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2009.01.31 (Sat)

万華鏡 3


【More】

「あら、もう学校へ行くの?」
支度を済ませて琴子が階段を下りてくると、紀子が声をかけた。
「はい。こちらから行くのは初めてなので、早めにでようかと…。」
大体の道はわかると思うが、やはり自信がない。
「うちの車使う?」
「いえいえ!滅相もない!」
琴子は首をぶんぶん振り、紀子の申し出を断った。
そこへ詰襟、制帽姿の直樹が現れた。そのあまりの美しさに琴子はちょっとどぎまぎしてしまう。
「そうだわ。直樹さん、琴子さんを途中まで連れて行っておあげなさいな。」
紀子がとんでもないことを言い出した。
「と、とんでもない!」
琴子は先程より更に大声を上げた。あれだけ嫌われていることが分かっているのだからそんなことしてくれるはずがない。
「絶対嫌だ。」
案の定、直樹は露骨に嫌そうな顔をした。
「あなたの学校と近いでしょう?女の子一人で道に迷ったらどうするの?」
「誰かに聞けば?」
「そ、そうします。」
琴子はとにかく、一刻も早くこの場を離れたかった。が、
「そういえば…。」
と思わず疑問を口にしてしまった。
「直樹さんは歩いて学校へ?」
その言葉には紀子が答えた。
「そうなの。直樹さん、車が大嫌いなのよ。」
「はあ…。」
よく分からない人だなあと思いながら琴子は直樹の方を見た。が、直樹はすでに玄関を出ている。
「ほら!琴子さん、早く後を追って!」
紀子に背中を押され、琴子も玄関から出された。

直樹の通う斗南高校と、琴子の女学校は距離はそんなに離れていない。
道も紀子が言うとおり、途中まで一緒だ。
別に案内してもらう気はなかったが、直樹の後を琴子が後を追う形になる。
後ろから歩いていると、すれ違う女性たちが皆直樹の顔を見て頬を染めていることに気がついた。
「見た目だけは素敵だものね。中身は最低だけど。」
何も知らない女性たちに呆れながら、琴子は思った。

「それにしても、何であそこまで私が嫌がられないといけないわけ?下宿代を払えばいいのかしら?もしかして、この人ものすごいお金に目がない人とか?」
直樹の後姿を見ながら、琴子は好き勝手に想像していた。
「分かった。きっと部屋の天井裏に壺を隠していて、その中に小銭を貯めこんでいるのよ!夜中にその壺を取り出して、1枚ずつ数えて笑っているんだわ。うわあ、気持ち悪い!正体ばらしてやりたい!」
琴子は妄想を続けていた。夢中になっているあまり、高校と女学校の分かれ道を通り過ぎ、直樹の後をつけたまま、男子高への道をまっすぐ歩いていることに気づいていなかった。

「…おい。」
「え?」
声をかけられて、琴子はようやく妄想の世界から現実の世界へと戻ってきた。
顔を上げると、不機嫌な直樹の顔があった。
「な、何か?お金なら後で…。」
妄想が続いてとんちんかんなことを言う琴子に直樹は続けた。
「お前の行く方向はあっちだ。」
直樹が指をさした。琴子が周りを見回すと、直樹と同じ制服を着た男子学生が不思議そうに琴子を見て行く。
「え!?あ…!」
道を間違えたことに琴子は漸く気がついた。顔が真っ赤になる。
「あ、ありがとう。」
慌てて琴子は直樹にお礼を言って、元の道を走って行った。
「…想像以上の大バカ女だな。」
その後ろ姿に、直樹は冷たい視線を送った。

走りながら琴子は、
「教えてくれたんだ…。実はいい人なのかな?守銭奴かもしれないけど。」
と直樹のことを考えていた。

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☆あとがき
この話を待って下さった(もしくは覚えていて下さった)方に出会う確率は、恐らく徳川埋蔵金が見つかる確率より低いのではないかと思いますが…。
話は考えてあるのに文章化するのが遅くなりすみません。
気づいたら月一のペースに…(^_^;)
ていうか、あちこち書いて読まれる方も困りますよね…。
何か感想等ございましたら…。

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 |  2014.10.06(Mon) 16:31 |   |  【コメント編集】

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