日々草子 水面に映る蓮の花 31
FC2ブログ

水面に映る蓮の花 31

いつもブログにご訪問いただき、そしてコメントや拍手をありがとうございます。
お返事もできない中、このようなことを口にするのは心苦しく大変失礼だと思うのですが、どうしてもお願いしたくこちらに記載させていただくことにしました。
長編に対する詳細な展開要望、展開予想は胸の内にしまっていただけますでしょうか。
「ラブラブな二人を待ってます」とか、「二人の子供が見たいです」とか「もう実家に帰っちゃえ!」など、そのくらいなら感想の範囲内として問題は皆無ですし私も拝見して楽しいのですが、感想を超えた詳細すぎるものだと色々と困ることが多いものなのです。最悪、後々ブログをやめるようなトラブルに発展する可能性も出てきます。
分かりやすい展開なので仕方ないのですが、それでも詳細すぎる予想、要望は胸の内にしまっていただけたらと思います。
先に例を挙げたようなコメントでしたら大歓迎です!
拙い話に対し、色々想像しながら読んで下さっていることにはとても感謝いたしております。そして私はこのような行動に怒っているわけではなく、困惑している状態です。
更新が滞っている中、勝手なお願いで申し訳ありませんが、筆者の気持ちを汲んでいただけますようにどうぞよろしくお願いいたします。

☆☆☆☆☆




琴子が直樹から追い払われた日から10日ほど経った頃のことであった。
「鴨狩様。」
東宮の御殿に仕える女官が、鴨狩の部屋にやって来た。
「東宮様に何かあったのか?」
女官がわざわざ自室を訪れるとは珍しいことだった。また直樹が癇癪を起し、とんでもないことをしでかしたのかと鴨狩は緊張した。最近の直樹は表向き冷静沈着であるが、内心何を考えているのか全く分からない。
「いえ、そうではございませぬ。」
「では何事?」
「実は、東宮妃女官長様の使いが来ております。」
「東宮妃女官長…桔梗殿の使い?」
桔梗が使いを自分へ寄こすとは珍しいことだった。自分と桔梗はそのような堅苦しいことをし合う関係ではない。
「鴨狩様へ直接のお目通りをと申しておりますが。」
「ここへ通すがよい。」
鴨狩が許可を出すと「はい」と女官は下がった。
程なくして、桔梗の使いがやって来た。
「いかがいたした。」
「東宮妃女官長様が、東宮様へ直にお目通りをと仰っておいででございます。」
「東宮様に直に?」
「はい。」
「東宮妃様はご一緒じゃなく?」
「はい、女官長様お一人でと。」
「なるほど…。」
桔梗が一人で面会を求めている。相当の覚悟をしてのことだろう。
「分かった、では明日の昼過ぎに来るようにと伝えよ。」
「え?」
使いの女官は驚いて鴨狩を見つめた。東宮に聞かなくてよいのかと顔に書いてある。
「私が仲介すると女官長に伝えよ。それで分かるはず。」
「は、はい。かしこまりました。」
使いの女官はそれ以上聞くことなく、下がって行った。

翌日の午後、桔梗は一人で鴨狩の元を訪れた。
「鴨狩殿、東宮様に私が来ることをお伝えしていないご様子。」
昨日の女官の様子から分かったのだろう、桔梗は開口一番そう言った。
「東宮様に申し上げると、拒否されると思ったからな。」
「確かに。だから鴨狩殿に頼んだのです。」
桔梗は微笑んだ。
「東宮様は医師のお仕事へ復帰されましたか?」
「まだだ。」
医師長より謹慎同然のことを申しつけられた直樹であるが、そろそろ復帰を願い出ても大丈夫なのではと鴨狩も思っていた。が、直樹にそうする気配はなかった。
「医学への情熱を失ってしまわれたような気がする。」
「そこまで…。」
そう呟いた桔梗は、やはり今日自分がここに来てよかったと確信した。

「東宮様。」
鴨狩は外に桔梗を待たせて、御殿の中へ入った。直樹は書物を読んでいた。が、それは医学書ではなく、どこから入手して来たのか、娯楽物のようであった。
「桔梗がお目通りを願っております。」
さすがにここは話を通さねばならない。
「桔梗が?一人でか?」
昨日の鴨狩と同じことを直樹は口にした。
「左様でございます。」
「…通すがいい。」
書物を置くと直樹はそう言った。

「珍しいな、一人で来るとは。」
通された桔梗に、直樹は言った。
「琴子に命令されてのことか?」
「いいえ、直樹様。」
桔梗は言った。
「私一人の所存で参上いたしました。このこと、姫様は何一つご存知ないことでございます。」
「ほう。で、何の用なのだ?」
桔梗は直樹の側に目をやった。書物が多いのは変わらないが医学書の類ではないような気がする。
「…先日、姫様を害しようとした者が捕まりました。」
「知っている。」
「それを見抜かれたのは直樹様だと。」
「この前申したはず。単に正妃が厄介事に巻き込まれるのが面倒だったまで。」
「それは承知いたしております。」
「それに、その件はお前の活躍の方が目立った。」
「それについてですが、私は姫様に注意を受けました。」
「注意だと?自分を救った忠実な女官長を注意したというのか?」
「左様でございます。」
「解せぬ。」
直樹が話に乗ってきた。これはいいことだと桔梗は話を進めた。
「私は厨にて、企てた者に自分で口にしてみよと命じました。」
「そう聞いている。」
「その行為が愚かなことだと仰ったのです。」
「どういうことだ?」
「姫様はこう仰られました。ご自分は医師である直樹様の妻であると。医師の妻が人を傷つけるようなことをしてはならぬと。」
「…もし、その者がお前に命じられたとおり薬が入った汁物を口にした場合のことか。」
「左様でございます。ご自分が害されることではなく、医師の妻としてのお立場をお考えになったのでございます。」
「…。」
これは相当意外なことだったらしい。直樹は黙り込んでしまった。
「姫様は直樹様が医師であることを誇りに思い、それを支えたい一心でいらっしゃることが私は改めて分かりました。」
誇らしげに桔梗が言うのを、直樹はどこを見ているのか視線を漂わせながら黙って聞いていた。
「そのことをお伝えしたいと思い、本日は参上いたしました。」
正直、直樹が怒り出すのではないかと桔梗は思っていた。激怒の末に罰せられても仕方ないと覚悟しての今回の行動だった。
しかし、直樹は無言のままだった。
桔梗は再び、直樹の周囲に目を落とした。少し見えた題名から察するに、やはり医学書ではないようである。
「…姫様は、ただただ、直樹様が医師としてご活躍されることを願っておいでなのです。それだけはおわかりいただけますようお願い申し上げます。」
女官として出過ぎた真似だと自分にも分かっている。しかし、先日のことといい、直樹の態度はあまりに酷かった。これ以上黙っていることは難しかった。

桔梗が出て行ったあと、直樹は鴨狩も部屋から出て行くよう命じた。同席して桔梗の話を聞いていた鴨狩は何か感じることがあったのかと思いつつ、従った。
しばらくして、再び直樹が鴨狩を呼んだ。
「お呼びでございましょうか。」
「この書物を片付けてくれ。」
それは、ここしばらく直樹が読んでいた娯楽物であった。
「かしこまりました。」
鴨狩は直樹が積み上げた書物を抱えた。すると直樹は、書棚の奥へおいやっていた別の書物を机の上に積み上げた。それは医学書であった。
「それからもう一つ。」
「はい。」
思わず弾みそうになる声を抑えて、鴨狩は返事をした。
「医師の作業着…あれはどうしてある?」
「片付けてありますが、お出しいたしますか?」
「…そうだな。いつでも身につけることができるようにしておいてくれ。」
「かしこまりました。」
部屋を出た後、鴨狩は喜びの声を上げそうになった。桔梗によって伝えられた琴子の真意が、直樹を変えそうであった。


「王妃様より、お届けするようにとのことでございます。」
時を少し戻して、桔梗が直樹の元へ参上していた時である。琴子の元には王妃の女官長が訪れていた。
「義母上様にお礼を申し上げておくれ。」
「かしこまりました。」
琴子は机の上に置かれた包みを解いた。そこには巻物が数巻置かれていた。その一つを解いて中を確認する。
「…この中に、東宮様のお心に添える女性はいるかしら?」
それは琴子の頼みにより王妃が揃えさせた、直樹と年齢が釣り合いそうな姫君の名簿であった。
―― このようなものを準備したくはなかった。
女官長の脳裏に、王妃の悲しげな言葉がよみがえった。
―― しかし、姫があれほど頼むのだから…だが、こう伝えることを忘れるでないぞ。
その言葉を、女官長は琴子に伝えようと口を開いた。
「東宮妃様。」
「何ですか?」
「…王妃様からの御伝言でございます。たとえ、その中から側室として選ばれし姫君がいたとしても、東宮妃様のお立場は変わることはないと。」
「義母上様が…。」
その優しさを琴子は素直にありがたく思った。が、それに甘えるのはいいことではないだろう。
「…お優しさに感謝申し上げるとお伝えしておくれ。」
「かしこまりました。」
きっと選ばれし姫君は側室として置くのは勿体ないほどの人物であろう。そのような人物を下位に置いておいて、何の取り柄もない自分がのうのうと東宮妃の立場に座っていることは許されることではあるまい。

「東宮妃様、桔梗の姿が見えないようでございますが。」
女官長は話題をそらそうとした。
「え?ああ、少しだけ側を離れると言ってどこぞへ行きました。桔梗も気分を変えたい時もあるでしょう。」
「左様でございますね。」
と、噂をしていたらその本人がちょうど戻ったようであった。
「これは女官長様。」
挨拶をした後、桔梗は琴子が手にしている物に気付いた。
「恐れながらそちらは?」
「義母上様が届けて下さった、貴族の姫君の名簿よ。」
「と、申しますと…。」
「東宮様の側室候補。」
あとで共にどの姫君がいいか考えようと笑顔で言われると、桔梗は「はい」と小さく返事をするしかなかった。その二人を女官長が複雑な表情で見ていた。



「東宮様はおられるか?」
直樹が再び医学の勉強を始めた頃、予想もしない人物が東宮の御殿に姿を見せた。
「これは欅宮様。」
鴨狩は正直、せっかく前向きになってきた直樹の邪魔をしてほしくなかった。が、相手は王の叔母。粗略にできない。
「東宮様、欅宮様がお越しでございます。」
「欅宮が?」
通すしかないだろう。直樹は書物を片付けると「通せ」と返事をした。

「…この度は私の女官が無礼をはたらいたこと、まことに申し訳なく。」
それが欅宮の精一杯の謝罪のようであった。そういえば王と王妃にも謝罪をして回ったという噂を聞いたような気がした。一応、謝罪をしない訳にいかないのだろう。
「…宮様が命じられたことではないとか。」
「信じていただけないでしょう。」
まだ誇り高い性格は健在のようであった。
「私は捕まえただけ。他には何もしておりません。」
あまり話をしたくないのが直樹の本音であった。この態度で早く出て行ってほしいと分かってくれないだろうか。
しかし、欅宮は腰を上げようとしなかった。
「宮様。」
「はい。」
「…この後、東宮妃の御殿へも出向かれますのか?」
それには欅宮は答えなかった。どうやら出向くつもりはないらしい。外で耳をすませている鴨狩は少しも反省していないではないかと憤慨せずにいられなかった。一番の被害者である琴子に謝罪しなくてどうするつもりなのか。

「…東宮様に一つお尋ねしたいことがございます。」
「はい。」
こちらが聞いたことには答えないくせにと腹立ちを覚えつつ、仕方なく直樹は返事をした。
「何でしょう。」
「東宮様はなぜゆえ、あの娘を妃に望まれます?」
「望むと申されても…すでに琴子は妃ゆえ。」
苦笑しつつ直樹は答えた。
「どうしても、あの娘でなければなりませぬか?」
「…迎えた時はそう思っておりました。」
「過去形!」と鴨狩は目を見開いた。では今はそう思っていないのか。
「では、今は違うと?」
「…大泉の縁者を側室に迎えよと仰りたいのですか?」
「逆に大泉の縁者で満足できない理由は?」
今度は直樹が何も答えなかった。
「なぜゆえ、先の正妃である沙穂子姫ではいけなかったのですか。どこの姫君よりも高貴な生まれ、美貌に恵まれ教養も申し分なく、東宮妃として何の問題もなかった。いや、未来の王妃として民を幸せにできることができる、これ以上ふさわしき女性はいなかろうという姫君ではなぜいけなかったのですか。」
「民を幸せにできる、と申されましたか。」
黙って欅宮の言葉を聞いていた直樹が口を開いた。
「申しました。沙穂子姫が王妃になった暁には、この国の民は幸せになるでしょう。全ての民が慕うのは、欠点が何一つない王妃でなければならないのです。」
「全ての民が慕うことはないでしょう。」
「何ですと?」
欅宮は直樹が何を言ったのか、一瞬理解できないようであった。
「先の東宮妃が王妃になったとして、全ての民は幸せになりません。また慕われもしないでしょう。」
「どういう意味です?」
「先の東宮妃は、どうしても一人の民を幸せにできませぬ。その民は私のことです。」
「…何を仰る。」
フッと欅宮は笑った。
「東宮様が民とは…。」
「いいえ、民がこの国に暮らす者を指すとしたら、私も民の一人。そして私は先の東宮妃が王妃になったとしても幸せになりませぬ、未来永劫!」
きっぱりと直樹は言いきった。その目に迷いはなかった。
「側にいる私が幸せにならぬ王妃。それは王妃にとっても不幸以外の何物でもないでしょう。」
「では…では…。」
「今の東宮妃でなければ、私は幸せにはなれないのです。」
そこまで言った直樹はハッとなった。自分でもここまで口にするとは思ってもいなかった。欅宮に応対しているうちに、自然と口を突いて出て来たものであった。

「…ならば、そう申せばよいでしょう。」
怒りで無言となり出て行くかと思った欅宮であったが、落ち着いていた。そして思いもがけないことを言った。
「そのとおり、あの小娘に申せばよいでしょうに。」
欅宮はしばし直樹の顔を見た。直樹はその視線に耐えきれず、逸らした。
「思いというものは口にせねば伝わらないものです。」
欅宮は静かに言うと、立ち上がり部屋を出て行ったのだった。



関連記事

comment

管理者にだけ表示を許可する

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

今までのは❓案だけ意地悪なおばさん、の、心の変化は何だろうね?これで、少し、直樹も直になってくれるといいのにねv-8

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

最新記事
最新コメント
Private
カレンダー
07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
リンク
カテゴリー+月別アーカイブ