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2009年03月17日(火)

戻ってきた宝物

枕元の目覚まし時計を見ると、時計の針は午前6時をさしていた。

【More・・・】

本当なら起きる時間なのだが、今日はその必要はない。
腕が久々に重みを感じている。
その重みの原因に目をやり、俺はちょっと笑う。

ここ暫くの間、俺と琴子の仲はそれはもう、最悪の一言だった。
俺たちのあまりの気まずさに家族までが気を遣うくらいだ。あの裕樹ですら俺たちに腫れ物に触れるような接し方をしたくらいだから。

しかも原因が…俺のヤキモチ。しかも金之助に指摘されるまで気づかなかった俺も、馬鹿すぎるな。
金之助…今回は世話になったな。食堂であいつと琴子がすごいことになっているとわざわざ、昼の忙しい時に駆けつけて教えてくれたんだから。何か礼をしとかないとな。ま、学食で一番高いS定食を頼めばいいだろう。
でも俺もあんなに焦ったのは、新婚旅行で琴子が迷子になった時以来だ。

ヤキモチ…嫉妬というのはこういう感情を言うのか。
考えてみると、結婚する前、琴子と須藤さんが親しく話している姿を見て、何だか無性に腹が立ち、松本と行きたくもない映画に行ったこと…あれも嫉妬の一つか。
そして、琴子と船津が知り合ったばかりの頃、せっかく船津が琴子の良さを認めてくれたのに、船津の野郎が琴子の手を握った瞬間、俺の口から出たのは…船津に対する嫌味だった。これも今思うと、嫉妬だったのだろうか?
…金之助に対しては全然そんな感情なかったけれど。

でも今回の鴨狩の件は、この二人とは全然違っていた。
鴨狩が琴子に恋愛感情を持っていることに薄々気づいていたからだろうか。
鴨狩のような、真っ直ぐな男が本気を出せば、もしかしたら琴子は俺から離れていくかもしれない…そんなことをここしばらく、いつも考えていた。

他人が気になって眠れなかったことも初めてだったし(琴子は他人じゃないのでこの際除外する)、勉強に影響が出たことも初めてだった。
鴨狩って男は俺に初めて尽くしのことをたくさん運んできたんだな…。

あいつへの怒りを、鴨狩本人へぶつければいいものを、俺も琴子についぶつけてしまい、本当に悪いことをした。
琴子の口から、鴨狩は自分を好きだと言ってくれた、俺は好きじゃない、何で自分と結婚したんだと言われた時、何が目の前で起きているのか分からなくなった。そのとき、本当に琴子は俺に愛想を尽かしたかと思った…。
琴子はいつも俺の傍にいて、俺を好き好きとうるさいくらいに言っているのが当たり前の生活、それが全て崩れ去る…そんな時が来るのかと本気で不安になったな。

でも、俺が自分の気持ちを全て琴子へ話して、そして琴子は俺の腕の中へと戻ってきてくれた。

昨日の夜は待ちきれなくて、気持ちが離れていた時間を早く取り戻したくて、すぐに琴子を抱きしめた。
長いこと忘れていたようで、忘れていなかった琴子の温もり…俺は昨夜の時ほど感じたことはない。

漸く俺の元へ戻ってきてくれた、俺の宝物。誰にも渡せない、世界にたった一つの宝物。俺は宝物を傷つけないよう、そっとそっと触れていった…。

俺が幸福感に浸っていた時、琴子も同じ気持ちを味わってくれているだろうかと、そっと琴子の表情を窺った。…琴子は今までの夜の中では見たことがないくらい、優しい表情を浮かべていた。もしかして別の世界へと行っているのではないかと思い、琴子の耳元へ囁いた。「何考えている?」と…。
「…あたしってコーヒー淹れる以外にも必要とされていたんだなって考えてた。」

              picture


返ってきた琴子の言葉に、俺は琴子への愛おしさが更に溢れた。その溢れた愛情を琴子へ口づけする。

「今頃気づいたのかよ?…今までも、これからもずっとお前が必要だよ。」
今夜くらいは俺も素直になろう。そうしないとまたこの宝物は俺の手から飛んでいってしまいそうだから…。

俺の口から学校を休む提案が出たことにも、自分で驚いている。
別に学校であれだけの騒ぎを起こしたことが恥ずかしいわけではない。だって自分の気持ちを自分の妻へ話すこと、それが恥だなんて俺は思わない。
ただ…二人の時間を取り戻すことに一晩では足りないと思ったんだ。
…今日一日くらい、琴子を独り占めしたって、文句はないだろう?

「うん…。」
琴子の声で俺は現実に引き戻された。起きたのか?
琴子は笑顔を浮かべて、心から安心しきった表情で俺の方へと体を近づけてくる。
…どんな夢を見ているんだか。
その夢の中に、俺はいるのだろうか?
現実でも、夢の中でもお前には俺の傍にいてほしいと思うのは、俺の我儘なのかな?

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♪あとがき
『必要とされる幸せ』の直樹バージョンです。
A様から挿絵を描いていただいたのですが、『必要と…』に掲載するより、せっかく描いていただいたのだから、直樹バージョンを書いて、そちらに掲載させていただこうと…。A様、この話がいまいちでしたら、ご遠慮なく仰ってね。「私の絵にふさわしくない!」とか(笑)
そしてこちらもA様へ献上いたしますので、よろしければお持ち下さい。
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22:44  |  直樹&琴子  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●ひゃっほう!

早々にいただいて行きますとも!

ていうか、アタシ何様だよ?(笑)こんな素敵なテキストを改めて書いていただいちゃってそんな暴言吐くわけないでしょうーーーーがぁーーーーー!むしろ忙しい中余計な気を使わせちゃったかと本当に恐縮しちゃってますよ・・・ごめんね。
本当に素敵に展示いていただいちゃってありがとうございます!!
アリエル | 2009.03.17(火) 23:16 | URL | 

またまた素敵なコラボがここに誕生してくれたなんてもう嬉しくて仕方がありませんわ♪♪♪
素敵な直樹ver.にうっとり^^
そしてアリエルの挿絵にもうっとり^^
アリエルの直樹っていつも琴子の手を握ってるのよね^^
凄く好きぃぃぃぃぃぃーーー♪
また、お二人の素敵コラボ楽しみにしてまぁす♪
さあや | 2009.03.18(水) 22:45 | URL | 

琴子バージョンも甘~いお話でしたが、直樹バージョンはさらにスイート♪
そしてアリエルさんの挿絵っ!!
琴子の幸せな表情と入江君の手とおしりが~♪
御馳走でした(*^^)v
また是非是非コラボして下さいませ。
ラテ | 2009.03.19(木) 00:21 | URL | 

●コメントありがとうございます

コメントありがとうございます!

アリエルさん
よかった!お気に召して!
こちらこそ、素敵な挿絵、どうもありがとう。
もうアリエルの挿絵をめちゃめちゃにしていないか、それだけが心配…。

さあやさん
アリエルの絵の雰囲気に合った話が書けているか、もうそれだけが心配!
素敵コラボと言っていただけて、私はそれだけで大満足でございます!

ラテさん
この話も甘いと感じていただけましたか?
よかったです!
なかなか甘さが出せないのが、私の欠点でもありますので…。
本当にありがとうございますね!
水玉 | 2009.03.20(金) 14:55 | URL | 

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