日々草子 人生最良の日(直樹ver.)

人生最良の日(直樹ver.)

「それでは、新郎新婦のご入場です!」
パチパチパチ…!
大きな拍手に包まれ、歩く。
…恥ずかしい。
「おめでとう!」
…そう言われて、返事が出来る気分ではない。
別に何も恥ずべきことはしていないんだけど、この恥ずかしさは何だろう。
それに比べて、隣の奴は…愛想ふりまきすぎ。
「琴子、おめでとう!」
「ありがとう!」
…女はいいよ。
あ、渡辺だ。…ますます恥ずかしい。

さっきまで、
「あたし、ドレスで上手く歩けるかなあ」
とか、
「途中で転んだらどうしよう」
とか、
「転んだら、お姫様抱っこしてね」
とか言ってたくせに。

何とか、着席し、披露宴が始まる。…あとどれくらいかかるんだろう。
もう早く終わってほしい。

大体、結婚式や披露宴って女のためにやるもんだよな。
女はいい。普段着られないドレスや着物を身にまとい、綺麗にしてもらって、最高の気分を味わえるんだから。
男にいたっては…別になんてことはない。

何か誰かが祝いの言葉を述べているが、俺は自分の世界に夢中になっていて耳に入らない。
隣は…。
こいつにしちゃ、よく居眠りせずに話を聞いているもんだ。といっても、後で訊ねたら、
「え?難しくてよくわからなかった。」
と答えが返ってくるんだろうな。絶対。そういう奴だ。

そんなことを考えていたら、いつの間にかウェディングケーキの入刀の時間らしい。
会場係に促され、二人で席を立つ。
やれやれ。忙しいもんだな。

「何だ、この高さは!」
思わずケーキを前にして、声に出してしまった。
「一番高いものをと…。」
…お袋、何を考えやがった!
一体、いつの時代の芸能人の結婚式だ!?

…『初めての共同作業』とやらも終え、再び着席する。
この後、お色直しまでしばし『御歓談の時間』とやらだ。
目の前に食事が運ばれてくるが、勿論、俺達がここでバクバク食べるわけには…っておい!
「おい…。」
周りに聞こえないよう、俺は隣の女に囁く。
「そんなにバクバク食うな。」
「何で?勿体無いじゃない。」
そう言いながら、肉にナイフを入れていやがる。
「あたし、朝早かったし。ほら、準備が色々あって。入江くんはいいよね。後からのんびり来れたんだもん。緊張していて何も食べられなかったの。でも式も終わったら、何かホッとしちゃって…。そしたらお腹空いちゃって…。」
そして、また肉を一切れ、口に放り込む。
「さすが、おば…じゃない。お義母さんが選んだホテルだけあるわよね。お料理も最高。入江くん、まだ時間がかかるのよ?さ、食べて、食べて。」
…教会でガチガチになっていたと、裕樹が言っていたが、それは本当だったのかと疑いたくなる食べっぷりだ。
「…酒だけは口にするなよ。」
「はーい。」
ま、こいつらしくていいか。俺はこいつとは逆に、酒だけに口をつける。飲まなきゃやってられねえよ。

「それでは、お色直しの時間でございます…。」
また歩かせられるのか。
何か操り人形になったみたいだ。

「では、お色直し後のご入場はこちらから…。」

…本当に、いつの時代の結婚式だ?
なぜゴンドラ!?今時まだあったのか、これ!
俺に、これに乗れと!?

「わーい。一度乗ってみたかったのよね!」
率先して乗りやがる。
「早く、早く。」
「嫌だ。」
俺は思わず、気持ちを口にしてしまった。
「絶対、誰が乗るか!」
こんなのに乗るなんて、何が何でも嫌だ!
「嫌って言われても…」
何が嫌なのよという顔をする。
「まあまあ。」
「いい記念になりますよ。」
拒否する俺に、係の人間が色々話しかける。
「子供じゃないんだから…時間もあることだし。ね?」
お前に子供扱いされる日が来るとは夢にも思わなかったよ。

「あ、もしかして高所恐怖症?」
「違う!」
「じゃ、早く早く。」
笑顔で手招きする。
「恐れ入ります…お時間がそろそろ…。」

「見て!みんながお祝いしてくれてるよ!アイドルになった気分じゃない?」
…何がアイドルだ。
それに俺の目には、失笑しているようにしか見えない。
「気持ちいいね!」
「全然。」
もう、この日を一生忘れないどころか…誰か俺の頭を殴って、今日の記憶を消してほしいくらいだ。

色々あって、ようやく披露宴も終盤になってきた。
耐えろ、俺。あと少しの辛抱だ。

「さて…この日までもメモリアルを…。」
ん?
司会者の言葉に俺は耳を疑った。
…今、何て言った?

その瞬間、俺の目には信じられないものが飛び込んできた…!

「…入江くん、大丈夫?」
あの写真が出てから、俺は記憶がはっきりしない。
いや、思い出したくないだけだ。それは分かっている。
「…あの、あたしも何も知らされてなかったのよ?」
「当たり前だ。知っててやりやがったら、承知しない。」
何て日だ。最悪の日だ。
いつの間にか、披露宴も終わり、ゲストも帰っていた。
後は二人の写真をあちこちで撮るのみ。
これもパスして、さっさとこの服脱いで、この場を後にしたい。

「では、ここで一枚…。」
カメラマンの言葉に、
「はーい。」
と機嫌よくこいつは答える。よく元気が残っているよな。

…でも綺麗だ。
プロにメイクしてもらったからとか、普段見慣れないドレスだからとか、そういう理由ではない。
…輝いている。そうだな、この言葉が一番合っている。
長年、身近でこいつの顔を見てきて、もう見飽きているくらいなんだけど、今日はずっと見ていたい。
…こいつを輝かせているのは、俺なんだと思うと、ちょっと誇らしい。

「ご新郎様、もうちょっとご新婦様のお傍に…。」
カメラマンの言葉に、俺は現実に引き戻される。
そして言われるがまま、こいつに寄り添う。
「はい、いきますよ!」

wedding

「また、見てるのかよ。」
写真立てを手に笑っている琴子に俺は声をかけた。
「だって…。この写真、結婚式の写真で唯一、入江くんが笑っている写真なんだもん。」
あれから何年経ってると思うんだ。よく見飽きないな。
「この時の入江くん、すごいステキだったよね!」
「じゃ、今はそうでもないってことか。」
「え?ううん!今も勿論ステキよ!」
慌てて弁明する琴子が面白い。

「…お前の方がずっと綺麗だったけどな。」
俺はボソッ呟いた。
「え?何か言った?」
聞こえなかったらしい。
「…お前の間抜け面は今も変わらないって言ったんだよ。」

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♪あとがき
さあやさんの社交辞令をそのまま間に受けて、素敵絵を頂戴してまいりました!
この絵、もう皆さん大好きですよね!
さあやさんの所で拝見した時、「おお!真打ち登場!」とはしゃいじゃいました(笑)
いつもいつも私の理解不能なリクエストに、快く、しかも迅速に答えてくださり、
かつ、優しいコメントを残してくれるさあやに心からの感謝の気持ちを込めて
書かせていただきました♪
ああ、さあやの素敵絵を汚してなければいいのだけれど!
もっと上手に書けたらなあとつくづく思います(^^ゞ
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早っっ!?

さあやんトコでアナタ方のコメのやりとりを見たのはついさっきよ!もうできたの?テキスト??
みなさまの制作作業の素早さにアリエルは脱帽です。どうしたらそんなに早く……シクシクシクシク アタシの作業のノロさを憎むわ!きいぃっっっ!!

いえ、そんなことはさておき、相変わらず原作テイスト満載のストーリーをありがとう♪水玉マジック!!原作のひとコマひとコマがはっきりと目に浮かんで来るもんね。はぁ~原作読みたい…そろそろ封印を解こうかなぁ……いや!学校終わるまでやっぱり我慢だ!!

No title

わぁぉ♪ねー水ちゃん??どぉーしてそんなにネ申で天才女神なのぉー><
こんなにこんなにすみやかに迅速にこたえて頂けるなんて
思ってもいなかったです…嬉^^♪
それに、水ちゃんのキリ番踏みたい人や水ちゃんにリクしたいファンは沢山いるはずなのに、さあやはクレーム者です><本当にごめんなさい。

冒頭からもしや?なんてドキドキワクワクしながら拝読させていただいて原作とアニメのコマが脳内で回想しはじめました^^巡るメグルシーンを目に浮かべながら水ちゃんの隙間埋め描写♪本当に原作にはなかったはずのシーンまで目に浮かんできました^^
バクバク食べる琴子可愛いです♪
確かさあやも完食したなぁ^^;

『今日はずっと見ていたい』直樹の甘い台詞にありがとう♪
と叫びました^^

本当にありがとうね☆
そして未熟者のさあやは上手く位置の計算ができなくてフレームの上部分(下が切れるのはまだ許される)が切れるなんてありえない誤算ミス。薔薇のお花が描けませんでした><
こちらこそ水ちゃんの素敵小説を汚してしまったようで申し訳ない想いです><

興奮と嬉しさのあまり、一人で長々と幅をとってごめん^^;

『大蛇森試練』も楽しく笑わせてもらいました^^
大蛇森も青くなることがあるとは…
もう水ちゃんのテキストはどれを読んでも最高だよぉー♪

これからも、さあやの我儘を含めよろしくお願いします♪
そして3回目をまた読ませてもらいますね^^

あ、あと一言!!「なんだ!この高さは」原作でも吹いたところ^^
多田先生って本当凄いよね^^
てか、いい加減私…長すぎごめん^^;だってだって…><

♪いつもありがとう♪






ありがとう♪

アリエルさん
いやいや、あたしは丁寧にできないのが欠点なので…。
アリエルみたいに丁寧にやれるようになりたいものです。
本当に大雑把なんだよね、周囲に呆れられるくらい(^_^;)

さあやさん
友達の披露宴を思い出しながら、書いてみました♪
でもあの高さのウェディングケーキ…ゴンドラ…本当に豪華絢爛といった言葉がふさわしい披露宴だよね(笑)
…あたし思うんだけど、さあや、この絵の全身画も、描けちゃうんじゃない?
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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