日々草子 恩師 3
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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恩師 3

「おはよう!入江先生!今日もスマイルね!」
前田教授と顔を合わせて、直樹は疲れが倍増した気がした。
「じゃ、今日もはりきって、回診に行こう!」
直樹と対照的に教授は元気いっぱいだ。
「おはよう!ヒロシくん!朝ごはんはちゃんと食べたかな?」
いつもの調子で子供に声をかけていく。
「昨日、○○レッドがピンチだったんだよ!先生!」
相変わらず○○レンジャーか。子供には大人気なんだなと直樹は思いながら、教授の診察の介助をする。今日は看護師はいらない、直樹と2人で行くと言ったのは教授だった。
「そうだったよな。あそこで○○レッドの技、ほら、あの…」
教授が言葉につまった。ヒロシも「スペシャルシャーク?」「ツイスター?」といろいろ言っているが、違うらしい。
「…トライアングルコースター。」
直樹がポツリとつぶやいた。
「そう!それ!トライアングルコースターが出てくるかと思ったんだけどねえ。」
その後、教授は無事に話を続け、ヒロシと盛り上がっていた。

「入江先生、ちゃんと見てくれたんだ、DVD。」
回診を終えた後、教授が嬉しそうに言った。教授の命令は研修医にとって絶対だ。見ろと言われれば、見るしかない。
「やっぱ、噂どおりの天才だね。1度見ただけで覚えちゃうんだもん。」
教授が笑いながら、直樹に言った。
「あ、後でまた僕の部屋に来てくれる?」
まさか、またDVDを押しつける気じゃないだろうなと直樹は思った。そんな直樹の心など知らない教授は、
「入江先生、スマイルね!スマイル!」
とお決まりのセリフを残して、部屋へ戻って行った。

「DVDありがとうございました。」
前田教授の部屋で直樹はまずDVDを返し、お礼を言った。今日も教授自らいれたコーヒーが2人の目の前に置かれている。
「入江先生。」
教授がコーヒーを飲みながら言った。
「はい。」
「君、子供苦手でしょ?」
ずばり核心をついてきた教授の言葉に、直樹は少し動揺した。しかし、その同様を悟られないように表情を変えないようにする。
「別にいいんだよ。隠さなくても。」
また、茶目っ気たっぷりに教授が話す。
「苦手といえば、苦手かもしれません。子供と接した経験がないものですから。」
直樹も正直に話す。別に隠す理由もない気がするからだ。
「いや、子供が苦手なのに、何で小児科なのとか野暮なこと聞くつもりはないけどね。ま、面接でもないし。」
教授も大して驚かない。
「君、外来で診察して困ること多いでしょ?泣き叫ぶ子供やパニック状態の親を目の前にして。」
「確かにそうですね。」
外来で言葉がまともに通じない小児科より、まともな話ができる一般の外科へ移ろうかと何度考えたことかわからない。

「ところで、君は結婚してるんだよね?」
なぜ、今、結婚について聞かれるのか分からないが、相手は教授だ。
「はい。」
神妙に答える。
「お子さんは?」
「まだです。」
「じゃあ、まだ分からないねえ。」
「何がですか?」
内心ムッとしながら、直樹は教授に尋ねた。
「親の気持ち。」
教授がにっこり笑って答えた。

「自分の子供がさ、突然高熱を出したり、ケガをして大量の血を出したりすれば、親は誰だって混乱してまともに話ができなくなるよ。冷静な親の方が怖いくらいだ。」
「…。」
「それに、子供はどこが痛いのか、どんなふうに痛いのか、どう苦しいのか、自分の口で説明なんてできないからね。それで泣くことで知ってもらおうとする。暴れる。それを冷静に見極めるのが小児科医としての一番の仕事だよ。」
そう言って教授はコーヒーを飲んだ。

「君だって、将来子供を持つだろう?もし、子供が突然の病気や怪我で倒れた場合、まあ、君は医者だから冷静に状況を判断できて落ち着いていられるだろうけど、君の奥さんがその時子供と2人きりだったら、やっぱりパニック状態に陥るんじゃないのかな?」
自分たちが親になった時…。さすがに、琴子もその頃には多分看護師になっているだろうが、琴子のことだから、泣き叫んで大変なことになるだろう。直樹には容易に想像できた。

「入院している子供たちだって、大変なんだよ。友達が遊んでいるときに、自分は病院のベッドの上にいなければいけない、食事だって親が作ってくれる自分の好物とは程遠い、病院食で我慢しなければいけない、それだけじゃない。」
いつしか、教授の表情から笑顔が消えて、真剣な表情になっている。
「大人の患者だって自分の病気は今後どうなるのだろう?治るのだろうか?と毎日毎日不安な気持ちで過ごしているんだ。それを10歳にもならない子供たちが同じ経験をしているんだ。時には治療が嫌でたまらないとヒステリーも起こすさ。」
直樹も黙って、教授の話に耳を傾けている。

「入江先生。もし、子供や親への接し方がよくわからないのだったら、目の前の子どもが自分の子供だったらって考えてごらん。目の前の親が自分の奥さんだったらと考えてごらん。そうすれば、接し方もおのずと見えてくると思うよ。」
そう言った前田教授の顔は、いつもの茶目っ気たっぷりの笑顔に戻っていた。
そして、部屋を出ていく直樹に、
「入江先生、スマイル!!」
といつものセリフを忘れなかった。

その日から、直樹に少しずつだが変化が見られるようになった。笑顔も少しだが浮かべるようにした(これは母親たちに効果絶大だった)。パニックに陥っている親を見て「これが琴子だったら」と思うと、自然と優しい態度が取れるようになった。子供への接し方も変わった。教授から借りたDVDの知識が非常に役に立ち、男の子とは戦隊物の話で盛り上がるようになった。女の子の魔法物には、正直、少し抵抗があったが、「その髪型△△リンと同じだね。かわいいね。」と笑顔で話しかけると、そこは幼くても女の子、直樹の笑顔にみんな夢中になってしまい、病棟の女の子の入院患者全員が直樹のファンになり、非常に診察がやり易くなった。

そうして、直樹の神戸での生活が過ぎて行った。
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