日々草子 ラブレター フロム…?
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ラブレター フロム…?

「新学期、どのキスマイの隣に座る?」というCMを見る度に「玉ちゃんの隣もいいし、美顔コロコロの千賀くんの隣もいいなあ」と想像をしてしまった私です。そしてニュースにうんざりするたびに、録画した七人で歌う『棚からぼたもち』をリピートしまくっているのも私です。

☆☆☆☆☆







イーリエ公爵家に、コトリーナの父親がやって来た。
「お野菜、いっぱーい。」
「じいちゃんの作った野菜だべ、たんと食べて大きくなるっぺよ、ジュゲム。」
シゲオはテーブルの上に並べた色とりどりの野菜を、可愛い孫に自慢していた。
「まあまあ、本当に新鮮でいいお野菜!腕が鳴りますわ。」
メイドのモッティがトマトを手に取った。
「ありがとう、父さん。重かったでしょう。」
コトリーナが田舎からはるばる出てきた父親を気遣う。
「たいしたことはなかっぺ。可愛い孫の顔が見られると思えば。」
カカカと朗らかにシゲオは笑い、孫のジュゲムの頭を撫でた。
「おさるたんも食べていい?じじたま。」
片時も離すことのない猿の人形をジュゲムは祖父の顔に近づけた。
「もちろんだっぺ。おさるもじいちゃんの野菜、たんと食べるっぺ。」
「よかったね、おさるたん!」

「皆様、旦那様のお帰りでございます。」
執事のシップの声に、「あら、大変」とコトリーナがそそくさとキッチンを出て行った。
「とうたまだ!」
ジュゲムもお猿の手を引いて母の後を追いかける。

「お義父さん、ようこそ。」
ほどなくして、この家の主であるナオキヴィッチが姿を見せた。
「やあ、婿殿。」
「何でも野菜をたくさんお土産にいただいたそうで。ありがとうございます。」
「先生の嫌いなキュウリはちゃんと抜いて持って来てくれたのよ。」
「それはそれは。お気遣いいただきすみません。」
「なあに、嫌いなもんを無理に食べさせてもいいことなかね。好きなもんをたんと食べた方が幸せたい。」
と、シゲオはシップが抱えている鞄に目をやった。
「重たそうな鞄たいね。やっぱり学者さんはたくさんの本を読むだんべ?」
「ええ、まあ。でも本を読むことは好きなので。」
「わしもな、ナオキヴィッチよ。」
「はい。」
「学者先生に娘さ、嫁っこにやったべ?だからわしも少し本を読んだ方がよかねと思って勉強したたい。」
「まあ、父さん!なんて素晴らしいの!」
ナオキヴィッチの上着を抱えたコトリーナが感嘆の声を上げた。
「私も少しずつ、本を読んでいるのよ。」
「そうね、そうね。やっぱり学者先生の恥になりたかないとね。」
「分かるわ。」
頷く親子にナオキヴィッチが言う。
「いやいや、そんなこと気にしなくても。でも読書の楽しみを知ってくれるのは学者の端くれとして嬉しいです。」
「ジュゲムもねえ、ご本読んでいるのよ、ね、とうたま!」
「そうだな、ジュゲムはいっぱい読んでいるなあ。」
「ジュゲムは先生が読み聞かせてくれるお話が大好きなのよね。」
「うん!」
ナオキヴィッチはジュゲムを膝に座らせた。

「読書はごっつ良かねえ。知らんかったことがたくさんあることが分かるたい。知らんかったことといえば、モッティさんよ。」
「はい?」
突然自分に話を振られたモッティが驚いた。
「わしゃ、あんたに謝らなければあかんね。」
「まあ、何のことでしょうか。」
「昔、あんたのこた、ひどい呼び方をしたばってんね。」
「呼び方とおっしゃいますと?」
「ほら、オ○マとか、オネ○とか。今はそういうのあかんたいね。わしゃ、あんたば傷つけてしまったと。」
「まあ、そんなこと。」
「今はいろいろな生き方を認める時代ばってん。年ば取ると考え方が固くなってしまってあかんね。そういうことも本で読んで分かったと。すまんかった。」
「お気になさらずに。理解していただけるだけで私は…。」
グスンと目頭をハンカチで押さえながら、モッティは微笑んだ。こうして理解してもらえるだけで充分である。
「これからも婿と娘と、孫のことをよろしく頼むけんね。そこのシップさんと。」
「お任せ下さいませ、シゲオ様。」
シップが胸を張った。



「さ、先生も帰ってきたし、お茶にしましょうか。」
「そうですね、奥様。」
和やかな一時を皆で過ごそうと、コトリーナが声をかけた。
「奥様、旦那様の上着は私がお持ちします。」
「まあ、ありがとう。シップさん。」
コトリーナがナオキヴィッチの上着をシップに渡した時だった。

ひらり、ひらり、ひらひらと…。

「あら、何かしら?」
上着の内ポケットから手紙が舞い落ちたのである。
「手紙のようですね。」
コトリーナとシップの会話から、ナオキヴィッチの顔色が変わった。
「そ、それは!」
「先生、何のお手紙?」
「それは…大学の事務からの連絡事項だ。」
ナオキヴィッチの言葉を素直に信じてコトリーナが渡そうとした手紙を、シゲオが素早く奪った。
「父さん、なんてことを!」
娘の抗議の声を無視し、シゲオは手紙を開いた。
「これは…。」
「なあに?」
コトリーナもつい父の手元をのぞき込んだ。
「なになに、”愛しいあなた…あなたの声はさえずるナイチンゲールのように私を夢の中へといざなう。その夢を私はあなたの腕の中で見たい…その時のあなたは何も身につけず生まれたままの姿で…”なんですってえ!!」
声を出して読み上げたコトリーナは、顔を真っ赤にして叫んだ。シップとモッティも手紙を見て「えっ」という顔をしている。

「…不倫ってやつたいね。」
シゲオはナオキヴィッチを見た。
「…違います。」
「何が違うね?」
「違うものは違うんです。」
「この手紙が何よりの証拠たい!!」
シゲオの怒声が居間に響き渡る。次にコトリーナの「うわあああん」という嗚咽が響き渡った。
「かあたまが泣いてる!じじたまが怒ってる!!」
「うわあああん」とこれまた母親そっくりにジュゲムが泣き出した。
「修羅場ね…。」
モッティが呟く。先程までの団らんはどこへ消えてしまったのだろうか。
「ジュゲムちゃん、ごめんね。」
それでもコトリーナは母親らしく、しっかりと息子を抱きしめた。
「シップさん、悪いけどこの子を別室に。」
「は、はい。ジュゲムちゃん、あちらでシップがご本を読んであげます。」
「…うん、おさるたんも。」
「はい、おさるたんもシップがお連れしますから。」
右手にお猿、左手はジュゲムの手を握り、シップは二階へと上がって行った。

「何ね、少し落ち着いたからといって別のおなごに浮気とは!やっぱりそういう男だったとね!」
「違いますって。」
「いいや、違わん!わしゃ本を読んで勉強したとね。”奥さんとこの手紙の女、どっちが好きですか”って聞かれたら、お前、何と答える気ね?」
「それは…。」
「こう答える気やろ!しばらく考えた後“それは妻を傷つけることになりますから答えられません”とか!もうそれが何を意味してるか誰もが分かるばってん!本にそう書いてあったと!」
「お義父さんが勉強した本って週刊誌なんですね!!」
「何の本を読もうが、わしの自由たい!」
「妻を傷つける…もう私に気持ちはないってことじゃないの!!」
コトリーナは再び「うわああああん」と泣き叫んだ。
「いや、それはお義父さんの妄想…。」
「だまらっしゃい!」
「シゲオ様、落ち着いて。旦那様の弁明もお聞きに…。」
「うるさか、オカ○!」
「お義父さん、少し前に反省したはずでは!」
「ひどおい!!間違えて男に生まれてしまった女です!!」
モッティがコトリーナの側で泣き崩れた。
「不倫はしてません!」
ナオキヴィッチが叫んだ時、呼び鈴が響いた。
「ちょっと失礼。」
この場を離れられるとナオキヴィッチは駆け足で玄関に向かった。

「あれ、イーリエ公爵が直々に出迎え?」
そこにいたのは親友のワッターであった。
「…今、一番会いたくなかったよ。」
バタンとナオキヴィッチは玄関を閉めて居間に戻った。

「旦那様…申し訳ございません、取り乱してしまい。」
落ち着いたモッティが、まだ落ち着いていないコトリーナの背中を撫でながら謝った。
「どなたでしたか?」
「ええと…回覧板だった。」
ナオキヴィッチはごまかした。
「回覧板、手に持ってなかとね?」
今日は鋭いシゲオである。
「あ、ええと。“ご長寿バンザイセレモニー”の開催中止の回覧板だったので。うちは該当者がいないので処分しました。」
「処分したら後の人が回覧できんやろ!あんた、何ばしとると!」
何をしても怒られる、哀れなナオキヴィッチ。

そこで再び、呼び鈴が鳴った。

「まったく、学者だろうが公爵だろうがご近所付き合いをおろそかにするとは何事だっぺ。」
シゲオがズカズカと玄関へ向かい、ドアを開けた。
「あのう…。」
「“ご長寿バンザイセレモニー”の件でしたら、ちゃんと回覧板受け取ったけん。」
「ご長寿バンザイセレモニー?」
戸惑うワッターがそこにいた。
「すまんこったね。うちのアホな婿が失礼なことを。」
「婿?とすると、あなたは…。」
「ワッター様、失礼いたしました。」
モッティが血相を変えてやって来た。
「ワッター?誰だっぺ。」
「それはこちらの台詞だ」と言いたいのをこらえながら、ワッターは素早く頭脳を回転させた。
「ああ、コトリーナのお父上!」
「どちらさん?」
「失礼しました。僕はナオキヴィッチの友人のワッターと言います。」
「ほう、あのアホ婿に友人なんて貴重なもんがおったと。」
「アホ婿…。」
「まあ、よか。客人をそんまま帰そうとしたとね。やっぱりそういう奴だっぺ。」
「そういう奴?」
ワッターはモッティに助けを求めた。が、モッティは首を力なく横に振るばかり。
「入りんしゃい。」
この家の主でもないシゲオに促され、ワッターは邸内に入った。

「お前、来ちまったのか。」
ワッターを見てナオキヴィッチは深い溜息をついた。
「来ちまったって…ああ、そういうこと。」
相変わらず泣き続けているコトリーナは、ワッターが来たことにも気づかない。それを見てワッターはモッティに囁いた。
「ちょっと取り込み中?」
「かなり取り込み中でございます。」
「ま、座りんしゃい。」
相変わらず主の顔をするシゲオ。ワッターは黙ってそこに座った。ナオキヴィッチに拒否されたままおとなしく帰ればよかったと後悔しながら。

「で、おたくは何のお仕事なさってるとね?」
モッティが淹れた紅茶を飲みながらシゲオがワッターに尋ねた。
「僕はべ…むぐっ!!」
突然ワッターの口にスコーンが、ナオキヴィッチの手に押し込まれた。
「お前、スコーン大好物だったよな!」
「そ、そこまで…むぐっ!」
「ワッター様がいらっしゃる予感がしたのでしょうか!私、スコーンをたくさん焼きましたのよ!オホホホホ!」
ナオキヴィッチの意図を素早く汲んだモッティがスコーンを追加する。
「もう、こいつは好物だからと食べ続ける奴で。」
「そうそう、ワッター様、お茶目さん!」
ワッターは意味が分からないまま、目を白黒させスコーンを口に押し込まれている。
とにかく、ワッターの職業をシゲオが知ったら大変なことになる。

「ワッター様のお仕事は確か…ああ、そうそう。役所のご長寿係!」
適当にモッティが言うと、
「そうだな!お前、忙しいんだよな!」
とナオキヴィッチも合わせる。
「ご長寿係って俺は…。」
この二人は何を言っているのかと、ようやくスコーンから解放されたワッターが口を開こうとした。が、二人の厳しい視線にこれまた事情を察する。
「そ、そうです。役所でご長寿…ご長寿ララバイセレモニー担当してます。」
「バンザイじゃなかと?」
「ああ、そうでした。バンザイセレモニー。コトリーナのお父上もいかがです?」
「そのセレモニーが中止になったんじゃ?」
「え?ああ、そうでした。中止、そう、中止でした。」
「まったくしっかりせんと!あんたの給料は税金たい。わしらが払っている税金ばってん。」
「そうです…ね。すみません。」
なんで叱られるのか、ワッターは訳が全く分からない。

「これはワッター様、今日は法廷からのお帰りですか?」
「シップ!!」
「シップさん!!」
なんと言うことか。間が悪くシップが姿を見せてしまった。ナオキヴィッチとモッティが同時に声を上げる。
「な、何ですか?僕は何も悪いことは…。」
「法廷?」
「“ほー!体(てい)のいい厄介払いをされたんですね!”と言いたかったんです、シップは!」
「厄介払い!!」
自分の職業をシゲオにばらしたくないのは分かったが、厄介払いはなかろう。
「旦那様、何を一体…むぐっ!!」
「シップさん、スコーンですよ!さあ、どうぞ!」
「むぐぐぐぐ」と苦しみながら、シップは二階へと消えて行った。

「大丈夫ね、ええとワッターさん?シップに厄介払いをされたとまで心配されているようだけど。」
さすがにシゲオはワッターが心配になったらしい。
「だ、大丈夫です。多分。」
「もっとみんなに頼りにされるよう頑張らないとあかんよ?」
「はい。」
充分頑張っているつもりなのに、なぜか悲しくなるワッターである。
「あら、ワッターさん。いらしていたんですね。」
ようやく泣き終えたコトリーナが、ワッターに気づいた。
「ごめんなさい、こんな姿をお見せして。」
「あ、いやいや。全然気にしてないよ。いや気にするけど気にしてないから。」
もう自分が何を言っているか分からない、哀れなワッター。

しかし、もう事実を隠すことは無理であった。

「あ、べんごしのおにいたん!」
おさるを連れたジュゲムが、ワッターを見つけて走ってきた。
「ごきげんよう、べんごしのおにいたん!」
普段両親から言われているとおり、礼儀正しく挨拶をするジュゲム。
「ごきげんよう…ジュゲム。」
挨拶を返しながら、ワッターはそっと周囲をうかがった。
「弁護士…とはあの弁護士のことかね?」
シゲオがワッターを睨む。
「ど、どちらの弁護士でしょうねえ?」
「おにいたんは弁護士だよ!ジュゲム、おにいたんから法廷のお話聞くの、たのしいの!今日はどんなお話?」
「う、うん…。」
「…ずいぶん用意がよかとね、学者先生!」
とうとう正体がばれてしまった。
「もう弁護士呼んだとね!本気でコトリーナと離婚する気たいね!!」
「離婚!?」
これにはワッターが目を丸くする。そこまで話がこじれていたのか!
「そんならこっちも考えがあるとよ!違う弁護士ば探して、慰謝料と養育費がっぽり奪ってやるけんね!とりあえず、娘と孫は連れて帰る!」
「だから、違うんです。あの手紙は誤解です。」
「うるさか!」
「痛い…。」
「お義父さん、落ち着いて下さい!」
「先生、やっぱり愛人がいたのね!」
「痛い!」
大人たちは、自分たちの会話に挟まれていた子供の声に漸く気づいた。
「ジュゲムちゃん?」
「ジュゲム?」
「おなか…痛い…。」
ジュゲムが真っ青な顔をしてお腹を押さえている。
「かあたま…お腹痛い…ジュゲムのお腹…。」
「ジュゲムちゃん、しっかりして!」
「モッティ、医者だ!シップに呼びに行かせろ!」
「はい!」
もう、ナオキヴィッチの浮気どころではなかった。大人たちは皆、可哀想な幼児にかかりきりとなる。
「ああ、先生。ジュゲムちゃんは大丈夫かしら?」
「大丈夫。俺がついている。」
「ジュゲムちゃん、ジュゲムちゃん。」

「旦那様!」
モッティが戻って来た。
「シップは行ったか?」
「いえ、それが。」
「何をしてるんだ!お前が行け!」
「違います、これをごらんに!」
モッティが皆の前に出したのは、空の箱だった。
「この箱は…。」
コトリーナが受取り、確認をする。
「アイスクリームの箱だわ…空っぽ。」
「申し訳ございません!」
シップが頭を下げた。
「ジュゲムちゃんの気をそらそうと、アイスクリームを…食べているところが可愛くてもう一つ、もう一つと…気づいたら…。」
「かあたま…トイレ…。」
ナオキヴィッチはジュゲムを抱え、コトリーナと三人でトイレに猛ダッシュしたのである。

「これだけ食べれば、そりゃあ腹も冷えるけん…。」
やれやれと、シゲオとワッターは胸を撫で下ろしたのだった。


とりあえず落ち着いたジュゲムをベッドに寝かせた後、モッティに頼んでコトリーナとナオキヴィッチは居間へ戻った。
「これが原因となっている手紙?」
ワッターがすっかり忘れられていた手紙を二人に見せた。
「思いだしたわ…先生…。」
じわりとコトリーナの目に涙が浮かぶ。
「慰謝料!」
シゲオが騒ぎ出す。
「この手紙をナオキヴィッチが書いたわけだよね?ナオキヴィッチの筆跡だし。」
「そうたい。妻がいながら他の女と何年も…。」
「そんな女いません!」
「この手紙って、浮気じゃないですよ。」
ワッターが静かに言った。
「何をバカな。あんた、友達だからって。」
「いえ、これは僕も知ってます。学生時代に学んだ文学の一節ですから。」
「文学の一節?」
「ええ。これ、原文はラテン語ですよね。でも確かこれ…。」
「ワッター、余計なことを言わなくていい!」
止めようとするナオキヴィッチの口に、今度はワッターがお返しとばかりにスコーンを押し込んだ。
「うぐぐ…。」
「これ、学生時代にこいつが言ってたんです。好きな女性が出来たら英訳して送ろうって。なあ、ナオキヴィッチ?」
「だからそれをよその女に…。」
「二人とも、最後まで読んでいないでしょう。」
呆れたように、そしてクスクス笑いながらワッターは手紙をコトリーナに渡した。「むぐぐ」と唸りながらもそれを阻止しようとするナオキヴィッチから逃げながら、コトリーナは急いで最後まで目を通す。
「愛する我が妻、コトリーナへ…あら。」
コトリーナがポッと赤く頬を染めた。その手からようやくスコーンを食べ終えたナオキヴィッチが手紙をひったくった。
「ワッタ―、お前嘘を言うな。」
「嘘じゃないだろ。俺たちに教授が言ったじゃないか。“こういう恋文を送れる男性になりたまえ”って。そしたらお前こう返したんじゃないか。“僕がそこまでしたいような女性が果たして現れるでしょうかね”って。お前、その頃からひねくれてたよなあ。でも出会えたんだ。」
「別に、またこの文章が出て来た本を授業で使ったから、ちょっと書いてみただけだ。深い意味はない。」
「さて、全てが丸くなったようで、俺は失礼するよ。」
アハハと笑いながら、ワッタ―は帰って行った。

「もう、先生ったら。」
「何ね、早くそう言わんかいの。」
ツンツンとナオキヴィッチのひじを突くコトリーナを横目に、シゲオは「やれやれ」と溜息をつく。
「早く言いたくてもその時間を与えてくれなかったくせに」と喉まで出かかったナオキヴィッチであるが、これ以上揉めたくないので黙ることにした。



「お義父さんは寝たのか?」
「うん、疲れたみたいですぐにいびきかいてた。」
ナオキヴィッチはクスッと笑いながら、絵本を閉じた。
「ジュゲムちゃんもぐっすりね。」
「ああ。じじたまの野菜のスープがお気に召したらしい。」
「お腹、酷くならなくて安心したわ。」
ジュゲムを挟んで二人はベッドに入った。
「まったく、シップも限度ってもんがあるだろう。」
「シップさんは悪くないわ。私たちが大騒ぎしていたせいでジュゲムちゃんが泣いちゃって。シップさんに迷惑をかけてしまったもの。」
「それでも…でも、あいつの気持ちも分かるな。確かに可愛くてたまらない。」
ナオキヴィッチは愛息子の頬を突いた。
「ほうら、プリプリ。」
そしてナオキヴィッチは手を伸ばし、愛妻の頬も突いた。
「お、こっちもプリプリ。」
「もう、おいたはメッ。」
睨むコトリーナの頬に手を伸ばし、ナオキヴィッチはキスをした。
「先生…大好き。」
「俺は…どうかな?」
「意地悪。あんな情熱的なお手紙くれたのに。」
「疑ったくせに。」
「だって、先生があんなお手紙くれるなんて全然思わなかったもの。もう結婚して、子供もいるのに。」
「結婚して何年経っても、子供が何人産まれても、俺の気持ちは変わらないよ。」
こうして平和で愛情にあふれた夜は更けて行った。




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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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