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2019年11月23日(土)

水面に映る蓮の花 28

イタキス祭りの延長が決定したので、本日11月23日22時頃からこちらでチャットが開催されております。
ぜひどうぞ!!初めましての方も絶賛ウェルカムですよ~♪

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【More・・・】





「どうしたものか…。」
王妃は深い溜息をついていた。
「東宮様の御側室選びでございますか?」
女官長がたずねると、王妃は頷いた。
「できれば、そのようなことはしたくない。」
「お気持ち分かっております。」
「王様にもお伝えしたが、私と同じお気持ちでした。東宮妃はまだ年若いのだし、一時的に溝ができているだけだろうと。それと、最後にこう仰せでした。」
「どのように?」
「東宮妃を苦しめる結果となった今、側室を迎えても苦しむ女人が新たに増えるだけだと。」
「おそれながら、王様の仰る通りかと。それに御側室にお子ができたとしたら、東宮妃様のお気持ちはいかばかりか。」
「嫉妬をしないのが私たち妃の務め。とはいえ、私は幸いにも世継ぎに恵まれたため、そのような苦しみを知ることはなかった。私が経験しない辛さをあの可愛い姫にさせるかもしれないと思うと胸が痛くて。」
「おいたわしいことです。」
「女官長、このことはしばし私たちの胸に。女官たちに知られて、この隙に自分が側室にと邪な考えを抱く者がでるかもしれませぬ。特にまだ…。」
「欅宮様がおいででございますからね。以前も女官を近づかせたことがありましたから。」
女官長の話に王妃が頷いた時、外から取次の女官の声が聞こえた。
「王妃様、東宮妃様がおいででございます。」
「まあ…。」
今の話はそこまでと王妃は女官長に目配せをした。心得た女官長は立ち上がり、東宮妃を迎えに出て行った。

「義母上様はご機嫌いかがか?」
迎えに出た女官長に、琴子が尋ねた。
「はい、お健やかにお過ごしでございます。」
「そうか。私のことでいらぬご心配をおかけして申し訳ないと思っています。ところで。」
「はい。」
琴子は声をひそめて言った。
「…側室の件は進んでいますか?」
「そちらはまだ…。」
「私のわがままで済まないのですが、なるべく早い方がいいと。」
「王妃様にお伝えしておきます。」
「私が直接申し上げていらぬお気を遣わせてしまうのは心苦しいのです。女官長にも苦労をかけます。」
「私のことはお気づかいなきように。」
琴子は本気なのだと、女官長は知らされた。

「義母上様、失礼いたします。」
「ああ、姫。どうしました?」
憂いを隠し、にこやかな笑顔で王妃は琴子を迎えた。
「今日は二ノ宮様のことでお伺いいたしました。」
「二ノ宮?」
意外な名前に、王妃は驚いた。
「あの子がどうしましたか?姫に迷惑をかけたのですか?ならばすぐにこの場に呼んで…。」
と、女官長をすぐに命じそうな勢いの王妃を琴子は、
「義母上様、お待ちを。そうではありませぬ。」
と慌てて止めた。
「まあ、では何か?あの子は姫が優しいことに甘えて色々と困ったことをしているのでは?」
「違います。宮様はいつも私を気遣って下さいます。本当にいつも優しくて。」
「そうですか。」
琴子の言葉が心からのものだと分かったので、王妃はようやく胸を撫で下ろした。
「その…宮様のお体は大丈夫かと。」
「体?あの子はどこぞ具合が?」
「実は最近、とても眠そうにしておいでなのです。」
「眠そう?」
「はい。先ほど申し上げたとおり、宮様は私を気遣って雀殿に遊びに来て下さいます。最近、眠そうにしていることが多く、何回かそのままお眠りに。」
「まあ、姫のところでお昼寝ですか。」
結果として迷惑をかけていることになっているではないか。王妃がそれを謝ると、琴子は「いいえ」と手を振った。
「可愛らしくてそのままにしているのですが、でも起こさねばならない刻限が来ますし。」
「しょうのない子。」
「ただ、お体の調子が悪いから眠そうにしていらっしゃるのではと心配になったのです。義母上様にお伝えしておこうと思いました。」
「ありがとう、姫。」
確かに、そこまで眠そうにしているのは珍しい。母として心配になる案件であった。
「本当に可愛らしい方です、宮様は。宮様を拝見していると、私思うのです。」
「何かしら?」
「きっと東宮様の側室にお子ができても、わが子のように可愛がれるだろうと。私、そのお子のために色々してあげたくなると思います。」
「姫…。」
それもきっと琴子の本心なのだろう。こんなに心優しい妃を迎えたというのに。



裕樹は自室でごろごろとしていた。
「宮様、王妃様のお越しでございます。」
「何、母上が!」
半分寝ぼけながら、裕樹は慌てて起きた。
「裕樹、入りますよ。」
「は、はい!」
入って来た王妃は裕樹を見て「あら、あら」と言った。
「髪が乱れているではありませんか。」
母親らしく、王妃は乱れた裕樹の髪を手ぐしで直した。
「お昼寝していたのでしょう?」
「ちょっとうとうとと…。」
「どこぞ、体の調子が悪いのですか?」
尋ねながら、王妃は裕樹の顔色を素早く見た。特段、悪い様子はなかった。
「お熱は…。」
と、裕樹の額に手を置いた。
「ないようですね。最近、よく転寝をしていると聞いて様子を見にきたのです。」
「あ、琴子だ!琴子が言いつけたんですね!」
「心配しているのですよ。」
「大丈夫ですよ。僕はどこも悪くありません。」
「そうですか?」
確かに本人の言うとおり、格別おかしいところは見当たらないようである。
「どこか辛いところがあったら、すぐに教えるのですよ。」
「はい、母上。」
大丈夫だと見せるため、裕樹は両腕をぶんぶんと振った。それを見て王妃は噴き出した。
「まったくまだ子供なのだから。」
と呟きながら、王妃は室内を見回した。きちんと片づけられている。
―― 成人前の弟の部屋の方がきちんとしているなんて。
直樹の不甲斐なさに、再び溜息をつきそうになった。

「母上?」
「ああ、いいえ。ところで最近は絵のお稽古はどうでしょう?」
「はい、師の君に色々教えていただいております。ほら、見て下さい。」
箱に入れてある作品を裕樹は取り出した。
「まあ、これは猫ちゃん?」
「そうです!」
一度で当てられたことに王妃自身が驚いた。ということは、確かに進歩しているらしい。
「母上、これは?」
「これは…蜜柑?」
「…毬です。」
「ああ、そうですね。」
いや、まだまだのようである。が、以前よりは上達している裕樹の腕であった。

「ふう、危なかった。」
母を見送った後、戻った裕樹は汗をふいた。
「確かに最近、居眠りが多かったからなあ。でももう少しの辛抱だ。」
そう一人呟くと、裕樹は先ほど母に見せた作品を入れた箱とは別の箱を取り出した。それは誰にも見つからないよう隠してある。
「うん、うん…僕は天才かもしれない。」
ムフフと笑った後、裕樹は大きな欠伸をしたのだった。



「欅宮様。」
部屋で翡翠の髪飾りを眺めていた欅宮はハッとなって、それを宝石箱へ戻した。
「宮様…そちらを眺めておいででしたか。」
やって来たのは柘榴であった。
「何用だ?」
自ら宝石箱を元の場所へ戻しながら、欅宮は柘榴に問いかけた。
「あの…このままでよろしいのですか?」
「このまま、とは?」
「東宮妃が雀殿に戻りまして…。」
「戻ったところで、何も変わっていない。東宮とあの娘の仲はこじれていると聞いている。」
主人の返事に柘榴が意外だという顔をした。
「何もなさらないので?」
「何もとは?」
「あとひと押しで、あの東宮妃を追い出すことができそうでは?」
「追い出す、か。」
欅宮は黙り込んだ。何か考えようとしているのかと、柘榴はその返事を期待して待った。

「欅宮様。」
部屋の外から女官の声が聞こえた。
「入れ。」
自分と話をしているというのに、他の女官を通すとは珍しいと柘榴は思った。女官もそう思ったらしく、中に柘榴がいたのを知り躊躇した。
「構わぬ。新しい屋敷はどこまで出来上がっていた?」
「はい。大方、8割ほどは。」
「そうか。間もなく完成するな。」
この会話に、柘榴は驚いた。
「ご苦労であった、下がってよい。」
「はい。」
女官はすっと出て行った。

「宮様、新しいお屋敷を見に行かせたのでございますか。」
自分は何も聞いていなかった。このようなことを女官に命じる時は必ず自分を通していたというのに。
「驚くことはなかろう。元々改築のために宮中に来たのだから。気にするのは当然のこと。」
「ですが…。」
まるでもうすぐ戻るかのような口ぶりであった。
「宮様…。」
「少し一人にしてほしい。」
「東宮妃のことは…。」
「一人にせよと申した。」
柘榴はその声色に震え上がり、すぐに退散した。
「まったく…。」
一人になった欅宮は、再び宝石箱から髪飾りを手にした。そして柔らかい布で翡翠を磨き始めた。そして側に誰かがいても聞き取れなかったほどの小声で呟いた。
「この髪飾りのことを…柘榴は忘れておる…もし桔梗であればそのようなことは決してなかっただろうに。」



「このまま、宮様をお屋敷に戻らせるわけにはいかぬ!」
主人の心に全く気づかず、柘榴は一人決意を固めていた。
「絶対に…絶対に、あの小娘を今度こそ地獄へ突き落す!」
柘榴はその計画をじっくりと練るため、自分の部屋へ戻った。今度こそ、絶対に失敗は許されない――。


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