日々草子 愛情表現

愛情表現

「いらっしゃいませ、ご注文は…何だお前かよ。」
裕樹は途端にうんざりした顔になる。

「お前かって、それが客に向かって言うセリフ?」
琴子は裕樹に食ってかかった。
「客ね。招かざる客ってやつだな。」
「ちょっと…店長に言いつけるわよ。」

高校3年になった裕樹は、相変わらず成績は学年トップを維持している。
同級生が大学へ上がれるかどうか必死で勉強している中、余裕を持て余しているので、この冬にファミレスにてアルバイトを始めていた。
それも、かつて直樹がアルバイトしていた店で…。

「あ、来た来た!」
注文を裕樹に言っていた琴子が、急に手を上げて「おーい」と声を出した。
「ごめんなさい!待たせてしまって!」
「…お前もかよ。」
琴子が待ち合わせをしていたのは、好美。
「裕樹くんのバイト姿を一緒に見ようって、あたしが誘ったの。」
琴子は、好美に座るように促しながら、裕樹に言った。
「お前、こんな所で油売っている場合じゃないよな。受験勉強は?」
「あ、ここでやろうと思って…ほら、ちゃんと持ってきてるの。」
そう言いながら、好美はカバンから問題集やノートを出し始めた。
「好美ちゃん、何にする?」
「あ、じゃあオレンジジュース…。」
「オレンジジュース一つね!」
琴子は裕樹に注文した後、好美とわいわい騒ぎ始めた。

「すてき…裕樹くんの制服姿。」
裕樹が去った後、好美がうっとりしながらつぶやく。
「そう?入江くんの方が数百倍素敵だったわよ。」
負けじと琴子が張り合う。
「あたしも一緒に働きたいなあ…。」
好美がさびしそうに言った。
「大学に合格すれば、すぐに働けるって!まずは一緒の大学、大学!」
「そうですね。頑張らないと。」
好美はシャープペンを握りしめた。
もちろん、琴子が好美の勉強を見ることができるはずもなく…。

「分からない…。」
数分後、好美がうなり始めた。
「困ったわねえ。」
琴子も一緒になってうなる。
そこへ裕樹が注文の紅茶とオレンジジュースを持って現れた。
「ほら!」
とても客に対する態度とは思えない態度でテーブルに置く。
去り際、
「should…。」
と言い残して。

「あ、そっか!shouldか!」
好美が目を輝かせて、答えを記入する。
「さすが、裕樹くん!」
そして歩きまわる裕樹に、またもやうっとりとした視線を送る。
「懐かしい…。」
一方、琴子は思い出の世界へと羽ばたいていた。
「あたしもここで勉強していた時、入江くんがこっそり教えてくれて…。」
二人して勉強そっちのけで、しばし浸っていたその時…。

ガツン!
「痛い!」
琴子が頭を押さえて、現実の世界へと戻る。
「…何をやってんだ、お前は。」
「あ、入江くん…。」
いつの間にか、直樹が傍に立っていた。
「こんにちは。直樹さん。」
好美も現実の世界へ戻ってきた。
「お前は、勉強の邪魔をし、バイトの邪魔をし、すべての人間の邪魔をする気か?」
琴子のそばへ座りながら、直樹が怖い顔をして琴子へ言った。
「邪魔だなんて…」
好美が慌てて弁解する。
「琴子先生は、あたしのことを考えてくれて…。」
「いいよ、好美ちゃん。こいつがすべて悪いんだから。」
「ふんだ。」
琴子はソファの奥に体を動かしながら、拗ねた。

「で?今日は何?英語?」
「あ、そうなんです…あたしバカだから分からないことだらけで。」
好美が恥ずかしそうに言った。
「いや、どこかのバカに比べたら、バカに入らないよ。」
そう言って、直樹と好美は勉強を始めた。

琴子は最初は二人を見ていたが、そのうち退屈になったので裕樹ウォッチングを開始した。
「ふーん…なかなかいい動きしているじゃない。でも食器を運ぶのはあたしの方がうまいわよね。」
そんなことを思って見つめると、視線を感じたのか裕樹が振り向いた。
裕樹が怖い顔をしてにらんでいることに琴子は気づいた。が、どうも琴子を見ているわけではないらしい。
一体どこを見ているんだと琴子は裕樹の視線を辿ると…
「え?」
いつの間にか、直樹が好美の耳元にささやくような光景が目の前に広がっていた。
「ちょ、ちょっと…?」
直樹に顔を近づけられ、好美も顔が真っ赤になっている。

「ね、ねえ…そんなに近づく必要あるのかなあ?」
好美がお手洗いに立った隙に、琴子が直樹に囁いた。
「何だよ?勉強を教えているだけだろうが。そんなやらしい眼で見るな。」
直樹はジロリと琴子を睨む。
「だって…裕樹くんだっておかしく思うし。」
「あいつが?」
直樹は裕樹を見た。一生懸命働いている。
「どうだろうな?」
どうだろうって…と言おうとしたその時、好美が戻ってきたので、琴子は何も言えなかった。

「ありがとうございました。」
レジの裕樹に直樹が三人分の代金を支払った。
「裕樹。」
直樹が裕樹に声をかけた。
「何?」
「…。」
直樹は裕樹の耳元で、何かを囁いた。
直樹が外に出たことに続いて、好美も、
「ごちそうさまでした。裕樹くん!バイト、頑張ってね!」
と笑顔で言った。
「好美。」
裕樹が出て行こうとする好美を呼び止めた。
「何?」
「僕、もうすぐ上がるから、送っていく。そこで少し待ってろ。それから、明日は僕が勉強見てやるから!」
好美は一瞬ポカンとしたが、すぐにとびきりの笑顔になって、
「う、うん!」
と慌てて、外にいる直樹と琴子に先に帰ってもらうよう言いに行った。

「何を裕樹くんに話したの?」
二人きりになった琴子は、直樹に訊ねた。
「別に。“好美ちゃんは俺よりお前が教える方が伸びるぞ”って言っただけ。」
「それだけ?」
「そう。」
琴子は少し考えて、
「あ!」
と突然叫び、直樹を驚かせた。
「もしかして…さっき好美ちゃんに近づいたのって裕樹くんにヤキモチ妬かせるため?」
「…さあな。」
「好美ちゃん、裕樹くんに勉強教えてもらえなくて寂しそうにしてたから誘ったんだけど。」
「だろうと思った。」
「ばれてたか。」
琴子は笑った。

「いいなあ…好美ちゃんは。」
少しして、琴子が呟いた。
「裕樹くん、愛情表現がストレートで。」
「俺にもストレートな愛情表現を?」
「いい。期待してないから。」
琴子は溜息をついた。

翌日。
今頃、家で二人は勉強しているだろうなあと琴子は思いながら、患者の採血をしていた。
「琴子ちゃん。俺の腕枕どう?」
患者が面白そうに琴子をからかう。
「もう!そんなこと言って…。」
琴子も適当にその患者をあしらった。

「こいつ、俺の腕枕じゃないと眠れないから、無理です。」
「そう無理なんです、あたし…え?」
一瞬、何を言われたのかと思い、琴子は慌てて振り返った。
琴子の背後から、直樹が申し訳なさそうに、その患者に言った。
「というわけなんで、すみません。」
「あ…そうですか?」
患者が真っ赤になりながら、返事をした。
琴子もそれ以上に真っ赤になっている。

「入江くん!なんてことを患者さんの目の前で…!」
病室を出て行った直樹の後を追い、琴子は叫んだ。
「だって、ストレートな愛情表現が欲しいっていうから。」
ニヤリと笑うと、直樹は立ち去ってしまった。

その後、病院内で「琴子は直樹の腕枕でしか眠れない」という噂が急速に広まったことは言うまでもない…。

------------------------------------
☆あとがき
前回書いた反省会というのは、大蛇森の話をやり過ぎたかなあという反省です(^_^;)
その反省を込めて、ちょっとラブラブなイリコトを書いてみましたが…
キャスト出し過ぎ…?
ラブラブになっています?
まだまだ反省会延長する必要、あるかなあ…(^_^;)

※追記
今読み返したら…脚本!?(笑)
精進します(涙)
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comment

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No title

入江くん素敵!
私も入江くんに腕枕してもらいたいです~♥♥
入江くんのストレートな愛情表現に顔を真っ赤にする琴子
想像できますね。入江くんお得意のニヤリ顔も!
相変わらず仲の良い2人だわ。
それにしてもこの2人は昔から噂が絶えないですね!

すごい!!!

水玉さんの沢山の作品のなかで、一番原作から抜け出てきたような感じのある作品じゃないかな?って感じました!
沢山あるので、まだ全部は読みきれてないかもしれませんが、、
原作とは違うキャラになって話が進むのも面白いですが、原作のままっていうのもまたいいですねー!入江君の口の悪さとか、琴子の拗ねてるとこ、ため息。裕樹に好美ちゃんまで、ほんと多田先生が書かれたみたいです。
さすがですね☆水玉さん!
これからも楽しみにしています。

No title

はじめに大蛇森君、やりすぎじゃないよぉー^^
楽しませてもらってます♪

裕樹と好美ちゃんもウイウイしくていいよね♪

でも、直樹のこぉーいうとこ!
サラリと患者の前でも惚気たりちしゃうところ^^

たまらなく好き♪
萌えましたぁーー^^

くぅっ

今朝、ケータイからコメろうとがんばって入力した文章、アタシのおバカケータイがはじきやがったので、リトライ(←これはただの八つ当たり?) 
いつも同じコメで情けないんだけど、今回ももれなくやっぱり脳内原作画像付きだったわ? もうミズタママジックにアリエルは首ったけよ~ん??!!%"%Jタはジョーなんかじゃなくってよ!今のアナタは真っ白な灰の中から真っ赤に蘇った不死鳥(ひばり) ま、燃え尽きちゃいない…とも言いますが(笑) 

こんなお話も書けるなんて、水玉さんすごいです!
すぐあのファミレスが浮かんで、原作そのままって感じです!
私も入江君の腕枕で寝てみたいです・・・
裕樹君からみも大好きです!

ありがとうございます♪

コメントありがとうございます♪

chieさん
あれだけ噂になっても堂々とする二人がすごいですよね(笑)
間違いなく、大学一の有名カップルだろうなあと思います。

ぱったさん
え?そうですか?←ちょっと驚いてます
そんな意識して書いたわけではないのですが…
そう言っていただけると、とても嬉しいです!
ありがとうございます!

さあやさん
ありがとう♪
何かね、突然裕樹カップルを書きたくなったんだわ(笑)
しかも、お風呂で思いついたの…。
大蛇森君、慰めてくれてありがとうね。
よかった♪そう言ってもらえて!

アリエルさん
不死鳥…一瞬美空ひ○りの東京ドームコンサートの真っ赤な衣装を思い出したのは、私がやっぱり古いから?
ありがとう!今灰の中から腕が一本出た状態になりました(笑)

うーちゃんさん
ありがとうございます^^
いや、たまには普通の話も書かないとなあと思ったものでして。
でもこれを書いたらちょっと調子が出てきたみたいです。
コメントまたぜひどうぞお願いしますね!

拍手画面がないですぅ…

朝はあったのにナ…(~_~;)と言う事でこちらにコメントします♪
皆さんのコメントと同様、本当にこのお話は先生が生きてらしたら原作エピに入れて欲しいくらいです!
兄弟揃ってヤキモチ焼き(*^。^*)最後の入江君のおのろけっぷりもツボでした(^^♪

ありがとうございます。

ラテさん
コメントありがとうございます。
ごめんなさい。拍手コメントは現在外しております。
よろしかったらお気軽にこちらにもコメント戴けたら
嬉しいです♪
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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