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2009.03.30 (Mon)

万華鏡 28


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目を覚ました琴子はベッドの中にいた。
「…夢だったのね。」
何度か瞬きをして、呟く。そして起き上がる。
「いい夢だったな。直樹さんが私が縫った着物を着てくれて、抱きしめてくれて…。結婚するって言ってくれて。みんな笑顔で見守ってくれて…。」
そこまで一気に言った後、
「続き見よう。」
と、琴子は布団の中へ潜った。

「…お前、思ったことを口にする癖、やめろ。気味が悪い。」
その声を聞き、琴子は起き上がった。
「な、直樹さん!?」
ベッドの傍には、直樹が座って絵を描いていた。
「夢じゃないから。悪いけど。」
手を動かしながら、直樹が言った。
「え!?夢じゃないの?」
「そう。お前は俺との結婚を承知してくれて、その後熱を出してぶっ倒れた。そして一晩中眠り続けていたってわけ。」
「夢じゃない…。」
琴子は呟くと、自分の着ているものを見た。いつも着ている寝巻きだ。
「安心しろ。着替えさせたのは俺じゃない。女たちだから。」
琴子の心を読んだかのように、直樹は答える。
「お前に付き添ってろとみんなに言われて、俺は一晩中ここにいた。もう分かったな?」
「…はい。」
いつもの冷たく、素っ気ない直樹の様子に、琴子はやはり昨日のことは夢だったような気がしてならない。

「…何を描いてるの?」
「暇だからお前の間抜けな寝顔をね。」
「間抜けって…。」
琴子は直樹が描いている絵を覗こうとして、ベッドから身を乗り出した。が、眩暈を起こしバランスを崩してしまう。ベッドから落ちそうになる琴子を直樹が受け止める。
「あ、ごめんなさい…。」
直樹の顔を見上げようとした琴子を、直樹が抱きしめた。

「婚約…解消しちゃったら、おじ様の会社とか大変じゃないの?」
琴子にはそれが一番心配だった。
「ま、楽ではないことは確かだな。」
「それじゃ…。」
「でも俺の力で何とかするさ。俺は高校を一等で卒業して、帝大でも主席だった男だしな。その頭脳を全て回転させれば何とかなるだろう。」
「…すごい自信。」
直樹の話を聞いて、琴子は笑った。
直樹は琴子の体を離し、そして琴子の目を見つめた。
「苦労させるかもしれない。画家なんて成功するのが難しいし、食っていくのがやっとかもしれない。もしかしたら俺が住んでいたような狭い部屋で暮らすはめになるかも…。」
直樹の言葉を聞き、琴子は笑顔を見せて言った。
「直樹さん。私言ったでしょう?私は直樹さんのパトロンになるって。だから全然平気。直樹さんが好きな絵をおもいきり描けることが、私の幸せだもの。」
「…俺には世界一のパトロンがついているんだな。」
直樹も笑顔を琴子に見せ、そしてもう一度琴子を抱き寄せた。


「直樹さん。」
琴子がそっと言った。
「私、直樹さんにずっと言いたかったことがあるの。」
「何?」
琴子も直樹をそっと抱きしめて言った。

「私、直樹さんが大好き。」

それを聞き、直樹は琴子を抱きしめる力を更に強くして、言った。

「俺も大好きだよ。琴子。」

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*Comment

★うわっ

おはようございます♪
琴子の
「続き見よう」がとても良かったです。
私のツボに入りました。
そして今日も職場のPCの前でにやけている私。
ゆみのすけ |  2009.03.30(Mon) 10:10 |  URL |  【コメント編集】

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 |  2015.09.03(Thu) 22:24 |   |  【コメント編集】

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