国一城の主になったよな。」
「それが何なんだ?」
「それに比べて、俺は学生で何もできやしない。男としてはお前の方が上だ。」
「何が言いたいんだ?」
金之助は直樹が何を言いたいのかがよく分からない。
「俺が男になるには、琴子が必要なんだ。」

少し沈黙の時間が流れた後、金之助は言った。
「…後悔したって知りませんよ、お嬢さん。こんな世間知らずの華族のボンボン、興味本位でお嬢さんと一緒になって、飽きて捨てられたって。」
「飽きないし、捨てるかよ。」
直樹が答えて。

「…後悔しない。ごめんね、金ちゃん。」
琴子もキッパリと言った。
「…勝手にどこでも行ってくれ、2人とも。」
金之助はそれだけ言うと、店の奥へと入っていった…。

「落ち込んだってしょうがないだろう。」
歩きながら直樹は後ろを付いてくる琴子へ話しかける。先程から琴子は俯いたままだ。
「…沙穂子さんは?」
「俺の気持ちに気づいていたって。納得してくれた。」
「そう…。」
直樹は立ち止まって、琴子を見た。
「そんなに2人が気になるなら、やめるか?結婚。」
それを聞き、琴子はかぶりを振る。
「ううん。ただ、自分だけが幸せになるのが申し訳なくて。」
そんな琴子の頭を、直樹は小突いた。
「もう心配するのはやめろ。ここまで来たからには、前だけを見て歩いていくしかないんだから。」
琴子はその言葉に、漸く笑顔を見せ、頷いた。それを見て直樹も笑顔を見せる。

「結婚だけど…何年先になるか分からない。」
再び歩き出して、直樹が言った。
「会社をきちんと立て直してから、学校に戻るつもりだし。学校を卒業して、絵を描いて稼げるようになるまで待っててもらうことになるけど、それでいいか?」
「大丈夫!何年でも待ってる!」
琴子は、笑った。それを聞き、直樹も安堵する。
「ん。」
直樹は手を出した。琴子はその手を握る。そして、二人は家路に着いた。
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